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家族の安心

辞めたら社宅も出る単身赴任の課長代理。段ボールの宛先は家族の家

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会社の社宅を出る前に家族の家へ送る最後の一箱の宛先を書く単身赴任の課長代理

会社が借りた部屋に住む単身赴任中の課長代理が、「辞める=すぐ追い出される」と思って三か月言えずにいる。社宅規程で出る日の猶予を確かめ、荷物を三つの箱に分け、退職日・退去日・鍵を返す日・書類が届く日の四つを自分で決めます。

この記事を読むと、社宅の規程で部屋を出る日の猶予を確かめ、荷物を三つの箱に分け、退職日・部屋を出る日・鍵を返す日・書類が届く日の四つを、自分で決められるようになります。

部屋が会社のものだから、言えないまま三か月

単身赴任中の課長代理。期間の定めのない雇用で働いています。住んでいる部屋は会社が借りたもので、一人で暮らしています。家族は別の町にいます。

辞めることは、もう決めました。けれど上司に言えば、「部屋はどうするんだ」と返されそうで、言えないまま三か月がたちました。家族には「そろそろ戻りたい」とだけ言っています。

困っているのは、辞める決心ではありません。辞めると言った日に、この部屋をすぐ出なければならないと思っているから、言えないのです。

最初に置いておきたいのは、退職日と、部屋を出る日は、別に決まるものだということです。退職日は自分が決めます。部屋を出る日は、会社の社宅の規程に猶予が書いてあることがあり、それを見て決めます(都道府県の労働相談の説明です。下で書きます)。「辞める=すぐ追い出される」ではなく、「辞める日」と「出る日」の二つを、順番に自分で決めます。

この記事の退職日の決め方は、期間の定めのない雇用の場合です。契約社員など期間を決めて働いている人は、退職日を契約書で見て、分からなければ総合労働相談コーナーで聞いてください。

部屋を出る日は、法律ではなく社宅の規程で決まる

先に、部屋のことを一つだけ整理します(2026年10月時点で確かめた内容です。説明や決まりは変わることがあります)。

社宅や寮を出る時期は、法律で一律には決まっていません。会社との契約が、家賃を払って借りる形(賃貸借)か、ただ同然で使わせてもらう形(使用貸借)かで扱いが変わり、どちらに当たるかは個別の判断になります。

都道府県の労働相談では、こう説明されています。多くの場合、社宅の規程に30日から3か月くらいの明け渡しの猶予が設けられているので、まず会社の規程を確かめること。短い期限を求められても、相当の期間そこに住めるよう話し合うことを勧めている、という内容です。これは都道府県の説明で、国の労働局のページには、退去の時期を説明したものが見つかっていません。だからこの記事では、「退職したら2週間で出るのが法律」とも「3か月は住める」とも書きません。自分の会社の社宅規程を開くことが、最初の確かめ方です。

社宅規程がどこにあるか分からなければ、総務か人事に「社宅規程を見たい」と頼みます。辞める話をしなくても、頼むことはできます。

荷物と書類を、三つの箱に分ける

部屋を出る日が「規程の猶予の中で自分が決める日」だと分かったら、次は荷物です。部屋の中の物と、会社とやりとりする書類を、三つの段ボール箱に分け、箱ごとに日付を書きます。

箱 入れる物 箱に書く日付
箱1 家族の家へ送る 服、本、家族の写真、仕事で使わない私物 送る日: 月 日 /宛先:家族の家
箱2 会社へ返す 部屋の鍵、社員証、制服、会社の機器、社宅の備品一覧にある物 返す日: 月 日 /返し方:手渡し・郵送
箱3 ここで処分する 家具、家電、持って帰らない物 処分の予約日: 月 日

箱1は、宛先が決まっています。家族の家です。一度に送らなくてかまいません。退職日まで少しずつ送れば、最後の週に残るのは、着替えと箱2だけになります。

箱2は、会社が置いた物を返す箱です。備品一覧が規程や部屋の契約についていれば、それを見ながら中身を書きます。なければ総務に聞きます。鍵は、箱に入れるのではなく、返す日と返し方を決めます。手渡しなら誰に、郵送なら書留で、どこへ。

箱3は、処分の予約日を書きます。家具や家電は、回収や引き取りに予約が要る場合があるので、部屋を出る日から逆算して、予約日を先に書いておきます。

箱の横に置く、「会社から受け取る書類」

三つの箱と別に、会社から受け取る書類の一覧を、箱の横に置きます。これは自分が送る物ではなく、会社から自分に届く物です。送り先を家族の家の住所にして、会社に伝えます。

書類 どう受け取るか
離職票 会社がハローワークに手続きをして、本人に届く。会社が手続きをしない場合は、本人がハローワークに申し出れば、本人の請求で手続きが進む
源泉徴収票 会社が出す期限は、退職後1月とされている
退職証明書 請求したときに、会社は遅れずに出す(労働基準法22条1項)。自動では出ないので、要るなら請求する
年金手帳 会社に預けている場合だけ、返してもらう。2022年4月以降は年金手帳は新しく発行されず、基礎年金番号通知書になっている

送り先を家族の家にしておけば、部屋を出たあとに書類が社宅に届いて受け取れない、ということを避けられます。退職届を出すときに、「書類は次の住所へ送ってください」と一行添えます。

四つの日付の表

三つの箱が埋まったら、日付を四つ、一枚の表にします。

日付 書く欄 決め方
① 退職日  月 日 自分で決める。期間の定めのない雇用では、申し入れから2週間で雇用が終わると民法627条1項が定めている。就業規則に常識的な長さの申し出の期間があれば、それに合わせるほうがもめにくい、と労働局は説明している
② 部屋を出る日  月 日 社宅規程の猶予の中で、自分が決める
③ 鍵を返す日  月 日 ②と同じ日か、その翌日
④ 書類が届くおよその時期  月ごろ 源泉徴収票は退職後1月が期限。離職票は会社の手続きのあと

①と②が別の日でよい、というのがこの表の肝です。①が先で②が後。間が社宅規程の猶予です。この表を持っていれば、「部屋はどうするんだ」と聞かれたときに、②の日付を指して答えられます。

三か月言えなかった理由を分ける、三つの問い

ここからは、三か月言えなかった理由を三つに分けます。どれに当たるかは、どの箱で手が止まるかで見ます。この分け方は、この記事で決めた整理で、心の状態を見立てるものではありません。

一つ目の問いは、社宅の規程で、辞めたあと何日まで住めるかを確かめたか。確かめていないなら、手が止まっているのは箱を詰める前、②の日付が空いている所です。

二つ目の問いは、上司に「辞める」と言う場面を思い浮かべると、止まるのは部屋の話か、上司と向き合うこと自体か。部屋の話で止まるなら、②の日付を持てば言えます。上司の顔で止まるなら、日付を持っても言えません。箱2を返す相手の顔が浮かぶ人も、ここに入ります。

三つ目の問いは、家族の側に、自分が戻る前に済ませる準備(子どもの転校、家の片づけ)があるか。あるなら、箱1を送り始める日は、家族側の予定で決まります。

原因 どの箱で手が止まるか
A 箱を詰める前。②部屋を出る日を知らなかっただけで、上司には言える
B 箱2。赴任は上司の指示で、「赴任させてやったのに」と言われるのが分かっている。部屋も会社の管理で、上司とも総務とも顔を合わせて話したくない
C 箱1。辞める気持ちは固いが、家族側の準備がまだで、戻る日が決まらない

止まる箱が決まったら、その原因の道だけを読んでください。原因一つに、道は一つです。

原因A:出る日を確かめてから、自分で伝える

Aの人は、上司に言えます。止まっていたのは、「辞めたらすぐ出る」と思い込んでいたからです。

  1. 社宅規程で、猶予を確かめます。規程の中の、退職のときの明け渡しについて書いた条を探します。「退職の日から○日以内に明け渡す」のような書き方を探して、その日数を、四つの日付の表の②の横に書きます。見当たらなければ、総務か人事に、退職後に住める期間を聞きます。
  2. 退職日と、部屋を出る日を決めます。①退職日を決め、規程の猶予の中で②を決めます。②は猶予の最後の日にしなくてかまいません。箱1を送り終わり、箱3の処分が済む日が②です。
  3. 退職届と一緒に、退去日と書類の送り先を伝えます。退職届には退職日を書き、「社宅は○月○日に明け渡します。鍵は○日に総務へ返します。退職後の書類は次の住所へお送りください」と、一枚添えます。口で言うだけだと「聞いていない」になることがあるので、書面に残します。
  4. 三つの箱を詰めます。箱1から送り始めます。

手が止まりやすいのは、「2週間で出てくれ」と言われる場面です。規程に猶予が書いてあるなら、その条を示して、相当の期間そこに住めるよう話します。都道府県の労働相談でも、短い期限を求められたときは話し合いを勧めています。話が進まなければ、総合労働相談コーナーに規程を持って相談します。無料で、予約は要りません。

今日やるのは、社宅規程の、退去の条を探すところまでです。手元になければ、総務か人事に見せてもらうよう頼みます。

頼めるのは退職日まで。退去日は頼めない

原因Bの道では、上司と総務に顔を合わせずに、辞めることだけを会社に届けます。ただ、この部屋の話には、代行が入れない所があります。箱ごとに分けておきます。

弁護士でない退職代行が会社に伝えられるのは、本人が決めた退職の意思と、①退職日までです。②部屋を出る日を延ばしてほしいという話し合いや、箱2の備品をどう扱うかの話し合いを、代わりにすることはできません。弁護士でない人が報酬を受けて法律の事務を扱うことは、弁護士法72条で禁じられています。弁護士会や労働委員会も、ここに気をつけるよう案内しています。

自分で伝える道と違うのは、上司と総務の顔を見ずに済むことだけです。箱2を返すこと、箱の横の書類を受け取ること、健康保険と年金を切り替えることは、頼んだあとも自分の手に残ります。

代行に払う額を調べたら、ここに書いておきます。(    円)。この額で伝えてもらえるのは、辞めることと退職日だけで、部屋を出る日の話は入りません。自分で退職届を出す道なら、この額はかかりません。自分で伝える道が基本で、代行は、上司と総務の顔を見ることがどうしてもできない人のための道です。

代行を使わない場合は、退職届に退去日と書類の送り先を添えて、自分で出します。上司に手渡さなくても、人事や総務に書面で出す方法があります。退職の申し出は会社に届けば効き目があるので、総務宛てに出してもかまいません。

原因B:箱2と送り先を決めてから、顔を合わせずに届ける

Bの人は、赴任を上司に言われて来ました。「赴任させてやったのに」と言われるのが分かっています。部屋も会社の管理で、総務にも顔を合わせたくない。辞めることと退職日を伝える、その一つだけを代行に頼みます。

  1. 頼む前に、五つを決めます。退職日。部屋を出る日(社宅規程の猶予の中で、自分が出る日)。鍵の返し方(郵送なら書留で総務宛てに、など)。書類の送り先(家族の家の住所)。箱2の中身(会社に返す物の一覧)。代行は決めてくれないので、四つの日付の表をここで埋めます。社宅規程は、辞める話をせずに、総務に見せてもらうよう頼めます。
  2. 代行が、退職の意思と退職日を会社に伝えます。代行がするのは、この一つです。
  3. 箱2を、決めた返し方で会社に戻します。鍵と備品が入った箱です。
  4. 箱の横の書類を、家族の家で受け取ります。離職票・源泉徴収票・退職証明書の受け取り方は、上の書類の表のとおりです。退職証明書が要るなら、ここで会社に請求します。
  5. 健康保険と年金を、戻る町で切り替えます。国民健康保険と国民年金は、住んでいる市区町村の窓口で、どちらも14日以内です。任意継続を選ぶなら、退職日の翌日から20日以内に申し出ます。家族の扶養に入るなら、家族の勤め先を通します(2026年10月時点)。
  6. 会社からの電話への対応を決めておきます。代行は「本人への連絡は控えてほしい」と頼むことはできますが、会社を縛る決まりではありません。電話が来ないとは言えないので、来たときに出るか、書面で返すかを先に決めます。

手が止まりやすいのは、会社が「退去日を早めてほしい」と言ってくる場面です。代行は、退去日の話し合いができません。だから頼む前に、規程の猶予の中で出る前提で②を決めておきます。会社の言う日と合わなければ、本人が規程を持って総合労働相談コーナーに聞きます。

今日やるのは、箱2に入れる物を一覧に書くところまでです。社宅の備品一覧があれば、それを写します。頼む前に決める五つのうち、ここが一番時間がかかります。

原因C:戻る日が決まるまで、期限つきで残る

Cの人は、辞める気持ちは固いのに、戻る日が決まりません。子どもの転校の手続き、家の部屋づくり、家族の側に済ませる準備があるからです。

残る期限は、家族と決める「戻る日」です。この日を決めないと、退職日も逆算できません。

  1. 家族と、戻る日を決めます。「そろそろ戻りたい」ではなく、「○月に戻りたい。そのために、そっちで何をいつまでに済ませる?」と聞きます。転校の手続きの期限、部屋の準備が終わる日を、家族の側から出してもらいます。
  2. 戻る日を期限にして、退職日を逆算します。戻る日より前に退職日を置き、退職日と戻る日の間を社宅規程の猶予で埋めます。四つの日付の表の①と②が、ここで決まります。
  3. 退職届を出す日を、手帳に書きます。退職日から、就業規則の申し出の期間をさかのぼった日です。その日まで上司には言いませんが、日付は決まっています。
  4. それまでに、箱1を少しずつ送ります。服も本も、今の部屋になくて困らない物から。退職届を出す日が来たときに、部屋が軽くなっています。

手が止まりやすいのは、家族の準備が延びる場面です。転校の手続きが来月にずれた、部屋がまだできていない。ここで退職届を出す日もずらすと、線がどこまでも延びます。だから、戻る日を決めるときに、家族と一つ決めておきます。「戻る日が延びても、退職届を出す日は変えない」。戻る日との間が空いたら、猶予の中で出る日を後ろにずらします。猶予を超えそうなら、原因Aと同じく規程を示して話し、進まなければ総合労働相談コーナーに聞きます。

今日やるのは、家族に「戻る日を決めたい」と電話するところまでです。日付は、電話の中で決まらなくてもかまいません。「決めたい」と言うことが一手です。

どの道でも、箱1の宛先は同じ

原因が一つに決まらなかった人は、どの箱を前にすると手が止まるかで選んでください。

道 選ぶのはこんなとき 最初に手をつける物
A:自分で伝える 上司に言える。知らなかったのは部屋を出る日だけ 社宅規程の退去の条
B:退職代行を使う 箱2を返す相手の顔を思うと止まる。上司とも総務とも、顔を合わせて話したくない 箱2に入れる物の一覧
C:今は残る(期限と条件つき) 箱1を送り始める日が、家族側の準備で決まらない。期限は家族と決めた戻る日 家族への電話

Bを選んでも、四つの日付の表は自分で埋めます。Cを選んでも、退職届を出す日は手帳に書きます。どの道を通っても、箱1に書く宛先は、家族の家です。

伝票の宛先の欄に

退職日の前の週末。Aの人も、Bの人も、Cの人も、ここに着きます。

部屋には、箱1が一つ残っています。最後の一箱です。伝票に、家族の家の住所を書きます。宛先の欄に書く住所は、三か月前から同じ住所です。変わったのは、その箱に日付が書いてあること、箱2の返す日が決まっていること、四つの日付が一枚の表になっていることです。

宛先の欄を見ています。「そろそろ戻りたい」が、送り状の上では、もう住所になっています。