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家族の安心

「自分の口で言え」と父。介護職1年目が代行のあとに父に言ったこと

約12分で読めます

代行に任せた後の手続き一覧を父親に自分の言葉で説明する介護職の息子

父に「自分の口で言え」と言われ、施設長には「人がいない」と三度。自分で伝える道と代行に頼む道を同じ項目で左右に並べ、何が違って何が同じかを見たうえで原因を決め、父に自分の言葉で説明する一文を持つ記事です。

介護施設で働いて1年目。実家の近くで一人暮らしをしているあなたは、父に「退職代行を使って辞めたい」と話しました。父の返事は「そんなものを使うな。自分の口で言え」。それきり、話は止まっています。施設長には「人がいない」と三度言われていて、自分の口で言える気がしない。父に逆らって代行を使うのか、父の言うとおり自分で言うのか。言えない理由を父に説明できないまま、どちらも選べずにいます。

この記事を読むと、「自分で伝える」と「代行に頼む」を同じ項目で左右に並べ、何が違って何が同じかを見たうえで、自分の原因を決められます。そして、どの道を選んでも、父に自分の言葉で説明する一文を持てます。

介護の現場で、契約の期間を決めて働いている人(契約職員、派遣など)は、辞めるときの決まりがこの記事と別です。ここでは、期間を決めずに雇われている人(いわゆる正社員)の場合を書きます。施設のシフトや夜勤の扱いは施設ごとに違うので、退職日までの勤務の組み方は、施設の決まりで確かめてください。法律や窓口の説明は2026年10月に確かめたもので、先々変わることがあります。

父が「自分の口で言え」と言った、その二つを並べてみる

父の言葉に反論できないのは、「自分で伝える」と「代行に頼む」で何が違い、何が同じかを、並べて見ていないからです。並べると、父が思っているほどの差がない行と、はっきり違う行が出てきます。

項目 自分で伝える 代行に頼む
最初の一言を誰が言うか 自分。口頭でも書面でも有効。施設長が受け取らなくても、法人の人事に郵送できる 代行の担当者。本人が決めた退職の意思を、施設に伝える
伝えられる中身 退職の意思と退職日。有給や退職日の調整の話も、自分でなら相談できる 本人が決めた退職の意思を伝えることだけ。給料・有給・退職日の条件を施設と話し合うことは、弁護士でない代行にはできない
伝えたあとに自分がやること 退職届の郵送(まだ出していなければ)、制服と鍵の返却、離職票と源泉徴収票の受け取り、健康保険と年金の切り替え 退職届の郵送、制服と鍵の返却、離職票と源泉徴収票の受け取り、健康保険と年金の切り替え
お金がかかるか かからない かかる(額は下の欄に自分で書く)
施設から直接連絡が来る可能性 ある ある。代行は「本人への連絡を控えてほしい」と伝えられるが、それはお願いで、施設を縛る決まりではない
父にどう言うか 「自分で出した」 「最初の一言だけ頼んだ。あとは全部自分でやった」

代行の費用:___円

三行目を見てください。「伝えたあとに自分がやること」は、左右で同じです。退職届の郵送も、制服と鍵の返却も、書類の受け取りも、保険と年金の切り替えも、代行に頼んでもやってくれるわけではありません。代行が代わるのは、一行目の「最初の一言」だけです。

父に言う一文は、この三行目から作ります。左の道でも右の道でも、「やったことの一覧」は同じだからです。

右の列は、そのまま「代行にできること・できないこと」

弁護士でない者が報酬を得て法律事務を扱うことは、弁護士法72条で禁じられています。退職代行が残業代、退職金、有給、退職日の条件を施設と話し合うと、この条文の問題になり得る、というのが東京の弁護士会の説明です。一方で、「退職したい」と伝える程度の代行なら、弁護士でない事業者でも対応できる、と労働委員会は説明しています。

もう一つ。施設側が「代行とは話さない」と連絡を拒む例があり、その場合は本人が改めて連絡する必要が生じる、と弁護士会は書いています。頼めば施設と一切やり取りせずに済む、とは限りません。

左の列の「最初の一言」は、施設長に言わなくてもいい

左の列も、見直してください。「自分の口で言え」を「施設長の前で言え」と読んでいませんか。退職の意思は、口頭でも書面でも有効で、施設の承認はいりません。施設長が受け取らなくても、法人の本社や人事に郵送できます。受け取ってもらえないときは、内容証明郵便で出す方法もある、と労働局が説明しています。配達証明を付ければ、届いた日付も残ります。どちらも郵便局の窓口で手続きします。「自分で伝える」は、施設長と顔を合わせて言うこと、とは限りません。

並べたあとで、三つの問い

表を見たうえで、次の三つの問いに答えてください。答えを書く欄を付けました。

問い あなたの答え 答えが示す原因
問い1:並べてみたら、左の列(自分で)でもできると分かりましたか。言い方と出し方を知らなかっただけですか はい→A
問い2:施設長と顔を合わせると言えず、電話にも出られませんか。最初の一言を自分で言う場面を、どうしても作れませんか はい→B
問い3:父に説明できないのは、辞めたい理由を自分でも一行で言えないからですか はい→C

三つの分け方は、研究や法律の分類ではなく、父に説明する言葉を決めるために、この記事が置いた整理です。問い1が「はい」なら原因はA。問い2が「はい」なら原因はB。問い3が「はい」なら原因はC。二つ以上「はい」になった人は、問い3を先に見てください。辞めたい理由が固まっていないまま出し方を決めても、父に話せないからです。問い3が「いいえ」で、問い1で「できる」と思っても、施設長を前にすると問い2が「はい」になる人は、問い2を優先します。

原因A:言い方と出し方を知って、自分で出す

表を見て、「左の列でもできる」と分かった人の道です。お金はかかりません。父の「自分の口で言え」に、そのまま応える形になります。

退職届、施設長、引き継ぎ、父の順で

まず、退職日を書いた退職届を作ります。期間を決めずに雇われている人は、申し入れた日から2週間がたてば雇用が終わる、と民法627条1項にあります。ただ、就業規則に「1か月前までに申し出る」のような決まりがあり、それがふつうの長さなら、その期間に合わせたほうが、あとでもめにくくなります。就業規則は職員が見られるようにしておくものなので、人事に「退職の項目を見たい」と頼んでください。退職届には、宛名(法人)、退職日、出す日、自分の名前を書きます。

次に、施設長に出します。受け取らなければ、法人の人事に郵送します。退職の意思は、届けば有効です。

そして、担当の利用者ごとの引き継ぎ資料を残します。引き継ぎは法律上の義務ではありません。ただ、2週間の予告を守り、できる範囲で引き継ぎ資料を残すのが、もめない現実的な線です。利用者の名前、その人の一日の流れ、気をつけること、家族への連絡の仕方。一人ずつ一枚にまとめます。

最後に、父に「自分で出した日」と、やったことの一覧を話します。

「人がいない」の三度目が来たら

ここで詰まるのは、施設長に出したときに「人がいない」の三度目を言われる所です。退職日を動かしてはいけません。「人がいない」は施設の事情で、あなたが解く問題ではありません。返す言葉は一つ。「退職日は変えません。その日までの引き継ぎ表を作ります」。

「新しい人が見つかるまで待て」と言われても、申し入れから2週間で雇用が終わる決まりがあると労働局は説明しています。ただ、この決まりを施設長に向けて使う前に、総合労働相談コーナーで自分の場合に当てはまるかを確かめてから使ってください。相談コーナーは無料で、予約はいりません。

今日やること

退職届の退職日を一つ決めて書くことです。日付を一つ、紙に書く。それだけです。

右の列を、もう一度

原因Bの人の道は「退職代行を使う」です。頼む前に、表の右の列をもう一度見てください。

代行にできるのは、本人が決めた退職の意思を伝えることまで。条件の話し合いは頼めません。自分で伝える場合との違いは、「最初の一言を誰が言うか」と「お金がかかるか」の二つだけで、伝えたあとに自分でやることは同じです。退職届の郵送、制服と鍵の返却、離職票と源泉徴収票の受け取り、健康保険と年金の切り替え。これらは、頼んでも自分でやります。

代行を使わない場合の代わりは、原因Aの「法人の人事に書面で出す」と「郵送」です。施設長の前に立たずに退職の意思を届ける方法は、代行の他にもあります。費用の欄に書いた額と、この二つの方法を並べてから、決めてください。

原因B:最初の一言だけ任せ、あとは自分でやって父に話す

施設長と顔を合わせると言えず、電話にも出られない。郵送も、送ったあとの電話が怖くてできない。最初の一言を自分で言う場面を、どうしても作れない。それなら、最初の一言だけを人に頼み、残りを自分でやる。それがこの道です。

頼む前に、三つ

一つ目は退職日。民法627条1項の2週間が下限で、就業規則の申出期間がふつうの長さなら、その日数で退職日を置きます。二つ目は、父にいつ話すか。頼む前に話すのか、伝えてもらったあとに話すのか。三つ目は、「頼むのは最初の一言だけ。残りは自分でやる」と自分で決めること。この三つ目が、父に話すときの土台になります。

伝えてもらったあと、父に見せる一覧

表の三行目を、やった順に紙に書いていきます。介護の現場なので、返す物から始めます。

  • 制服と鍵を返す。郵送するか、人事に預けるかを決めて、送った日を控えておきます。
  • 退職届を法人に郵送する。
  • 離職票と源泉徴収票をもらう。離職票を施設が出してこないときは、ハローワークに申し出れば本人の請求で手続きが進みます。源泉徴収票は、国税庁の案内では、中途退職の場合は「退職後1月」が交付の期限です。
  • 健康保険と年金の手続き。次の勤め先にすぐ入らない場合、健康保険は任意継続(退職日の翌日から20日以内に申し出)、国民健康保険(市区町村の窓口、14日以内)、家族の扶養のどれかを選びます。年金は国民年金への切り替えを、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で届け出ます。額は窓口で試算してもらい、比べてから決めてください。
  • 施設から直接連絡が来たら、「退職の意思は変わりません。手続きの話は書面でお願いします」と返します。

父に見せるのは、この紙です。

父に「逃げた」と言われそうで、止まったら

この道で詰まるのは、父に「逃げた」と言われそうで、話す手が止まる所です。

次の手は、表の三行目を見せることです。「伝えたあとに自分がやること」の行は、左右で同じ。あなたは、制服と鍵を返し、退職届を送り、書類を受け取り、保険と年金を切り替えた。父に言う一文は「最初の一言だけ頼んだ。あとは全部自分でやった」。父がどう返すかは分かりませんが、あなたの側には、やったことの紙があります。

今日やること

父に話す日を一つ決めることです。代行に頼む日より、あとの日にします。「伝えてもらった日の翌週」のように、紙に書きます。

原因C:理由を一行にするまで、2週間だけ残る

父に説明できないのは、辞めたい理由を、自分でも一行で言えないからだ。そう気づいた人の道です。ずっと残るのではありません。期限は2週間。条件は、その間に「辞めたいと思った場面」を記録すること。

夜勤明けに、スマホのメモに一行

今日から2週間後の日を紙に書きます。その日まで、辞めたいと思った場面を、日付つきで記録します。介護の勤務は日によって時間が違うので、紙より、スマホのメモに一行のほうが続きます。夜勤明けなら、帰る前に一行。日勤なら、着替えたときに一行。「○月○日、夜勤明けに『人がいない』と言われた」「○月○日、休みの希望を出したら『人がいない』で返された」。感想は書かず、場面だけ。

2週間後の日に、メモを上から読んで、辞めたい理由を一行で書きます。「人がいない」ではなく、「人がいないことを自分のせいにされる職場では続けられない」「仕事は好きだが、この施設では体が持たない」のように、メモの中から拾える一行です。

書けたら、AかBを決めて、父に話します。書けなければ、「いまは辞めない。理由はこれ」と、残る理由を父に話します。どちらの場合も、残っている間に、担当の利用者ごとの引き継ぎ資料を書き始めてください。辞めるときに役立ちますし、辞めない場合も、仕事の整理になります。

メモが「人がいない」ばかりになったら

詰まるのは、メモが「人がいない」の話ばかりになる所です。人手は施設の決まりごとで、あなたが変えられることではありません。メモを見て、「これは自分では変えられない」と分かった時点で、2週間を待たずにAかBへ進んでください。その時点で、理由の一行はもう書けているはずです。たとえば「自分では変えられないことを、自分のせいにされる職場では続けられない」のように。

今日やること

辞めたいと思った今日の場面を、一行書くことです。今日なければ、いちばん最近の場面を、その日付で。

父に言う一文(三つの文例)

父に話す一文を三つ用意しました。表の三行目「伝えたあとに自分がやること」を見せながら話す前提です。

自分で伝えた人(原因A)
「自分で出した。○日に退職届を出して、利用者ごとの引き継ぎ表を作って、書類も保険も自分で手続きした。これがやったこと」

代行に頼んだ人(原因B)
「最初の一言だけ、人に頼んだ。施設長の前で言える気がしなかったから。でも、制服と鍵を返すのも、退職届を送るのも、書類も保険も年金も、全部自分でやった。これがやったこと」

期限を決めて残る人(原因C)
「2週間数えて、辞めたい理由を一行にしてから決める。その間、辞めたいと思った場面を記録してる。決めたら、やったことを全部話す」

父が何と返すかは、分かりません。ただ、「そんなものを使うな」と言われてそれきりになっていた話は、この一文で、あなたの側から再開します。

辞め方がどれでも、父には自分の言葉で報告する

この記事の終わりは、父に報告する場面です。

原因Aの人は「自分で出した」と。原因Bの人は「最初の一言だけ頼んで、あとは自分でやった」と。原因Cの人は「2週間数えて、こう決めた」と。どの道を通った人も、表の三行目を見せながら、自分の言葉で話します。

父の「自分の口で言え」は、施設長に言うことだと思っていたかもしれません。でも、この記事を通ってきたあなたが、最後に自分の口で言う相手は、父です。やったことの一覧を手に持って、「これが、自分でやったこと」と言う。その場面に、三つの道のどれからでも着きます。