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家族の安心

家にお金を入れる1年目。辞めた月も同じ額を渡せた、実家の食卓

約12分で読めます

辞めた月も実家で生活費の封筒を親に渡す新入社員

毎月封筒で家にお金を入れている1年目。辞めた月の封筒が渡せなくなるのが怖くて言えない人へ。辞める月の線に入る日・出る日・渡す日を置き、封筒の出どころを決めてから、自分で伝える・代行に頼む・足りる月まで残るを選びます。

実家暮らしの入社1年目。入社してから毎月、給料日の翌日に、決まった額を封筒に入れて親に渡しています。会社を辞めたい。けれど、辞めた月に封筒が渡せなくなると、親に辞めたことが分かり、「続かなかった」と思われる気がして、言い出せません。言い出せないから、辞める日も決められません。

この記事を読むと、辞める月の1本の線に「入る日」「出る日」「渡す日」を置いて、辞めた月の封筒がどこから出るかを決められます。決まったら、自分で伝える・代行に頼む・足りる月まで残る、の3つから選べます。

封筒の話は、お金の話であって、気持ちの話ではない

「続かなかったと思われる」が怖くて言えない、と自分では思っているかもしれません。けれど、この記事では、止まっている場所を別の所に置きます。辞めた月の封筒の額を、どこから出すかを決めていないことです。

出どころが決まっていれば、親に言う文は短くなります。「来月で辞める。来月の封筒はいつもの額で渡せる」。出どころが決まっていないと、「辞めたい」としか言えず、その先が続きません。

だからこの記事では、気持ちの整理より先に、1本の線を引きます。

辞める月の線を引く

紙を横に使い、1本の線を引きます。右端が「辞める日」です。そこから左へ戻しながら、次のものを置いていきます。

線に置くもの

置くもの 書き方 根拠(2026年10月時点)
辞める日 右端。まだ決まっていなければ仮の日 期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終わる(民法627条1項)。就業規則の期間が常識的な長さなら、それに合わせる
最後の給料日 辞める日より前か後かを確かめて置く 退職後に請求すれば、会社は7日以内に賃金を払う(労働基準法23条1項)
封筒を渡す日 いつもの日(給料日の翌日) 読者の決まり
住民税がまとめて引かれる月か 辞める日が1月1日〜4月30日なら「まとめて引かれる」と書く 1〜4月に辞めると、残りが5月31日までに払われる給料や退職金からまとめて引かれる。6月1日〜12月31日に辞めると、自分で納めるか、申し出てまとめて引いてもらうかを選ぶ
健康保険と年金の届け出の期限と、払い始める月 届け出の期限を辞める日の右に置く。保険料がいつから要るかは、市区町村の窓口と健康保険の運営者で確かめて、その月に置く 国民健康保険と国民年金の届け出は退職日の翌日から14日以内、任意継続は20日以内
失業の給付が入り始める時期 線の右の外に置く(辞めた月には間に合わない) 受給手続きの日から7日の待期のあと、退職日が2025年4月1日以降の自己都合は原則1か月の給付制限がある

制度の日数と区分は2026年10月時点のもので、変わることがあります。市区町村の窓口・ハローワークで、自分の場合を確かめてください。

線の下に、封筒の額と出どころを書く

線の下に、次の3行を書きます。

  • 封筒の額:(    )円
  • 最後の給料(手取り):(    )円
  • 貯え:(    )円

辞めた月の封筒は、「最後の給料」「貯え」「失業の給付」のどれから出すか。この記事では、失業の給付は辞めた月には間に合わない前提で線を引きます。待期と給付制限があるのに加え、1年目の人は、受けられる条件(原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上)に届いていないことがあります。届いているかはハローワークが判断するので、線には入れません。

残るのは、最後の給料と貯えです。この2つで、辞めた月の封筒の額に届くか。線を引くと、それが数字で見えます。

最後の給料が減る月がある

1月1日から4月30日の間に辞めると、残りの住民税が最後の給料からまとめて引かれます。その月は、手取りがいつもより減ります。線の「最後の給料」の欄に、いつもの手取りをそのまま書かず、減る可能性があることを書き添えてください。いくら減るかは人によってちがうので、この記事では額を書きません。会社の給与の担当に、「最後の給料から住民税がまとめて引かれるか」を聞けば分かります。

封筒を「約束」にしない

封筒の額を減らさないことを、親との約束にはしません。線を引いて出てくるのは、「渡せる月数」です。約束ではなく、数字です。数字なら、親に見せられます。

線を引いたら、3つの問い

線を引いたら、次の3つの問いで原因を分けます。線の数字と上司の顔の2つで分けるのは、この記事での整理です。

問い①:線を引いたら、辞めた月の封筒は、最後の給料と貯えで足りるか

足りるなら、問い②へ。足りないなら、問い③へ。

問い②:上司に、辞めると自分の口で言いに行けるか

行けないなら、理由はどちらでしょうか。親の顔が浮かんで言葉が止まるのか。それとも、上司と顔を合わせること自体ができず、会社に行く朝がつらくなっているのか。前の人は、線を親に見せるところから始めます。後の人は、伝える手段を変える必要があります。

問い③:足りないなら、足りる月はいつか

封筒の額に、辞めた月から次の給料が入るまでの月数をかけます。その額に貯えが届く月が、足りる月です。

問いの答え 原因 道
①足りる、②行ける(止まるのは親の顔が浮かぶから) A 自分で伝える
①足りる、②上司と顔を合わせること自体ができない B 退職代行を使う
①足りない C 足りる月まで残る(期限と条件つき)

原因1つに、道は1つです。

原因A:線を引いたら足りる。伝える相手も決まっている

Aの人は、辞めた月の封筒を最後の給料と貯えで出せます。辞めたい理由は会社の側にあり、伝える相手も上司と決まっています。道は、自分で伝える、です。

手順

  1. 線を親に見せて、一文を言います。

「来月で辞める。来月の封筒はいつもの額で渡せる。その先は○か月分ある」

言うのは、額と月数だけです。辞める理由の説明は、聞かれたら答えます。

  1. 辞める日を決めます。2週間が法律上の最低線で、就業規則に「1か月前」などの決まりがあり、それが常識的な長さなら、それに合わせます。労働局も、まず就業規則に沿って申し出ることをすすめています。
  2. 退職届に辞める日を書いて、上司に渡します。口で伝えても退職の意思表示は有効ですが、行きちがいを防ぐため書面が望ましい、というのが労働局の説明です。
  3. 辞めた月に、保険・年金・住民税の手続きの期限を、線に書き足します。任意継続なら退職日の翌日から20日以内、国民健康保険と国民年金の届け出は14日以内。住民税は、6〜12月に辞めた人は自分で納めるか、申し出てまとめて引いてもらうかを選びます。

詰まる所と次の手

親に「次は決まっているのか」と聞かれることがあります。ここで黙ると、線を見せた意味がなくなります。

返すのは、線の数字です。

「次はまだ。貯えで○か月は封筒を渡せる。○月までに決める」

「貯えで持つ月数」と「働きながら探す期限」。この2つを言えば、親が聞きたいことの答えになります。親がどう思うかは、この記事では書きません。言える一文を持つことまでが、この記事の範囲です。

代行は、封筒の額を出してくれる所ではない

Bの道に入る前に、線の上で、代行に何ができて何ができないかを確かめます。

線に置いた「入る日」「出る日」「渡す日」のうち、代行が関わるのは1か所だけです。辞める日を会社に伝える、その1点です。最後の給料がいつ入るか、住民税がいくら引かれるか、封筒の額がどこから出るか。線の残りの部分は、代行に頼んでも動きません。

それどころか、弁護士でない代行は、お金の話を会社とすること自体ができません。残業代や退職金、退職日の調整、有給休暇の扱いをあなたの代わりに会社と話し合うのは、弁護士でない人が報酬を受けてやると弁護士法72条の問題になります。弁護士会と労働委員会が、この点に注意を呼びかけています。線のお金の部分で会社と話す必要が出たら、それは自分で進めるか、公的な相談先(総合労働相談コーナーなど)に持ち込みます。

自分で伝える場合とくらべて変わるのは、上司の前に立たない、という点だけです。書類の受け取り、健康保険と年金の切り替え、住民税の手続き、そして親に線を見せることは、自分でやります。

費用は、見たサービスごとにちがいます。この記事では額を書きません。線の下に、もう1行足してください。

自分で見た額:(    )円

この額は、貯えから出ます。つまり、線の下の「貯え」が、その分だけ減ります。封筒を渡せる月数も、減ります。退職届を書面で渡すか、郵便局から会社あてに送る道なら、線の「貯え」は減りません。郵便局には、送った文書の内容と、届いた事実を証明する扱いがあります。退職の意思は、会社に届いたときに効力が生じ、会社の承認は要りません。

原因B:線は引けた。けれど上司と顔を合わせると言えない

Bの人は、線を引いて、封筒が足りることは分かっています。けれど上司と顔を合わせると言えず、会社に行く朝がつらくなっています。伝えられないまま、親にも言えない月が続いています。道は、退職代行を使う、です。

頼む前に決めること

  1. 辞める日。2週間が最低線。就業規則の期間が常識的な長さなら、それに合わせます。
  2. 貸与品の返し方。社員証、鍵、パソコン、制服など。郵便局から送るか、だれかに預けるか。
  3. 親に、先に線を見せること。代行に頼む前に、です。

3つ目が、この記事でいちばん大事な点です。代行に頼んだあとに親が知ると、「隠していた」の形になります。頼む前に線を見せ、「来月で辞める。封筒はいつもの額で渡せる」と言ってから、頼みます。

頼んだあとに、線に書き足すこと

代行が会社に「辞める」と伝えたあと、線の右側に、自分でやることを書き足します。この記事に固有の2つを先に書きます。

線に書き足すこと 中身(2026年10月時点)
住民税 1〜4月に辞めた人は、最後の給料からまとめて引かれる。6〜12月に辞めた人は、自分で納めるか、申し出てまとめて引いてもらう。どちらかを決めて線に書く
会社から実家に電話が来たときの、親の答え 先に決めておく(次の項)

そのほかの手続きは、ほかの退職と同じです。退職届は、代行の案内に従って、書面を郵便局から自分で送ります。離職票は、会社が手続きをしない場合、ハローワークに申し出れば本人の請求で手続きが進みます。源泉徴収票は、途中で退職した場合、交付の期限が退職後1月です。健康保険は、任意継続なら退職日の翌日から20日以内、国民健康保険なら14日以内に届け出。親の健康保険の被扶養者に入れるかは、収入の基準と保険の運営者の認定によるので、入れると決めずに確かめます。国民年金は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口へ。これらの期限も、線の右側に日付で書きます。

詰まる所と次の手

「会社が家に電話してきたらどうする」。実家暮らしの人が、代行の手前で止まる所です。

正直に書きます。会社から家族へ連絡することを止める決まりは、公的な説明では見つかっていません。許す決まりも、禁じる決まりも見つかっていません。だから、「電話は来ない」とは書けません。

次の手は、親の答えを先に決めておくことです。

「辞めたことは本当です」

親にはこの一文だけを答えてもらいます。辞める理由、次の仕事、本人の居場所は答えません。電話が来るかどうかは分かりませんが、来たときに親が言う一文は、先に決めておけます。

原因C:線を引いたら、辞めた月の封筒が足りない

Cの人は、線を引いて、辞めた月の封筒が最後の給料と貯えで足りないと分かりました。貯えが1か月分もない。この人の道は、いま辞めることではなく、足りる月まで残る、です。ただし、期限と条件をつけて残ります。

手順

  1. 必要な額を出します。

封筒の額 × (辞めた月から、次の給料が入るまでの月数) = 必要な額

次の仕事が決まっていない人は、月数を仮に置きます。たとえば3か月と置けば、封筒の額の3倍です。この数は、自分の見込みで決めます。この記事では決めません。

  1. 貯えが必要な額に届く月を、期限にします。

(必要な額 − いまの貯え) ÷ 毎月増やせる額 = 届くまでの月数(割り切れなければ切り上げ)

出た月数を、今の月に足した月が期限です。たとえば必要な額が封筒3か月分で、いまの貯えが封筒1か月分なら、足りないのは封筒2か月分。毎月、封筒の半分の額を貯えに回せるなら、2÷0.5で4か月後が期限です。

  1. 期限の月を、手帳に書きます。
  2. 期限までは、働きながら次を探します。届いた月に、Aの手順で伝えます。

詰まる所と次の手

住民税です。期限の月が1〜4月にかかると、最後の給料から残りの住民税がまとめて引かれて、手取りが減ります。線の「最後の給料」が、思っていた額より少なくなります。

次の手は2つのうちどちらかです。辞める月を5月以降にずらすか、減る分を貯えに足すか。どちらにするかは、期限の月までに決めます。いくら減るかは、会社の給与の担当に聞けば分かります。

封筒の額で、道を選ぶ

道を選ぶ基準は、線の下に書いた3つの数字です。

封筒が足りて、上司に言いに行ける人は、A。費用はかからず、線の「貯え」も減りません。

封筒は足りるが、上司と顔を合わせることができない人は、B。代行の費用が貯えから出ることを、線の上で確かめてから選びます。封筒の額まで何とかしてほしい人には、Bは合いません。代行にはできないからです。

封筒が足りない人は、C。足りる月が期限になります。どう計算しても足りる月が来ない人は、封筒の額そのものを親と話し直す必要があり、それはこの記事の範囲の外です。

費用がかからない基本は、自分で伝える道です。Bは、線は自分で引けるのに上司の前に立てない人が、伝える手段だけを替える道です。

今日、線に置くもの

Aの人:最後の給料日と、封筒を渡す日を、線に置きます。日付が2つ並ぶだけで、線は線になります。

Bの人:親に「来月、話がある」とだけ言います。中身は言いません。線を見せる日を、先に決めるためです。

Cの人:封筒の額と、貯えの額を、線の下に書きます。2つの数字が並べば、足りる月が計算できます。

辞めた月の、いつもの日

辞めた月の、いつもの日。読者は実家の食卓で、いつもと同じ額の封筒を親に渡しています。

Aの人は、退職届を出した日に、親へ線を見せてあります。封筒の中身は、最後の給料から出した額です。

Bの人は、代行に頼む前の日に、線を見せてあります。会社から電話が来たかどうかは分かりませんが、来たときの親の答えは決めてありました。

Cの人は、期限の月に貯えが届いてから、辞める日を伝えました。封筒の中身は、貯えから出した額です。

どの道でも、封筒の中身は、線を引いて出した額です。「続かなかった」と思われるかどうかは、この記事では分かりません。分かるのは、封筒が、いつもの日に、いつもの額で渡されたことだけです。