仕事を辞めたい。でも、すぐには動けない。そういうとき、選べるのは「我慢して続ける」か「辞める」かの2つに見えます。決められないのは、今の職場が自分の工夫で変えられる職場なのかどうかを、まだ確かめていないからです。
この記事では、担当している仕事の中に、自分の判断で変えられる所があるかを、表に書いて確かめます。変えられる所があるのか、変え方を知らないだけなのか、決める権限がなく提案も通らないのか。どれなのかで、残る・学ぶ・移るのどれに進むかが変わります。
読み終えると、作業・人との関係・捉え方の3つについて「自分で変えられるか」を書いた表が手元に残り、残る理由か、動く理由のどちらかを自分の言葉で言えます。
この記事で渡すもの
- ジョブ・クラフティングの考え方と、研究で言われていること
- 今の状態を書く4つの項目
- 自分で変えられる所があるかを確かめる表と、残る・学ぶ・移るの選び方

先に確かめること|余力が少ない人は、相談が先
体調と余力が落ちている人は、仕事を作り変えるより先に、休むことと相談することを優先してください。職場のトラブルについては各地の総合労働相談コーナー、体調については医療機関や、厚生労働省の「こころの耳」に載っている相談窓口が使えます。
ジョブ・クラフティングとは何か
ジョブ・クラフティングは、働く人が自分の仕事の範囲や関わり方を、自分から変えていくことを指します。レズネスキーとダットンが2001年の論文で示した考え方で、変える対象として、仕事の作業そのもの、仕事で関わる人との関係、仕事の捉え方の3つが挙げられています。論文では、病院の清掃を担当する人たちの中に、自分の仕事を患者の回復を支える役割として捉え、決められた範囲を超えて患者や来院者に関わっていた人たちがいた例が紹介されています。
その後、ジョブ・クラフティングと仕事への意欲などとの関係を調べた研究が多く行われています。ただし、効果の大きさは職種や職場の条件によって違い、誰にでも同じ結果が出るわけではありません。
この記事の題にある「仕事の10%」「2か月」という数字は、研究で示された値ではありません。変える範囲は小さくてよいこと、辞めるかどうかを急いで決めなくてよいことを表すために、CareerPivotが置いた目安です。
今の状態を4つの項目で書く
次の4つに、それぞれ10点満点で点数を付け、理由を一言添えます。
| 項目 | 自分への問い |
|---|---|
| 自分で決められる範囲 | 仕事の進め方を、自分で選べているか |
| 手ごたえ | 難しすぎず、簡単すぎない仕事があるか |
| 人との関係 | 気にかけてもらえ、助け合えているか |
| 体調と余力 | 睡眠、疲れ、休日の過ごし方に無理がないか |
最初の3つは、デシとライアンの自己決定理論で、人の意欲に関わる基本的な欲求として挙げられている自律性・有能感・関係性を、振り返り用に言い換えたものです。点数は診断ではありません。いちばん低い項目を1つ選ぶために使います。
4つめの「体調と余力」の点数が低い人は、最初に書いたとおり、休むことと相談を先にしてください。
変えられる3つの場所と、自分だけで変えてはいけないもの
| 変える場所 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 作業 | 担当する作業の進め方や順番を変える。小さな役割を足す、または減らす | 記録を取るだけの役割に、要点をまとめて共有する作業を足す。かわりに、重複している確認を減らす |
| 人との関係 | 誰と組むか、誰に聞くかを変える | 学びたい力を持つ同僚に、進め方を聞く機会を作る |
| 捉え方 | 同じ作業の目的を、別の角度から見る | 入力作業を、「次の人が迷わないための準備」として捉える |
変えるのは、自分の担当の中で、自分の判断で変えられる範囲に限ります。次のものは、自分だけの判断で変えません。
- 法令や社内の規程で、手順が決められている業務
- 安全に関わる業務
- 顧客や取引先との取り決めに関わること
- 自分に決める権限がないこと
変えたいことがこれらに当たる場合は、上司に提案する形を取ります。また、作業を足すときは、減らすものを合わせて決めます。量だけが増えると、負担が大きくなるだけです。
変えられる所が自分の担当の中にあるかを、今日確かめる
次の表を紙に写し、右の列に「自分で変えられる」「上司に提案すれば通りそう」「決める権限がなく、提案も通らない」のどれかを書きます。
| 変える場所 | 自分の担当での例を1つ書く | どれに当たるか |
|---|---|---|
| 作業(進め方や順番、小さな役割を足す・減らす) | ||
| 人との関係(誰と組むか、誰に聞くか) | ||
| 捉え方(同じ作業の目的を、別の角度から見る) |
書けたら、次の3つに答えます。この分け方は、この記事での整理です。研究で決まった見分け方ではありません。
- 3つの場所のうち、「自分で変えられる」と書けた所が1つでもありますか。→ あれば原因A(変えられる所がある)
- 変えたい所はあるのに、やり方や知識が足りなくて手が出ない所がありますか。→ あれば原因B(やり方や知識が足りない)
- 3つとも「決める権限がなく、提案も通らない」でしたか。→ そうなら原因C(権限がなく、提案も通らない)
入社して間もない時期に任される範囲が狭いのは、一時的なことが多いです。経験を重ねても、任される範囲も支援も増えない場合は、職場の仕組みの側に理由がある見込みが高くなります。この2つは分けて考えます。
原因ごとの進め方
原因A:変えられる所がある人
4つの項目のうち、いちばん点数が低かった項目に合う場所を、作業・人との関係・捉え方から1つ選び、1つだけ変えます。忙しすぎて余裕がない人は、何かを足すのではなく、減らすことから始めます。まだ何も変えたことがない人は、連絡を確かめる時間を変える、といった小さなことから始めます。「上司に提案すれば通りそう」と書いた所は、上司に提案する形を取ります。
詰まりやすいのは、変えようとして、かえって忙しくなることです。足した分だけ、減らすものを決めてください。先に減らすことから始めると、進めやすくなります。
原因B:やり方や知識が足りない人
変えたい作業について、「知らないから進められない」ことを1つ言葉にします。学ぶ先は1つではありません。学びたい力を持つ同僚に、進め方を聞く機会を作ることも、その1つです。
詰まりやすいのは、何を学ぶかが広すぎて決まらないことです。その場合は、学ぶものを作業の名前まで細かくします。
原因C:決める権限がなく、提案も通らない人
変えようと提案しても認められなかったなら、工夫する余地が小さい職場だと分かったことになります。これは、転職を考える根拠になります。進め方は、今の職場で変えられなかった所を、移る先に求める条件に直すことです。
詰まりやすいのは、職場の仕組みではなく、上司ひとりが理由で止まっている場合です。提案が通らない理由が上司にあり、上司の機嫌で仕事が止まっているなら、あと何年いるかを決めるで、止まった仕事を3つの箱に分けて数えてください。
現状維持・資格・転職のどれを選ぶか
| 原因 | 選ぶ道 | 選ぶ基準 | 先にすること |
|---|---|---|---|
| A:変えられる所がある | 現状維持 | 「自分で変えられる」と書けた所が1つ以上ある | 足すものを決めたら、減らすものも1つ決める |
| B:やり方や知識が足りない | 資格(学ぶ) | 変えたい作業で、知らないために進められないことを1つ言える | 学ぶ前に、その作業の名前まで細かく書く |
| C:権限がなく、提案も通らない | 転職 | 3つとも変えられず、上司への提案も通らなかった | まだ一度も提案していないなら、1つだけ提案してから決める |
どの道が上ということはありません。残ると決めた人には残る理由が、移ると決めた人には「こういう工夫を考えたが、ここは変えられなかった」という説明が残ります。
選んだ先の今日の一手
- 現状維持を選んだ人:「自分で変えられる」と書いた所から1つ選び、何をどう変えるかを1行で書きます。足す作業がある人は、その下に、減らす作業を1つ書きます。
- 資格(学ぶ)を選んだ人:知らないために進められなかったことを1行で書きます。「表計算」のような広い言葉ではなく、「毎月の集計表を関数で作る」のように作業の名前で書きます。次に、その知識が求人で求められているか、試験を行う団体の案内に載っているかを1か所で確かめ、足りない知識を1つに決めます。学び終えるまでの週数は「必要な時間の合計 ÷ 1週間に使える時間」、費用は実際に払う金額の合計で、式にして書き出します。何を学ぶかを求人から決めたい人は、『何を勉強すればいいかは、求人3〜5件の応募条件から決める』で、応募条件を4つに分けて、学ぶ1つを選べます。
- 転職を選んだ人:移る先に求める条件を1行で書きます。たとえば「担当者が、進め方を自分で決められる範囲がある」。条件は、今日書いた表の「決める権限がない」と書いた所を裏返すと作れます。条件を書けたら、その条件が満たされなければ動く、という線を決めます。決め方は『友人の転職の決め手を聞いた。自分に決め手がないとき、作る基準』で、動く条件と残る条件を一文ずつ書いて決められます。
よくある質問
上司が話を聞いてくれない職場でも、できますか
自分の判断で変えられる範囲のことであれば、できます。まわりの人に仕事の感想を聞く、手伝いを申し出る、といったことは、上司の許可がなくても始められます。
結局、転職しないほうがよいという話ですか
そうではありません。確かめてから決める、という順番の話です。変えられないと分かったうえで動けば、次の職場で何を確かめればよいかが分かります。
出典・相談先・この記事の前提
- Amy Wrzesniewski, Jane E. Dutton (2001) “Crafting a Job: Revisioning Employees as Active Crafters of Their Work” Academy of Management Review 26(2), 179–201.
- Edward L. Deci, Richard M. Ryan (2000) “The “What” and “Why” of Goal Pursuits: Human Needs and the Self-Determination of Behavior” Psychological Inquiry 11(4), 227–268.
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(2026年10月11日確認)
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」(2026年10月11日確認)
- 題にある「10%」「2か月」という区切り、4つの項目の点数付け、原因A・B・Cの分け方は、CareerPivotが整理した方法です。研究で示された基準ではありません。