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職場での居場所

天職は「探す」ものか「育つ」ものか|好き・得意・意味・裁量・生活条件を分けて、1つだけ試す

約9分で読めます

小さな実践と成果を積み重ねるうちに、得意な仕事が植物のように育つ

天職を見つけてから動く必要はありません。天職・情熱・ジョブ・クラフティングの違いを整理し、いまの仕事を5つの面に分けて、増やしたい要素を1つだけ試す方法をまとめました。

「好きなことを仕事にしなさい」と言われて、好きなことが特にない人は困ります。好きなことを仕事にした人が苦しくなることもあります。天職は探して見つけるものなのか、続けるうちに育つものなのか。これは人や仕事によって違い、どちらか一方が正しいとは言えません。確かなのは、天職を見つけてからでないと動けない、と考える必要はないことです。この記事では、今の仕事を好き・得意・意味・裁量・生活条件の5つの面に分け、欠けている面に合わせて、残る・学ぶ・移るのどれに進むかを選びます。

この記事で渡すもの

  • 天職・情熱・ジョブ・クラフティングという3つの考え方の違い
  • 仕事を5つの面に分けて見る表
  • 好きな要素を、一部だけで試す方法
  • 欠けている面ごとの、現状維持・資格・転職の選び方と、今日の一手
日々の小さな工夫を通じて得意な仕事が育つことを表す植物

似ているが別の3つの考え方

仕事と「好き」の関係については、似た言葉がいくつも使われます。意味が違うので、分けておきます。

考え方 内容 もとになった研究
天職(コーリング) 仕事を、お金や昇進のためだけでなく、それ自体に意味のあるものとして捉える見方 レズネスキーら(1997年)は、人が自分の仕事を「労働(ジョブ)」「キャリア」「天職(コーリング)」のどれとして捉えているかを調べました
情熱 ある活動を好み、大切に思い、時間と力を注ぐこと ヴァレランドら(2003年)は、情熱を、生活と調和する「調和的な情熱」と、やらずにいられない「強迫的な情熱」に分けました
ジョブ・クラフティング 働く人が、自分の仕事の範囲や捉え方を、自分から変えていくこと レズネスキーとダットン(2001年)

これらは、同じことを別の言葉で言っているのではありません。天職は仕事の捉え方、情熱は活動への関わり方、ジョブ・クラフティングは仕事を変える行動です。

ヴァレランドらの区別は、好きなことを仕事にして苦しくなる場面を考える手がかりになります。趣味だったときは自分の意思で取り組めていたものが、締め切りや収入の条件が加わることで、「やりたい」から「やらなければ」に変わることがあります。その場合、足りないのは好きの量ではなく、関わり方が変わったのだと考えられます。

ただし、これらの研究の結果は、すべての人に同じように当てはまるわけではありません。「天職は必ず育つ」「好きを仕事にすると必ず苦しくなる」といった言い方は、どちらも言いすぎです。

「天職だから」と耐えてはいけないこと

「好きな仕事だから」「天職だから」という理由が、無理を続ける根拠にされることがあります。次のことは、仕事への思い入れとは関係なく、見直すべきことです。

  • 長時間の労働が続き、休めない
  • 働きに見合わない低い報酬や、支払われない残業
  • ハラスメントや、安全が守られない環境
  • 体調を崩しても休ませてもらえない

打ち込める仕事ほど、休むことを後回しにしやすいものです。休憩と睡眠の時間を先に予定に入れる、仕事の成果と自分の価値を同じものとして扱わない、働きすぎを指摘してくれる人を持つ、といった備えを、消耗する前に用意しておきます。

すでに心身の負担が大きい場合は、働き方を見直す前に、休むことと、医療機関などへの相談を優先してください。労働条件についての疑問は、各地の総合労働相談コーナーに相談できます。

好き・得意・意味・裁量・生活条件を、別々に見る

「この仕事は天職か」と1つの問いで考えると、答えが出にくくなります。いまの仕事を、5つの面に分けて見ます。

面 自分への問い 書く欄
好き 作業の中に、時間を忘れるものがあるか
得意 人より楽にできること、頼まれることは何か
意味 この仕事が、誰の役に立っていると感じるか
裁量 進め方や順番を、自分で決められる範囲があるか
生活条件 収入、時間、勤務地、休みは、生活を続けられる水準か

5つすべてが満たされている仕事は、多くありません。いくつかが満たされていて、いくつかが欠けているのが普通です。

大切なのは、5つを混ぜないことです。「好きではないから、この仕事は合わない」と考える前に、得意や意味、裁量の面がどうなっているかを見ます。逆に、「好きだから」という理由で、生活条件の欠けを見ないことにしないでください。

デシとライアンの自己決定理論では、自分で決めている感覚、できるという手ごたえ、人とのつながりの3つが、意欲に関わる基本的な欲求とされています。上の表の裁量・得意・意味は、これらと重なるところがあります。

好きな要素を、仕事の一部だけで試す

好きなことを仕事にする、と聞くと、仕事のすべてを好きなことに置き換える形を思い浮かべやすいものです。しかし、一気に置き換えると、収入が不安定になったり、好きだったものが義務に変わったりすることがあります。

そのかわりに、5つの面のうち、いま増やしたいものを1つ選び、仕事の一部だけで試します。

増やしたい面 試すことの例
好き 人に説明するのが好きなら、手順をまとめて共有する作業を1つ引き受ける
得意 頼まれることが多い作業を、手順として残し、担当として認めてもらう
意味 自分の仕事を受け取る相手に、どう役立っているかを1回聞く
裁量 進め方を任されている作業を1つ選び、自分のやり方に変えてみる

あわせて、1日の終わりに、その日いちばん集中していた場面を1行だけ書きます。数週間たまると、自分が力を出しやすい条件に共通点が見えてくることがあります。

仕事で試す余地がない場合は、仕事の外で試してもかまいません。1つの仕事で5つの面すべてを満たす必要はありません。本業で満たせている面を確かめ、足りない面を別の活動で補う考え方もあります。

欠けている面ごとに、現状維持・資格・転職から選ぶ

5つの面を書いたら、欠けている面に合わせて、進む道を選びます。この分け方は、CareerPivotが整理した考え方です。研究で確かめられたものではありません。

  • 好きや意味が欠けている場合。現状維持が合います。今の担当の中で、前の節の表の1行を試して、増やします。
  • 得意(手ごたえ)が欠けている場合。資格(学ぶ)が合います。手ごたえを持てない作業に必要な知識を学び、できることを増やします。
  • 裁量や生活条件が欠けていて、会社の決まりで決まっている場合。転職が合います。試しても変わらない条件は、職場を替えて満たす道になります。

生活条件の欠けが大きいときは、好きかどうかとは別に、条件の改善を優先してください。選ぶのは自分です。どれか1つが正解というわけではありません。

選んだ先の、今日の一手

まず、いまの仕事を5つの面に分けて書き、欠けている面を1つ選びます。そのうえで、選んだ道ごとに、紙に1行書きます。

  • 現状維持を選んだ人。前の節の表から、増やしたい面の「試すこと」を1つ選び、いつ試すかを書きます。
  • 資格を選んだ人。手ごたえを持てない作業を1つ選び、その作業に必要な知識の名前を書きます。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」で、その知識に関わる職業を1つ調べます。
  • 転職を選んだ人。裁量や生活条件のうち、会社の決まりで決まっていて変わらないものを1つ選び、次の職場に求める条件として一文に直します。

よくある質問

好きなことが、特にありません

大きな「好き」を探す必要はありません。集中していた場面の記録から、小さな共通点を見つけるところから始めてください。得意なことや、役に立っていると感じることから考える方法もあります。

成果が出ていない仕事は、辞めたほうがよいですか

成果が出ていない理由が、仕事の性質なのか、慣れていないだけなのか、環境なのかによります。5つの面に分けて、どこが欠けているかを確かめてから判断してください。心身の負担が大きい場合は、その限りではありません。

好きなことを追えば、うまくいきますか

好きなことに取り組むことは、続ける力にはなりやすいですが、収入や成果が必ずついてくるとは言えません。生活条件の面は、別に確かめてください。

出典・相談先・この記事の前提

  • Amy Wrzesniewski, Clark McCauley, Paul Rozin, Barry Schwartz (1997) “Jobs, Careers, and Callings: People’s Relations to Their Work” Journal of Research in Personality 31(1), 21–33.
  • Robert J. Vallerand ほか (2003) “Les passions de l’âme: On obsessive and harmonious passion” Journal of Personality and Social Psychology 85(4), 756–767.
  • Amy Wrzesniewski, Jane E. Dutton (2001) “Crafting a Job: Revisioning Employees as Active Crafters of Their Work” Academy of Management Review 26(2), 179–201.
  • Edward L. Deci, Richard M. Ryan (2000) “The ‘What’ and ‘Why’ of Goal Pursuits” Psychological Inquiry 11(4), 227–268.
  • 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(2026年10月11日確認)
  • 5つの面に分ける表と試し方は、CareerPivotが整理した方法です。上の研究で検証された手順ではありません。欠けている面ごとの現状維持・資格・転職の分け方も、CareerPivotの整理です。