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ふたりの関係

「代行は逃げ」と恋人。上司がこわい若手が見せる、辞めた翌朝の顔

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辞め方を自分で決めた翌朝、カーテンを開けて恋人に顔を見せる若手社員

退職代行を使いたいと話したら、恋人に「逃げでしょ」と言われた。「自分で言う」と「代行に頼む」を同じ項目で左右に並べた表を一緒に見ると、違う行は3つだけ。辞めると決めたのは自分だと、一文で返せるようになります。

上司がこわい。退職代行を使って辞めたいと、恋人に話しました。返ってきたのは「代行は逃げでしょ。自分で言いなよ」の一言でした。その場では言い返せず、話している自分の手がふるえているのに気づきました。

恋人に「逃げ」と言われたまま代行に頼んでよいのか。言われたとおり、自分で言うのか。決められずに止まっている。その人のための記事です。

この記事を読むと、「自分で言う」と「代行に頼む」を同じ項目で左右に並べた表を恋人と一緒に見て、違うのは会社に伝える人と費用と条件の話し合いだけだと確かめられます。そして、辞めると決めたのは自分だということを、恋人に一文で返せるようになります。

手がふるえているなら、表より先に

手がふるえる。眠れない。会社の前で体が動かない。どれかが続いているなら、表を作る前に相談先です。恋人と話している間だけでなく、会社のことを考えるときにも出ているなら、なおさらです。

相談先は3つに分かれます。働く人の気持ちのことなら、厚生労働省の事業「こころの耳」に電話・SNS・メールの相談があります。上司の言動のことなら、総合労働相談コーナーで、各都道府県の労働局や労働基準監督署の中などにあり、予約はいらず、お金もかかりません。体の不調なら、医療機関です。

どれも2026年10月時点の案内で、受付の方法は変わることがあります。使う前に公式サイトで確かめてください。手のふるえが何を意味するかは、この記事では決めません。それは、相談先か医療機関で話すことです。

「逃げ」かどうかは、表を作ると分かる

恋人の「逃げ」という言葉に言い返せなかったのは、自分でも「自分で言う」と「代行に頼む」で何が違うのかを、はっきり分かっていなかったからです。分かっていないものは、説明できません。

だから、2つを同じ項目で左右に並べます。下の表を、恋人と一緒に、1行ずつ見てください。右の列の空欄は、自分で調べた額を書き込む欄です。

項目 自分で言う 退職代行に頼む
会社に伝える人(上司と顔を合わせる回数) 自分(1回以上) 代行(0回)
最終日を決める人 自分 自分
会社と条件を話し合えるか 自分でできる できない(弁護士でない代行の場合)
費用 0円(郵送なら郵便の料金)     円(自分で調べた額)
自分でやる手続き 退職届、書類の受け取り、保険と年金の切り替え、貸与品(会社から借りているもの)の返却 同じ
会社からの連絡 本人に来る 本人に来ることがある(代行が控えるよう頼んでも、会社を縛る決まりではない)

表の読み方

6行のうち、左右で違うのは3行だけです。「会社に伝える人」「費用」「条件の話し合い」。残りの3行は、どちらの道でも同じです。

とくに「最終日を決める人」の行を見てください。どちらも自分です。代行は、本人が決めた退職の意思を会社に伝えるだけで、「辞める」と決めるのも、「いつ辞める」と決めるのも、自分です。「自分でやる手続き」の行も同じで、退職届を書くのも、離職票や源泉徴収票を受け取るのも、健康保険と年金を切り替えるのも、貸与品を返すのも、代行に頼んだあとで自分がやります。「会社からの連絡」の行も、どちらの道でも本人に来ることがあります。

恋人の言う「逃げ」が何を指しているのかは、恋人にしか分かりません。ただ、表を見ると、人任せにできるのは「会社に伝える人」の1行だけだと分かります。

条件の話し合いの行について

「会社と条件を話し合えるか」の行で、代行が「できない」なのは、法律の決まりによります。弁護士でない人が報酬を受け取って、残業代や退職日といった法律の問題を会社と話し合うことは、弁護士法72条の問題になります。弁護士会や労働委員会が、この点について注意を呼びかけています。だから、代行に頼むなら、有給や退職日について会社と「話し合ってもらう」ことは期待できません。希望を「伝えてもらう」までです。

一方で、自分で言う場合は、自分で話し合えます。話し合いがこじれたら、総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談できます。ここに書いた決まりは2026年10月時点のもので、変わることがあります。

恋人に返す一文

表を見終わったら、この一文を返します。

「辞めると決めたのは自分。伝え方だけを人に頼む」

表を恋人に見せるのは、恋人を説得するためではありません。「決めたのが自分だ」ということを、自分で確かめるためです。確かめられていれば、恋人が納得してもしなくても、この一文は言えます。

表を見たあとの3つの問い

表を見たら、次の3つの問いに答えてください。原因の分け方は、この記事での整理です。

①上司の前で声が出ないのですか。それとも、恋人に言われて迷っているだけですか。
②表の左右で、自分にとって本当に違うのは「会社に伝える人」の行だけですか。
③辞めると、自分で決めていますか。恋人に止められたら、残りたいですか。

  • ③で「まだ決めていない」「止められたら残りたい」人は、原因Cです。
  • ③で「決めている」人のうち、①が「恋人に言われて迷っているだけ」の人は、原因Aです。
  • ③で「決めている」人のうち、①が「上司の前で声が出ない。紙を渡すこともできない」の人は、原因Bです。

②は、AとBを分ける補助の問いです。「違うのは伝える人だけ」と答えられる人は、費用を払ってでも上司と顔を合わせる回数を0にしたい理由がはっきりしています。「伝える人より費用のほうが気になる」と答える人は、まず原因Aの道(紙で渡す・郵送する)を試してから決めても遅くありません。

原因Aは、辞めると決めている。恋人の言葉で迷っただけで、上司に言う場面は作れる人。道は、自分で伝えることです。

原因Bは、辞めると決めている。上司の前では体がすくみ、紙を渡すこともできない。恋人の「逃げ」に返す一文がなかっただけの人。道は、退職代行を使うことです。

原因Cは、まだ決めていない。辞めたい理由が上司一人で、上司の言動を誰にも相談していない人。道は、期限と条件をつけて今は残ることです。

3つの問いの答えで、道は1つに決まります。恋人の言葉では決まりません。

原因A:決めている。恋人の言葉で迷っただけの人(自分で伝える)

手順

まず、表を恋人と見ます。もう見たなら、次へ。

最終日を決めます。期間の定めのない雇用(正社員など)なら、申し入れの日から2週間がたつと雇用は終わります(民法627条1項)。就業規則に「1か月前までに申し出る」のような決まりがあり、それが常識的な長さなら、その期間に合わせます。

伝える日を決めて、恋人に言います。「○月○日に言う」と日付で言います。恋人に言うのは、約束するためではなく、自分の予定にするためです。

伝えます。口で言えるなら口で、言えなければ次の「詰まる所」へ。

翌朝、恋人に顔を見せます。

詰まる所と次の手

伝える日に、声が出ない。その場合は、退職届を手渡す形に切り替えます。退職の意思表示は、口頭でなくても書面で足ります。退職は労働者の一方的な意思表示で有効になり、会社の承認はいらない、と労働局は説明しています。退職届に最終日を書いて、上司に渡す。渡すときに声は出さなくてよく、「退職届です」の一言も、出なければ出なくて構いません。

退職届の文は、1行目に「退職届」、次に「一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします」、そのあとに書いた日付と所属と氏名で足ります。理由を細かく書く必要はありません。

最初の一手

表の左の列を、今日埋めてください。「会社に伝える人」の行の回数に、自分の場合は何回になりそうかを書きます。1回なのか、引き継ぎを入れて数回なのか。数字が入ると、「上司と顔を合わせる」が自分にとってどのくらいの重さかが見えます。

表の右の列を選ぶ前に

原因Bの人の手順の前に、表の右の列(代行に頼む)が何を含んでいて、何を含んでいないかを書いておきます。

弁護士でない退職代行にできるのは、本人が決めた退職の意思を会社に伝えることまでです。条件の話し合いはできません。これは上の表の3行のとおりです。

右の列を選んでも、左の列と同じまま残る行が3つあります。「最終日を決める人」「自分でやる手続き」「会社からの連絡」。辞めると決めるのも、最終日を決めるのも、退職届を書くのも、書類を受け取るのも、保険と年金を切り替えるのも、貸与品を返すのも、自分です。会社が代行からの連絡を受けず、本人が改めて自分で会社に連絡する必要が生じた例を、弁護士会は挙げています。

右の列を選ばない場合の代わりは、退職届を手渡す、または郵送する方法です。郵送するなら、郵便局の内容証明と配達証明を使うと、出した文書の中身と届いた日が残ります。費用は郵便の料金だけです。上司の前で体がすくんでも、郵送なら上司の顔を見ずに済みます。「紙を渡すことも、郵送することもできない」という状態でなければ、こちらの道が基本です。

原因B:体がすくみ、紙も渡せない人の進め方(退職代行を使う)

頼む前に決めること

代行は、本人が決めたことを伝えるだけです。だから、頼む前に、次の4つを自分で決めて、紙に書いておきます。

決めること 書く欄
最終日 ○年○月○日
残った有給を使いたいか(使うなら何日分か)  
貸与品(社員証、鍵、パソコンなど)をどう返すか 郵送/人事に預ける
恋人に返す一文  

4つ目は、会社に伝えることではありません。でも、この記事の読者には、最終日と同じくらい大事です。「辞めると決めたのは自分。伝え方だけを人に頼む」をそのまま使っても、自分の言葉に直しても構いません。

有給については、代行は「使いたい」という希望を伝えることはできますが、会社が応じないときに話し合うことはできません。退職前でも有給は請求でき、会社の承諾はいらない、と労働局は説明しています。認められなければ、労働基準監督署か総合労働相談コーナーに自分で相談します。

頼んだあとに自分でやること

表の「自分でやる手続き」の行の中身です。頼んだあと、次を自分で進めます。

  • 退職届を内容証明と配達証明で会社に郵送する
  • 貸与品を返す(郵送なら、送った日と中身を控える)
  • 離職票と源泉徴収票を受け取る(会社が離職票の手続きをしないときはハローワークに本人が申し出る。源泉徴収票は中途退職なら退職後1月(ひとつき)が交付の期限)
  • 健康保険と年金を切り替える(任意継続か国民健康保険か家族の扶養か。年金は市区町村の窓口で国民年金へ。どちらも申し出の期限があるので退職したらすぐ窓口に聞く)
  • 会社から直接来た連絡に対応する(出るかは自分で決める。配達証明で届いた日が確かめられていれば、退職の意思は届いている)

そして、この記事の読者だけの1つ。恋人に、決めておいた一文を言います。代行が会社に伝えた日に、恋人に「今日、伝えてもらった。決めたのは自分」と言えるように、頼む前に書いた一文を手元に置いておきます。

詰まる所と次の手

恋人が、表を見たあとでも「それでも逃げ」と言う。その場合は、表の「最終日を決める人」の行を指してください。どちらも自分です。決めたのは自分で、頼むのは「伝える」の部分だけ。この行を指しながら、決めておいた一文を言います。

それでも恋人が納得しないことはあります。表は、恋人を納得させる道具ではなく、自分が決めたことを自分で確かめる道具です。確かめられていれば、次に進めます。

最初の一手

恋人に返す一文を、今日1行書いてください。最終日や有給の日数は、あとで埋められます。一文が手元にあれば、次に「逃げ」と言われたときに、手がふるえても、返す言葉を一から探さずに済みます。

原因C:まだ決めていない人の進め方(今は残る)

辞めたい理由が上司一人で、その上司の言動を、まだ誰にも相談していない。この人は、辞めるか残るかを決める前に、1回だけ相談をはさみます。残るのは「期限と条件つき」です。

条件と期限

条件は、社内の相談窓口か、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に、1回相談することです。社内の窓口に相談したことを理由に不利益な扱いをすることは禁じられている、と厚生労働省は案内しています。社内で話しにくければ、労働局の窓口です。

期限は、相談の結果が分かる日です。相談先に目安を聞いて、その日を、恋人に伝えます。

書く欄 書くこと
相談先 社内の窓口/労働局の雇用環境・均等部(室)
相談先に電話する日 ○月○日
結果が分かる日(期限) ○月○日

期限の日に、決めます。上司の言動が変わる見込みがあれば残る。なければ、その日から原因Aか原因Bの道に進みます。

詰まる所と次の手

恋人に「結局、残るの?」と言われる。「○月○日に決める」と、日付で返してください。「まだ分からない」ではなく、日付です。日付があると、自分が待てます。恋人がどう受け取るかは分かりませんが、「まだ分からない」より、返しやすい言葉です。

日付を過ぎたら、その日に決めたほうに動きます。「もう少し様子を見る」で延ばすと、期限がなかったのと同じになります。

最初の一手

相談先に電話する日を1つ、今日書いてください。相談の中身を整理するのは、そのあとで足ります。日付が1つ決まれば、恋人に「○月○日に相談する。結果が分かる日に決める」と言えます。

恋人との間に置く、1枚の表と1行

原因 道 恋人に見せるもの 今日書く1行
A:決めている。恋人の言葉で迷っただけ 自分で伝える 表と、伝える日 表の左の列
B:決めている。上司の前で体がすくみ、紙も渡せない 退職代行を使う 表と、返す一文 恋人に返す一文
C:まだ決めていない。上司の言動を誰にも相談していない 期限と条件をつけて今は残る 表と、決める日 相談先に電話する日

どの道でも、恋人との間に置くのは、同じ1枚の表です。違うのは、表に添える1行だけです。

辞めた翌朝の場面

辞めた翌朝、恋人に顔を見せます。前の晩に眠れたかどうかが、顔に出ます。

原因Aの人は、自分で伝えた翌朝です。原因Bの人は、代行が会社に伝え、退職届を郵送した翌朝です。どちらの顔も、「決めたのは自分」と確かめたうえで辞めた顔です。恋人がその顔を見て何と言うかは、この記事では書けません。

原因Cの人は、期限の日に決めた翌朝、同じように恋人に顔を見せます。残ると決めた顔でも、辞めると決めた顔でも、「日付どおりに決めた」顔です。