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これからのお金

「満了までは」と言う上司。派遣社員が契約書と手帳を並べた夜

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派遣元との契約書の四つの欄と手帳の日付を並べて確認する夜

派遣先の上司に「満了まで」と言われたが、満了がいつかも伝える相手も知らない人へ。契約書の四つの欄と手帳の三つの日付を並べ、途中で辞める事情を確かめる/満了で派遣元に伝える/満了まで残る、を自分で選ぶ記事です。

この記事を読むと、契約書から四つの欄を写し、手帳に三つの日付を書いて、「途中で辞める事情を相談先に確かめてから伝える/満了で辞めると派遣元に伝える/満了の日まで残る」を自分で選べるようになります。「満了」がいつで、誰に言えばよいかを、今夜のうちに決める記事です。

この記事は、派遣元と期間の定めのある契約を結び、派遣先の会社で働いている人に向けて書いています。派遣元との契約に期間の定めがない人は、辞めるときの決まりが別(民法627条)なので、契約書の欄で分けます。

「満了まで」と言われて、満了がいつか分からない夜

派遣社員として働いている人の話です。派遣先の上司に「辞めたい」と口にしたことがあります。

上司の返事は、「満了まではいてよ」でした。

その夜、気づきます。満了がいつかを、自分でも知りません。契約書は家のどこかにあるはずですが、開いたことがありません。そして、「辞めたい」と言った相手が、本当に言うべき相手だったのかも、分かっていません。

止まっているのは、契約の終わりの日と、辞めると伝える相手を知らないところです。この二つが分からないので、いつ、誰に、何と言えばよいかを決められません。

だからこの記事は、法律の話より先に、契約書と手帳を机に並べるところから始めます。

契約書から写す、四つの欄

まず、契約書を探します。派遣元と結んだ、雇用契約書か労働条件通知書です。派遣先との間で書いた書類ではありません。

見つかったら、次の四つの欄を紙に写します。

欄 契約書に書いてあること 自分で写す
① 雇用主の名前 派遣元の名前
② 契約期間 始まりの日と終わりの日 始まり  年 月 日/終わり  年 月 日
③ 更新の有無と更新の基準 「更新する場合がある」など、更新を決める基準。上限があればその上限
④ 就業の場所 派遣先の名前と場所

契約書が見つからないときは、派遣元に「労働条件を書いた書面の控えがほしい」と頼みます。会社は、労働契約を結ぶときに、契約期間、更新の基準、働く場所、賃金などの労働条件を書面で明示しなければならないことになっています(労働基準法15条1項)。この記事の法律と制度の話は2026年10月時点で確かめたもので、今後変わることがあります。頼む相手は、派遣先の上司ではなく、派遣元の担当です。

四つの欄を写すと、二つのことが見えます。

一つ目。欄①に書いてあるのは、派遣元の名前です。派遣で働く人の雇用主は、派遣元です。派遣契約(派遣元と派遣先の間の契約)と、労働契約(派遣元と自分の間の契約)は別の契約だと、厚生労働省は説明しています。だから、辞めると伝える相手も派遣元になる、というのがこの記事での整理です。派遣先の上司に「辞めたい」と言っても、派遣元には届いていません。

二つ目。上司の「満了まで」は、欄②の終わりの日のことです。派遣先の上司は、派遣元との契約の話をしています。自分が知らなかった日付を、上司は知っていたわけです。

手帳に書く、三つの日付

次に、手帳を開きます。書くのは三つの日付です。

日付 書く欄
今日   年 月 日
契約の終わりの日(欄②の終わり)   年 月 日
派遣元から「次の更新はどうしますか」と聞かれそうな時期   年 月ごろ

三つ目は、正確に分からなくてかまいません。前回の更新のとき、終わりの日のどれくらい前に派遣元から話が来たかを思い出して、同じくらい前に印をつけます。初めての契約で分からなければ、終わりの日の一か月前あたりに仮の印をつけます。この一か月は、会社の側が更新しないときに予告する時期(一定の条件にあてはまる人に、終わりの日の30日前まで)を参考にした、この記事での目安です。働く側が守る決まりではないので、派遣元の担当に「更新の話は、いつごろ来ますか」と聞いて、答えの時期に印を直します。

労働者の側から「更新しない」と伝える時期については、法律で決まった期限が確認できていません。契約書か就業規則に書いてあればそれに従い、なければ派遣元の担当に聞いて確かめます。

三つの日付が並ぶと、「今日から終わりの日まで、あと何か月か」が見えます。この数字が、この先の道を分ける一つ目の材料です。

契約の途中で辞められるかの、二つの線

期間の定めのある契約は、原則として、契約の期間は働く約束です。期間の定めのない雇用のような「申し入れから2週間で終わる」決まりは、そのまま当てはまりません。途中で辞められるかどうかには、二つの線があります。

一つ目の線。やむを得ない事由があるときは、直ちに契約を解除できます(民法628条)。ただし、その事由が自分の過失によるときは、損害賠償の責任を負うことがあります。何が「やむを得ない事由」に当たるかは個別の判断で、この記事では例を挙げて決めません。引っ越し、家族の事情、体の不調など、自分に事情があるなら、それが当たるかどうかを相談先で確かめます。損害賠償は当然に生じるものではなく、個別に検討されるものだと厚生労働省は説明しています。

二つ目の線。契約の期間が1年を超える契約では、契約の初日から1年がたった日より後なら、派遣元に申し出ることで、いつでも退職できます(労働基準法137条。高度専門職と満60歳以上の人は除きます)。手帳に写した欄②の始まりの日から1年がたっているか、そして契約の期間が1年を超えているかを見ます。半年や1年ちょうどの契約には、この線は当てはまりません。

この二つの線を、手帳の日付に当てます。一つ目の線は、事情があるかどうか。二つ目の線は、契約が1年を超え、初日から1年がたっているかどうか。どちらにも当てはまらず、事情もないなら、契約の終わりの日で辞める道になります。

「派遣だから満了まで辞められない」とも、「派遣でもいつでも辞められる」とも、この記事では書きません。どちらも、契約書と手帳を見ないと決まらないからです。

派遣元に伝える一文

満了で辞めると決めた人が、派遣元の担当に伝える一文は、こうです。

「○月○日の契約の終わりで退職します。更新はしません」

書面で出します。退職の申し出は口で言っても有効ですが、行き違いを防ぐため書面が望ましいと労働局は説明しています。派遣先の上司に言った「辞めたい」は、派遣元には届いていないので、この一文を改めて派遣元に出します。

途中で辞める事情がある人は、この一文の前に、相談先に確かめる手順が入ります。次の問いで、自分がどちらかを見分けます。

手帳の日付で分かれる、三つの問い

契約書の欄と番号が混ざらないように、問いには「問1〜問3」と名前をつけます。

問1 契約の終わりの日まで、あと何か月か。手帳に書けたか。

問2 辞めると伝える相手が派遣元だと知っていたか。そして、派遣元の担当に、自分の口で言えるか。

問3 契約の途中で辞めなければならない事情(引っ越し、家族の事情、体の不調)が、自分にあるか。

問3が「ある」なら、原因Aです。途中で辞めたい事情があるのに、伝える相手が派遣元だと知らず、派遣先の上司に言っていた人です。

問3が「ない」で、問2が「派遣元の担当に自分の口で言えない」なら、原因Bです。満了の日で辞めると決めたのに、派遣先の上司の「満了まで」以来、派遣元の担当に「更新しない」と言うことすらできない。担当が派遣先の味方に見える、という人です。

問3が「ない」で、問1が「何か月かある」、問2が「言える」なら、原因Cです。途中で辞める事情はなく、終わりの日まで働けます。

答えが割れたら、問3を先に見ます。途中で辞める事情があるかどうかで、使える線が変わるからです。A・B・Cは、手帳の日付に合わせてこの記事で付けた整理です。

道A 事情を相談先に確かめてから、派遣元に書面で伝える

原因Aの人は、契約の途中で辞めたい事情があります。ただ、途中で辞められるかは「やむを得ない事由」の個別の判断です。自分で「当たるはずだ」と決めて派遣元に言うより、先に相談先で確かめます。

やる順は、契約書の四つの欄を写す、事情を一行にする、総合労働相談コーナーで「この事情で途中で辞められるか」を聞く、派遣元の担当に書面で伝える、の四つです。

事情の一行は、「○月に引っ越しが決まり、通えなくなる」「家族の介護で、○月から働けない」のように、いつから、何で、働けなくなるかを一行で書きます。相談のときに、この一行と、契約書の四つの欄の写しを持っていきます。

総合労働相談コーナーは、厚生労働省が各都道府県労働局や労働基準監督署の中などに置いている窓口で、無料・予約不要です。会社に何かをさせる窓口ではなく、助言と案内の窓口です。「この事情で、契約の途中で辞められるか」「派遣元にどう伝えればよいか」を聞きます。

相談したあと、派遣元の担当に書面で伝えます。「○○の事情で、○月○日で退職したいと考えています」の形で、事情と希望の日を書きます。契約の期間が1年を超え、初日から1年がたっているなら、その旨も書き添えます。

詰まりやすいのは、派遣元が「契約があるから」と受け付けない場面です。契約の途中の退職は個別の判断なので、相談コーナーの助言をもとに、事情と希望の日を書面でもう一度出します。それでも進まなければ、もう一度相談コーナーに戻って、次の手を聞きます。

頼めるのは「満了で辞める」を派遣元に伝えることまで

道Bを見る前に、代行の役目を、手帳の日付に当てて確かめます。

弁護士でない退職代行にできるのは、「契約の終わりで辞め、更新しないという本人の意思を、派遣元に伝えること」までです。契約の途中で辞めるための事情の説明や、終わりの日を早める話し合いは、弁護士でない事業者が報酬を受けて行うと弁護士法72条の問題になるため、できません。弁護士会や労働委員会が出している注意も、この線に沿っています。

だから、この記事では、代行の道は「満了の日で辞め、更新しない」と決めた人にだけ置いています。途中で辞めたい人は、道Aです。

自分で伝える道との差は、派遣元の担当と話さずに済むこと、それだけです。伝える相手(派遣元)と日付(契約の終わりの日)は、自分で決めます。頼んだあとも、離職票・源泉徴収票を派遣元から受け取ること、健康保険と年金の切り替え、派遣先からの連絡への返し方は、自分でやります。

手帳の余白に、費用の欄も作っておきます。

派遣元への伝え方 費用
代行に頼む 自分で見た額:    円
「○月○日の契約の終わりで退職します。更新はしません」と自分で書面を送る かからない

二行目が、使わない場合の代わりです。担当と顔を合わせずに済む点では、代行と同じです。

道B 満了で辞める意思を、担当と話さずに派遣元へ届ける

原因Bの人は、満了の日で辞めると決めています。ただ、派遣先の上司の「満了まで」以来、派遣元の担当に「更新しない」と言うことすらできません。担当が派遣先の味方に見えるからです。それなら、担当と話す役だけを人に任せ、相手と日付は自分の手帳で決めます。

頼む前に、手帳の横に四つの欄を書きます。

決めること 書き込む欄
伝える相手 派遣元(名前:    )
契約の終わりの日 ○月○日
有給の残りを使う日 ○月○日〜○月○日
派遣先に返す物 入館証、制服、貸与品など

有給は、派遣元との関係で数えます。残りの日数は、派遣元の担当か、給与明細で確かめます。終わりの日までに残りの有給を使いたいと請求した場合、会社は終わりの日より後に日を動かせないので請求どおり与えることになる、と労働局は説明しています。ただ、残りが全部取れると約束できる話ではないので、使う日を手帳の欄に書き、伝える中身に入れておきます。

欄が埋まったら、頼みます。頼むのは「契約の終わりで辞め、更新しない意思を派遣元に伝えること」までです。自分でも、同じ一文を書面で派遣元に送っておきます。

頼んだあとは、手帳に次の三つを書き足します。

手帳に書き足すこと 中身
書類 離職票と源泉徴収票を、派遣先ではなく派遣元から受け取る。出ないときは、離職票はハローワーク、源泉徴収票は税務署に相談できる
保険と年金 国民健康保険と国民年金は住んでいる市区町村の窓口、任意継続なら入っていた健康保険の窓口で、届け出の期限を確かめる
派遣先からの電話 上司から「満了まではいてよ」と電話が来たとき、「派遣元に伝えてあります」と一言返すのか、出ないのかを先に決める

詰まりやすいのは、派遣元が「途中で辞めたいのか」と条件の話にする場面です。代行は条件の話し合いができません。自分の話は「満了の日で辞める。更新しない」だけです。途中で辞めたいわけではないので、「契約の終わりの日までは働きます」と自分で派遣元に書面で返します。もし途中の話が出てきて、自分でも途中で辞めたくなったなら、それは道Aです。相談コーナーに本人が聞きます。

道C 契約の終わりの日を期限にして、残る

原因Cの人は、契約の終わりまで何か月かあり、途中で辞める事情は自分にはありません。残る場合も、ただ待つのではなく、終わりの日を期限にし、伝える日を先に決めます。

やる順は、契約の終わりの日を期限にする、「更新しない」と派遣元に伝える日を手帳に書く(更新の話が来る前)、その日に書面で伝える、終わりの日まで働く、の四つです。

伝える日は、手帳の三つ目の日付(更新の話が来そうな時期)より前に置きます。更新の話が先に来ると、「次も更新で」という前提で話が進みやすいからです。先に「更新しない」と伝えておけば、派遣元との話を「次の契約をどうするか」ではなく「終わりの日までのこと」から始められます。

詰まりやすいのは、派遣先の上司が「次も更新で」と先に話を進める場面です。返す一文は、「更新のことは、派遣元と話します」です。派遣先の上司は、派遣元との契約の話をしているので、答える相手が違います。この一文を返したら、派遣元に伝える日を早めます。上司が派遣元に、本人は続けるつもりだと先に伝えてしまう前に、自分の意思を派遣元に届けておくためです。

今夜、手帳に書く一つ

三つの道とも、今夜は手帳に一行書くだけです。

原因Aの人は、契約書を探して、終わりの日を手帳に書きます。相談コーナーに行く前に、この日付が要ります。

原因Bの人は、派遣元の担当の名前と連絡先を手帳に書きます。伝える相手を、派遣先の上司から派遣元に、紙の上で切り替えるためです。

原因Cの人は、「更新しない」と伝える日を手帳に書きます。更新の話が来そうな時期より前の日です。

夜、机の上に契約書と手帳

夜です。机の上に、契約書と手帳が並んでいます。

契約書には、四つの欄に線が引いてあります。手帳には、三つの日付が書いてあります。そのうちの二つ、契約の終わりの日と、派遣元に伝える日に、印がついています。

相談先に確かめてから伝える人も、代行に届けてもらう人も、終わりの日まで残る人も、机の上に並ぶものは同じです。「満了まで」と言われた夜には分からなかった二つの日付が、今は自分の手帳に書いてあります。