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これからのお金

家賃がこわくて辞められない新卒。三か月分を見てから出す退職届

約13分で読めます

家賃三か月分の備えを表す三つの小さな貯金袋と賃貸の鍵、通帳

家賃の引き落とし日がこわくて辞められない一人暮らしの新卒へ。5つの数字を書いて家賃3か月分の線を引き、今の貯金で辞められるか、何か月後に辞められるかを出し、自分で伝える・退職代行・届く月まで残るの3つから退職届を出す日を決める記事です。

新卒1年目。一人で部屋を借りて暮らしている。辞めたいと思うたびに、理由より先に、家賃の引き落とし日が浮かぶ。貯金は少ない。辞めたら翌月の家賃が払えるか分からない。だから、上司に言えない。

この記事を読むと、家賃3か月分を目安に、今の貯金で辞められるか、辞められないなら何か月後に辞められるかを数字で出し、退職届を出す日を決められます。

「いくらあれば辞めていいか」の線を、引いていない

辞められない理由は、お金がないことではありません。辞めたあとに何がいくら出ていき、何がいつ入るのかを知らないので、「いくらあれば辞めていいか」の線が引けていないことです。線がないと、貯金がいくらあっても足りない気がします。線があれば、「今は足りない。あと○か月」と言えます。

この記事では、5つの数字を書き込んで線を引きます。目安は家賃3か月分。これは公的な基準ではなく、この記事での独自の目安です。理由は後で書きます。

5つの数字を書き込む

紙を1枚用意して、上から順に書きます。

番号 書くもの 書き込む欄
① 家賃+光熱費+通信費の月額 (    )円
② ①×3 (    )円
③ 今の貯金 (    )円
④ 最後の給料が入る日と、額の見込み ○月○日/(    )円
⑤ 辞めた翌月から自分で払うもの(健康保険、国民年金、住民税の残り)の月額 (    )円

①は、通帳やアプリの引き落としを見れば分かります。家賃のほかに、電気・ガス・水道と、スマホ代を足します。食費は入れません。食費は減らせますが、家賃と光熱費はすぐには減らせないからです。

②は、①を3倍にするだけです。

③は、今日の残高です。多く見積もらず、今日の数字を書きます。

④は、給与明細の「締め日」と「支払日」を見ます。たとえば「月末締め、翌月25日払い」なら、月末に辞めると、翌月25日に最後の給料が入ります。辞めた月の途中で辞めれば、働いた日数分が入ります。

⑤は、会社にいる間は給料から引かれていたものを、辞めたあとは自分で払う、という数字です。額は人によって違い、記事では決められません。健康保険は、今入っている健康保険の窓口(任意継続の場合)と、市区町村の窓口(国民健康保険の場合)で試算してもらえます。国民年金は市区町村の窓口で、住民税も市区町村で聞けます。試算した額を、ここに書き込んでください。

⑤は②に入っていません。辞めたあとの3か月に⑤も払うので、②に⑤×3を足した額を自分の線にしてもかまいません。この記事では、計算を分かりやすくするために②を①×3のままにしておきます。⑤を上乗せするかどうかは、自分で決めてください。

なぜ「3か月分」か

辞めたあと、お金は出ていく一方になるわけではありません。失業給付(雇用保険の基本手当)があります。ただし、新卒1年目の人には注意が要ります。

失業給付を受けるには、原則として、辞めた日より前の2年間に、雇用保険に入っていた期間が通算12か月以上あることが条件です。新卒で入社して1年たっていないなら、この条件に届かない場合があります。つまり、1年目の人は、失業給付を当てにできない場合があります。

条件に届く人でも、自分の都合で辞めた場合は、受給の手続きをした日から7日間の待期があり、そのあとに給付制限があります。退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です。ただし、給付制限があるかどうかと期間は、ハローワークが判断します。「1か月待てばもらえる」とは言えません。

だから、「3か月分」です。失業給付を当てにせず、家賃と光熱費を3か月払える額を先に持つ。これが、この記事の目安です。もっと少なくても辞める人はいますし、もっと多く持ちたい人もいます。線は、自分で決めてかまいません。ただ、線を1本引くことだけは、先にやってください。

ここから先に出てくる給付・保険・税の決まりは、2026年10月の時点で確かめたものです。額や期限はあとで変わることがあるので、退職日を決めたら窓口の案内で見直してください。

辞めたあとの日付を、線に並べる

次に、辞めたあとに何がいつ来るかを、1本の線に並べます。

退職日 → 最後の給料日 → 健康保険の任意継続の申し出期限 → 国民健康保険・国民年金の届出期限 → 失業給付の待期7日と給付制限

それぞれの決まりは、こうです。

健康保険は、辞めたあと、3つから選びます。今の健康保険を自分で続ける「任意継続」、市区町村の「国民健康保険」、家族の健康保険の「被扶養者」です。任意継続は、退職日の翌日から20日以内に申し出る決まりで、期間は2年間です。辞める日までに健康保険に続けて2か月以上入っていることが条件です。在職中は会社と半分ずつ払っていた保険料を、退職後は全額自分で払います。国民健康保険は、市区町村の窓口に14日以内に届け出ます。どちらが安いかは人によって違うので、両方で試算してもらって比べます。

国民年金は、次の会社にすぐ入らないなら、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で切り替えます。退職で納めるのが難しい場合は、特例免除の申請ができます(申請が要り、審査があります)。

住民税は、前の年の所得に対してかかるので、辞めて収入が減った年にも、前の年の分がかかります。残りの納め方は、辞める月で変わります。1月から4月に辞めると、原則として、残りを最後の給料からまとめて引かれます(残りの額が給料より多い場合などは別です)。6月から12月に辞めると、自分で納めるか、申し出てまとめて引いてもらうかを選べます。手取りが大きく減る月が出ることがあるので、辞める月を決めたら、市区町村の案内で自分の場合を確かめてください。

この線を見ると、辞めたあとの最初の20日間に、期限のある届出が集まっていることが分かります。退職日を決めたら、この線に日付を書き入れておきます。

線の上の出来事 日付を書く欄
退職日 ○月○日
最後の給料日(④) ○月○日
任意継続の申し出期限(退職日の翌日から20日以内) ○月○日
国民健康保険・国民年金の届出期限(14日以内) ○月○日
失業給付の手続きに行く日(条件に届く人だけ) ○月○日

「辞めるなら今月分は払わない」は、決まりに反する

上司に言うと、こう返される場面を心配する人がいます。「辞めるなら、今月分の給料は払わない」。

これは決まりに反します。給料は全額を払わなければならない、と労働基準法24条1項にあります。辞めた人が請求すれば、7日以内に払う決まりもあります(労働基準法23条1項)。労働局も、「会社は給料をきちんと払う義務がある」と説明しています。雇用契約書にそう書いてあっても無効です。

払われなければ、労働基準監督署に相談します。「辞めるなら払わない」と言われることと、実際に払われないことは別の段階なので、言われただけで辞めるのをやめる理由にはなりません。

3つの問いで、自分の原因を見分ける

5つの数字と線がそろったら、3つの問いに答えます。ここからの原因A・B・Cは、数字の出方で分ける、この記事だけの整理です。

問い①:③(今の貯金)は、②(家賃3か月分)に届いていますか。

問い②:届いていないとき、足りない分は、働きながら貯められる大きさですか。式で月数を出します。

(②−③)÷毎月貯められる額=あと何か月

毎月貯められる額は、今月の手取りから①と食費を引いた残りで出します。⑤は辞めたあとに払うもので、今は給料から引かれているので、ここでは引きません。

たとえば、①が10万円で②が30万円、③が12万円、手取りが18万円で食費が3万円なら、毎月貯められる額は18−10−3=5万円、(30−12)÷5=3.6で、切り上げて、あと4か月です。

問い③:上司に辞めると伝えること自体は、できますか。言おうとすると体が動かず、会社と連絡を取らずに終えたい、と感じますか。

問い① 問い③ 原因 道
③が②に届いている 伝えられる A 自分で伝える
③が②に届いている 伝えられない B 退職代行を使う
③が②に届いていない どちらでも C 届く月まで残る
  • 原因A:3か月分はある。家賃を理由にして、伝える日を先にのばしていた。
  • 原因B:3か月分はあるが、上司と二人で話す場面が作れない。言おうとすると体が動かず、会社と連絡を取らずに終えたい。
  • 原因C:3か月分に届いていない。

Cの人で、問い③が「伝えられない」の人は、届いた月にBに移ります。その場合は、代行の費用も先に見ておいてください。

原因A:給料の締め日に合わせて、自分で伝える

Aの人は、数字を見たら、もう辞められる額がありました。足りなかったのはお金ではなく、伝える日でした。

手順は4つです。

  1. 最終日を、給料の締め日に合わせて決める。最終日を締め日にすると、その日までの分が、次の支払日にそのまま入ります。締め日の途中で辞めると、最後の給料が日割りになって、④の見込みがずれます。期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間で雇用は終わります(民法627条1項)。就業規則に「1か月前まで」のような申し出期間があれば、労働局の説明では、常識的な長さならそれに合わせるのがもめにくい、とされています。
  2. 退職届を書く。「退職届」という題と、「○年○月○日をもって退職いたします」の一文、今日の日付、名前で足ります。
  3. 上司に伝える。「○月○日を最終日として退職します。退職届をお持ちしました。」
  4. 最後の給料と書類(離職票、源泉徴収票)の受け取り日を確かめる。「最後の給料は○日に振り込まれますか。離職票と源泉徴収票はいつ届きますか。」

Aの人の心配は、「辞めるなら今月分は払わない」と言われる場面です。上に書いたとおり、決まりに反します。払われなければ、労働基準監督署へ相談します。離職票は、会社が出さない場合、ハローワークに申し出れば本人の請求で手続きが進みます。

代行に頼めることは、お金の表のどこにも入っていない

Bの道の前に、退職代行がこの記事の数字とどう関わるかを書いておきます。

代行が関わるのは、「辞めると決めたことを、会社に伝える」の1点だけです。5つの数字の表にも、辞めたあとの線にも、代行がやってくれる項目はありません。④の最後の給料が振り込まれなかったとき、代行は会社に請求できません。退職日をずらして給料の締め日に合わせたいとき、代行は会社と交渉できません。残業代の話も同じです。こうした条件の話し合いを、弁護士でない事業者が報酬を受けて行うと弁護士法72条の問題になるため、弁護士会や労働委員会が注意を呼びかけています。お金の話は、労働基準監督署か総合労働相談コーナー(無料・予約不要)に、自分で持っていきます。

線の上の手続きも、全部自分です。退職届の郵送、離職票と源泉徴収票の受け取り、任意継続か国民健康保険かの手続き、国民年金の切り替え、住民税の納め方の確認。代行を使っても、線は1本も短くなりません。

代行が変えるのは、上司と話す回数が0になること、それだけです。

そして、代行には費用がかかります。この記事では額を書きません。自分で見た額を③から引いて、線を引き直します。

自分で見た代行の費用 (    )円
③−費用 (    )円
それは②に届いているか 届く/届かない

自分で伝える道と、退職届を人事に渡す道、郵便局の内容証明で送る道には、この費用がかかりません。上司と向かい合いたくないだけなら、この2つの道も残っています。

原因B:費用を引いた残りで線を確かめ、会社と話さずに伝える

Bの人は、3か月分はあります。でも、上司と二人で話す場面が作れません。それなら、「伝える」作業だけを人に頼みます。ただし、この記事の読者は家賃がこわい人なので、上の表で③から費用を引いた残りが②に届いているかを、頼む前に見ます。

届かないなら、Bの道は今は取れません。Cに移って、届く月を出します。届くなら、最終日と、貸し出された物(社員証、パソコン、制服など)の返し方を決めて、頼みます。

頼んだあとは、線の上の期限が早いものから片づけます。

  1. 退職届を書いて郵送する(内容証明で。理由は次の段落)。
  2. 退職日の翌日から14日以内:国民健康保険か国民年金の届出。任意継続を選ぶなら20日以内に申し出。
  3. 離職票と源泉徴収票を受け取る。
  4. 住民税の納め方を市区町村で確かめる。
  5. 会社から直接来た連絡に対応する。

5番目について。代行は「本人に連絡しないでほしい」と会社に伝えますが、それはお願いで、会社を縛る決まりではありません。退職の意思は本人から会社に届いている必要があるので、頼むのと同じ日に、退職届を内容証明で送っておきます。

Bの人の心配は、最後の給料が振り込まれない場面です。代行は、請求の交渉ができません。労働基準監督署か総合労働相談コーナーに、自分で相談します。給与明細と、最終日を書いた退職届の控えを持っていきます。

原因C:届く月を出して、その月まで残る

Cの人は、3か月分に届いていません。式で出した月数が、期限です。

手順は3つです。

  1. 期限=(②−③)÷毎月貯められる額で出した月の末。
  2. 条件=その月まで、毎月の貯金額を守る。守れたかを、給料日に③を書き直して確かめる。
  3. 届いた月に、退職届を出す。そこからはAの手順です(上司に伝えられない人は、Bの表で費用を引いてから)。
給料日 ③を書き直す ②まであと
○月○日 (    )円 (    )円
○月○日 (    )円 (    )円
○月○日 (    )円 (    )円

Cの人の心配は、貯まる前に体がもたない場面です。眠れない、朝起きられない、手がふるえる。そういう不調があるなら、お金より先に、相談してください。厚生労働省の事業「こころの耳」には電話・SNS・メールの相談があり、体の不調は医療機関です(2026年10月時点の案内)。体がもたないのに貯金を優先するのは、順番が逆です。

月数が長すぎるなら、縮める方法が2つあります。家賃を下げる(更新のときに安い部屋へ移る)か、出費の固定分を1つ減らす(通信費の見直しなど)。①が下がれば②も下がるので、式の答えが小さくなります。

通帳を開いて、数字を2つ並べる

3つの道のどれでも、今日やることは数字を2つ並べることです。

Aの人:貯金の額(③)と家賃3か月分(②)を並べて書く。届いていることを、目で見る。
Bの人:代行の費用を自分で調べて、③から引く。残りを②の横に書く。
Cの人:足りない額(②−③)を毎月の貯金で割って、月数を出す。

通帳に3か月分がある日、退職届の日付を書く

通帳を見ると、家賃3か月分の数字がある。その日に、退職届の日付を書いて、出します。

Aの人は、今日か、次の締め日に合わせた日に、この場面に着きます。Bの人は、代行に最終日を伝える日に着きます。Cの人は、式で出した月の末に着きます。

家賃の引き落とし日より先に浮かぶのが、辞める理由ではなく、退職届に書く日付になっている。線を引いたのは、自分です。