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これからのお金

「次の人まで」四か月の介護職1年目。有給を数えて書く最終日

約14分で読めます

介護施設の小さな面談室で、残った有給と最終日を卓上の勤務表に示して伝える介護職員

「次の人が入るまで」と言われて四か月。後任を待つ義務を定めた法律はなく、退職前でも有給は請求できます。有給の残り日数と申し出の期間から最終日を自分で計算し、退職届に日付を書くまでを、介護職1年目の場面で書きました。

介護施設で働いて1年目。辞めたいと施設長に言ったら、「次の人が入るまで待って」と言われました。それから四か月がたちました。次の人の募集が出ているのを、見たことがありません。入社6か月でついた有給は、ほとんど残っています。

「次の人まで」には期限がない。残った有給を使って辞めてよいのかも分からない。だから、退職届に最終日を書けない。その人のための記事です。

この記事を読むと、有給の残り日数と申し出の期間から最終日を自分で計算し、退職届に日付を書けます。そのうえで、自分で伝えるか、代行に頼むか、期限を決めて残るかを選べます。

「次の人まで」に、法律上の義務はない

先に、いちばん大きな誤解をほどいておきます。

後任が来るまで働く義務を定めた法律はありません。民法や労働基準法を確認した範囲で、「引き継ぎをする義務」や「次の人が入るまで辞められない」という決まりはありません。茨城労働局のQ&Aは、「新しい人が見つかるまで待て」と言われた場合でも、期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間がたてば退職の効力が生じる(民法627条1項)、と説明しています。

つまり「次の人が入るまで」は、施設長のお願いであって、あなたを縛る決まりではありません。四か月待ったのは、お願いに応えた四か月です。これ以上応えるかどうかは、自分で決めてよいことです。

ただし、労働局は「引き継ぎなど必要な仕事を果たしていないと、問題が起きることもある」とも注意しています。損害賠償の可否は個別の判断で、「引き継ぎをしなくても何も起きない」とは言えません。だから、この記事では、2週間の予告を守り、できる範囲で引き継ぎの紙を残す、という線で進めます。利用者ごとに気をつけることを1行ずつ書いた紙です。後半で作り方を書きます。

ここに書いた決まりは2026年10月時点のもので、変わることがあります。

4つの数字を書いて、最終日を出す

最終日は、次の4つの数字から出します。書き込む欄を用意したので、順に埋めてください。

番号 書く数字 書く欄
① 有給の残り日数   日
② 就業規則の申し出期間(なければ法律上の2週間)   日前まで
③ 次のシフトが決まる日 ○月○日
④ 最終日=伝える日+② ○月○日

①有給の残り日数

入社6か月で、全労働日の8割以上出勤していれば、10労働日の有給がつきます(労働基準法39条1項)。これは、週5日で働く人の日数です。週の所定労働時間が30時間未満で、週4日以下のパートなら、日数に応じた少ない日数になります(週4日なら7日、週3日なら5日、週2日なら3日、週1日なら1日)。

自分の残り日数は、給与明細の「有給残」の欄か、勤怠の画面で確かめます。どちらにもなければ、事務の人に「有給の残り日数を教えてください」と聞きます。聞くのは権利の確認で、辞める話をする必要はありません。

②就業規則の申し出期間

就業規則の「退職」の項目に、「○日前までに申し出る」と書いてあるかを見ます。期間の定めのない雇用なら、法律では申し入れから2週間で雇用は終わります(民法627条1項)。就業規則に「1か月前」のような決まりがあり、それが常識的な長さなら、その期間に合わせたほうが、もめごとは少なくなります。極端に長い期間は無効とされることもある、と労働局は説明していますが、どこからが極端かは個別の判断です。就業規則が見当たらなければ、事務に「就業規則を見たいです」と伝えれば足ります。

③次のシフトが決まる日

介護の現場では、シフトが決まったあとに抜けると、残る人に負担が行きます。だから、③は「次のシフトが決まる日」です。この日より前に伝えれば、シフトを組む側は、あなたを入れずに組めます。

④最終日の式

最終日=伝える日+②です。そして、最終日までの最後の①日分を、有給に充てる案を書きます。

例を1つ書きます。これは説明のための例で、読者の数字ではありません。

例:有給の残りが10日。就業規則の申し出期間が1か月前。11月1日に伝えるなら、最終日は12月1日。最終日の12月1日から逆に数えて10労働日分を有給に充て、その前日までが最後の出勤日になる。

検算すると、伝える日(11月1日)+申し出期間(1か月)=最終日(12月1日)。有給に充てる日数は①の10日で、有給の最後の日が最終日と重なります。最後の出勤日が何日になるかは、休みの並びで変わるので、自分のシフトで数えてください。

こう書くと、「いつまで出勤して、いつから有給で、いつが最終日か」が1行で見えます。退職届に書く日付は、④の日です。

有給の請求は早めに。「全部使える」とは言い切らない

退職前でも、有給は請求できます。茨城労働局のQ&Aは、退職するまでの間でも有給は当然に行使でき、使用者の「承諾」はいらない、と説明しています。会社が有給の日(時季)を変えられるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られ(労働基準法39条5項)、この権利は厳格に解釈されている、と労働局は説明しています。沖縄・静岡・岩手の労働局のQ&Aは、退職日より後に時季を変えることはできないので、退職までに残りの有給を使う請求には原則そのまま与えなければならない、と説明しています。

ただし、同じ労働局が、「引き継ぎなど必要な仕事を果たしていないと問題が起きることもある」ので、有給の請求は早めに行うのが望ましい、とも書いています。また、会社が実情を伝えて理解を求めること自体は、否定されていません。だから、この記事では「残りの有給は全部使える」とは書きません。「請求は早めに、書面で出す」「最後の①日分を有給に充てる案を、退職届と一緒に出す」までです。

有給の請求の文例です。

「○月○日から○月○日までの○日間、年次有給休暇を取得します。○年○月○日 氏名」

退職届とは別の紙にして、同じ日に出します。

契約に期間の定めがあるなら、話が変わる

ここまでは、期間の定めのない雇用(正職員など)の話です。契約職員や、1年契約のパートなら、話が変わります。雇用契約書の「契約期間」の欄を見てください。

期間の定めがある契約は、「その期間は働く約束」が原則です。途中で辞められるのは、「やむを得ない事由」がある場合です(民法628条)。やむを得ない事由に当たるかどうかは、個別の判断です。ただし、契約期間が1年を超える場合は、契約の初日から1年がたてば、申し出ていつでも辞められます(労働基準法137条)。

期間の定めがある人は、④の欄に「契約の終わりの日」を書き、その日を最終日にする案が基本になります。途中で辞めたい場合は、総合労働相談コーナーに相談してから決めてください。

4つの数字を書いたあとの3つの問い

4つの数字を書いたら、次の3つの問いに答えてください。原因の分け方は、この記事での整理です。

①契約に期間の定めはありませんか(雇用契約書の「契約期間」の欄を見る)。
②施設長に「最終日は○日です」と言うことはできますか。四か月前に「辞めたい」と言えたなら、言えるはずです。
③「次の人まで」を待ちたい理由が、自分にもありますか。利用者の引き継ぎを終える日を、自分で決められますか。

  • ③が「はい」の人は、原因Cです。
  • ③が「いいえ」で、②が「はい」の人は、原因Aです。
  • ③が「いいえ」で、②が「いいえ」の人は、原因Bです。

①が「期間の定めがある」人は、上の節に戻って、契約の終わりの日を最終日にする案から考えてください。

原因Aは、施設長に言えるが、最終日を数字で出していなかった人。道は、自分で伝えることです。

原因Bは、四か月のあいだに施設長と話すことが苦痛になり、もう顔を合わせられない人。道は、退職代行を使うことです。

原因Cは、次の人の募集が出ていて入る日が決まっている、か、利用者の引き継ぎを終える日を自分で決められる人。道は、期限と条件をつけて今は残ることです。

原因が1つ決まれば、道も1つに決まります。

原因A:言えるが、数字を出していなかった人の進め方(自分で伝える)

手順

4つの数字を書きます。書けていれば、次へ。

最終日(④)を書いた退職届を出します。退職届に書くのは、④の日付と、「一身上の都合により退職します」の一文と、書いた日と所属と氏名で足ります。施設長の言葉や、四か月のことを書く必要はありません。日付が書けているかどうかが、この紙のすべてです。

出すときの一言の文例です。

「最終日は○月○日にします。退職届をお持ちしました。有給の請求も一緒に出します」

有給の請求を、早めに、書面で出します。上の文例を使います。

引き継ぎの紙を作ります。担当している利用者ごとに、気をつけることを1行ずつ書きます。食事の形態、移動のときの注意、本人が嫌がること、家族との連絡で気をつけること。1人につき1行で足ります。この紙があると、「引き継ぎをしていない」とは言われにくくなります。

詰まる所と次の手

「有給は認めない」「次の人までは」と言われる。ここで手が止まるかもしれません。でも、退職前でも有給は請求でき、後任を待つ義務はない、と労働局が説明しています。退職届と有給の請求は、出した日が分かるように、控えを取っておきます。手渡しで受け取ってもらえなければ、郵便局の内容証明と配達証明で郵送します。

それでも認められなければ、労働基準監督署か総合労働相談コーナーに相談します。有給の決まりに関わることなので、労働基準監督署が担当です。どちらに行けばよいか分からなければ、総合労働相談コーナーに電話すれば、取り次いでもらえます。予約はいらず、お金もかかりません。

最初の一手

有給の残り日数を、給与明細か勤怠で確かめて、①の欄に書いてください。今日できるのはこれだけで足ります。①が決まると、最後の何日を有給に充てるかが出せます。

最終日と有給の希望を、誰が施設に伝えるか

原因Bの人の手順の前に、「伝える役」を代行に頼むとき、何が頼めて何が頼めないかを書いておきます。

頼めるのは、退職の意思と、「○月○日から○日分の有給を使いたい」という希望を、施設に伝えることまでです。弁護士でない退職代行は、施設が応じないときに条件を話し合うことができません。残業代、退職日、有給の扱いといった条件を会社と話し合うのは法律の仕事で、弁護士でない人が報酬を受け取って行うと、弁護士法72条の問題になります。弁護士会や労働委員会が、この点について注意を呼びかけています。

つまり、自分で伝える場合と違うのは、施設長と話す回数が0になることと、費用がかかることです。有給の希望は、代行は伝えるだけで、施設が応じなければ自分で相談先へ行きます。離職票や源泉徴収票の受け取り、健康保険と年金の切り替えは、どちらの道でも自分がやります。費用は頼む先で違うので、調べた額を4つの数字の下に書き足しておいてください。この記事では額を書きません。

施設が代行からの連絡を受けない、ということも起きます。弁護士会は、会社が業者との連絡を拒み、本人が改めて自分で連絡する必要が生じた例を挙げています。

伝える役を頼まない場合の代わりは、退職届と有給の請求を、郵便局の内容証明と配達証明で郵送する方法です。施設長と顔を合わせずに済み、出した文書の中身と届いた日が残ります。費用は郵便の料金だけです。「もう顔を合わせられない」が「電話もメールも郵送も無理」でなければ、こちらの道が基本です。

原因B:施設長と、もう顔を合わせられない人の進め方(退職代行を使う)

頼む前に決めること

代行は、本人が決めたことを伝えるだけです。だから、頼む前に、次の4つを自分で決めて、紙に書いておきます。

決めること 書く欄
最終日(④の日) ○年○月○日
有給を使いたい日(最後の①日分) ○月○日から○月○日
貸与品(施設から借りているもの。制服、鍵、名札など)をどう返すか 郵送/事務に預ける
引き継ぎの紙を郵送するか する/しない

引き継ぎの紙は、代行に頼む場合でも、作って郵送することを勧めます。利用者のための紙であり、「引き継ぎをしていない」と言われないための紙でもあります。

頼んだあとに自分でやること

頼んだあとに自分でやる手続きは、どの職場の人でも同じ5つです。

  • 退職届を内容証明と配達証明で郵送する
  • 貸与品を返す(郵送なら、送った日と中身を控える)
  • 離職票と源泉徴収票を受け取る(施設が離職票の手続きをしないときはハローワークに本人が申し出る。源泉徴収票は中途退職なら退職後1月(ひとつき)が交付の期限)
  • 健康保険と年金を切り替える(任意継続か国民健康保険か家族の扶養か。年金は市区町村の窓口で国民年金へ。申し出の期限があるので退職したらすぐ窓口に聞く)
  • 施設から直接来た連絡に対応する(出るかは自分で決める。配達証明で届いた日が確かめられていれば、退職の意思は届いている)

この記事の読者には、それに加えて2つあります。

ひとつは、有給の請求を、退職届と同じ封筒で郵送することです。代行が「使いたい」と伝えていても、自分の名前で書いた請求の紙が届いていると、「聞いていない」と言われにくくなります。上の「有給の請求の文例」をそのまま使えます。

もうひとつは、引き継ぎの紙を郵送することです。利用者ごとに気をつけることを1行ずつ書いた紙を、退職届と一緒に送ります。代行は、この紙を代わりに書いてはくれません。

詰まる所と次の手

施設が有給を認めない。代行は「使いたい」と伝えられますが、交渉はできません。この先は、自分で動きます。労働基準監督署か総合労働相談コーナーに相談します。有給の請求を書面で出して控えがあれば、相談はそこから始められます。条件の話し合いを人に頼みたいなら、弁護士に頼む道もあります。収入と資産の基準を満たせば、法テラスで無料の法律相談を受けられる仕組みがあり、同じ問題で3回までです。

最初の一手

代行に伝える最終日(④)と、有給の日数(①)を、今日書いてください。この2つがあれば、代行への連絡文は短くて足ります。

原因C:引き継ぎを終える日を、自分で決められる人の進め方(今は残る)

次の人の募集が出ていて、入る日が決まっている。または、利用者の引き継ぎを終える日を、自分で決められる。この人は、残ります。ただし「期限と条件つき」です。

期限と条件

期限は、その日です。募集が出ているなら、次の人が入る日。引き継ぎなら、引き継ぎの紙を全員分書き終えて、次の人か同僚に渡し終える日。

条件は、2つです。募集の掲示や求人を自分の目で見て確かめること。そして、期限を施設長に文書で伝えることです。文例です。

「○月○日を最終日とします。それまでに、担当している利用者の引き継ぎを終えます。○年○月○日 氏名」

書く欄 書くこと
期限(最終日) ○月○日
条件1:募集を確かめた日 ○月○日に、○○で見た
条件2:文書で伝えた日 ○月○日

期限が来たら、退職届を出します。文書で伝えた日付が、そのまま退職届の日付になります。

詰まる所と次の手

期限が来ても「もう少し」と言われる。文書で伝えた日付は動かしません。「もう少し」に応えると、四か月前と同じ場所に戻ります。その日に退職届を出します。手渡しで受け取ってもらえなければ、内容証明と配達証明で郵送します。

最初の一手

残ると決める最終日を1つ、今日書いてください。募集を確かめるのも、文書を書くのも、そのあとで足ります。

4つの数字のうち、今日どれを埋めるか

原因 道 今日埋める数字
A:言えるが、最終日を数字で出していなかった 自分で伝える ①有給の残り日数
B:施設長と、もう顔を合わせられない 退職代行を使う ④最終日と①有給の日数
C:引き継ぎを終える日を自分で決められる 期限と条件をつけて今は残る ④残ると決める最終日

どの道でも、埋めるのは4つの数字のどれかです。「次の人まで」という言葉は、どの欄にも入りません。

最終日を書く場面

有給の残りを数え、退職届に最終日の日付を書きます。四か月のあいだ空いていた、その1行です。

原因Aの人は、退職届に書いて、施設長に出します。原因Bの人は、代行に伝える紙に、同じ日付を書きます。原因Cの人は、期限の日に、同じ日付を退職届に書きます。

「次の人が入るまで」という期限のない約束が、「○月○日」という日付に変わります。日付が入った退職届は、自分で出しても、代行が伝えても、期限の日に出しても、同じ1枚です。