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これからのお金

辞めれば最後の歩合が減る?七年目の営業が言う前に残した成績の画面

約12分で読めます

退職を伝える前に営業成績の画面を写真で記録する社員

辞めると伝えた月の歩合が減らされるのではと言えずにいる営業へ。賃金規程で確かめること4つと残す記録3つに印をつけ、辞めることを理由に給料を減らせない決まりを押さえてから、自分で伝える・退職代行に頼む・支払日まで残るを選ぶ。

この記事を読むと、歩合の決まり4つと残す記録3つに印をつけ、「辞めることを理由に給料を減らすことはできない」と分かったうえで、自分で伝える・退職代行に頼む・支払日の後まで残る、の3つから1つを選べます。減らされた時にどこへ行くかも決まります。

同僚が去った月の歩合を、誰も知らない

歩合のある営業、7年目。期間の定めのない雇用です。先月、辞めると伝えた同僚が、最後の月の歩合を「いくらだったか」を誰にも言わずに去りました。上司も、同僚本人も、何も言いませんでした。

自分も辞めたい。けれど、辞めると伝えた月の歩合が減らされるのではないか。そう思うと上司に言えず、今月の成績の画面を見ています。

止まっている理由は、歩合がどう計算され、いつ締まり、いつ払われるかを知らないからです。7年働いてきましたが、賃金規程(歩合の計算の決まりが書いてある文書)を読んだことがありません。「減らされるかもしれない」は、規程を読んでいないから出てくる言葉です。読めば、減らされる決まりがあるのかないのかが分かります。だからこの記事では、規程を見る手順を最初に置きます。

確かめること4つと、残す記録3つ

一覧は7つです。上の4つが「確かめること」、下の3つが「残す記録」です。横に「印」の欄を置きました。自分の目で見るか、自分の手で残すまで、印をつけません。

番号 確かめること どこで見るか 印
① 賃金規程の歩合の計算の決まり。就業規則に載っているか、別の規程か 就業規則の「賃金」の項目。別の規程があれば、その名前と置き場所  
② 締め日 賃金規程、入社時にもらった書面、給与明細の対象期間  
③ 支払日 賃金規程、入社時にもらった書面、給与明細  
④ 辞めた月の歩合の扱いが書いてあるか 賃金規程の「退職」「支給の条件」の項目  
番号 残す記録 残し方 印
⑤ 今月と先月の成績の画面の写真 日付が入るように撮る。画面の日付表示か、スマホの撮影日時  
⑥ 過去の給与明細の歩合の欄 手元にある分をすべて。写真か保管  
⑦ 上司に言われた言葉 日付つきで手帳に。言われたその日に書く  

①賃金規程はどこにあるか

入社のときにもらった書面(労働条件通知書など)には、賃金の決め方・計算・支払いの方法と、締め日・支払日を書くことになっています(労働基準法15条。2026年10月時点)。会社は就業規則を、職場の見やすい場所に置く、書面で渡す、パソコンで見られるようにする、のどれかで働く人に知らせることになっています(労働基準法106条1項)。歩合の細かい決まりは、就業規則の本体ではなく「賃金規程」「営業手当規程」のような別の文書に書かれていることがあります。

どこにあるか分からなければ、人事に聞きます。聞き方は一つです。

「賃金規程はどこで見られますか。歩合の計算の決まりを確かめたいので」

辞める話はしません。規程を見るだけなら、辞める話とは結びつきません。

②③締め日と支払日

締め日は「いつまでの成績が、どの月の歩合になるか」の区切りです。支払日は、その歩合が振り込まれる日です。この2つは、入社時の書面か、給与明細の「対象期間」と「支給日」を見れば分かります。手帳に書きます。

④辞めた月の扱い

ここが、この記事でいちばん大事な欄です。規程に「退職した月の歩合は支給しない」「支払日に在籍していることを条件とする」のような文があるかどうかを探します。あるかないかで、進む道が変わります。

歩合の計算の決まりそのものは、会社ごとに違います。辞めた月の歩合がどう扱われるかについて、公的な説明は確認できていません。だからこの記事では、「辞めた月の歩合は出る」とも「出ない」とも書きません。規程に何が書いてあるかを、自分の目で見ることが先です。

⑤⑥⑦記録を残す理由

記録を残すのは、支払日に明細を見た時、「決まりどおりの額か」を自分で確かめるためです。成績の画面が残っていなければ、減っていても減っていなくても、比べるものがありません。上司の言葉を日付つきで残すのは、「辞めるなら歩合は見直す」のような言葉が、あとで相談する時の材料になるからです。

辞めることを理由に、給料を減らすことはできない

一覧に印をつける前に、法律の側を確かめておきます。

賃金は、通貨で、直接、全額を払わなければなりません(労働基準法24条1項)。退職した人が請求すれば、会社は7日以内に賃金を払うことになっています(同23条1項)。労働局の説明では、辞めることを理由に給料を払わないのは認められず、雇用契約書にそう書いてあっても無効です。退職金の例では、支給の条件が労働協約や就業規則で明確に決まっていて、働く人が権利として請求できるものは賃金に当たる、と労働局は説明しています。歩合にそのまま当てはまるかの公的な説明は、確認できていません。

損害賠償の額や「辞めたら罰金」のような違約金を、先に決めておく契約は禁止されています(同16条)。ただし、実際に生じた損害の賠償を会社が求めること自体は禁止されておらず、その場合でも給料から一方的に差し引くことはできない、と労働局は説明しています。

未払いの賃金を請求できる期間は、当分の間3年です。

歩合の計算の決まりが会社ごとに違うことと、「辞めたことを理由に減らすことはできない」ことは、別の話です。規程に「支払日に在籍していること」のような条件が書いてある場合、その条件が有効かどうかは個別の判断になり、この記事では決められません。ここに挙げた法律の中身は2026年10月時点のもので、変わることがあります。

減らされた時の相談先

支払日に明細を見て、規程どおりでなければ、記録を持って相談します。相談先は3つです。労働基準監督署は、賃金の不払いなど法律違反の疑いを扱います。総合労働相談コーナーは、無料で予約が要らず、労働の問題全般を相談でき、法律違反の疑いがあれば監督署に取り次ぎます。法テラスは法律の総合案内所で、無料の法律相談には収入と資産の基準があります。

請求は、自分で行います。弁護士に頼む道もあります。退職代行には頼めません。理由は、Bの道の前に書きます。

一覧に印がついたら、3つの問い

印の数を数えたら、3つの問いへ進みます。

①一覧の①〜④に印がついたか。規程を、自分の目で見たか。
②上司に、辞める日を自分の口で言えるか。言えないのは「減らすぞ」と言われるのが怖いからか、上司と顔を合わせること自体ができないからか。
③今月の締め日と支払日は、いつか。支払日は、辞める日より前か、後か。

印のつき方と支払日で、原因を3つに分ける

印のつき方で分けるのは、この記事での整理です。歩合が減らされるかどうかを判定するものではありません。

A:規程を見たら、歩合の決まりは書いてあり、辞める月の減額の規定はない。記録もそろった。伝える相手は上司と決まっている。
B:上司と顔を合わせると言えない。同僚が去った時の上司の態度を見て、話す場に立つことができなくなっている。
C:締め日が近く、支払日は辞める日より後になる。規程に「在籍していること」が条件として書いてある。

先に問い②を見ます。上司と顔を合わせること自体ができないならB。次に問い③と④の印です。支払日が辞める日より後で、規程に在籍の条件が書いてあったならC。残りはAです。原因ごとに、道は1つです。

A:記録を持って、自分で渡す

Aの人が持っていなかったのは、規程と記録でした。それがそろえば、あとは5つです。

まず、⑤⑥⑦の記録を残します。

次に、辞める日を決めます。退職届を出す日から2週間以上あとに置きます。期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終わる、と民法627条1項にあるからです。就業規則が「1か月前まで」のように常識的な長さの申し出期間を決めているなら、トラブルを防ぐため、まずそれに合わせるのが望ましい、と労働局は説明しています。①で就業規則を開いたときに、退職の項目も一緒に見ておけば、二度手間になりません。

それから、退職届を渡します。上司に口で伝えるだけでも退職の意思は伝わりますが、あとで「聞いていない」とならないよう書面にするほうが望ましい、と労働局や東京都は説明しています。⑦の手帳と同じで、残るものにしておきます。

「退職届 私は、○年○月○日をもって退職いたします。」

この一文に、出す日の日付と所属、名前を書きます。渡すときの一言は「○月○日で退職します。退職届を持ってきました」で足ります。

支払日が来たら、明細の歩合の欄を確かめます。⑤の画面と⑥の過去の明細と比べて、規程どおりの額かを見ます。

最後に、減っていれば、記録を持って労働基準監督署か総合労働相談コーナーへ行きます。

止まりやすい所:上司から「辞めるなら歩合は見直す」と言われることがあります。返すのは、この一文です。

「決まりどおりの額を確かめます」

言い合いはしません。言われた言葉を、その日のうちに日付つきで手帳に書きます(⑦)。この言葉が、相談の時の材料になります。言葉が法律に触れるかどうかは、記事では決めず、相談先で確かめます。

今日の一つ:今月の成績の画面を、写真に撮ります。日付が入るように。

歩合の話は、代行では解決しない

退職代行に頼む前に、ここだけははっきりさせておきます。

代行のうち弁護士でない事業者が担えるのは、本人が決めた退職の意思を会社へ伝える役目だけです。歩合の額や支払いについて会社と話し合うことは、法律事務にあたり、弁護士でない者が報酬を得て行うと弁護士法72条の問題になります(2026年10月時点)。この点について、弁護士会や労働委員会も注意を呼びかけています。

だから、いちばん気にしている「歩合が減らされるかどうか」は、代行では解決しません。解決に使えるのは、規程と記録と、相談先です。自分で伝える場合と違うのは、上司と顔を合わせずに辞めると伝えられること。それだけです。

頼んだあとも、手元に残る作業は変わりません。退職届と、担当先の一覧・進んでいる案件の状態をまとめた引き継ぎ資料を会社に送り、社用の携帯・パソコン・名刺・社員証を返します。そのあとに届く書類は、支払日の明細と一緒に1つの封筒にまとめておくと、相談のときに出しやすくなります。退職証明書は、働いていた期間や仕事の種類を会社が証明する書類で、求めれば会社が遅れずに出すことになっていますが、求めなければ出ません(労働基準法22条1項)。源泉徴収票は、途中で辞めた場合、退職後1月が交付の期限です(国税庁の案内)。離職票が届かない時は、ハローワークへ。申し出れば、本人の請求として手続きが進みます。

健康保険と年金の切り替えも、自分の手続きです。国民年金は退職日の翌日から14日以内、国民健康保険も14日以内に市区町村で。今の健康保険を続ける任意継続なら、退職日の翌日から20日以内です(2026年10月時点)。

代行の費用は、事業者ごとに違うため書きません。自分で見た額は(    )円。自分で伝える道では、この費用はかかりません。使わない場合は、退職届を手で渡すか、郵便局から内容証明で送ります。内容証明はどんな文書を出したかを(郵便法48条)、配達証明は配達した事実と日付を(郵便法47条)、郵便局が証明します。

B:伝える部分だけ頼み、明細は自分で見る

Bの人は、同僚が去った時の上司の態度を見て、話す場に立つことができなくなっています。規程を見ることも記録を残すこともできる。けれど、上司の前に立てない。それなら、辞めると伝える部分だけを人に頼む道があります。

頼む前に決めておくことが4つあります。辞める日。成績の記録(⑤⑥⑦)を自分で持っていること。貸与品と担当先の情報の返し方。歩合の確認は自分でやると決めること。4つを紙に書き終えたら、依頼に進みます。

依頼したあとに自分でやることは、すぐ上に書いたとおりです。その最後に、支払日が来ます。⑤⑥と明細を並べ、減っていれば窓口へ行くのは、代行に頼んだ人も自分です。

止まりやすい所:会社から「代行を使うなら歩合は出さない」と言われることがあります。代行は、歩合について会社と話し合うことができません。だから、この言葉への対応は、代行を通さずに、自分で窓口へ持って行きます。辞めることを理由に賃金を払わないのは決まりに反する、と労働局は説明しています。記録を持って、労働基準監督署か法テラスへ行きます。

今日の一つ:賃金規程がどこにあるかを、人事に聞きます。

C:支払日の翌日まで残る

Cの人は、締め日が近く、支払日が辞める日より後になります。規程には「在籍していること」が条件として書いてあります。この条件が有効かどうかは個別の判断で、この記事では決められません。だから、争うのではなく、支払日を期限にして残る道があります。支払日という期限と、在籍の条件という理由がはっきりした残り方です。

手順は5つです。今月の締め日と支払日を確かめます(②③)。支払日を期限にします。期限まで、成績の画面を毎週写真に残します(⑤を続ける)。支払日に明細を確かめます。その翌日に、辞める日を伝えます。伝える手順は、Aに戻ります。

止まりやすい所:期限までに、上司に「辞めるのか」と探られることがあります。辞める話はせず、記録だけ続けます。答えるなら、短くです。

「今月の数字を見ています」

嘘ではありません。見ているのは本当です。

今日の一つ:締め日と支払日を、手帳に書きます。

言う前の夜、スマホと手帳

辞めると言う前の夜。スマホには、日付の入った成績の画面が2か月分あります。手帳には、締め日と支払日が書いてあります。

Aの営業の手帳には、その横に、退職届を渡す日が書いてあります。Bの営業の手帳には、代行に頼む日。Cの営業の手帳には、支払日の翌日。3つの日付は違います。

同僚は、最後の月の歩合がいくらだったかを、誰にも言わずに去りました。この営業は、言う前に、規程を読み、画面を残し、締め日と支払日を書きました。支払日に明細を見るのは、どの道でも、自分自身です。