※この記事には広告(プロモーション)が含まれます。
この記事を読むと、「人」「給料」「成長」を別々に測って点をつけ、人がいいことと会社に残ることを切り離して考えられます。そのうえで、移る・学ぶ・残るのどれにするかを、自分の点から決められます。
同僚の送別会で「いい会社だよね」にうなずいた夜
同僚が辞めることになり、その送別会に出た。隣の席の先輩が「うちはいい会社だよね」と言う。うなずく。本当にそう思うからです。困った時に助けてくれる人がいて、いやな上司もいない。
けれど、辞めていく同僚を見送りながら、自分の中にも「辞めたい」があることに気づいています。その気持ちの置き場が、「いい会社だよね」の一言でなくなる。人がいいのに辞めたいと思う自分の方が、おかしいのではないか。
ここで起きているのは、「人がいい」という1つの良さが、給料や仕事の中身まで全部よいことのように働いている状態です。人がいいことと、給料が足りていること、仕事で伸びていることは、別の話です。別の話を1つの「いい会社」にくるんでいるので、辞めたい理由を自分でも言えなくなります。
そこで、3つを別々に測ります。
3本の目盛りに、0点・1点・2点をつける
ここから使う目盛りと点のつけ方は、この記事での整理です。研究で決まった物差しではありません。自分の状態を分けて見るための道具として使ってください。紙に「人」「給料」「成長」と縦に3つ書き、横に点を書きこんでいきます。
人の目盛り:困った時に話せる人が、社内に何人いるか
「雰囲気がいい」ではなく、人数で測ります。仕事で困った時、その日のうちに話せる人の名前を書き出してください。
- 0人:0点
- 1〜2人:1点
- 3人以上:2点
この記事を読んでいる人の多くは、ここが2点のはずです。先に書いておくのは、あとの2本と比べるためです。
給料の目盛り:同じ職種・同じ年代の相場との差
「安い気がする」ではなく、差の数字で測ります。使うのは、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」です。
- フリーワードに自分の職種の名前を入れて検索し、職業のページを開く
- 「労働条件の特徴」で、賃金(年収)を見る。住んでいる都道府県を選ぶと、その地域の数字が出る
- 「年齢別の年収グラフを見る」を開き、自分の年代の数字を書き写す。年齢別の年収のグラフは全国の数字です。2で都道府県を選んでも、このグラフは切り替わりません(2026年10月31日に確認)
- 自分の去年1年間の年収を出す。給与明細12か月分の総支給額と、賞与の総支給額を足す。税金や社会保険料を引かれる前の額で、残業代も入れる
- 4から3を引く
4で残業代を入れるのは、job tagの賃金(年収)が、毎月決まって支払われる給与の12か月分に年間の賞与などを足して出されているためです。月の手取りと比べると、数字の中身が合いません。
例:自分の年収が380万円、job tagに載っている自分の年代の数字が430万円だった場合。差は50万円(430万円−380万円)。割合にすると約11.6%低い(50÷430)。月にならすと約4.2万円です(50万円÷12)。
- 相場より1割以上低い:0点
- 低いが、差は1割未満:1点
- 相場と同じか、それより高い:2点
上の例は約11.6%低いので、0点になります。
この数字を見る時に知っておくことがあります。job tagの賃金は、国の賃金の統計(2025年の調査)から計算した目安です。会社の大きさや地域、担当の広さで実際の額は変わります。統計の職種の分け方に合わせているため、自分の仕事とぴったり重ならないこともあります。数字は更新されるので、見た日を紙に書いておいてください(この記事の内容は2026年10月時点のもので、今後変わることがあります)。
成長の目盛り:この1年で新しく任された仕事、覚えたことの数
去年の同じ月を思い出します。その時はやっていなかった仕事、できなかったことを書き出してください。「新しい取引先を1社任された」「見積もりを一人で作れるようになった」「後輩に教える役になった」。量が増えただけのものは数えません。
- 0個:0点
- 1〜2個:1点
- 3個以上:2点
成長の目盛りが低く、上司は教えてくれるのに伸びている実感がないなら、『上司が教えてくれるのに伸びない人の、2列メモ』で、次に会いたい人を1人決めて、紹介を頼む一文まで書けます。
いちばん低い目盛りから、原因を決める
3本の点が並んだら、給料と成長のうち、低い方を見ます。
| 点の並び | 原因の候補 |
|---|---|
| 給料がいちばん低い | A:給料が相場より低く、人のよさでは埋まらない |
| 成長がいちばん低い | B:新しく覚えることがなく、成長が止まっている |
| 給料も成長も2点 | C:給料も成長も今のままでよい。迷いは、周りが動いているから |
| 給料と成長が同じ点で、0点か1点 | 下の3つの問いで決める |
点だけで決めきれない時のために、問いを3つ置きます。候補が合っているかを確かめる問いです。
- 人が今と同じで、給料だけ相場並みになったら、残りたいですか。「はい」なら、足りないのは給料です。原因A
- 人が今と同じで、新しい仕事を任されたら、残りたいですか。「はい」なら、足りないのは成長です。原因B
- 給料も成長も今のままで、5年後もここにいたいですか。「はい」なら、足りないものはありません。原因C
1と2の両方が「はい」で、点も同じだった人は、Aから進めてください。給料の差は、自分で数字を確かめられ、動くかどうかを先に決めやすいからです。
人の目盛りがいちばん低かった人は、この記事の前提(人間関係はいい)と違う状態にいます。この記事の3つの原因には当てはめず、困っていることを社外の人に話す所から始めてください。
給料がいちばん低かった人(原因A):差の数字を持って、移る先を探す
人がよくても、相場より1割以上低い給料は、人のよさでは埋まりません。例の数字なら、月に約4.2万円の差です。合う選択は転職です。
手順1 差の数字を出す。上の給料の目盛りで出した数字を、そのまま使います。「年に( )万円、相場より低い」と一文で書いてください。
移る前に、今の会社で上がる見込みを確かめておきたい人は、『昇給を頼んだら「会社も厳しい」。その先に聞く質問と、動く目安』の3つの質問を、次の面談で使えます。
手順2 「人」でゆずれない条件を1つ書く。人がいい職場にいた人は、次の職場でも人の良さを手放したくないはずです。ただ「人がいい会社」では探せません。目盛りと同じように、形のある言葉にします。
- 例:困った時に、その日のうちに聞ける人が同じ部署にいる
- 例:分からないことを聞いた時に、責められない
- 例:月に1度は、上司と一対一で話す時間がある
1つだけ選びます。3つ全部を条件にすると、どの会社も当てはまらなくなります。
手順3 両方を満たす会社を探す。給料の条件は、手順1の差が埋まる額かどうかで見ます。内定の時にもらう労働条件の書面には、賃金の決め方・計算・支払いの方法が明示されることになっています(2026年10月11日に確認)。人の条件は書面には出ないので、入社を決める前に「一緒に働く部署の方と、30分ほどお話しする機会をいただけますか」と頼みます。話した時に、手順2で書いた1つを自分の目で確かめます。
移れば給料が上がる、と決まっているわけではありません。厚生労働省の雇用動向調査(2025年分。2026年8月公表)では、転職した30〜34歳の人のうち、前の職場より賃金が「増加」した人は48.6%、「減少」した人は29.0%、「変わらない」人は20.8%でした。25〜29歳は「増加」49.8%、「減少」23.9%です(答えが分からない人を含むため、足しても100%になりません)。これは転職した人の結果を集めた数字で、移れば上がる見込みを示すものではありません。年によっても動きます。だからこそ、差の数字を持って、その額が埋まる所だけを見ます。
詰まりやすい所と次の手:「いい人たちを裏切る」と感じる。ここで手が止まる人は少なくないはずです。辞める理由を人のせいにしなければ、裏切りにはなりません。理由は給料で、人ではない。そのまま伝えます。
この職場の人に不満があって辞めるのではありません。同じ仕事を長く続けていくために、収入の面を変える必要があると考え、決めました。( )月( )日までは今の担当をやり切り、引き継ぎの資料も作ります。
同僚に聞かれた時は、短く。
ここの人たちは好きです。理由は給料のことだけです。
伝える時期については、先に就業規則の「退職」の所を確かめてください。期間の定めのない雇用では、民法で、退職の申し入れから2週間たつと雇用が終わると定められています。一方、労働局は、就業規則に申し出の時期の定めがある場合は原則としてその定めが当てはまるので、確かめるよう案内しています(2026年10月11日に確かめた内容です。今後変わることがあります)。契約社員など期間の定めがある人は、決まりが別です。
成長がいちばん低かった人(原因B):隣の知識を1つ学び、使う場面を上司に伝える
給料は相場と大きく違わない。人もいい。けれど、この1年で新しく覚えたことが0個から2個(成長の点が0点か1点)。居心地がよいほど、同じ仕事を同じやり方で続けられてしまうので、この状態は気づきにくい。合う選択は資格です。今の職場にいたまま、学ぶことで仕事を広げます。
手順1 今の仕事の「隣」にある知識を1つ選ぶ。隣とは、自分の仕事の前後で、今は他の人に頼んでいる部分のことです。この1年で、他の部署や先輩に聞いたこと・頼んだことを書き出し、回数の多いものを選びます。
| よく聞くこと・頼むこと | 隣にある知識 |
|---|---|
| 例:契約書の言葉の意味を、毎回担当の部署に聞く | 契約や法律の基礎 |
| 例:社内のシステムで困るたびに、詳しい人に見てもらう | 情報処理の基礎 |
| 例:海外の取引先からのメールを、英語のできる先輩に訳してもらう | 仕事で使う英語 |
| ( ) | ( ) |
上の3行は書き方の例です。自分の行に書きかえてください。
手順2 学ぶ。資格や検定のように、終わりの日が決まっているものを選びます。試験日か修了日を先に決め、そこから逆に数えて1週間の量を出します。例:試験まで12週間、テキストが240ページなら、1週間に20ページです(240÷12)。
手順3 社内で使える場面を、上司に伝える。学んだだけでは、任される仕事は変わりません。上司は、部下が何を学んでいるかを知らないことが多いからです。
( )を学んでいます。( )の仕事で、今は( )さんにお願いしている( )の部分を、次の機会から担当させてもらえませんか。最初は確認をお願いしながら進めます。
合格してから伝える必要はありません。学び始めた時点で伝えておくと、上司の方で任せる場面を考える時間ができます。
詰まりやすい所と次の手:学んでも、使う場がない。会社の仕事の分け方によっては、隣の仕事を任せてもらえないことがあります。上の文で上司に伝えた時に、いつなら、何がそろえば任せられるかを一緒に聞いてください。「この部署では任せられない」とはっきり返ってきたら、成長の場が社内にないと考えて、原因Aの手順2(人の条件を1つ書く)から進めます。学んだことは、次の職場へ持っていけます。
給料も成長も足りていた人(原因C):残る理由を、点を使って一文にする
給料は相場並みか、それより高い。この1年で覚えたことも3つ以上ある。それなのに辞めたい気持ちがあるなら、その気持ちは職場からではなく、周りの動きから来ています。同僚が辞めた。送別会があった。自分だけ止まっているように感じた。合う選択は現状維持です。
ただ「残る」と決めるだけでは、次に誰かが辞めた時にまた同じ所へ戻ります。残る理由を、3本の目盛りを使って一文にします。
人は( )点、給料は( )点、成長は( )点。( )と( )があるから、ここに残る。
例:人は2点、給料は2点、成長は2点。聞ける先輩が3人いることと、今年から任された新しい担当があるから、ここに残る。
「いい会社だから残る」と書かないのがこつです。「いい会社」は他の人の言葉で、点と中身は自分で測ったものだからです。
詰まりやすい所と次の手:また揺れる。揺れること自体は止められません。揺れた時に見返す一文を、先に決めておきます。
誰かが辞めた日には決めない。3本の点が変わった時だけ、考え直す。
スマホのメモの一番上に置いてください。送別会の帰り道に開くための一文です。給料の点が下がった、成長の点が0になった。その時は、この記事の目盛りをつけ直して、AかBの手順へ進みます。
移る・学ぶ・残る。点から選ぶ
| 原因 | 合う選択 | なぜそれか |
|---|---|---|
| A 給料がいちばん低い | 転職 | 給料の決め方は会社のもの。学んでも、人がよくても、相場との差は埋まりにくい |
| B 成長がいちばん低い | 資格 | 給料と人は足りている。足りないのは新しく覚えること。職場を変えなくても始められる |
| C どちらも足りている | 現状維持 | 足りないものがない職場を、周りの動きだけで手放すことになる |
人がいい職場にいる人は、どれを選んでも「人」を理由にしてしまいがちです。Aの人は「人がいいから」と残り、Cの人は「みんな辞めていくから」と揺れる。選ぶ時に見るのは、給料と成長の点です。人の点は、移る先の条件(Aの手順2)として使います。
どの選択も、その先の結果までは約束できません。移った先の給料が上がるか、学んだことが任される仕事につながるかは、会社と時期で変わります。
今日、1つだけやる
転職を選んだ人
今日やるのは、相場との差を出すことです。job tagで自分の職種を検索し、年齢別の年収グラフから自分の年代の数字を書き写す。給与明細と賞与の明細を出して、去年1年の総支給額を足す。引き算をして、「年に( )万円」と紙に書きます。自分で進める場合は、その紙の下に「人」でゆずれない条件を1つ書き足し、2つがそろった状態で探し始めてください。差が1割未満だった人は、問い1に戻って、本当に給料が理由かを確かめます。
差の数字は出たが、動く条件と残る条件をどこで分けるかが決まらない人は、『自分に決め手がないとき、作る基準』の穴のあいた3つの文で、一文ずつ書けます。
資格を選んだ人
今日やるのは、この1年で覚えたことを数えることです。数えた紙の裏に、この1年で他の人に聞いたこと・頼んだことを書き出します。自分で進める場合は、回数のいちばん多いものを1つ選び、その分野の資格や検定の試験日を調べて、紙に日付を書いてください。日付が決まれば、1週間の量が割り算で出ます。
学ぶと決めることと、どの講座に申し込むかを決めることは、別の決め事です。下の広告は、スマートフォンやパソコンで学ぶ形の、有料の資格講座です。扱っている資格は講座ごとに決まっています。
- 向く人:この1年で人に聞いた・頼んだことの中から隣の知識を1つ選び、試験日か修了日を紙に書いた人。
- 向かない人:給料の点がいちばん低かった人(原因Aの手順へ)。隣の知識をまだ1つにしぼっていない人。
- 申込み後に起きること:申込みの流れ、支払いの時期と方法、受講できる期限、解約や返金の決まりは、講座ごとに違います。申し込む前に、案内ページで確かめてください。
- 使わない場合:テキストと「1週間に20ページ」のような自分の量で、同じ手順を進められます。
現状維持を選んだ人
今日やるのは、残る理由を一文で書くことです。上の( )に、自分の点と中身を入れます。書けたら声に出して読み、自分の言葉として通るかを確かめてください。通らない所があれば、そこが本当は足りていない目盛りです。点をつけ直します。
「いい会社だよね」に、もう一度うなずく前に
先輩の言葉は、たぶん本当です。人はいい。ただ、それは3本のうちの1本の話でした。次に同じ言葉を聞いた時は、「人は2点。給料と成長は何点だったか」を思い出してください。辞めたい気持ちの置き場は、その2本の目盛りの上にあります。