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子どものいる暮らし

子にどう話す?小学生の親が選んだ「会社、やめることにした」の続き

約12分で読めます

退職について五つの返事を子どもと話す親

「お仕事やめるの?」に「うん、たぶん」としか返せなかった小学生の親へ。子どもに聞かれそうな5つの言葉と返す一文を対にして書き、返せない組から辞め方(自分で言う・代わりに伝える・区切りまで残る)を決める記事です。

この記事を読むと、子どもに聞かれそうな言葉に返す一文を5組持ち、その一文が言えるかどうかで、辞め方(自分で言う・代わりに伝える・区切りまで残る)を決められます。「会社、やめることにした」の続きを、先に用意する記事です。

「お仕事やめるの?」に「うん、たぶん」

小学生の子どもがいる、中堅の正社員の話です。期間の定めのない雇用で、辞めることは決めかけています。辞める話をパートナーとしていたのを、子どもが聞いていました。「お仕事やめるの?」と聞かれ、「うん、たぶん」としか返せませんでした。

返せなかったのは、理由が大人向けにしか用意されていないからです。「上司が」「評価が」「このままだと」。どれも、パートナーには通じても、小学生への続きにはなりません。そして、続きが出てこないのは、言葉の問題だけではありません。辞める理由と辞め方が、自分の中でまだ決まっていないからです。決まっていないものは、大人向けにも子ども向けにも、言葉になりません。

この記事は、順番を逆にします。先に、子どもに聞かれそうな言葉に返す一文を5組作ります。作ってみると、返せない組が出てきます。返せない組が、どこが決まっていないかを教えてくれます。そこから、辞め方を決めます。

聞かれそうな言葉と、返す一文の5組

子どもに何を聞かれるかは、家ごとに違います。この記事では、聞かれそうな言葉を5つに絞ります。左に聞かれそうな言葉、右に返す一文を書きます。右の欄の一文は、研究や専門家の助言ではなく、この記事での例です。自分の言葉に書き直してください。

聞かれそうな言葉 返す一文(例) 自分の一文 返せる?
「お仕事やめるの?」 「うん。やめることにした。次のことは、これから決める」      ○/×
「なんで?」 「今の会社でやりたい仕事ができないから、できる所を探す」      ○/×
「お金は大丈夫?」 「◯か月分は、ちゃんとある。その間に次を決める」      ○/×
「ずっと家にいるの?」 「◯月までは今の会社に行く。そのあとは、しばらく家にいる日が増える」      ○/×
「だれかにいじわるされたの?」 「いじわるじゃない。やりたいことが変わったんだ」      ○/×

右の一文には、二つの決まりごとがあります。一つは、会社の悪口にしないこと。「上司がひどい」「あの会社はだめ」は、子どもが学校で友だちに言ったとき、困る一文になりかねません。もう一つは、子どもが学校で言っても困らない長さにすること。一文で言えるものだけを右に置きます。

5組を書いてみて、右の欄が埋まらなかった組に×を付けます。×の組は、辞める理由か辞め方のどこかが、まだ決まっていない場所です。

「お金は大丈夫?」に返せない人は、まず家計の数字を出します。辞めてから次の収入までに出ていく三か月分と、手元にある額を並べて、◯か月分あるかを数えてから、右の欄を書きます。この記事では「大丈夫」とは書きません。大丈夫かどうかは、数字で決まるからです。

「なんで?」に返せない人は、理由が決まっていません。「上司が」「評価が」は、辞める理由の半分です。もう半分の「だから何をしたいのか」が決まると、子どもに言える一文になります。

「ずっと家にいるの?」に返せない人は、最終日が決まっていません。◯月が入らないと、この一文は書けません。

辞め方を子どもに話す一文

5組とは別に、もう一つ用意する一文があります。辞め方を子どもに話す一文です。

辞め方 子どもに話す一文(例)
自分で言う 「会社の人に、自分で話した。やめると決めたのは、自分」
代わりに伝える 「代わりに伝えてくれる人に頼んだ。やめると決めたのは、自分」
区切りまで残る 「◯月まで今の会社で働いて、◯月にやめる。やめると決めたのは、自分」

どの辞め方にも、最後に「やめると決めたのは自分」が付いています。辞め方が違っても、この記事では、ここを子どもに渡す中身として同じにします。

×の付いた組で、原因を分ける

×の付いた組と、辞め方の一文を見ながら、次の三つを確かめます。

  • 「なんで?」の右の欄に、会社の悪口でない一文が入ったか。
  • 上司に自分で辞めると言えるか。それとも、顔を合わせて言うことができず、辞め方が決まらないから続きが言えないのか。
  • 「ずっと家にいるの?」の◯月は、子どもの学年の区切り(学年末)か。

この三つの答えで、×の理由を三通りに呼び分けます。子どもへの続きを決めるために、ここで仮に置く分け方です。

「なんで?」に×が付いていたけれど、上司には言える人。理由が大人向けのままで、子ども向けに直していないだけです。これをAと呼びます。

「なんで?」は書けたのに、辞め方の一文が書けなかった人。上司と顔を合わせて言うことができず、辞め方が決まらないので、続きが出てこなかった。これがBです。

◯月が学年末で、そこまで残ると決めると続きが書ける人。続きは「◯月にやめる」です。これがCです。

AかCか迷う人、つまり上司に言えて学年末まで残りたい人は、Cにします。上司に言えないけれど学年末まで残りたい人も、先にCで区切りを決め、伝える日が近づいたときに、AかBを選び直します。

A:理由を子どもの言葉にして、自分で言う

Aの人は、上司に言う場面は作れる人です。止まっていたのは、理由を子ども向けに直していなかったことだけです。進め方は五つです。

一つ目に、5組の右の欄を、自分の一文で埋めます。

二つ目に、理由の一文を子どもの言葉にします。「なんで?」の右の欄が、いちばん時間がかかります。「上司が」「評価が」を、「やりたい仕事」「家にいられる時間」に言い換えます。たとえば「評価が納得いかない」は、「もっとできることがあるのに、それができる場所じゃなかった。できる所を探す」になります。会社の悪口を抜いて、自分のしたいことだけを残すと、子どもの言葉になります。

三つ目に、「ずっと家にいるの?」の◯月に入る日、つまり最終日を決めます。期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終わる決まりです(民法627条1項)。就業規則に「1か月前まで」のような定めがあれば、その期間を見て、◯月から逆算します。ここに書いた決まりは2026年10月時点のもので、変わることがあります。

四つ目に、退職届を上司に手渡します。子どもに「自分で話した」と言うための紙です。文面の例は「退職届。(最終日の日付)をもって退職いたします。(今日の日付)、(名前)」。公的な様式ではなく、この記事での例です。口で伝えるだけでも退職の意思表示は有効とされていますが、行き違いを防ぐために書面が望ましい、と労働局は説明しています。

五つ目に、子どもに続きを言います。「会社の人に、自分で話した。やめると決めたのは、自分」。そのあとに、5組の右の欄から、聞かれたものを返します。

詰まるのは、「なんで?」の一文が、書いてみると会社の悪口になる場合です。「上司が分かってくれないから」は、子どもには「上司が悪い人」と聞こえることがあります。このときは、「やりたい仕事」「家にいられる時間」のどちらかで言い直します。「やりたい仕事があって、それは今の会社ではできないから」「家にいられる時間を増やしたいから」。理由の中の「誰か」を抜いて、「自分が何をしたいか」だけにすると、悪口でなくなります。

子どもへの説明は、代行には頼めない

Bの道には、退職代行が出てきます。最初に分けておきたいのは、代行が話す相手は会社だけで、子どもではない、ということです。「代わりに伝えてくれる人に頼んだ」の続きは、親が自分で言います。

会社に対しても、弁護士でない代行にできるのは、本人が決めた退職の意思を伝えることまでです。退職日をずらす相談や、退職金・残業代・有給の扱いといった条件の話し合いは、法律に関わる事務にあたります。弁護士でない人が報酬を得てこれを行うと弁護士法72条の問題になるとされていて、弁護士会や労働委員会も注意を呼びかけています。

自分で上司に言うのと比べて変わるのは、顔を合わせるかどうかです。子どもに言う続きのほうは、どちらでも「やめると決めたのは自分」で変わりません。費用がかからないのは自分で言う道で、こちらが基本です。代行を使わずに顔を合わせない方法なら、退職届を郵便局から送る形もあります。

費用の額は、ここには載せません。自分で調べた額を、ここに書き込んでください。自分で見た額:(    )円。その額と、上司と顔を合わせずに終えたい気持ちを、並べて見ます。

B:伝えるのは任せ、続きは自分で言う

Bの人は、上司と顔を合わせて辞めると言うことができず、辞め方が決まらないから、子どもへの続きも出てこなかった人です。辞め方が「代わりに伝える」と決まれば、続きは書けます。

頼む前に決めることは三つです。

決めること 書き込む欄
最終日  月 日
退職届の文面 「退職届。(最終日の日付)をもって退職いたします。(今日の日付)、(名前)」
子どもに言う辞め方の一文 「代わりに伝えてくれる人に頼んだ。やめると決めたのは、自分」

三つ目は、頼む前に書きます。頼んだあとに考えると、「自分で言わなかった」ことの説明になりがちです。頼む前に書けば、「伝える方法を選んだ」ことの説明になります。

頼んだあと、自分でやることのいちばん上は、子どもの健康保険(保険証など)です。子どもが読者の健康保険の被扶養者に入っていた場合、読者の切り替えと一緒に、子どもの分も変わります。どれにするかで、手続きの場所が違います。

切り替え先 期限 子どもの分の手続き
任意継続 退職日の翌日から20日以内に申し出(退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上) 今の健康保険の運営者に確かめる
国民健康保険 14日以内 市区町村で子どもの分も一緒に
パートナーの健康保険の被扶養者 勤務先に確かめる パートナーの勤務先で

国民年金は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口です。期限の中で手続きの日を先に決め、最終日の前にどれにするかを決めておきます。

ほかに、離職票・源泉徴収票・退職証明書の受け取りもあります。離職票は会社が出さなくてもハローワークに申し出れば手続きが進み、源泉徴収票は退職後1月が交付の期限で、出なければ税務署に届け出ができます。上司から電話やメッセージが来ることはあります。代行が「本人への連絡は控えてほしい」と伝えても、それはお願いで、会社を縛るものではありません。来たら、「伝えたとおりです。最終日は◯月◯日で変わりません」と短く返します。

詰まるのは、子どもに「自分で言わなかったの?」と聞かれる場合です。返す一文は、「伝える方法を選んだ。やめると決めたのは、自分」。この記事では、「誰が伝えたか」ではなく「親が決めたか」を、子どもに渡す中身にします。そのために、三つ目の一文を頼む前に書いておきます。

C:学年の区切りまで残る

Cの人は、続きが「◯月にやめる」で、その◯月が子どもの学年の区切りの人です。残る期間には期限(区切りの月)があり、条件(区切りの前に伝える日を決めてあること)があります。

進め方は四つです。

まず、区切りの月を決めます。学年末なら、年度の終わりの月です。手帳に書きます。

次に、子どもに「◯月にやめる」と先に言います。5組の「ずっと家にいるの?」の右の欄が、ここで書けます。「◯月までは今の会社に行く。そのあとは、家にいる日が増える」。先に言っておくのは、区切りまでの時間を親と子どもで同じ長さにするためです。

三つ目に、会社に伝える日を決めます。就業規則の退職の申し出の期間を見て、区切りの月から逆算します。申し出の期間が1か月前までなら、区切りの1か月前が伝える日です。手帳の、その日に印を付けます。

四つ目に、それまで残り、残る間に5組の右の欄を全部埋めます。

詰まるのは、区切りの前に「来年度の担当」を振られる場合です。担当を振られると、「せっかくなら来年度も」と思いやすくなります。このとき、伝える日は変えません。手帳に印を付けた日に、「◯月で辞めます」と言います。来年度の担当を振られたことは、辞める日を動かす理由にしない、と先に決めておきます。

続きの一文で、道を選ぶ

道は、どの続きの一文なら今言えるかで選びます。

  • 「◯月まで今の会社で働いて、◯月にやめる」が言えて、◯月が学年末 → C。区切りの前に伝える日を決めずに残ろうとしているなら、まず手帳に印を付けてからCにします。
  • 「会社の人に、自分で話した」が言える → A。費用のかからない基本の道です。
  • 「会社の人に、自分で話した」が言えず、上司の前で言葉が出ない → B。ただし、退職日や条件の話し合いまで代わりにしてほしい人には合いません。代行にはできないからです。

どの道でも、一文の最後は「やめると決めたのは自分」です。

今日、右の欄を一つ書く

  • 「なんで?」の右の欄 → Aの人が今日書く欄です。いちばん時間のかかる組なので、ここが書けると残りの4組は短く済みやすくなります。
  • 辞め方の一文 → Bの人が今日書く欄です。「代わりに伝えてくれる人に頼んだ。やめると決めたのは、自分」を、自分の言葉にします。頼むのは、この一文が書けてからです。
  • 「ずっと家にいるの?」の右の欄 → Cの人が今日書く欄です。◯月を入れると、区切りが手帳の日付になります。

夕食のあとに、続きを言う

夕食のあと。子どもが、もう一度聞きます。「お仕事やめるの?」

読者は、「会社、やめることにした」と答えて、続きを言います。5組の右の欄から、聞かれたものを返します。

Aの人は、「会社の人に、自分で話した。やめると決めたのは、自分」と続けます。Bの人は、「代わりに伝えてくれる人に頼んだ。やめると決めたのは、自分」と続けます。Cの人は、「◯月まで今の会社で働いて、◯月にやめる。やめると決めたのは、自分」と続けます。

どの道でも、続きを先に用意したから、ここに着きます。「うん、たぶん」で終わった夜と違うのは、右の欄が埋まっていることです。子どもに渡すのは、辞める理由の全部ではなく、学校で言っても困らない一文と、「決めたのは自分」です。