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子どものいる暮らし

時短は断られ、辞めれば引き止め。事務の親が16時に園の門に立つ

約14分で読めます

16時のお迎えで子どもの長靴を履くのを手伝う事務職の父親

時短は「前例がない」と断られ、辞めると言えば「考え直して」。平日の時間割に16時の迎えを先に固定して働ける時間を出し、断られた根拠を確かめたうえで、時短の申し出を書面で出すか、退職日を書くかを決める記事です。

事務職で働いて3年目。保育園に通う子どもがいて、お迎えの時刻に間に合わず、延長保育を毎日使っています。パートナーは帰りが遅い。上司に時短を頼んだら「うちは前例がない」と断られ、それなら辞めると言ったら、今度は「考え直して」と引き止められた。時短も辞めるのも止められて、どちらにも進めないまま、今日も延長保育の迎えに走っている。この記事は、その人のためのものです。

読み終えたときに決まっているのは、次のことです。平日の時間割に「16時に園の門に立つ」を先に置き、そこから働ける時間を出したうえで、自分の原因を決め、時短の申し出を書面で出すのか、退職日を書くのかを決められます。

事務の仕事でも、契約の期間を決めて働いている人(契約社員、派遣など)は、辞めるときの決まりがこの記事と別です。この記事が扱うのは、期間を決めずに雇われている人(いわゆる正社員)です。また、子どもの年齢で使える制度が変わるので、この記事では年齢を一つに決めていません。育児の制度と辞めるときの決まりは、2026年10月に確かめた内容です。この先、改正や運用の変更で変わることがあります。

先に、16時を時間割に固定する

時短を頼むにも、辞めるにも、先に決めるものがあります。「何時に園の門に立つか」です。それを決めずに「時短をください」と言うと、何時間の時短が要るのかが自分でも言えず、「前例がない」の一言で終わります。辞める場合も、次に働く時間の条件が出せません。

平日の一日を、次の表に書き込んでください。「迎え」の欄は、先に「16時」と書いてあります。ここだけは動かしません。

時刻 すること
__時__分 起きる
__時__分 送り(園に着く時刻)
__時__分 始業
__時__分 昼
__時__分 終業
16時00分 迎え(園の門に立つ)
__時__分 夕食
__時__分 寝かしつけ

書き終えたら、三つの数字を取り出します。

  1. 16時に門に立つための、退社の時刻。 会社から園までの移動時間を、16時から引きます。「16時−移動__分=退社__時__分」。この時刻が、あなたの「終業」の上限です。
  2. その時刻までに終わる仕事の量。 いまの始業からその退社時刻までの時間を数え、いまの終業までの時間と比べます。「いま__時間→__時間」。減る分が、時短で頼む時間であり、辞めて次を探すときの条件でもあります。
  3. 延長保育を使わない場合に減る出費。 園の明細を見て、延長保育の月額を書きます。「月____円」。時短で働く時間が減った分の給料がどうなるかは、会社の規定で決まります。就業規則の賃金の項目と人事で確かめ、減る額が分かったら、この延長保育の額と並べて見てください。なお、制度の申し出や利用を理由に減給したり、賞与で不利に算定したりすることは、不利益な取扱いの例として国の資料に挙げられています。減った分の扱いが決まりに沿っているかは、労働局で確かめられます。

この三つが紙にあれば、上司に「何時間の時短が要るか」を言えますし、辞める場合も「次は何時までの仕事か」を言えます。

時短の決まりは、子どもの年齢で変わる

時短を頼む前に、決まりを知っておきます。子どもの年齢で、使える制度が二つに分かれます。

子どもが3歳になるまで。 会社は、1日の労働時間を原則6時間にする措置を含む短時間勤務の制度を用意することになっています(育児・介護休業法23条1項)。ただし、労使協定がある場合に限り、入社1年未満の人、週の所定労働日数が2日以下の人、仕事の性質上難しい業務の人を対象から外せます。外した場合、会社は代わりの措置を用意します(同23条2項)。あなたは入社3年目なので、「入社1年未満」の理由では外れません。「仕事の性質上難しい」に当たるかどうかは、労使協定にそう書いてあるかで決まります。

3歳から小学校に入る前まで。 2025年10月1日から、会社は「柔軟な働き方を実現するための措置」として、五つ(始業時刻の変更、テレワーク、保育施設の設置や費用の負担、養育両立支援休暇、短時間勤務)の中から二つ以上を用意し、働く人はその中から一つを選んで使う仕組みになりました(同23条の3)。どの二つを会社が選んでいるかは会社ごとに違います。五つ全部が使えるのではなく、テレワークを自分で請求できるわけでもありません。会社が用意したものの中からしか選べません。この措置も、労使協定で入社1年未満の人を外せます。

どちらの場合も、制度の申し出や利用を理由に不利益な扱いをすることは禁じられています(同23条の2、23条の3第7項)。法律は最低限の決まりで、会社の規則で、3歳より長く時短を使えるようにしている会社もあります。自分の会社がどうかは、就業規則の育児の項目と、人事の窓口で確かめます。就業規則は、会社が働く人に見られるようにしておくものです。

「前例がない」が断る理由になるかどうかは、個別の判断で、この記事では決められません。確かめる先は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。上司の言葉が決まりに当てはまるかどうかは、そこで確かめてください。

時間割を書いたら、三つ答える

時間割と、決まりを見たうえで、次の三つに答えます。答えを書く欄を付けました。

問い あなたの答え 答えが示す原因
問い1:時短の制度が自分に当てはまらないと確かめたうえで、辞めると伝えることはできますか できる→A
問い2:「考え直して」の面談がくり返され、面談のたびに引っ込めてしまい、書面を渡す場面を作れませんか はい→B
問い3:時短を断られた根拠(会社に制度がないのか、労使協定で対象外なのか、上司の判断なのか)を、就業規則と人事で確かめていませんか 確かめていない→C

この三つは、制度の区分でも診断でもなく、どちらの書面を先に作るかを決めるために、この記事が置いた分け方です。順番があります。問い3が「確かめていない」なら、問い1と問い2の答えにかかわらず、まずCです。断られた根拠が分からないまま辞めると、「前例がない」が上司一人の判断だった場合に、使えたはずの制度を使わずに辞めることになるからです。問い3を確かめた人のうち、辞めると伝えることができる人はA。伝えようとしても面談のたびに引っ込めてしまう人はBです。

原因C:申し出を書面で出し、返事をもらうまで残る

順番の都合で、Cから書きます。時短を断られた根拠を、まだ確かめていない人の道です。残る期限は「時短の申し出を書面で出し、返事をもらった日」まで。条件は、その申し出を口頭ではなく書面で出すこと。

就業規則→書面→返事

まず、就業規則の育児の項目を確かめます。人事に「就業規則の育児に関する項目を見せてほしい」と頼みます。短時間勤務の制度があるか、3歳までか、それより長いか、労使協定で対象外になる人がどう書かれているかを読みます。

次に、書面で申し出ます。書くのは、子どもの年齢、入社年数、希望する始業と終業の時刻(時間割から出した退社時刻を使います)、いつから希望するか。「前例がない」と口で言われた話は書かず、決まりに沿った申し出として出します。宛先は人事です。上司に止められないよう、人事に直接出すか、控えを取って上司と人事の両方に出します。

返事が来たら、期限です。通れば、残ります。退社の時刻が変わり、16時に門に立てます。通らなければ、理由を書面でもらってください。その理由と、就業規則の該当する項目の写しを持って、労働局の雇用環境・均等部(室)に相談します。そのうえで、AかBを決めます。

残っている間に、退職届の文面と退職日の候補を作っておきます。通らなかった日に、すぐ次の道に進めるようにするためです。

書面にしても「前例がない」なら

口頭の返事で終わらせず、「断る理由を書面でください」と頼みます。理由が書面で出てこない場合も、申し出の控えと就業規則の写しがあれば、労働局で話ができます。「前例がない」が決まりに当てはまるかどうかは、あなたでも上司でもなく、相談先で確かめます。

今日やること

就業規則の育児の項目を人事に見せてもらう頼みを、一行で書くことです。「就業規則の育児に関する項目(短時間勤務と労使協定の対象外の範囲)を確認したいので、見せていただけますか」。この一行を、明日人事に送ります。

原因A:働ける時間を条件にして、自分で出す

時短の制度が自分に当てはまらないと確かめた。それでも16時に門に立つと決めた。辞めると伝えることはできる。その人の道です。お金はかかりません。

条件を書く→退職届→引き止めに一文→園の窓口

まず、時間割から出した退社の時刻を、次の仕事の条件として紙に書きます。「終業__時__分まで」。これが、辞めたあとに持っていく条件です。

次に、退職日を書いた退職届を人事に出します。民法627条1項では、期間を決めずに雇われている人は、申し入れの日から2週間がたつと雇用が終わります。会社の承認はいりません。就業規則に「1か月前までに申し出る」のような決まりがあり、それがふつうの長さなら、その期間に合わせておくと、あとでもめにくくなります。退職届は、宛名(会社)、退職日、出す日、自分の名前を書きます。

引き止めには、一文で返します。「退職日は変えません」。理由を長く説明する必要はありません。時間割の数字は、あなたが自分のために出したもので、上司を説得するためのものではないからです。

そして、辞めたあとの保育園の扱いを、市区町村の窓口に確かめます。保育園を使うには市町村の認定が要り、「求職活動」も認定の事由に入っています。ただ、求職中の認定の期間は、90日を上限に市町村が決めることになっていて、実際の期間や必要な書類は自治体ごとに違います。「辞めても90日は使える」とは言い切れないので、辞める前に、自分の市区町村の保育担当の窓口で、退職後に認定がどうなるか、どんな届出がいつまでに要るのかを確かめてください。

面談が三回続いたら

退職の意思は会社に届けば有効で、承認はいりません。退職届を出すときに、控えに受け取り日を書いてもらいます。そのあとの面談には、「引き継ぎの話なら受けます」と返します。引き止めの話なら、受けなくてかまいません。受け取ってもらえない場合は、内容証明郵便で出す方法もあると労働局が説明しています。届いた日付も残すなら、配達証明を一緒に付けます。どちらも郵便局の窓口で頼むもので、やり方と料金はそこで確かめます。

今日やること

時間割の16時の欄に、園の名前を書くことです。「16時00分 迎え(○○保育園の門)」。固定した16時が、どこの門なのかを、紙に書く。それだけです。

書面を渡す場面だけを、人に任せるということ

原因Bの人の道は「退職代行を使う」です。頼む前に、任せられるのがどこまでかを、この記事の場面に当てて分けておきます。

弁護士でない代行に任せられるのは、本人が決めた退職の意思を会社に伝えることまでです。時短の申し出も、引き止めへの条件の話し合いも、代行には頼めません。それらは、自分で書面にして出すか、労働局に相談する話です。残業代や退職日の条件を会社と話し合うことも、法律事務にあたり、弁護士でない者が報酬を得て行うと弁護士法72条の問題になる、と弁護士会と労働委員会がそれぞれ説明しています。

自分で伝える場合との違いは、上司と顔を合わせて書面を渡すかどうか、この一点です。退職届の郵送、会社の物の返却、離職票と源泉徴収票の受け取り、健康保険と年金の切り替え、保育園の認定の確かめ。どれも、頼んだあとにあなたが動く手続きです。

会社が「代行とは話さない」と連絡を拒む例があり、その場合は本人が改めて連絡する必要が生じる、という説明も弁護士会にあります。頼めば一切やり取りせずに済む、とは限りません。

使わない場合の代わりは、人事に書面で出す方法と、郵送です。上司と顔を合わせずに退職の意思を届ける方法は、代行の他にもあります。面談で引っ込めた回数と、この二つの方法を並べてから、決めてください。費用は、自分で見た額をこの欄に書いておきます。

代行の費用:___円

原因B:書面を渡す場面を、人に任せる

「考え直して」の面談のたびに引っ込めてしまい、上司と顔を合わせると書面を渡す場面を作れない。郵送も、送ったあとの面談を思うと手が止まる。その人の道です。最初の一言だけを人に頼み、残りを自分でやります。

申し込む前に、三つそろえる

一つ目は退職日。下限は民法627条1項の2週間。就業規則の申出期間がふつうの長さなら、退職日はそちらに合わせます。二つ目は、保育園の継続の確かめ。辞めたあとの認定がどうなるか、市区町村の保育担当の窓口で先に確かめます。三つ目は、パートナーと家計の数字を出すこと。時間割で出した延長保育の額、辞めたあとに減る収入、次の仕事を探す間の生活費。数字は、この記事では作りません。あなたの明細と通帳から出してください。この三つがそろってから、頼みます。

伝えてもらったあと、保育園から順に

  • 保育園の認定の扱いを確かめる。退職したことを市区町村の保育担当の窓口に伝え、認定がどうなるか、どんな届出がいつまでに要るかを、その窓口で確かめます(自治体ごとに違います)。
  • 退職届を会社に郵送する。
  • 会社の物を返す。社員証、鍵、貸与の機器。郵送するか人事に預けるかを決め、送った日を控えます。
  • 離職票と源泉徴収票を受け取る。会社から離職票が届かないときは、ハローワークに申し出ると本人の請求として手続きが進みます。源泉徴収票の交付期限は、国税庁の案内では中途退職の場合「退職後1月」です。
  • 健康保険と年金を切り替える。すぐに次の勤め先に入らないなら、健康保険は三つから選びます。任意継続は退職日の翌日から20日以内に申し出、国民健康保険は市区町村の窓口で14日以内、もう一つは家族の扶養です。年金は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で国民年金への切り替えを届け出ます。保育園の窓口に行く日に、同じ役所で年金と国民健康保険の窓口も回ると一度で済みます。額はそれぞれの窓口で試算してもらってから選んでください。
  • 上司から直接連絡が来たら、下の「引き止めに返す一文」をそのまま使います。代行は会社に「本人への連絡を控えてほしい」と伝えられますが、それはお願いで、会社を縛る決まりではありません。

「代行を使うほどのことか」と迷ったら

ここは、数で決めます。面談で引っ込めた回数を数えてください。三回以上なら、自分で渡す場面を作れていない、と認めてかまいません。一回か二回なら、まだ原因Aの「人事に直接出す」が残っています。

今日やること

面談で引っ込めた回数を数えて、紙に書くことです。「引っ込めた回数:_回」。迷ったときは、この数字を見て決めます。

引き止めに返す一文

「考え直して」に返す一文を、退職日を変えずに返す形で用意しました。原因Aの人は自分で、原因Bの人は代行が伝えたあとに直接連絡が来たときに使います。

「退職日は、お伝えした日から変えません。それまでの引き継ぎの話でしたら、お受けします」

長く説明しなくてかまいません。時短を断られた経緯も、延長保育の話も、ここでは言わなくていい。退職日と、引き継ぎ。その二つだけです。

16時に、園の門に立つ

この記事の終わりは、園の門です。

原因Aの人は、辞めたあと、時間割から出した退社の時刻を次の仕事の条件にして。原因Bの人は、代行が退職の意思を伝えたあとに。原因Cの人は、時短の申し出が通って、退社の時刻が変わった日に。どの道を通った人も、時間割の16時の欄に書いた園の名前のところに、立っています。

延長保育の迎えに走っていた日々と違うのは、その16時が、誰かに決められた時刻ではなく、あなたが時間割の最初に固定した時刻だということです。時短が通るかどうかは、この記事では約束できません。辞めたあとに次の仕事がいつ見つかるかも、分かりません。ただ、16時の欄に園の名前を書いた紙は、どの道を通っても、あなたの手元に残ります。