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ふたりの関係

恋人の誕生日も休めない飲食の若手。来年はケーキを買って帰る側

約12分で読めます

恋人の誕生日に買ったケーキを自転車のかごに載せて帰る飲食店の若手

恋人の誕生日に「代われる人がいない」と三年続けて休めなかった飲食3年目の人へ。来年の誕生日から今日まで逆に数えて、辞める日・伝える日・有給を請求する日を一本の線に置き、最初の日付を今日書きます。

飲食店で働いて3年目のあなたは、恋人の誕生日に休みの希望を出しました。店長の返事は、今年も「代われる人がいない」。恋人には、三年続けて同じ言い訳をしました。今年は恋人が「もういいよ」と言って、ケーキを自分で買ってきた。辞めたい。でも、「人がいない」と言われるのは、辞めるときも同じだと分かっているから、言い出せない。

この記事を読むと、来年の誕生日から今日までを逆に数えて、辞める日・伝える日・有給を請求する日を一本の線に置き、自分の原因に合った最初の日付を、今日書けます。

先に、前提を二つ。この記事の読者は、契約に期間を決めずに店に雇われている人です。飲食の仕事を契約期間を決めて続けている人(契約社員、期間を決めたアルバイトなど)は、辞めるときの決まりが別です。アルバイトでも契約に期間を決めていなければ、この記事と同じ決まりです。有給については、パートやアルバイトにも、週の働く日数に応じた日数があります。もう一つ、ここに書く法律と制度は2026年10月時点のもので、あとで変わることがあります。

まず、来年の誕生日を右端に書く

カレンダーでも、紙の端でもかまいません。横に一本、線を引いてください。右端に、来年の恋人の誕生日を書きます。左端が今日です。

この線の上に、日付を右から左へ置いていきます。来年の誕生日から今日に向かって逆に数えるのは、「いつか辞める」「来年こそ休む」を、日付のある予定に変えるためです。日付がない限り、来年もまた「代われる人がいない」の前で止まります。

辞める人の線と、残る人の線

線は二種類あります。どちらを使うかは、あとの三つの問いで決めます。まずは、両方の線に置く日付を見てください。

辞める人の線(右から)

置く日付 決め方
来年の誕生日 右端。ここは動かさない
次の仕事を始める日 誕生日より前に、新しい職場で休みの希望を出せる状態にしておく
退職日 次の仕事を始める日より前
退職届を出す日 退職日の二週間以上前。就業規則に申出期間(たとえば1か月前)があり、その長さがふつうの範囲なら、それに合わせる
恋人に話す日 退職届を出す日より前
今日 左端

残る人の線(右から)

置く日付 決め方
来年の誕生日 右端
有給の請求が通るかの返事をもらう日 誕生日の1か月以上前
店長に書面で有給の請求を出す日 返事をもらう日より前。請求は早いほうが望ましい
今日 左端

書く日付は、あなたのものです。この記事は日付の例を作りません。紙に書くなら、次の形で足ります。

今日 _/_ ── 恋人に話す日 _/_ ── 退職届を出す日 _/_ ── 退職日 _/_ ── 次の仕事を始める日 _/_ ── 来年の誕生日 _/_

今日 _/_ ── 有給の請求を書面で出す日 _/_ ── 返事をもらう日 _/_ ── 来年の誕生日 _/_

右端から埋めていくと、左に行くほど日付が近くなり、最後に「今日から何日後に最初の一手を打つか」が出ます。右端だけ書いて左が空いている間は、まだ線は線になっていません。左端の日付を書いた時点で、来年の誕生日は予定になります。

線の下に、知っておくこと

有給休暇は、労働者が請求した時季に与えるのが原則です。ただし、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限って、会社は別の時季に変えることができます(労働基準法39条5項)。労働局は、この会社側の権利は比較的厳しく解釈されている、と説明しています。

「代われる人がいない」という店長の言葉が、この「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかどうかは、店の人数や、その日の営業の状況によって変わる、個別の判断です。この記事では、当たるとも当たらないとも決めません。ただ、三年続けて口頭で頼んで口頭で断られた、という形には、あとから確かめられるものが何も残っていません。だから残る人の線では、請求を書面にします。

辞める人の線については、「人がいないから辞められない」という言葉にも触れておきます。労働局は、新しい人が見つかるまで待てと言われても、申し入れから二週間がたてば退職の効力が生じる(民法627条1項)と説明しています。後任が来るまで働く義務を定めた法律はありません。退職日より前に残りの有給を使うことも、労働者の権利で、会社の承諾はいりません。退職日より後に時季を変える余地がないので、退職前の有給は労働局の説明では認められるのが通常です。ただし「全部使って辞められる」と言い切ることはせず、引き継ぎをしていないと問題が起きることもある、という労働局の注意も書いておきます。

どちらの線を使うか。三つの問い

同じ「誕生日に休めない」でも、辞める線を使うか、残る線を使うかは人によって違います。はい・いいえで答えてください。この三つの分け方は、誰かが決めた分類ではなく、線を一本に絞るためにこの記事が置いた整理です。

  • 問い① 休めないのは店の人員の決まりごとで、「辞めます」と店長に伝えること自体はできますか。
  • 問い② 店長に言うと「人がいない」で返され、三年間言えませんでした。顔を合わせて最初の一言を言う場面を、自分で作れませんか。
  • 問い③ 来年の誕生日に休める形を、今の店で、有給の請求として書面で出したことがありますか。

①が「はい」なら原因A(辞める人の線)。②が「はい」なら原因B(辞める人の線)。③が「いいえ」なら原因C(残る人の線)。③が「いいえ」で①か②も当てはまる人は、まずCの線で返事をもらい、その結果でAかBに進みます。

原因A:休めないのは店の決まりごと。伝えることはできる

道:線に日付を置いて、自分で出す

店長に伝える場面を自分で作れるなら、辞める人の線に日付を置き、その順番どおりに動きます。

手順はこうです。線に日付を置く。退職日を書いた退職届を、店長に出す。店長が受け取らなければ、本社の人事宛てに郵便局の窓口から送る(郵便局には、出した文書の内容を証明する内容証明と、配達した事実を証明する配達証明の取り扱いがあります。窓口で確かめてください)。残りの有給を退職日までに使うかを、会社と調整する。恋人に、退職日を話す。

恋人に話す日の一文の文例です。

「来年の誕生日は、自分で休みを決められる所にいる。退職日は○月○日に決めた。退職届は○月○日に出す。」

「人がいないから無理」と言われたら

退職日は動かしません。返す一言はこれです。

「退職日は○月○日です。その日までのシフトは入ります。」

後任が来るまで働く義務は法律にない、という点は、そのまま店長に言う前に、総合労働相談コーナーで確かめてから使ってください。各都道府県労働局や労働基準監督署の中などにある厚生労働省の窓口で、無料、予約なしで相談できます。退職届の控えを持っていきます。

線の左端を、誰が書くか

原因Bの手順に入る前に、退職代行が何をしてくれて、何をしてくれないかを書きます。言い換えると、線の上のどの日付を代行に任せられて、どの日付は自分で書くしかないか、です。

代行に任せられるのは、「退職届を出す日」の最初の一言だけです。弁護士ではない代行の事業者にできるのは、あなたが決めた退職の意思を店に伝えることまで。残りの有給をどうするか、退職日をどう調整するかを店と話し合うことは法律事務にあたり、弁護士でない者が報酬を受けて行うと弁護士法72条の問題になる、というのが弁護士会の説明です。労働委員会も同じ点に注意を向けています。有給や退職日のことは、自分で書面にして出すか、総合労働相談コーナーに相談します。

つまり、退職日も、恋人に話す日も、線の左端の今日も、書くのはあなたです。自分で伝える場合との違いは、店長と顔を合わせて最初の一言を言うかどうか、この一点だけです。頼んだあとも、退職届の郵送、制服や鍵の返却、書類の受け取り、健康保険と年金の切り替えは自分でやります。

会社が代行との連絡を受け付けず、本人に直接連絡してくることもあります。弁護士会は、その場合は本人が改めて自分で会社に連絡する必要が生じると説明しています。

費用がいくらかは、この記事には載せません。自分で見た額を、線の下に置いてください。

代行の費用:___円

代行を使わない場合の代わりは、本社の人事宛てに書面で出す方法です。自分で出す道は費用がかからず、これが基本の形です。

原因B:「人がいない」で返され、三年言えなかった

道:最初の一言を代行に任せる

三年間、顔を合わせて言えなかったなら、最初の一言だけを代行に任せます。線の上の日付は、すべて自分で書いたうえで、です。

頼む前に決めるのは三つで、どれも線の上の日付です。退職日(線に置いた日付)。退職日までの残りのシフトにどこまで入るか。恋人にいつ話すか(線の左のほうに置く)。この三つが線の上に書けていないと、代行は店に伝える内容を持てません。

代行が店に退職の意思を伝えたあと、自分でやることを、線の順番で並べます。

  1. 退職日までのシフト:決めたとおりに入る。店に残した書面と同じ内容にする。
  2. 退職届:退職日を書いたものを、本社宛てに郵便局の窓口から送る。
  3. 制服と鍵:決めた方法で返す。
  4. 離職票と源泉徴収票:受け取る。離職票を会社が出さないときは、ハローワークに申し出る道があり、本人の請求で手続きが進みます。源泉徴収票は、国税庁の案内では、中途退職の場合は「退職後1月」が交付の期限です。
  5. 健康保険と年金:国民健康保険は市区町村の窓口で退職後14日以内、任意継続を選ぶなら退職日の翌日から20日以内、国民年金は退職日の翌日から14日以内。どれを選ぶかは人によって違うので、窓口で確かめます。
  6. 店長から直接連絡が来たときの返し方:先に決めておく。

店長から電話が来たときの文例です。

「辞めることは、お伝えしたとおりで変わりません。退職日は○月○日で、それまでのシフトは、お送りした書面のとおり入ります。」

「シフトに穴をあけた」と言われないために

退職日までのシフトにどこまで入るかを、代行に頼む前に自分で決め、書面にして店に残しておきます。「○月○日までの、すでに決まっているシフトには入ります」の一行で書けます。この書面があれば、自分がどこまで入ると伝えたかを、あとから示せます。

原因C:有給の請求を、書面で出したことがない

道:今は残る。期限は「来年の誕生日の有給の返事が出る日」

三年間、口頭で頼んで口頭で断られてきたなら、まだ「書面で請求して、書面で返事をもらう」ことをしていません。残る人の線を使い、期限を「来年の誕生日の有給の返事が出る日」に置きます。

手順はこうです。誕生日の1か月以上前に、有給の請求を書面で出す。控えを手元に残す。通れば残る。別の時季に変えると言われたら、理由を聞き、その理由を書きとめる。そのうえで、AかBを決める。残る間に、退職届の文面と、退職日の候補を作っておきます。

有給の請求の文例です。

「○年○月○日に、年次有給休暇を取得します。○月○日までにご返事をお願いします。」

残る人も、恋人には今の段階で話しておきます。四年目の言い訳にならないように、「頼んだ」ではなく「書面で請求して、返事の期限を決めた」と言える形にします。文例です。

「来年の誕生日は、○月○日までに書面で有給を請求する。返事の期限は○月○日。通らなかったら、辞める日を決める。」

返事が来ない、または「人がいない」で返されたら

口頭で頼むと、流されます。請求は書面にして、控えを持ちます。通らない理由が「人がいない」だけだったら、その書面と返事を持って、総合労働相談コーナーに相談します。「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかどうかは、この記事では決めないと書きました。それを相談先で確かめるためです。

もうひとつの詰まりは、書面を出しても返事が来ないことです。返事の期限を書面に入れてあるので、その日を過ぎたら「○月○日までにご返事をお願いした件は、いかがでしょうか」と、もう一度書面で聞きます。二度目の書面にも返事がなければ、それは「返事が出る日」が来ないということなので、この時点で期限が来たものとして、AかBを決めます。残る期限を日付で置いてあるのは、このためです。

残りの有給の日数は、給与明細に書かれていれば、そこで分かります。書かれていなければ、店長ではなく本社の人事や給与の担当に、日数を書面で聞きます。有給は、雇い入れの日から6か月続けて働き、全労働日の8割以上出勤した人に10日つき、その後は1年ごとに増えます(労働基準法39条1項・2項)。法律の最低の線では、6か月で10日、1年6か月で11日、2年6か月で12日がつきます。入社3年目なら、2年6か月をすぎているかどうかで、ついている日数が変わります。使った分と、古いものから2年で時効になった分を引いたものが、今の残りです。

線を一本に絞る。三つの道と最初の日付

原因 使う線 道 今日書く最初の日付(最初の一手)
A:休めないのは店の決まりごと。伝えることはできる 辞める人の線 退職日を置いて、自分で出す 来年の誕生日を、カレンダーの右端に書く
B:「人がいない」で返され、三年言えなかった 辞める人の線 最初の一言を代行に任せる 恋人に話す日を、線の左のほうに書く
C:有給の請求を書面で出したことがない 残る人の線 有給の請求を書面で出し、返事まで残る 残りの有給の日数を、給与明細で見る

選ぶ基準は、「伝える場面を自分で作れるか」と「書面で請求したことがあるか」です。Aは費用がかからず、これが基本です。Bは、顔を合わせて言う場面を作れない人の道で、費用がかかり、伝えたあとは自分で動きます。Cは、まだ試していない手を試す道で、返事が出たらAかBに進みます。

もうひとつ添えておきます。来年の誕生日に休めることを、この記事は約束しません。線に置くのは、あなたの日付です。その日付を誰かに決めさせない、というのが、この記事でできることです。

来年のケーキは、あなたが買って帰る

来年の誕生日の日付を、カレンダーの右端に書きました。その日、ケーキを買って帰る側にいるために、線の左端の最初の日付を、今日書きます。

Aの人は、退職届を出す日と、その前の恋人に話す日を。Bの人は、恋人に話す日を。Cの人は、有給の請求を書面で出す日を。

どの道を選んでも、来年の誕生日の休みをどう求めるかは、店長ではなく、あなたが決めています。今日書く日付は、ひとつで足ります。