本文へ移動

ふたりの関係

恋人に「もう辞めた」と言った副店長。嘘を本当にすると決めた三週間

約11分で読めます

辞めたという嘘を認め退職の予定を本当の内容で恋人へ送る副店長

恋人に「もう辞めた」と言ったが、店長にはまだ何も言えていない副店長へ。嘘を重ねる文と事実と期限を書いた文を並べ、三週間で辞める日を決めて伝え終える手順を、自分で伝える・退職代行に頼む・期限を決めて残るから選ぶ。

この記事を読むと、恋人に送る二通目の文を持ち、三週間で「辞める日が決まり、伝え終えている」状態にする手順を、自分で伝える・退職代行に頼む・期限を決めて残る、の3つから選べます。

「もう辞めたよ」と言った翌朝、制服を着て鍵を開けた

店舗の副店長。雇用の期間に定めはありません。恋人とは交際中で、一緒には住んでいません。恋人に「心配しないで、もう辞めたよ」と言ってしまいました。本当は、店長にまだ何も言っていません。

翌朝も制服を着て、店の鍵を開けました。開店前の静かな時間に、恋人から「次はどうするの」と連絡が来ています。返事をまだ書いていません。「引き継ぎがあってもう少し出てる」と返せば、今日はしのげます。けれど来週も、再来週も、同じ文を送ることになります。

止まっているのは、嘘を重ねるか、打ち明けるかの二択だからです。この記事は、その二択を外します。嘘をついたことの善し悪しは扱いません。扱うのは、「辞めた」を本当にするための手順と日数です。手順と日数が分かれば、恋人に送る二通目の文も書けます。

「嘘を本当にする」の意味を、先に決めておく

この記事で「嘘を本当にする」とは、三週間で「辞める日が決まり、店長に伝え終えている」状態になることです。「辞め終わっている」ではありません。

三週間という長さは、民法627条1項の「2週間」から来ています。期間の定めのない雇用なら、辞めると申し入れた日から2週間で雇用は終わります。1週目に日付を決め、2週目に伝えれば、伝え終えるところまでが三週間の中に収まります。ただし、就業規則に「1か月前まで」のような常識的な長さの申し出期間があるなら、トラブルを防ぐため、まずそれに沿って申し出るのが望ましい、と労働局は説明しています。その場合、三週間で辞め終わることはできず、辞める日は三週間の先になります。法律と制度の話は、どれも2026年10月時点のもので、変わることがあります。

だから三週間で恋人に約束できるのは、「伝え終えて、辞める日が決まっている」ところまでです。恋人に送る文にも、そのとおりに書きます。

恋人への文。前と後

ここが、この記事の真ん中です。嘘を重ねる文と、事実と期限を書いた文を、左右に並べます。

前:嘘を重ねる文 後:事実と期限を書いた文
「引き継ぎがあって、もう少し出てる」 「辞めたと言ったのは嘘だった。まだ言えていない」
「来月から本当に自由になるから」 「三週間で伝え終える。○日に伝える」
「次のことは、落ち着いたら話すね」 「辞める日は、伝えたあとに決まる。決まったら日付を送る」

「前」の文は、辞めたことを前提にしています。前提が嘘なので、文を足すたびに嘘が増えます。「後」の文は、2つの文だけでできています。嘘を認める一文と、日付を書いた一文です。それ以外は書きません。言い訳も、理由も、謝る言葉の長さも、ここでは要りません。

「後」の文を書く欄を置きます。○日の所に、今日から三週間以内の日付を入れます。

「辞めたと言ったのは嘘だった。まだ言えていない。三週間で伝え終える。(  月  日)に伝える」

恋人がこの文にどう返すかは、この記事では書きません。書けるのは、副店長の側の文だけです。

三週間の中身

三週間は、1週ごとに1つのことをします。

週 やること 終わった印
1週目 退職届の日付を決めて書く。就業規則の申し出期間を確かめる 退職届に日付が入っている
2週目 店長に伝える(Bの人は、代行に頼む) 店長に退職届が届いている
3週目 引き継ぎ資料と貸与品の整理 資料ができ、返す物の一覧がある

1週目に、就業規則の「退職」の項目を見ます。就業規則は、職場の見やすい場所に置く、書面で渡す、パソコンで見られるようにする、のどれかで働く人に知らせることになっています(労働基準法106条1項。2026年10月時点)。店に置いていなければ、本部に「就業規則はどこで見られますか」と聞きます。申し出の期間が1か月前なら、退職届の日付は、渡す日から1か月以上あとにします。2週間が最低線なので、それより短くはしません。

1週目に書く退職届は、次の一文に、出す日の日付と店名・副店長・名前を添えれば足ります。

「退職届 私は、○年○月○日をもって退職いたします。」

開店前の二人の時間に口で言うだけでも、退職の意思は伝わります。ただ、あとで「聞いていない」となるのを防ぐには書面のほうが望ましい、と労働局や東京都は説明しています。2週目に店長の前に出すのは、この紙です。

副店長の引き継ぎの中身

この記事では、副店長の引き継ぎを4つに分けます。鍵、金庫、シフトの作成、発注。これを資料にして渡します。

権限 資料に書くこと
鍵 本数、どこの鍵か、保管場所、返す日
金庫 開け方の手順の所在、締めの手順、引き継ぐ相手
シフト作成 作り方の手順、提出先、次の月の分がどこまでできているか
発注 発注先の一覧、締め切りの日と時刻、発注済みで未着の分

鍵や発注の引き継ぎを義務として定めた条文は、確認した範囲では見つかっていません。ただ、引き継ぎなど必要な業務を果たさないまま辞めると問題が起きることもある、と労働局は注意しています。2週間以上前に伝え、3週目にこの4つの表を仕上げておく。副店長にとって、もめないための現実的な線は、この表です。

三週間の表を見ながら、3つの問い

表の1週目に入る前に、3つの問いに答えておきます。

①店長に、辞める日を自分の口で言えるか。言えないのは「副店長が抜けたら店が回らない」と言われるのが怖いからか、店長と顔を合わせること自体ができないからか。
②恋人に「後」の文を送れるか。送れないなら、嘘の重さより、辞める手順が見えないことが理由か。
③辞めたい理由は、店の決まり(シフト・権限・人の数)で、期限を決めれば変わる見込みがあるものか。

「後」の文を送れるかで、原因を3つに分ける

3つに分けるのは、この記事で用意した整理です。嘘の重さを測るものではありません。

A:辞めたい理由は店の側にあり、伝える相手は店長と決まっている。嘘を言ったのは、手順と日数を知らなかったから。
B:店長と顔を合わせると言えない。開店前の二人の時間に何度も言いかけて止まり、そのたびに嘘が増えている。
C:辞めたい理由は店の決まり(シフト・権限・人の数)で、期限を決めれば変わる見込みがある。恋人には先に嘘を認める。

問いの答え 原因
①で、店長と顔を合わせること自体ができない B
①には当たらず、③で、期限を決めれば変わる見込みがある C
どちらにも当たらない A

②で「手順が見えないから送れない」と答えた人は、その手順がこの先にあるので、①と③の答えで進みます。どの原因にも、当てる道は1つです。

A:「後」の文を送ってから、紙を渡す

三週間の表に沿って、5つを進めます。

  • 1週目のはじめ:恋人に「後」の文を送る。退職届より先です。先に送ると、三週間の期限が自分の外に置かれ、動かしにくくなります。
  • 1週目:就業規則の期間を確かめてから、退職届に日付を入れる。
  • 2週目:店長に、紙で渡す。
  • 3週目:鍵・金庫・シフト・発注の4つの表を仕上げる。
  • 3週目:制服、鍵、社員証、名札を一覧にして、返す日を資料に書く。

店長に渡すときの言葉は、日付と資料のことだけにします。

「○月○日で退職します。退職届を持ってきました。鍵と発注の手順は資料にまとめます」

止まりやすい所:店長から「副店長が抜けたら店が回らない」と言われることがあります。返すのは、この一文です。

「この日で辞めます。鍵と発注の手順は、この資料にまとめます」

店が回るかどうかは、店長と本部が考えることで、副店長の辞める日とは別の話です。店長が紙を受け取らないときは、本部へ送ります。退職は働く人の一方的な意思表示で成り立ち、会社の承認は要らない、と労働局は説明しています(民法97条。2026年10月時点)。送るなら郵便局の内容証明です。どんな文書を出したかを郵便局が証明し(郵便法48条)、配達証明をつければ、配達した事実と日付も残ります(郵便法47条)。本部に届いた記録が残るだけで、それで何かが決まるわけではありません。

今日やること:恋人に送る「後」の文を書きます。まだ送りません。書くだけです。

代行が伝えるのは店長にだけ。恋人には自分で

三週間の2週目を人に頼む前に、頼める範囲を確かめておきます。

弁護士でない事業者にできるのは、本人が決めた退職の意思を、会社に伝えるところまでです。副店長の引き継ぎや鍵の返し方を会社と話し合うことは、法律事務にあたり、弁護士でない者が報酬を得て行うと弁護士法72条の問題になります(2026年10月時点)。この線引きには、弁護士会や労働委員会も注意を呼びかけています。

顔を合わせずに済むのは、開店前の店長との時間だけです。三週間の表の中身は、頼んでもほとんど副店長の手に残ります。

  • 1週目:退職届に日付を書く。恋人に「後」の文を送る(代行は恋人には何も伝えません)
  • 2週目:代行が店長に伝えたあと、退職届を本部へ送る
  • 3週目:4つの表を送り、制服・鍵・社員証・名札を返す
  • 辞めたあと:書類を受け取り、保険と年金を切り替える

辞めたあとに受け取る書類は3つです。働いた期間や仕事の種類を会社が証明する退職証明書は、求めれば会社が遅れずに出すことになっていますが、求めなければ出ません(労働基準法22条1項)。源泉徴収票は、途中で辞めた場合、退職後1月が会社の交付の期限です(国税庁の案内)。離職票が届かなければ、ハローワークに申し出ると、本人の請求として手続きが進みます。保険と年金は、国民健康保険と国民年金が14日以内に市区町村で、今の健康保険を続ける任意継続は退職日の翌日から20日以内です(いずれも2026年10月時点)。

代行の費用は事業者ごとに違うので、この記事では額を書かず、欄だけ置きます。見た額は(    )円。店長に紙を自分で渡すか、本部へ送るなら、この費用はかかりません。代行を使わない場合の代わりも、この2つです。

B:開店前の二人の時間に立たない

Bの人は、開店前の二人の時間に何度も言いかけて、止まっています。止まるたびに、恋人への嘘が一つ増えます。その時間に立てないなら、2週目の「伝える」だけを人に頼む道があります。

頼む前に決めることは4つです。辞める日。鍵・金庫の引き継ぎ資料を自分で書くこと。貸与品の返し方。恋人に先に「後」の文を送ること。この4つを紙に書いてから頼みます。4つ目は、代行に頼む前に済ませます。三週間の2週目に代行が伝えるなら、「後」の文は1週目に送ります。

店長から、副店長の携帯に直接電話が来ることもあります。代行が連絡を控えてほしいと頼んでも、会社を縛る決まりは確認できていないので、電話が来ないとは書けません。「店長からの電話には出ず、用件は本部あてに文書で返す」と、4つを書いた紙の下に書き足しておきます。

止まりやすい所:鍵と金庫は郵送できない、と言われることがあります。その時は、返す日と場所を代行を通して会社に伝え、本部の担当に手渡す方法を決めます。店長ではなく、本部の担当です。手渡しの場所は、店でなくても構いません。本部の事務所でも、本部が指定する場所でも、店長と顔を合わせずに済む所を選びます。

今日やること:返す貸与品を、一覧に書きます。制服、鍵、社員証、名札。思いつく物をすべて書きます。

C:期限を決めて残る

Cの人は、辞めたい理由が店の決まりにあります。シフトの組み方、副店長の権限の範囲、人の数。期限を決めて店長に頼めば、変わる見込みがあるものです。残るのは三週間という期限と、変えてほしいこと1つという条件つきです。

手順は4つです。最初に、恋人に「後」の文を送ります。Cの「後」の文は、「辞めた」ではなく「三週間で決める」と書きます。

「辞めたと言ったのは嘘だった。まだ言えていない。三週間で、残るか辞めるかを決める。(  月  日)に決める」

次に、店長に変えてほしいことを1つに絞って頼みます。シフト・権限・人の数のうち、辞めたい理由にいちばん近いものを1つだけです。2つ以上頼むと、どれが変わったかが見えなくなります。

3つ目に、三週間後を期限にします。「後」の文に書いた日付です。

4つ目に、期限の日に決めます。変わっていれば残り、変わっていなければ、その日に辞める日を伝えます。伝える手順は、Aに戻ります。

止まりやすい所:恋人に「結局辞めないの」と言われることがあります。返すのは、期限の日付と、その日に何を見て決めるかを書いた一文です。

「○日に、シフトが変わったかどうかで決める。変わっていなければ、その日に辞めると伝える」

今日やること:変えてほしいことを、1つ書きます。

三週間後に送る、本当の文

三週間後。副店長は恋人に、今度は本当のことを送っています。

「辞める日が決まった。○日。伝え終えた」

Aの副店長の○日は、店長に渡した退職届の日付です。Bの副店長の○日は、代行が会社に伝えた日付です。Cの副店長の○日は、期限の日に自分で決めた日付です。変わっていれば残ると決めたCの人は、「残ると決めた。理由はシフトが変わったから」と送っています。どれも、本当の文です。

3つの文は違います。けれど、どの文も、三週間前に送った「後」の文の続きです。嘘を認めた一文と、日付を書いた一文。あれを先に送ったのは、三週間前の副店長でした。