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ふたりの関係

辞めたら家賃は恋人だけに。同棲中の1年目が組んだ半年分の家計

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同棲する二人が家の模型と半年分の家計を支えながら退職後の家賃を考える

辞めたら家賃の半分が払えず、恋人に言えない。半年分の家計の表を二人で埋めて「持つ月数」と「境目の月」を数字にし、自分で伝える・退職代行に頼む・期限を決めて残るのどれかを選ぶ手順。

この記事を読むと、恋人と二人で半年分の家計の表を1枚作り、「辞めても持つ月数」と「持たない場合の期限」を数字で出せます。その表を恋人に見せたうえで、自分で伝える・退職代行に頼む・期限を決めて残る、の3つから1つを選べます。

振込の画面を見るたびに、先のばしにしている

入社1年目の会社員が、恋人と二人で部屋を借りて暮らしています。家賃の半分は、毎月、自分の口座から自分の名前で振り込んでいます。会社を辞めたい。けれど辞めると、家賃の半分が払えなくなり、家賃は恋人だけにかかる。恋人には「辞めたい」とまだ言えていません。月末に振込の画面を開くたびに、「来月もう一度考えよう」と閉じている。これがこの記事の読者です。

言えないのは、辞めたあと何か月、どこからお金が出るのかを、一度も数字にしていないからです。数字がないまま「辞めたい」と言っても、そのあとの暮らしの話に答えられず、そこで止まります。数字がないまま辞める日を決めることも、できません。

だからこの記事では、先に表を1枚作ります。作るのは一人ではなく、二人です。

半年分の家計の表。二人で埋める

表は横に6か月、縦に3行です。縦は「入るお金」「出るお金」「残り」。1列目が辞めた月、6列目が辞めてから半年目です。恋人と机に向かい、二人で埋めてください。一人で埋めた表は、一人の数字です。二人で埋めた表は、二人の数字になります。

辞めた月 2か月目 3か月目 4か月目 5か月目 6か月目
入るお金            
出るお金            
残り            

「残り」は、前の月の残りに、その月の入るお金を足し、出るお金を引いた額です。式にすると、残り=前月の残り+入るお金-出るお金。辞めた月の「前月の残り」には、今の貯えを置きます。

入るお金に置くもの

入るお金は3つです。最後の給料(辞めた月に出るもの)。貯え。恋人の収入のうち、二人の生活に回る分。

最後の給料は、締め日と支払日で「辞めた月」に入るか「2か月目」に入るかが変わります。給与明細の支払日を見て、どちらの列に置くかを決めてください。恋人の収入は、全部ではなく「二人の生活に回る分」だけを書きます。ここを恋人に決めてもらうのが、二人で埋める意味です。

ここに失業の給付は入れません。自己都合で辞めた場合、受給手続きの日から7日の待期があり、そのあとに給付制限があります。退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です(2026年10月時点)。給付制限があるかどうか、何か月かはハローワークが判断するので、「1か月待てばもらえる」と決めて表に入れることはできません。額の計算もこの記事では扱いません。辞めた月と2か月目の欄は、給付なしで組んでください。もし受け取れたら、その分は上乗せになります。

出るお金に置くもの

出るお金は、家賃、光熱費、食費、自分の携帯代。ここまでは今の振込と明細を見れば書けます。

辞めたあとに増えるものが2つあります。一つは、自分で払う健康保険と年金です。会社員の間は給料から引かれていましたが、辞めると自分で払います。額は人によって違うので、この記事では例を作りません。今の健康保険を続ける場合(任意継続)の額は健康保険の運営者の窓口で、国民健康保険の額は市区町村の窓口で、試算してもらってから表に書きます。国民年金の額も、市区町村の窓口で確かめます。

もう一つは住民税です。住民税は前の年の所得にかかるので、辞めて収入が減った年にも前の年の分がかかります。辞める月によって払い方が変わります。1月1日から4月30日に辞めると、残りの住民税は、5月31日までに払われる給料や退職金からまとめて引かれます。最後の給料の手取りが、思ったより少なくなるのはこのためです。6月1日から12月31日に辞めると、残りは自分で納めるか、申し出て最後の給料からまとめて引いてもらうかを選べます(2026年10月時点。自治体の説明による。細かい扱いは住んでいる市区町村で確かめてください)。

辞める月が1月から4月なら、「最後の給料」の欄を小さめに見ておく。6月以降なら、「出るお金」に住民税の納付を入れておく。どちらかを表に書き込みます。

「残り」がマイナスになる月が、境目

6列を埋めたら、「残り」の行を左から右に見ます。6か月目までプラスなら、半年は持ちます。途中でマイナスになる月があれば、その月が「辞めてよい月の境目」です。マイナスになる月の前までに、次の収入か、追加の貯えが要る、ということです。

この境目を出すのが、表の目的です。境目が分かれば、恋人に見せる数字ができます。境目の月の欄に、鉛筆で丸をつけておいてください。あとで貯えが増えたら、丸は右の月へ動きます。動いた分が、二人の進み具合です。

恋人に表を見せる時の最初の一文

表を見せる時の最初の一文は、辞めたい理由ではなく、表の話から始めます。

「辞めたいと思ってる。でもその前に、辞めたら家賃をどうするかを数字にしたくて、この表を一緒に埋めてほしい」

表が埋まったら、もう一つ、二人で決める一文があります。

「払えない月が出たら、何で埋めるか。貯えか、辞める月をずらすか、どっちにする」

この二文が言えれば、恋人に「辞めたい」を伝える準備は終わっています。

表が埋まったら、3つの問い

表が埋まったら、3つの問いに答えます。

①表を埋めたら、半年持つか。何か月目で足りなくなるか。
②辞めたい理由は会社の側で、上司に自分の口で言いに行けるか。行けないのは「言葉が出ない」からか、「数字がない」からか。
③恋人に表を見せる前に、辞めたい理由を1行で言えるか。

境目の月と、言葉の2つで分ける

表の境目の月と、問い②の言葉の2つで分けるのは、この記事での整理です。診断ではなく、表を見ながら次の一手を決めるための分け方です。

A:表を埋めたら半年持つ。辞めたい理由は会社の側で、伝える相手も決まっている。足りなかったのは数字だけ。
B:表は埋まった。けれど上司と顔を合わせると言えず、会社に行くこと自体がつらくなっている。伝えられない間、恋人の負担が延びている。
C:表を埋めたら、3か月目のように、半年より前に足りなくなる。今辞めると家賃が恋人だけにかかる。

問い①でマイナスの月があるならC。問い②で「言葉が出ない」ならB。半年持ち、言葉も出るならAです。問い③で1行にならない人は、AでもBでも、表を見せる前に理由を1行にしてから進みます。「仕事の中身が聞いていた話と違う」「毎日の帰りが遅くて体が持たない」のように、恋人が表と並べて聞ける長さにします。

原因1つに道1つ。自分で伝える、代行に頼む、期限を決めて残る。転職や資格の話は、この記事では扱いません。この記事に書いた法律と制度は2026年10月時点のものです。変わることがあるので、手続きの前に窓口で確かめてください。

A:表を見せてから、自分で日付を言う

Aの人に足りなかったのは数字だけでした。表ができた今、手順は4つです。

まず恋人に表を見せます。上に書いた最初の一文から始めます。次に、辞める日を二人で決めます。期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間で雇用が終わるのが法律上の最低線です(民法627条1項)。就業規則に「1か月前まで」のような常識的な期間が書いてあれば、それに合わせるほうがトラブルが少ない、と労働局は説明しています。今日の日付に就業規則の期間(最低でも2週間)を足した日を、辞める日にします。その日を表の「辞めた月」の列の上に書けば、表と日付がつながります。

3つ目に、退職届に日付を書いて渡します。口頭でも退職の意思は伝わりますが、後から「聞いていない」と言われないよう、書面で渡すほうが望ましいと労働局や都は説明しています。退職は働く人の側からの意思表示で成り立ち、会社の承認は要りません。

4つ目に、辞めた月に自分で行う手続きの期限を、表に書き足します。国民健康保険は退職後14日以内に市区町村へ。今の健康保険を続ける任意継続は、退職日の翌日から20日以内に運営者へ(退職日までに健康保険に続けて2か月以上入っていることが条件)。国民年金は退職日の翌日から14日以内に市区町村へ。住民税は上で書いたとおり、辞める月で変わります(2026年10月時点)。表の「辞めた月」の列の下に、この3つの期限の日付を書きます。

詰まる所と次の手:恋人に「本当に辞めるの」と止められることがあります。その時は、表の「残り」の行を指して言います。

「残りはここまで持つ。次を探す期限は、この月にする」

持つ月数と期限を言えば、恋人が聞きたいことには答えています。それでも止まるなら、表の数字のどこに不安があるかを聞きます。恋人がどう答えるかは、この記事では書けません。書けるのは、表のどの欄を指して話すか、までです。

最初の一手:家賃と光熱費の額を、表の1列目に書きます。

表のどの欄を、代行は埋められないか

Bに進む前に、退職代行を表に当てはめて見ておきます。代行が関われるのは、表の外にある「会社に辞めると伝える」の1か所だけです。

弁護士でない事業者にできるのは、本人が決めた退職の意思を会社に伝えることまでです。辞める日の調整や給料の条件を会社と話し合うことは法律事務にあたり、弁護士でない者が報酬を得て行うと弁護士法72条の問題になります(2026年10月時点)。弁護士会や労働委員会が注意を呼びかけています。表の「入るお金」の欄、つまり最後の給料や給付の話は、代行の仕事ではありません。家賃の相談先でもありません。

では自分で伝える場合と何が違うのか。上司と顔を合わせない、その点だけです。表の「出るお金」に書いた健康保険・年金・住民税の手続きと期限は、代行を使っても使わなくても、自分で管理します。表に書いた3つの日付は、代行では動きません。

自分で伝える道は、お金がかかりません。代行を使うなら、その額は事業者ごとに違い、この記事には相場を書きません。自分で見た額を書き込み、表の「出るお金」の「辞めた月」に足してください。足した分だけ、境目の月が左に動くこともあります。それも表で見ます。

自分で見た額:(     )円

代行を使わずに顔を合わせない方法もあります。退職届を内容証明に配達証明をつけて、郵便局から送る方法です。どんな内容の文書をいつ届けたかが残ります。

B:伝える所だけ頼み、表は自分で持つ

Bの人は、表はできています。できていないのは、上司に伝えることです。会社に行くこと自体がつらくなっているなら、伝える部分だけを人に頼む道があります。伝えられない間、恋人の負担が1か月ずつ延びていることを、表はもう示しています。

頼む前に決めることは、表の横に4つ書きます。辞める日。表で決めた「持つ月数」。会社から借りている物の返し方。そして、恋人に先に話すこと。代行に頼むのは、恋人に表を見せたあとです。

頼んだあとに自分でやることは、表の「辞めた月」の列の下に、期限つきで書き足します。

やること 期限(2026年10月時点)
退職届を会社に送る 代行の案内に従って、自分で送る
離職票と源泉徴収票を受け取る 離職票が届かなければハローワークに申し出る。源泉徴収票は退職後1月が会社側の期限
健康保険を切り替える 任意継続は退職日の翌日から20日以内。国民健康保険は14日以内
国民年金に切り替える 退職日の翌日から14日以内
会社から直接連絡が来た時の返し方を決める 頼む前に

最後の行について。代行は「本人への連絡は控えてほしい」と会社に頼めますが、会社を縛る決まりはないので、電話が来ないとは言えません。「出ない。用件はメールで返す」と決めておけば、鳴った時に迷いません。

詰まる所と次の手:恋人に「代行を使うなんて」と言われることがあります。その時は、表の「残り」と「自分では言えない」を分けて話します。

「お金は表のとおり、ここまで持つ。問題はお金じゃなくて、上司の前で言葉が出ないこと。伝えるところだけ頼みたい」

あわせて、代行は給料や退職日の条件を会社と話し合えないこと、表の手続きは自分でやることも伝えます。「お金」と「言えないこと」を分けて話すことで、恋人が何を心配しているのかを聞けます。

最初の一手:恋人に「表を一緒に作ってほしい」と言います。

C:境目が右へ動く月を、期限にする

Cの人は、表を埋めたら、半年より前に「残り」がマイナスになりました。今辞めると、マイナスの月から家賃が恋人だけにかかります。だから、今は残ります。ただし残るのは期限と条件つきで、「我慢する」こととは違います。

手順は4つです。まず、足りない額を出します。足りない額は、6か月の「残り」のうち、いちばん大きいマイナスの額です。残りが毎月減っていく表なら、6か月目のマイナスの額がそれです。今の貯えは「辞めた月」の「前月の残り」として表にもう入っているので、足し直しません。

次に、その額を毎月貯められる額で割ります。割り切れなければ切り上げます。出た月数を今の月に足した月が、期限です。式にすると、

足りない額 ÷ 毎月貯められる額 = 期限までの月数(切り上げ)

数字を入れて確かめます。毎月5万円ずつ足りず、今の貯えが10万円なら、「残り」は辞めた月から順に5万、0、マイナス5万、マイナス10万、マイナス15万、マイナス20万。足りない額は20万円です。毎月3万円貯められるなら、20÷3は6.7なので、切り上げて7か月。7か月で21万円増えるので、6か月目の残りはマイナス20万+21万でプラス1万円になります。6か月だと18万円しか増えず、まだ2万円足りません。だから切り上げが要ります。

3つ目に、期限の月を恋人と手帳に書きます。二人の手帳に同じ月を書くのが条件です。4つ目に、期限までは働きながら次を探し、貯えが届いた月に伝えます。届いた時点で、AかBに進みます。

詰まる所と次の手:期限まで気持ちが持たないことがあります。その時は、期限を1か月ごとに区切ります。月末に、表の「残り」を二人で更新します。貯えが増えた分だけ、境目の月が右に動きます。動いた分を二人で見るのが、持たない気持ちの次の手です。

最初の一手:貯えの今の額を、表の「辞めた月」の「前月の残り」に書きます。

辞める前の夜、二人の机

辞める前の夜、読者は恋人と机に向かっています。半年分の家計の表は、二人で埋め終わっています。

Aの表の横には、退職届に書いた日付があります。Bの表の横には、代行に頼む日があります。Cの表の横には、期限の月があります。

3つの表は違います。けれど、どの表でも、家賃の欄は二人の名前で埋まっています。自分の名前だけで振り込んでいた画面を、月末に一人で閉じていた夜は、この表を二人で埋めた日に終わっています。