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ふたりの関係

代行代を「出すよ」と恋人。派遣社員が自分で払った後の二人の焼き肉

約12分で読めます

自分で辞め方と費用を決めた後に恋人と焼き肉を食べる派遣社員

退職代行の料金を見せたら恋人が「出すよ」と言った派遣社員へ。辞めると伝える相手は派遣先ではなく派遣元の担当。自分で言う・代行に頼んで自分で払う・満了で終えるを同じ5つの項目で並べ、恋人に自分の言葉で返せる記事です。

この記事を読むと、辞めると伝える相手が派遣先の上司ではなく派遣元の担当だと分かり、「自分で担当に言う」「代行に頼んで自分で払う」「満了まで残って更新しない」のどれかを、恋人に自分の言葉で伝えられるようになります。

派遣社員として、派遣先の事務所で働いている人の話です。派遣元と有期の契約を結んでいます。派遣先に行くのがつらくなって、辞めたいと恋人に話しました。退職代行の料金を見せたら、恋人は「出すよ」と言いました。ありがたいと思ったのに、辞めることまで恋人に決めてもらう気がして、返事をしていません。

「出すよ」に返事ができなかった理由

恋人の「出すよ」に返事ができなかったのは、確かめていないことが2つあるからです。

1つは、辞めると誰に言えばいいのか。派遣先の上司なのか、派遣元の担当なのか。もう1つは、見せた料金が、自分の今月の手取りで払える額なのか。

この2つが決まっていないと、「要る」とも「要らない」とも言えません。要ると言えば、辞めることを恋人のお金で決めることになる気がする。要らないと言えば、払えるかどうか分からないまま断ることになる。だから止まっています。

逆に言えば、この2つを確かめれば、返事は自分の言葉になります。

契約書で、言う相手と満了日を見る

派遣で働く人の雇用主は派遣元です。仕事の指示は派遣先から受けますが、雇っているのは派遣元です。派遣契約と労働契約は別の契約だ、と厚生労働省は説明しています。

だから、辞めると伝える相手は派遣元の担当です。派遣先の上司に「辞めます」と言っても、それは雇用主への退職の意思表示にはなりません。毎日顔を合わせるのは派遣先の上司なので、その人に言わなければと思いやすいのですが、言う相手が違います。派遣先の上司には、派遣元の担当から伝えてもらうよう頼めます。

ここで、手元の契約書を出してください。派遣元と結んだ雇用契約書か、労働条件を書いた書面です。見る所は2つです。

契約書で見る所 書き写す欄
契約期間(始まりと満了日) 〜  年  月  日
派遣元の担当の連絡先(電話・メール)

契約期間の欄が大事です。期間の定めのある契約は、その期間は働く約束が原則です。途中で辞められるのは「やむを得ない事由」があるときで(民法628条)、当てはまるかどうかは個別の判断になり、この記事では決められません。ただし、契約期間が1年を超える場合は、初日から1年がたったあとは申し出でいつでも辞められます(労働基準法137条)。

満了日が近いなら、途中で辞めるのではなく、「更新しない」と伝えて満了で終える形があります。これがいちばん、もめにくい形です。

もし契約書に期間の定めがなければ、申し入れから2週間がたつと雇用は終わります(民法627条1項)。どちらなのかは、契約書で確かめてください。

契約と法律の話は、2026年10月時点で確かめた内容です。決まりは変わることがあるので、迷ったら契約書と派遣元の案内を先に見てください。

「自分で派遣元に言う」と「代行に頼む」を、左右に並べる

この記事の真ん中は、この比べ方です。左に「自分で派遣元の担当に言う」、右に「代行に頼む」を置き、同じ5つの項目で見ます。右の列の空欄は、あなたが書き込む所です。

項目 自分で派遣元に言う 代行に頼む
誰に伝わるか 派遣元の担当。派遣先の上司には担当から 派遣元の担当。派遣先の上司には担当から
誰が決めたことになるか 自分 自分(代行は伝えるだけ)
頼んだあとの連絡を受けるのは誰か 自分 代行が伝えたあとは、書類や私物の連絡は自分
お金 かからない 見た料金:    円/今月の手取り:    円
焼き肉の日に話せるか 「自分で言った」と話せる 「自分で頼んで自分で払った」と話せる

並べて分かるのは、上の3つの行が、左右でほとんど同じだということです。伝わる相手は派遣元で、決めたのは自分で、あとの連絡は自分が受けます。違うのは「担当と自分で話すかどうか」と「お金」です。

お金の行に、自分で見た料金と、今月の手取りを書いてください。この記事には料金の数字を書きません。見た額は人によって違い、払えるかどうかは自分の手取りと並べて初めて分かるからです。

書き方は、こうです。今月の手取りから、家賃、光熱費、食費、通信費など、今月すでに決まっている支払いを引きます。残った額と、見た料金を並べます。残った額のほうが大きければ「今月払える」、小さければ「今月は払えない」です。来月なら払える、という場合は、来月の列にも書いてください。

今月 来月
手取り 円 円
決まっている支払い 円 円
残り(手取り − 決まっている支払い) 円 円
見た料金 円 円

「今月は払えない」と出た人は、それが答えの一つです。払えないから恋人に出してもらう、ではなく、払えないなら払わずに済む道(自分で言う、満了で終える)がある、という読み方をしてください。

一番上の表の最後の行は、恋人の「出すよ」への答えに直接つながります。どちらの列でも、「自分で決めて、自分で払った」と話せる形にしてあります。左は払うお金がないので、そのまま話せます。右は、自分の口座から払えば話せます。

契約書を出したら、3つの問い

表を埋めたら、どの道に進むかを分けます。この3つで分けるのは、この記事なりの整理で、診断のようなものではありません。

問い① 派遣元の担当に、電話かメールで「辞めたい」と言えますか。それとも、担当にも連絡したくないですか。

問い② 契約の満了日はいつですか。手帳に書いてありますか。

問い③ 恋人の「出すよ」に情けなく感じたのは、お金のことですか。それとも、辞めることまで決めてもらう気がしたからですか。

答えを契約書の満了日と並べると、原因は次の3つに分かれます。

原因A 派遣先の上司に言わなければと思い込んでいた。辞める相手は派遣元の担当で、担当になら言える。問い①で「言える」と答えた人です。

原因B 派遣元の担当にも、派遣先にも連絡を取りたくない。担当は電話をかけ直してこないし、派遣先の上司とは顔を合わせたくない。問い①で「担当にも連絡したくない」と答えた人です。

原因C 自分の手取りでは今月は払えない。そして、満了日が近い。問い②で「近い」、問い③で「お金」と答えた人です。

道は原因に一本ずつです。Aは担当に自分で言う。Bは派遣元に代わりに伝えてもらい、自分で払う。Cは満了まで残って、更新しない。

有期契約の人には、先に伝えておきたいことがあります。満了で終えるCが、いちばんもめにくい形です。だから、Cの道から書きます。満了がまだ遠い人は、Aの手順の中で、総合労働相談コーナーに先に相談する形にしてあります。

満了日が近い人(原因C):更新しないと伝えて、満了まで残る

まず、契約書の満了日を確かめます。次に、派遣元の担当に「更新しません」と伝えます。伝える時期について、法律上の期限は確かめられませんでした。契約書か、派遣元の決まりに、更新の確認をいつするかが書いてあることがあるので、そこを見てください。分からなければ、担当に「更新の確認はいつごろですか」と聞きます。

満了日まで、残ります。そして、満了日の夜を焼き肉の日に決めて、恋人に送ります。

「満了まで残って、その日に二人で焼き肉に行こう」

詰まるのは、満了の少し前に「更新してほしい」と言われるときです。有期契約の更新には、本人の同意がいります。返す文は、日付で返します。

「更新しないと、○月○日に伝えてあります」

伝えた日を手帳に書いておくと、この文が言えます。

担当になら言える人(原因A):契約書を見て、自分で言う

まず、契約書で契約期間と担当の連絡先を見ます。次に、担当に電話かメールで伝えます。言うことは2つだけです。「辞めたい」と、「いつ終えたいか」。

満了日が近い人は、「今回の契約は満了で終えたいです。更新はしません」と言います。満了まで遠い人は、その前に、総合労働相談コーナーに相談してください。厚生労働省が全国に置いている窓口で、無料で、予約はいりません。契約の途中で辞めることについて、自分の場合はどう進めるのがよいかを聞けます。「やむを得ない事由」に当たるかはこの記事では決められないので、相談してから担当に伝える順番にします。

担当に伝えたら、書面でも出します。「○年○月○日で、派遣元との契約を終えて退職します」と、終える日付と退職することを書いた紙を、郵便で派遣元に送るか、手渡します。口で伝えるだけでも意思表示としては有効ですが、行き違いを防ぐために書面にします。

派遣先の上司には、担当から伝えてもらいます。担当に伝えるときに、「派遣先には担当から伝えてもらえますか」と一言添えておくと、順番がはっきりします。派遣先の上司に先に聞かれたときは、「派遣元に伝えてあります」とだけ返します。派遣先で辞める理由まで話すかどうかは、自分で決めてかまいません。

詰まるのは、担当が「次の派遣先を探すから」と引き止めるときです。派遣元は、派遣先が変わっても雇用を続けることができるので、次の派遣先の話が出ることがあります。返す文は、日付で返します。

「今回の契約は、満了で終えます」
「○月○日で終えたいです」

次の派遣先の話に答えなくていい、という意味ではありません。答えるとしても、「終える日」は自分が決めたものとして、日付で言います。

代行に頼む相手も、派遣元

担当にも連絡したくない人は、代行に頼む前に、次の4つを知っておいてください。

  1. 頼む相手は派遣元です。派遣先に伝えてもらっても、雇用主への意思表示にはなりません。頼むときに、「派遣元に伝えてほしい」と、派遣元の名前と担当の連絡先を渡します。
  2. 弁護士でない退職代行にできるのは、本人が決めた退職の意思を伝えることまでです。契約の途中で辞める場合の扱いや、最終日や条件の話し合いを、弁護士でない人が報酬を得て行うと弁護士法72条の問題になります。弁護士会と労働委員会は、ここに注意するよう呼びかけています。「やむを得ない事由に当たるかどうか」を、代行が派遣元と話し合うことはできません。
  3. 自分で伝える場合との違いは、担当と自分で話すかどうかです。辞めたあとの書類や私物の受け取り、健康保険と年金の切り替えは、どちらの道でも自分でやります。
  4. 担当に自分でメールを送れば、この料金は払わずに済みます。費用に見合うかを考えて決めることが大切だ、と労働委員会は説明しています。使わない場合の代わりは、派遣元に書面で出すか、満了で終えることです。

料金は、上の「今月・来月」の表に書いた額で考えます。

担当にも連絡したくない人(原因B):代わりに伝えてもらい、自分で払う

頼む前に、自分で決めておくことが4つあります。

代行に頼む前に決めること 書き込む欄
伝える相手は派遣元であること(派遣元の名前・担当の連絡先)
最終日
契約期間の途中なら、その旨
自分で払うこと(口座と、払う日)

表の4行が埋まったら、派遣元に伝えてほしいと代行に頼みます。

代行が伝えたあと、自分の手でやることは次のとおりです。

  • 派遣元から届く離職票を受け取る。届かなければ、ハローワークに相談できます。
  • 源泉徴収票を受け取る。国税庁の案内では、途中で辞めた人に渡す期限は「退職後1月」です。届かなければ、税務署に相談できます。
  • 次の勤め先がすぐにないなら、健康保険を切り替える。今の健康保険を任意継続で続けるなら退職日の翌日から20日以内、国民健康保険に入るなら14日以内に手続きします。
  • 国民年金への切り替えを、退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口でする。
  • 派遣先に置いた私物を、派遣元の担当を通して、送ってもらうか取りに行く日を決める。

期限の日数は、2026年10月時点の案内によるものです。

詰まるのは、契約期間の途中で、派遣元が「やむを得ない事由」を認めないときです。代行は条件の話し合いができないので、ここで止まります。この場合は、総合労働相談コーナーに相談してから、自分で派遣元に伝える形に切り替えます。Bの道は、「伝えること自体」ができない人の道で、「契約の途中でも辞められる」と決まった道ではありません。

恋人に返す一文

表を埋め、道が決まったら、恋人に返す一文が決まります。

満了まで残ると決めた人。
「満了まで残って、その日に二人で焼き肉に行こう」

自分で担当に言うと決めた人。
「出してくれるのはうれしい。でも辞めるのは自分で決めたいから、自分で担当に言うよ」

代行に頼んで、自分で払うと決めた人。
「出してくれるのはうれしい。でも辞めるのは自分で決めたいから、自分で払う」

問い③で「決めてもらう気がした」と答えた人は、「自分で決める」と口にすることが、その気持ちへの返事になります。「お金」と答えた人は、「今月・来月」の表の「残り」の欄が返事です。

今日、契約書から写す一つ

今日やることは、どの道も契約書か手帳の上で済みます。

満了日が近い人(C)は、契約書の満了日を手帳に書いてください。担当になら言える人(A)は、契約書を出して、派遣元の担当の電話番号を紙に書き写してください。担当にも連絡したくない人(B)は、恋人に「自分で払う」と一文送ってください。文例は、すぐ上にあります。

焼き肉の店で

網の前に、二人で座っています。

自分で担当に言った人は、払うお金がなかったので、そのまま来ました。代行に頼んだ人は、自分の口座から払って、来ました。満了で終えた人は、満了日の夜に、来ました。

「自分で決めて、自分で払ったよ」

そう言うと、恋人は「出すって言ったのに」と笑います。

Aの道でも、Bの道でも、Cの道でも、自分で決めて、自分の財布で終えた人が、この店にいます。