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転職の面談で時短の希望を言うと、不利になるのか。先に書いておくと、不利になるとも、ならないとも、この記事では言い切れません。相手の会社や仕事によって変わることで、確かめられる公的な数字も見つかっていないからです。この記事で決められるのは、自分の側のことです。働ける時間を時刻で書き、「これより長くはできない線」を決めたうえで、その線をいつ、何と言うかを3つの場所から選べます。言わずに進めた場合に何が起きるかも分かります。
「時短で働きたい」が、最後まで言えなかった面談
子どもを保育園に預けて働いている人が、転職の相談の面談を受けました。担当の人に「ご希望の条件はありますか」と聞かれます。その人は「時短で働きたい」と言おうとして、言いませんでした。言うと、紹介してもらえる仕事がなくなる気がしたからです。ほかの希望だけを答えて、面談は終わりました。
言えなかった理由を、言い方の上手下手に求めると、次の面談でも同じことが起きます。止まっていた所は、もう一つ手前にあります。手元にあったのが「時短で」という言葉だけで、それが譲れない条件なのか、「できれば」の希望なのかを、自分でも決めていなかったことです。
決めていないと、聞き返された時に答えられません。「何時までなら働けますか」「残業は月に何回ならできますか」。答えが用意できていない問いが来そうだと感じると、最初の一言が出しにくくなります。
そこでこの記事では、受け答えの練習はしません。先に自分の条件を2行で決め、そのうえで、言えなかった面談の会話を、言う場所を替えて3回やり直します。
やり直す前に書く2行
紙に、次の2行を書きます。
働けるのは( )時から( )時まで。
これより長くはできない線は( )時。
1行めは、ふだんの希望です。2行めは、どうしても動かせない時刻です。この2つを分けて書くことが、この記事のいちばん大事な作業です。「時短」という一語の中には、希望と線の両方がまざっています。
時刻は、迎えの時刻から逆に出す
時刻は、気持ちではなく、保育園の時刻から計算します。
職場を出る時刻=迎えの時刻−通勤にかかる分数−ゆとりの分数
下は例の数字です。ふだんの迎えが17時、延長の保育を使った時のいちばん遅い迎えが18時、通勤が片道50分、ゆとりを10分とします。
- 1行め(ふだんの希望):17時−50分−10分=16時。「働けるのは9時から16時まで」
- 2行め(動かせない線):18時−50分−10分=17時。「これより長くはできない線は17時」
朝の時刻も同じように出します。保育園に預けられるいちばん早い時刻に、通勤の分数を足します。例の数字で、預けられるのが7時45分、通勤が50分なら、職場に着けるのは8時35分です。9時に始まる仕事には間に合います。
2行めの線が書けない人もいます。パートナーと迎えを交代できる日がある、祖父母に頼める日がある、という場合です。その時は、「自分ひとりで迎えに行く日」の線を書きます。頼める日があることは、線をゆるめる理由にせず、線の横に「週に( )日は18時まで働ける」と別に書き足します。
2行の下に、その時間でできる仕事を書く
2行が書けたら、その下に、今の仕事のうち1行めの時間の中で終えている作業を3つ書きます。例:受注の入力、請求書の作成、取引先からの問い合わせへの返事。
これを書くのは、「時短」とだけ伝えると、相手には「短い」ことしか伝わらないからです。何時間なのか、何ができるのかは、相手が想像でうめることになります。時刻と、その時間でできる仕事を一緒に言えば、相手が想像でうめる所が少なくなります。
やり直し1:最初に言う
ここからは、言えなかった面談を、言う場所を替えてやり直します。会話はどれも説明のために作った例で、実際にあった会話ではありません。時刻と仕事は、自分の2行に入れかえてください。
担当の人:ご希望の条件はありますか。
答える人:最初に、働ける時間をお伝えします。働けるのは9時から16時までです。子どもの迎えがあるので、17時より後まで働くことはできません。この時間の中で、今は受注の入力と請求書の作成を担当しています。この時間で任せていただける仕事があれば、紹介していただけますか。
最初に言うと、紹介される仕事は減ることがあります。そのかわり、残った仕事は、時間の条件に合うものです。合わない仕事の説明を聞く時間、合わない仕事のために書類を書く時間を使わずに済みます。子どもが寝たあとの時間しか使えない人にとって、この差は小さくありません。
この場所が合うのは、2行めの線がはっきり書けた人です。線が動かないのなら、線の外にある仕事は、いくつ紹介されても選べません。
やり直し2:経験を話したあとに言う
答える人:はじめに一つだけ。あとで、働ける時間についてお伝えしたいことがあります。
担当の人:分かりました。では、これまでのお仕事を教えてください。
答える人:(今の仕事で担当していること、できることを話す)
担当の人:ご希望の条件はありますか。
答える人:今お話しした仕事を、9時から16時の時間で続けたいと考えています。17時より後まで働くことはできません。受注の入力と請求書の作成は、今もこの時間の中で終えています。
やり直し1との違いは、順番だけです。相手は、できる仕事を先に聞いているので、「その仕事を、この時間で」という形で受け取れます。時間の条件が、仕事の話とつながって伝わります。
気をつける所が1つあります。経験の話が長くなると、時間の話をする前に面談が終わることがあります。そのために、例の1行めのように、はじめに「あとで時間の話をします」と置いておきます。置いておけば、最後まで言えなかった前回と同じ終わり方になりにくくなります。
この場所が合うのは、線は書けたけれど、最初の一言として時刻を出すのがどうしてもむずかしい人です。言う内容は、やり直し1と同じにします。順番を替えても、時刻をぼかさないことが条件です。
やり直し3:言わずに進める
3つめは、前回と同じく言わないまま、紹介された仕事に進む形です。この記事では、すすめません。理由を、起きる順に書きます。
- 紹介された仕事に応募し、書類を書き、話が進みます。この間、相手も自分も時間を使います。
- 働く条件を決める所まで来て、はじめて時刻を出すことになります。線は消えていないので、どこかで言う時が来ます。
- そこで合わないと分かれば、それまでに使った時間は、相手の分も自分の分も戻りません。
- 言わないまま入った場合は、入った先の勤務時間が線の外にあると、迎えに間に合わない日が出てきます。
「入ってから、短時間勤務の制度を使えばよい」と考える人もいます。けれど、移った先の制度が入ってすぐ使えるかどうかは、会社によって違います。この点は、あとの「制度の面から見た、移った先の時短」で書きます。
3回のやり直しをならべる
| 言う場所 | 紹介される仕事 | 自分が使う時間 | あとに残ること |
|---|---|---|---|
| 1:最初に言う | 減ることがある。残るのは時間の条件に合う仕事 | 合う仕事にだけ使う | 残らない |
| 2:経験を話したあとに言う | 減ることがある。仕事の話とつなげて伝わる | 合う仕事にだけ使う | はじめに一言置かないと、言う前に終わることがある |
| 3:言わずに進める | その場では減らない | 合わない仕事にも使う | あとで言うことになる。言わずに入れば、迎えの問題が残る |
この表は、この記事での整理です。どの場所で言えば採用されやすいか、という話ではありません。くらべているのは、自分の時間の使い方と、線が守られるかどうかです。
制度の面から見た、移った先の時短
「時短」と言う時、多くの人は、今の職場で使っている短時間勤務の制度を思いうかべています。この制度が法律でどう決まっているかを、厚生労働省の資料で確かめました。2026年10月11日時点の内容で、今後変わることがあります。
- 3歳に満たない子を育てる人について、短時間勤務の制度(1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置をふくむ)を用意することは、会社の義務です。
- 3歳から小学校に入る前の子を育てる人については、会社が5つの措置(始業時刻などの変更、テレワークなど、保育施設の設置運営など、養育両立支援休暇、短時間勤務制度)から2つ以上を用意し、働く人はその中から1つを選びます(2025年10月1日施行)。会社が短時間勤務を選んでいなければ、短時間勤務は使えません。
- 短時間勤務は、その会社に労使協定という取り決めがある場合に限り、続けて雇われた期間が1年に満たない人を対象から外せます。協定がなければ、入って1年に満たない人も対象です。
- 法律は最低限の決まりです。法律より長い期間使えるようにしている会社もあります。
ここから言えるのは、「移った先でも、今と同じ制度がすぐ使える」とは限らないことです。使えるかどうかは、移る先の就業規則と労使協定で決まります。そのため、制度に頼る前に、もともとの勤務時間が自分の2行の内側にあるかどうかを見ます。制度を使う前提で進めるなら、いつから使えるのかを、入る前に書面で確かめます。
移った先で、入社して1年に満たない人が対象から外れることがある制度を一覧で見たい人は、入ってすぐは使えない制度の一覧を確かめてください。
採用の場面についての決まりも、確かめた範囲で書いておきます。厚生労働省は、採用の選考で、家族に関することを会社が把握しないよう配慮すべき事項としています。また、子どもが生まれたあとも働き続けるかを女性にだけ聞くなど、面接で男女に違う質問をすることや、男女に同じ質問をしていても、男女のどちらかを採用するために、一方の性の答えだけを採否の判断に使うことは、男女雇用機会均等法に違反する例とされています(2026年10月31日確認)。これは会社の選考についての決まりです。自分から働ける時刻を伝えた時にどう扱われるかまでを決めたものではありません。個別の出来事がこの決まりに当たるかどうかは、この記事では判断しません。
この記事の会話の文例は、公的な根拠のあるものではなく、この記事での整理です。
2行を書いてみると、止まっていた原因が分かれる
2行を書こうとした時の手ごたえで、止まっていた原因は3つに分かれます。次の問いに順に答えてください。分け方はこの記事での整理です。
- 「これより長くはできない線」を、時刻で書けたか。
- その時間で働ける仕事に、今の経験で応募できるものを思いうかべられるか。
- 今の職場で使っている制度は、移った先でもすぐ使えるかを知っているか。
A:線は決まっていた。言う時期と言い方がなかっただけ(転職)
問い1で時刻が書け、問い2でも仕事が思いうかんだ人です。前回の面談で足りなかったのは、条件ではなく、言う場所と形でした。
- 2行と、その時間でできる仕事3つを書く。
- 言う場所を選ぶ。線がはっきりしているので、やり直し1(最初に言う)を選ぶ。
- 時刻とできる仕事を一緒に伝えて、仕事を探す。
人に相談せず、自分で募集を探す場合も同じです。応募する時の希望を書く欄や、最初の連絡の文に、同じ内容を書きます。
例:勤務時間は9時から16時を希望します。17時より後の勤務はできません。この時間の中で、受注の入力と請求書の作成を担当できます。
詰まる所:紹介が減るのが怖い。減ること自体は、起きることがあります。そこで、2行を書いた紙の下に、もう1行足します。「減ったあとに残るのは、17時の線の内側にある仕事」。減った分は、紹介されても選べなかった仕事です。紙にこの1行があると、面談の前に読み返せます。残った仕事が0件だった時は、Aではなく、次のBに当たります。
B:その時間で働ける仕事に、今の経験では応募できるものが少ない(資格)
問い2で、仕事がほとんど思いうかばなかった人です。線を伝えても、紹介される仕事が残らないかもしれません。この場合、言う時期を工夫しても、選べる仕事は増えません。先に、短い時間でも任される仕事に届く知識を足します。
- 短い時間でも任される仕事を調べる。
- 足りない知識を1つ選ぶ。
- 子どもが寝たあとの時間で学ぶ。
調べる時は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)が使えます。気になる仕事の名前で検索し、「労働条件の特徴」で労働時間と、短時間で働く人の時間当たりの賃金を見ます。続けて「しごと能力プロフィール」のスキル・知識を開き、今の自分にない項目を書き出して、その中から1つを選びます。
詰まる所:学ぶ時間がない。学ぶものの試験の日や、講座の終わりの日から、逆に数えます。下は例の数字です。
例:1日に使えるのが40分、試験の日まで90日あるとします。子どもの熱などで使えない日を3割と見ると、使える日は90×0.7=63日です。40分×63日=2,520分で、42時間になります。
学ぶものの案内に書かれた学ぶ時間の目安が42時間より多い時は、申し込む回を1つ後ろにずらします。1日の40分を無理にふやす決め方は取りません。
C:今の職場の制度が使えていて、移ると最初は使えない場合がある(現状維持)
問い3に「知らない」と答え、今の職場では短時間勤務などの制度を使えている人です。先に書いたとおり、移った先では、入って1年に満たない人が対象から外されている会社があります。今の働き方は、今の職場に続けて勤めているから使えている面があります。
- 今の制度がいつまで使えるかを、就業規則で確かめる。
- 期間をのばせるか、ほかに使える制度があるかを、人事に聞く。
詰まる所:聞きにくい。制度の名前と、知りたいことを2つにしぼって聞きます。
例:今、育児のための短時間勤務を使っています。今の決まりでは、子どもが何歳になるまで使えるでしょうか。その後も続けて使える決まりや、ほかに使える制度があれば、教えていただけますか。
答えが「あと2年使える」なら、その2年は今の職場で働き、制度が終わる時期に合わせてもう一度2行を書き直す、という決め方ができます。答えが「来年の3月まで」なら、そこが次に考える時期になります。期限が分かると、今すぐ動く理由があるのかどうかが見えてきます。
今の職場で働き方を頼んで断られたことがある人は、制度の名前・期間・進め方で頼み直す型で、頼みを言い直せます。
移る・学ぶ・残るを分ける基準
- 転職を選ぶのは、線を時刻で書けて、その時間で応募できる仕事が思いうかぶ人。足りなかったのは言う場所と形なので、それを決めて探します。
- 資格を選ぶのは、線は書けても、その時間で応募できる仕事が少ない人。言い方より先に、任される仕事をふやします。
- 現状維持を選ぶのは、今の制度が使えていて、その期限をまだ確かめていない人。期限を確かめるまでは、今の働き方を手放しません。
AとCの両方に当たる人は、Cの「期限を確かめる」を先に済ませます。就業規則を読むだけなら、誰にも知られずにできます。期限が近いと分かったら、Aの手順に進みます。
選んだ道の、最初の一手
転職を選んだ人
紙に2行を書きます。「働けるのは( )時から( )時まで」「これより長くはできない線は( )時」。保育園の迎えの時刻と通勤の分数を見ながら、時刻を入れます。その下に、今の仕事のうち、その時間の中で終えている作業を3つ書きます。ここまでが今日の分です。次の面談でも、自分で募集に応募する時でも、この紙の内容をそのまま最初に伝えます。
資格を選んだ人
子どもが寝る時刻と自分が寝る時刻のあいだから、家事の時間を引いて、1日に使える分数を紙に書きます。数字が書けたら、job tagで気になる仕事を1つ検索し、自分にない知識の項目を書き出す所まで進めます。学ぶものを決めるのは、項目を見てからで間に合います。
学び方の選択肢の1つに、オンラインの資格講座があります。有料です。job tagで自分にない知識の項目を書き出し、学ぶものを1つに決めてから見てください。1日に使える分数と試験の日までの日数から出した時間で進められる量か、費用はいくらかを、申し込む前に講座の案内で確かめます。
- 向く人:job tagで自分にない知識の項目を書き出し、学ぶものを1つに決めた人。
- 向かない人:学ぶものがまだ決まっていない人。本や公的な職業訓練で学ぶと決めた人。
- 申込み後に起きること:申込みの流れ、支払いの時期と方法、受講できる期限、解約や返金の決まりは、講座ごとに違います。申し込む前に、案内ページで確かめてください。
- 使わない場合:ここまでの手順は、市販の本や公的な講座の案内でそのまま進められます。
現状維持を選んだ人
就業規則を開き、今使っている制度の名前を探して、「子どもが何歳になるまで」「いつまで」と書かれている所を読みます。期限を紙に書き写します。就業規則の場所が分からない時は、人事の窓口に「就業規則はどこで読めますか」と聞きます。
前回の面談で言えなかった一言は、「時短で働きたい」でした。次に言うのは、その一言ではありません。「働けるのは9時から16時まで。17時より後はできません。この時間で、これができます」。2行が書けていれば、どの場所で言うかは、自分で選べます。
この記事で確かめた公的な情報
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- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」事業主が講ずべき措置(労使協定で対象から外せる人) 2026年10月11日確認
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」 2026年10月11日確認
- 厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」 2026年10月11日確認
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag) 2026年10月11日確認