介護施設で働く、20代後半から30代の親。子どもは春に入園します。夜勤のある交代制で、施設長に「夜勤を減らしてほしい」と頼んだら、「人がいない」と返されました。次に「辞めたい」と言ったら、同じ「人がいないから無理」で返されました。夜勤明けに子どもを迎えに行く日が続き、春の入園式の日に、自分が立っていられるかを考えています。
この記事を読むと、施設長に聞く一問を持ち、その答えによって、自分で辞める日を伝える・代行に頼む・条件つきで残る、を選べます。「後任が来るまで」は法律上の決まりではない、ということも分かります。
先に、相談先を置きます
夜勤明けの寝不足が続いて、体の調子に出ている人は、この先を読む前に医療機関へ。手がふるえる、眠れない、食べられない、といったことが続いているなら、記事より先に受診です。
働くことのつらさは、厚生労働省の事業「こころの耳」で、電話・SNS・メールで相談できます。職場の決まりについての相談は、総合労働相談コーナー(無料・予約不要)です。2026年10月時点の案内です。
この記事は、施設長に何を言えばよいかを整理するもので、体の調子を判断するものではありません。
「減らす」と「辞める」を一緒に言うと、同じ言葉で返される
施設長に2回、別のことを頼んで、2回とも「人がいない」で返されました。施設長が同じ答えしか持っていないのではなく、頼み方が、相手が答えやすい形になっていないことがあります。この記事では、そこを変えます。
「夜勤を減らしてほしい」は、何回に、いつから、が入っていません。「辞めたい」は、いつ、が入っていません。どちらも、施設長の側からすると「人がいない」としか返せない形です。
この記事では、「減らす」と「辞める」を一緒に言うのをやめて、一問だけを聞きます。
施設長に聞く一問
「来月のシフトで、夜勤を月○回までにできますか」
○には、自分が続けられる回数を入れます。月4回なら4、月2回なら2。入園してからの送り迎えと、夜勤明けの日の体の状態から、自分で決めます。この記事では回数を決めません。交代制勤務の回数についての公的な決まりは、この記事では確かめられていないので、書きません。
「辞める」は、この一問に混ぜません。混ぜると、施設長が「辞める」のほうに答えて、「人がいないから無理」に戻ることがあります。
一問を聞く場は、シフト表が出る前です。次のシフト表が出てからでは、「もう組んでしまった」になります。
答えを3つに仕分ける
一問への答えは、3つに分かれます。この仕分けが、この記事での原因の整理です。だれかが決めた基準ではありません。
| 答え | 原因 | 道 |
|---|---|---|
| 「できる」(回数の約束が返ってくる) | C | 条件つきで残る |
| 「できない。でも辞めるのも困る」 | A | 自分で辞める日を伝える |
| 聞くことがもうできない。施設長と顔を合わせると「人がいない」で終わり、話す場が持てない | B | 退職代行を使う |
原因1つに、道は1つです。
仕分けを確かめる問いが、あと2つあります。
問い②:辞めたい理由は、夜勤の回数だけか、職場そのものか
夜勤が減れば続けられるなら、答えが「できる」のときにCへ進めます。夜勤が減っても職場そのものが続けられないなら、答えが「できる」でも、原因はAです(答えが「できる」でも、辞める日を自分で伝える道に進みます)。
問い③:入園式の日と、辞める日の間に、保育の利用の手続きが入るか
入園先が保育所の場合、保育所を使うには、市町村の「保育の必要性」の認定が要ります。事由には、保護者の就労や、求職活動などがあります。辞めると、事由が就労から求職活動に変わります。求職活動の場合の認定の有効期間は、90日を限度として市町村が決める期間です。90日は上限で、市区町村によって短いことがあります。
辞める日が入園式より前なら、入園の手続きと、事由の変更の手続きが重なります。入園式より後なら、入園してから事由を変える届け出になります。どちらの場合も、入園の前に、市区町村の保育の窓口で、退職の時期と利用の続け方を確かめます。必要な書類と期限は、市区町村で違います。この記事は保育所の場合を書いています。幼稚園など別の園の場合は、園と市区町村に確かめてください。2026年10月時点の制度で、変わることがあります。
「人がいない」は、辞められない理由になるか
施設長の「人がいないから無理」に対して、知っておくことが1つあります。
後任が来るまで働く決まりは、法律にありません。期間の定めのない雇用では、退職を申し入れた日から2週間がたつと、雇用は終わります(民法627条1項)。「新しい人が見つかるまで待て」と言われても、2週間で退職の効力が生じる、というのが労働局の説明です。就業規則に「1か月前」などの申し出の期間があり、それが常識的な長さなら、それに合わせて申し出るほうがもめにくくなります。
ただし、引き継ぎをできる範囲で残すのが、もめない線です。引き継ぎをしていない場合に問題が起きることもある、と労働局は注意しています。引き継ぎをしなかったときに損害の賠償を求められるかどうかは、個別の判断になるので、この記事では「ない」とは書きません。
原因A:答えは「できない」。辞めるのも「人がいない」で止められる
Aの人は、一問の答えが「できない」で、辞めると言えば「人がいない」で止められます。伝える相手は施設長と決まっていて、足りないのは日付です。道は、自分で辞める日を伝える、です。
手順
- 入園式の日から逆に、辞める日を決めます。基準は、入園式の前の晩に夜勤が入らないこと。つまり、辞める日を入園式より前に置きます。2週間が法律上の最低線で、就業規則の期間が常識的な長さなら、それに合わせます。
- 退職届に辞める日を書いて、施設長に渡します。口で伝えても退職の意思表示は有効ですが、「聞いていない」と言われるのを防ぐため、書面で渡します。
- 引き継ぎ資料を作ります。担当している利用者の記録の場所、夜勤の手順、申し送りの決まり、薬や食事の注意点がどこに書いてあるか。自分で全部を書くのではなく、「どこを見れば分かるか」を書きます。
- 市区町村の保育の窓口で、退職後の利用の続け方を確かめます。辞める日、求職活動に変わる日、必要な書類、期限。窓口で聞くことを紙に書いていくと、話が早く進みます。「○月○日に退職します。事由が求職活動に変わったあと、利用を続けられる期間と、出す書類と期限を教えてください」。この一文で足ります。
詰まる所と次の手
「後任が来るまで」と言われることがあります。ここで日付を引っ込めると、次の一問がまた「人がいない」で終わります。
次の手は、後任を待つ決まりは法律にないと伝え、日付と引き継ぎ資料の案を一緒に出す一文です。
「後任が来るまで働く決まりは、法律にはないと確かめました。○月○日で退職します。引き継ぎ資料の案を作りましたので、見ていただけますか」
退職届を受け取らない場合でも、退職の意思は施設長に届いたときに効力が生じます。受け取らなければ、郵便局から施設あてに送る方法があります。それでも話が進まなければ、総合労働相談コーナーへ。
代行が施設に届けるのは「辞める」の一言だけ
Bの道に入る前に、一問とシフト表の話に戻して、代行の範囲を確かめます。
代行が施設に届けるのは、「辞める」の一言だけです。一問を聞くのも、引き継ぎ資料を書くのも、保育の窓口に行くのも、あなたです。
夜勤の回数の相談、退職日の調整、残業代や残っている有給休暇の扱い。こうした条件の話を、あなたの代わりに施設と話し合うことは、弁護士でない代行にはできません。弁護士でない人が報酬を受けてやると、弁護士法72条の問題になるからです。弁護士会と労働委員会が、この点に注意を呼びかけています。つまり、「夜勤を月○回にしてほしい」という一問は、代行には頼めません。一問を聞く道(AとC)と、代行に頼む道(B)は、ここで分かれます。
自分で伝える場合とくらべて変わるのは、施設長と顔を合わせない、という点だけです。
費用は、見たサービスごとにちがいます。この記事では額を書きません。
自分で見た額:( )円
自分で伝える道には費用がかかりません。退職届を書面で渡すか、郵便局から施設あてに送れば、かかるのは郵便の料金だけです。郵便局には、送った文書の内容と、届いた事実を証明する扱いがあります。シフト表の手前で顔を合わせられない人だけが、この額を払って「伝える」部分を替える、という位置づけです。
原因B:一問を聞くことが、もうできない
Bの人は、施設長と顔を合わせると「人がいない」で終わり、話す場が持てないまま、夜勤の日だけが来ています。一問を聞く場そのものが作れない。道は、退職代行を使う、です。
頼む前に決めること
- 辞める日。2週間が最低線。就業規則の期間が常識的な長さなら、それに合わせます。
- 夜勤の入っている日の扱い。辞める日までの勤務を、どこまで出るか。代行は意思を伝えるだけで、シフトの調整はしないので、これは自分で決めます。
- 貸与品の返し方。制服、鍵、名札、記録の端末など。郵便局から送るか、だれかに預けるか。
- 保育の窓口への確認を、先に済ませること。辞める日が決まったら、市区町村の保育の窓口で、求職活動への変更の手続きと期限を確かめてから、頼みます。
頼んだあとに、自分でやること
介護職の親に固有のことが2つあり、それを先に書きます。
| この記事に固有のこと | 中身 |
|---|---|
| 引き継ぎ資料を送る | 担当の利用者の記録の場所、夜勤の手順、申し送りの決まりを「どこを見れば分かるか」の形で1枚にし、退職届と一緒に送る |
| 保育の事由の変更を届け出る | 市区町村の保育の窓口。就労から求職活動へ。書類と期限は市区町村で確かめる(2026年10月時点の制度で、変わることがある) |
そのほかは、ほかの退職と同じ手続きです。退職届は、代行の案内に従って、書面を郵便局から自分で送ります。離職票は、施設が手続きをしない場合、ハローワークに申し出れば本人の請求で手続きが進みます。源泉徴収票は、途中で退職した場合、交付の期限が退職後1月です。健康保険は、任意継続なら退職日の翌日から20日以内、国民健康保険なら14日以内、家族の被扶養者に入るなら家族の勤務先で。国民年金は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口へ。
施設から直接くる連絡への返し方も、先に決めておきます。施設からの連絡を止める決まりは確認できていないので、連絡が来る前提で、出るか、書面で返すかを決めます。
詰まる所と次の手
「利用者を置いていくのか」と連絡が来る。ここで手が止まることがあります。
代行は意思を伝えるだけで、引き継ぎの話し合いはしません。次の手は、引き継ぎ資料を自分で書いて送ることです。担当の利用者の記録の場所、夜勤の手順、申し送りの決まり。「どこを見れば分かるか」を1枚にして、退職届と一緒に送ります。それが、もめない線です。
原因C:答えは「できる」。辞めたい理由は夜勤の回数だけだった
Cの人は、一問の答えが「できる」で、夜勤が月○回までなら続けられます。問い②で、辞めたい理由は夜勤の回数だけだと確かめた人です。道は、条件つきで残る、です。
手順
- 来月のシフト表が出る日を、期限にします。
- 条件は「夜勤が○回以下」。一問で聞いた回数です。
- シフト表が出た日に、夜勤の回数を数えます。
- 守られていれば、残ります。守られていなければ、その日に辞める日を伝えます。Aの手順に入ります。
詰まる所と次の手
口約束で終わる。「できる」と言われたのに、シフト表を見たら回数が変わっていない。
次の手は、一問の答えを、自分の手帳に日付つきで書いておくことです。
「○月○日、施設長に、来月の夜勤を月○回までにできるかと聞いた。答えは『できる』」
シフト表が出たら、それが証拠になります。守られていなければ、「○月○日に『できる』と聞きました。来月のシフトは○回でした。○月○日で退職します」と、日付で言えます。
答えで、道を選ぶ
道は、一問の答えで決まります。選ぶ基準は、答えを聞けたかどうかと、その中身です。
答えが「できない」で、伝える相手が施設長と決まっている人は、A。費用はかかりません。
一問を聞く場が作れず、顔を合わせると「人がいない」で終わる人は、B。ただし、夜勤の回数や退職日の相談まで頼みたい人には合いません。弁護士でない代行にはできないからです。
答えが「できる」で、辞めたい理由が夜勤の回数だけの人は、C。夜勤が減っても職場そのものが続けられない人は、Cを選べません。
費用のかからない基本は、自分で日付を伝える道です。Bは、一問を聞く場が作れない人が、施設長の前に立たずに「辞める」を届けるための道です。
今日、シフト表で数えるもの
Aの人:来月のシフト表の、夜勤の回数を数えます。その数が、一問の○を決める材料になり、辞める日から逆算する材料になります。
Bの人:市区町村の保育の窓口の電話番号を調べます。かけるのは、辞める日が決まってからでかまいません。番号を手帳に書くだけで、頼んだあとにやることの1つ目が決まります。
Cの人:「夜勤が月○回以下なら続ける」の、○を決めます。送り迎えと、夜勤明けの日の体の状態から、自分で決める数です。
春の入園式の朝
春の入園式の朝。読者は前の晩に眠り、子どもの手を引いて、列に並んでいます。
Aの人は、辞めた翌月です。入園式の日から逆算して決めた辞める日が、入園式より前にありました。保育の窓口で確かめた手続きは、済ませてあります。
Bの人も、辞めた翌月です。施設長とは顔を合わせずに辞めました。引き継ぎ資料は、自分で書いて送りました。
Cの人は、夜勤が○回以下になった月です。シフト表で数えた回数が、約束の数を越えていませんでした。
どの道でも、前の晩に夜勤は入っていません。列に並んでいるのは、寝不足のない親です。