この記事を読むと、この二週間で上司に言われた言葉を三つの箱に分けて数え、自分の原因がどれかを決めて、恋人に打ち明ける夜を自分で決められます。「ふつう」の代わりに言う一文も、ここで決めます。
先に一つ断っておきます。ここに書く退職日の決め方は、期間の定めのない雇用(正社員など)の人のものです。契約社員や派遣のように期間の定めがある雇用の人は、別の決まり(民法628条)で、そのままは当てはまりません。
「今日どう?」に「ふつう」と返して、二か月
入社2〜4年目。上司に「お前は何をやらせてもだめだ」といった言葉を、人前で言われている人の話です。
帰ると、恋人が「今日どう?」と聞きます。「ふつう」と返します。上司の言葉を恋人に言えば、恋人を心配させる。恋人まで、会社を嫌いになる。そう思って、二か月ずっと「ふつう」で通しています。
「ふつう」が続いているのは、恋人に言えない理由があるからだけではありません。自分が辞めると決めているのかどうかを、自分で分かっていないからです。辞めると決めていないなら、恋人に言ったあとに、自分が次にどうするかを言えない。辞めたいのに、伝える相手がその上司しかいないなら、恋人に言ったところで、会社には何も言えない。この二つのどちらなのかが分からないまま、恋人にも、会社にも、何も言えずにいます。
この記事は、その「どちらなのか」を、上司の言葉を数えることで決めます。
切り分けの前に、相談先を先に置きます
言葉を数える前に、先に書いておくことがあります。
眠れない。食べられない。出社の前に体が動かない。こうしたことがある人は、言葉を数える前に、相談先に連絡してください。数えるのは、そのあとでかまいません。
働く人の心の相談は、厚生労働省の事業「こころの耳」に、電話・SNS・メールの相談があります。職場のいじめ・嫌がらせの相談は、総合労働相談コーナーが受けています。厚生労働省が各都道府県労働局や労働基準監督署の中などに置いている窓口で、費用はかからず、予約もいりません。体の不調は、医療機関へ。これは2026年10月時点の案内で、受付の方法や時間は変わることがあります。
この記事は、上司の言葉が決まりの上でどう扱われるかを判定する記事ではありません。当てはまるかどうかは、相談先で確かめるものです。この記事がやるのは、言葉を数えて、自分が何を決めていないかを見つけることまでです。
二週間の言葉を、三つの箱に分けて数える
紙を一枚用意して、この二週間で上司に言われた言葉を、思い出せる限り書き出します。一行に一つ。日付、場所、言葉、そのとき誰がいたか、の順です。
「(日付)、(場所)、「(言われた言葉)」、(そこにいた人)」
この一行の形は、あとで相談先に持っていくときにも、そのまま使えます。記録は、恋人に話すための材料であると同時に、相談先に出す材料です。
書き出したら、一行ずつ、三つの箱のどれかに入れます。この三つの分け方は、この記事での整理です。診断ではありません。
| 箱 | 入れる言葉 | 数 |
|---|---|---|
| 箱1「仕事の中身への指摘」 | 直せる点が入っている言葉。「この資料の数字が違う」「報告が遅い」のように、何を直せばよいかが言葉の中にあるもの | |
| 箱2「人そのものへの言葉」 | 能力・性格・家族・容姿に向けられた言葉。「お前は何をやらせてもだめだ」のように、直す点が言葉の中にないもの | |
| 箱3「人前で、くり返される言葉」 | 箱1か箱2のうち、人前で言われ、同じ言葉が二回以上出ているもの。場所と回数を横に書く |
箱3は、箱1・箱2と重なってかまいません。同じ言葉が、箱2にも箱3にも入ることがあります。数えるときは、重なったまま数えます。
どの箱か迷う言葉は、「その言葉の中に、明日直せることが書いてあるか」で分けます。書いてあれば箱1、なければ箱2です。「だめだ」のように、直す点が入っていない言葉は、仕事の話に聞こえても箱2です。迷った言葉は、箱の横に「迷」と書いておき、相談先に行くときにそのまま持っていきます。
数え終えたら、三つの箱の数を見ます。箱2と箱3の数が、恋人に言う一文の材料になります。「上司がひどい」ではなく、「二週間で、人そのものへの言葉が(数)回、そのうち人前が(数)回」と、数で言えるようになります。
箱の数で、原因を決める
三つの箱の数が出たら、その数を見ながら、次の三つの問いに答えます。
問い① 退職の意思を伝える相手は、その上司しかいないか。人事、上司の上司、社内の相談窓口はあるか。
問い② 上司の顔を見ると、辞めたいという言葉が出なくなるか。
問い③ 箱1の数がいちばん多く、辞めると決めていないか。
問い③が「そうだ」なら、原因C。問い③が「違う」で、問い①が「ほかにいる」なら、原因A。問い①が「上司しかいない」か、問い②が「出なくなる」なら、原因B。
原因A:辞めると決めている。伝える相手を、その上司以外(人事・上司の上司)にできる。
原因B:辞めると決めている。伝える相手がその上司しかおらず、顔を見ると言葉が出ない。
原因C:箱1が多い。辞めると決めていないので、恋人にも言えない。
「ふつう」の代わりに言う一文
原因を決めたら、恋人に言う一文を先に用意します。三つの文例を書きます。自分の原因に合うものを、自分の言葉に直してください。
決めていない人(原因C)用:「実は、この二週間、上司に言われた言葉を数えてた。まだ辞めるかは決めてない。二週間後に、数えた結果で決める」
辞めると決めた人(原因A・B)用:「上司に、人前で『お前は何をやらせてもだめだ』って言われてる。二か月、ふつうって言ってたけど、ふつうじゃなかった。辞めるって決めた」
相談先に行くと決めた人用:「上司の言葉を、日付つきで書いてある。それを持って、相談できる所に行く。行く日は(日付)」
どの文も、上司の言葉を一つだけ、そのまま入れます。言い換えず、箱に入れた一行の「言葉」の欄から、そのまま口に出します。恋人が何と言うかは、この記事では書きません。それは恋人のものです。
原因A:上司を通さず、人事に出す
原因Aの人の道は、自分で伝える道です。伝える相手を、その上司以外にします。
やることは三つ、順番があります。
一つ目。箱2・箱3の記録を持って、社内の相談窓口か、労働局の窓口に行きます。社内に相談窓口があれば、まずそこへ。社内で相談しにくい、または改善されない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)か、総合労働相談コーナーへ。ここで確かめるのは「辞める前に、会社に伝えておくことがあるか」です。相談先は案内と助言の窓口で、会社に何かをさせる所ではありません。けれど、辞める前に自分の記録がどう扱われるかを、知ってから辞められます。
二つ目。退職日を書いた退職届を、上司を通さず、人事に出します。退職日は、申し出から2週間以上あとの日にします。期間の定めのない雇用では、辞めると申し入れた日から2週間がたつと雇用は終わります(民法627条1項)。就業規則に「1か月前までに申し出る」のような期間があり、それが常識的な長さなら、それに合わせるほうがトラブルが少ないと労働局は説明しています。これは2026年10月時点の決まりで、変わることがあります。
三つ目。恋人には、「退職届を出した日」を先に伝えます。上司の言葉より先に、出した日を言います。
詰まる所は、人事から「まず上司と話して」と戻される所です。退職の意思は、口頭でも有効で、会社の承認はいらず、会社に届けば効力があると労働局は説明しています。戻されたときは、こう言います。「上司とは話せない状態なので、人事に出します。受け取った日を、控えに書いてもらえますか」。控えに受け取り日を書いてもらうのは、「聞いていない」と言われないためです。受け取ってもらえなければ、郵便局の内容証明と配達証明をつけて郵送します。内容証明は文書の内容を、配達証明は配達した事実を証明するものです。相手が読んだことまでは証明しませんが、出した事実と内容と届いた日付が残ります。
代行は、上司の言葉を会社に伝える所ではない
原因Bの人に、頼む前に知っておいてほしいことがあります。箱2・箱3に入れた言葉を、代行が会社に持っていくわけではない、ということです。
弁護士でない退職代行がしてくれるのは、本人が決めた退職の意思を会社に伝えること、そこまでです。上司の言葉について会社に何かを求めること、たとえば謝罪、処分、お金は、頼めません。それは労働局の窓口か、弁護士の仕事です。弁護士でない人が報酬を受けて会社と話し合うと、弁護士法72条の問題になると、弁護士会や労働委員会が注意を呼びかけています。箱に入れた記録は、代行に渡すものではなく、相談先に持っていくものです。
では、自分で伝える道と何が違うのか。上司と顔を合わせずに、最初の一言を済ませられる。違いはそれだけです。退職届の郵送、会社の物の返却、書類の受け取り、健康保険と年金の切り替えは、頼んだあとも自分でやります。
会社が本人に直接連絡してくることを止める決まりは、確認できていません。代行が「本人への連絡は控えてほしい」と伝えることはできますが、それは頼みであって、会社を止めるものではありません。だから、上司から連絡が来たときにどうするかは、頼む前に自分で決めておくことになります。
料金は、自分で見た額を、恋人に打ち明ける夜の日付の横に書いておきます。( 円)。人事に書面で出す道を選べば、この額はかかりません。
使わない場合の代わりは、原因Aの道と同じです。上司を通さず、人事に書面で出す方法と、受け取ってもらえないときの郵送です。
原因B:上司の顔を見ずに、最初の一言を済ませる
原因Bの人の道は、退職代行を使う道です。伝える相手がその上司しかおらず、顔を見ると言葉が出ない。この「伝えること自体ができない」が原因のときだけ、この道を選びます。
頼む前に、手帳に三つ書きます。
一つ目、退職日。申し出から2週間以上あとの日にします。就業規則に申出の期間があれば、それに合わせます。退職日を会社とすり合わせるのは代行にはできないので、自分で決めた日を、そのまま伝えてもらいます。
二つ目、会社からの連絡を自分に直接しないでほしい、という希望。伝えてもらうことはできますが、会社が守るとは限らないと知っておきます。
三つ目、記録を手元に残すこと。三つの箱に入れた一行は、会社に渡すものではありません。自分の手元に残します。
伝えてもらったあとは、自分の番です。退職届の書面を自分で郵送します。伝わったことと届いたことは別なので、郵送は省きません。会社の物を返します。離職票と源泉徴収票が届くのを待ち、届かなければ離職票はハローワークに、源泉徴収票は税務署に相談します。健康保険と年金を切り替えます。国民健康保険と国民年金は原則として退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口へ、任意継続を選ぶなら20日以内に健康保険の窓口へ(2026年10月時点)。そして、上司から直接連絡が来たときは、出ない・返さないと決めておきます。出ないと決めるのは、電話を止める決まりがないからです。
詰まる所は、恋人に「代行なんて」と言われそうで、打ち明ける前に頼んでしまう所です。順番を決めておきます。代行に頼む日を決めたら、その前の夜に、恋人に打ち明ける。頼んだあとに言うのではなく、頼む前の夜に言います。「ふつう」の代わりの一文の、辞めると決めた人用のものを、その夜に使います。
原因C:二週間だけ数えて、決める
原因Cの人は、今は辞めません。二週間という期限と、数え続けるという条件をつけて残ります。
箱1がいちばん多い人は、上司の言葉の多くに、直せる点が入っています。辞めると決めていないのは、その直せる点が直ったらどうなるかを、まだ見ていないからです。だから、期限をつけて数え続けます。
期限は、二週間後に置きます。その間だけ、上司の言葉を同じ一行の形で記録し続けます。
期限の日に、箱を見ます。箱2・箱3が増えているなら、辞めると決めて、原因Aか原因Bの道へ。箱1だけなら、指摘の中身を一つ直します。一つだけです。
恋人には、期限の日に「二週間、上司の言葉を数えていた」と話します。決めていない人用の一文を、その夜に使います。
詰まる所は、記録を続けるうちに、記録そのものがつらくなる所です。書くたびに言葉を思い出すので、数えること自体が重くなります。そのときは、期限を待ちません。その時点で相談先へ行き、恋人に打ち明けます。相談先に行くと決めた人用の一文を使います。二週間という期限は、続けられる間の期限であって、続けなければいけない期限ではありません。
打ち明ける夜までの、三つの一手
打ち明ける夜より前に、今日やることを一つだけ置きます。どの道も、夜までに終わる大きさです。
原因Aの人は、上司の言葉を、日付つきで一行書きます。相談窓口に行くのも、退職届を書くのも、その先です。今日は一行。
原因Bの人は、恋人に打ち明ける夜の日付を、手帳に書きます。代行に頼む日より前の日です。
原因Cの人は、今日言われた言葉を一つ、箱のどれかに入れます。
打ち明けた夜、はじめて口に出した一言
この記事の終わりは、自分で決めた夜に、恋人に「ふつう」の代わりの一文を言う所です。
原因Aの人は、退職届を出した日を話します。原因Bの人は、代行に頼む日を話します。原因Cの人は、二週間数えた結果を話します。どの道でも、同じ夜に、上司の言葉を一つだけ、そのまま口に出します。
「今日どう?」に「ふつう」と返して二か月。はじめて口に出すのは、上司の言葉そのものです。箱に入れた一行の「言葉」の欄から、言い換えずに、一つだけ。恋人が何と言うかは、ここには書きません。書けるのは、その夜の日付を、自分で決めたということまでです。