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この記事を読むと、友人の一言ではなく自分で用意した3本の物差しで今の仕事に点をつけ、このまま続けるか、足りない所を学ぶか、仕事を替えるかを決められます。点のつけ方、点の読み方、そのあとの進め方までを順に書きます。
愚痴のあとに返ってきた「向いてないんじゃない?」
同世代の友人と会って、仕事の愚痴を言った。同じミスを二度したこと、先輩に同じことを聞き直したこと、帰りが遅い日が続いていること。友人は少し考えてから、「それ、向いてないんじゃない?」と言った。責める言い方ではなく、心配している顔だった。その場では「そうかもね」と笑って、話は別のことに移った。
ところが、帰ってからもその一言が抜けません。次の日、仕事で手が止まった瞬間に思い出します。小さな失敗をするたびに、「やっぱり向いていないのか」と結びつけてしまいます。
入って数年の人だけの話ではありません。10年近く同じ仕事をしてきた人でも、役割が変わったばかりの時期や、うまくいかない月が続いたときに言われると、同じように残ります。
友人は、聞いた話をもとに、思ったことを言ってくれました。ただ、友人が知っているのは、あの日こちらが話した中身だけです。そして、こちらが話したのは愚痴でした。
困っているのは、友人の一言が当たっているのか外れているのかを、確かめる方法が手元にないことです。物差しがないので、言われた言葉がそのまま物差しになっています。ここからは、自分の物差しを作ります。
点をつける前に確かめたいこと
このあと「疲れ方」を見ていきます。その前に1つだけ確かめてください。眠れない、食事がとれない、朝に体が動かないといった日が続いている人は、点をつける作業より先に、かかりつけの医師や相談の窓口に話してください。働く人向けの窓口として、厚生労働省の「こころの耳」が、電話やメールなどで相談を受けています(2026年10月11日に確認。受付の方法や時間は今後変わることがあるので、厚生労働省の案内で確かめてください)。ここは相談の窓口で、医療機関ではありません。体や気持ちのつらさが強いときは、受診を先にしてください。
物差しを3本用意して、0点から2点をつける
仕事の向き不向きを測る、決まった測り方があるわけではありません。ここで使う3本は、この記事での整理です。結果は、自分の状態を見るための材料として使ってください。
物差し1:できているか
見るのは、失敗の数ではありません。半年前と比べて、任される仕事が増えたかどうかです。
| 点 | 当てはまる状態 |
|---|---|
| 2点 | 増えた。新しい担当がついた、ひとりで任される範囲が広がった、後輩に教える役が回ってきた |
| 1点 | 変わらない |
| 0点 | 減った。担当を外された、前はなかった確認の手順が自分にだけ足された |
失敗の数で測らないのは、任される仕事が増えると、失敗する場面も増えるからです。失敗が多い時期は、できていない時期とは限りません。入って半年たっていない人、役割が変わって半年たっていない人は、「変わった直後」と「今」を比べてください。
物差し2:疲れ方
見るのは、疲れの大きさではなく、量で疲れているのか、中身で疲れているのかです。
見分けるには、最近の中で仕事が少なかった日を1日思い出します。その日はどうでしたか。
| 点 | 当てはまる状態 |
|---|---|
| 2点 | 仕事が少ない日は楽だった。疲れるのは量が多い日だけ |
| 1点 | 日によって違う。どちらとも言えない |
| 0点 | 仕事が少ない日でも、ある作業をすると同じように疲れる |
はっきりしない人は、今週した作業を5つ書き、それぞれの横に、終わったあとの疲れを「大・中・小」で書いてください。かかった時間が短いのに「大」がつく作業があれば、中身で疲れています。
物差し3:続けたい理由
見るのは、お金以外の理由を1つ言えるかどうかです。給料は大事な理由ですが、ほかの仕事でも手に入るので、「この仕事を」続ける理由にはなりません。
| 点 | 当てはまる状態 |
|---|---|
| 2点 | 10秒で言える |
| 1点 | 少し考えれば言える |
| 0点 | 考えても出てこない |
理由は小さなものでかまいません。「数字がぴったり合ったときに気持ちがいい」「相手の困りごとが片づく所を見られる」「手を動かして形になるのが好き」。こうした一言で足ります。
点を書きこむ
| 物差し | 点 | そうつけた理由 |
|---|---|---|
| 1 できているか | ( )点 | ( ) |
| 2 疲れ方 | ( )点 | ( ) |
| 3 続けたい理由 | ( )点 | ( ) |
3本を足した合計は、ここでは使いません。合計が同じ3点でも、「2・0・1」と「1・1・1」では、起きていることが違うからです。見るのは、どの物差しが低いかです。
3つの問いで、点の並びを読む
問い① 友人は、自分の仕事の中身をどこまで知っているか
友人に話したことを思い出して、2つに分けて書きます。
- 話したこと:(例:ミスをした話、聞き直した話、帰りが遅い話)
- 話していないこと:(例:先月から新しい担当を任されたこと、客にお礼を言われたこと、得意な作業のこと)
「話していないこと」のほうに、物差し1や物差し3で点がついた理由が並ぶなら、友人は愚痴の部分だけを聞いて言ったことになります。友人が見誤ったのではありません。こちらが渡した材料が片方だけだったのです。
問い② うまくいかないのは、やり方を知らないからか、やっても合わないからか
うまくいかなかった作業を1つ選び、その手順を紙に書いてみます。
- 手順が書けない、途中があいまいになる:やり方を知らない状態です。
- 手順は最後まで書ける。そのとおりにできる。それでも毎回つらい:やっても合わない状態です。
問い③ 疲れるのは、量か中身か
物差し2の点をそのまま使います。0点なら中身、2点なら量です。
読み方の表
| 原因 | 点と問いの並び | 合う道 |
|---|---|---|
| A:仕事の中身そのものが合わない | 問い②が「やっても合わない」。物差し2が0点 | 転職 |
| B:知識や技術が足りないだけ | 問い②が「やり方を知らない」。物差し1が0点か1点 | 資格 |
| C:友人は愚痴だけを聞いて言った | 3本とも1点以上。問い①で「話していないこと」が多い | 現状維持 |
並びがどれにもぴったり合わないときは、問い②の答えで決めてください。「やり方を知らない」ならB、「やっても合わない」ならAです。合わないと感じている作業でも、手順を知らないまま続けていると、合うかどうかの見分けがつきません。知らない状態の人は、先に知る所まで進むほうが、見誤りが少なくなります。
友人に言われたのではなく、自分で「向いてないのかも」と思い始めたなら、「向いてないのかも」と思ったら、直近1週間の出来事から原因を5つに分けるで、指摘された出来事を日付順に並べて原因を探せます。
原因ごとの進め方
A:仕事の中身が合わなかった人は、仕事を替える
手順1 合わない作業を書き出す。物差し2で「大」がついた作業を、動詞で終わる形で書きます。「営業が合わない」「事務が合わない」とは書きません。仕事の名前ではなく、作業の単位で書きます。
- 例:初めての相手に電話をかけて、用件を切り出す
- 例:細かい数字を、一日じゅう見比べる
- 例:その場で答えを求められ、すぐに決める
手順2 その作業が少ない仕事を探す。探すときに見るのは、職種の名前ではなく、一日の作業の中身です。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)には、職業ごとにどんな作業をするかの一覧が載っています(2026年10月11日に確認。内容は今後変わることがあります)。手順1で書いた作業が一覧に入っていない職業を候補にします。
手順3 会社を替えるのか、職種から替えるのかを分ける。合わない作業が、同じ職種ならどの会社にもあるものなら、職種から替えます。今の会社のやり方だけに原因があるなら、同じ職種のまま会社を替えます。分けるには、同じ職種で別の会社にいる知り合いに、「この作業はそちらにもあるか」を1つ聞きます。
職種から替えると決めた人は、『友人が異業種に転職できた。自分にもできるかを一枚で確かめる』で、今の仕事と行きたい仕事の重なりを、線の本数で数えてください。
詰まる所と次の手。「合わない作業は書けたが、何なら合うのかが分からない」で止まる人が多くいます。そのときは、反対から探します。物差し2で「小」がついた作業、時間のわりに疲れなかった作業を3つ書き、共通する点を次の3つから選びます。
| 見る点 | どちらに近いか |
|---|---|
| 相手 | ひとりで進める/人と話しながら進める |
| 進め方 | 決まった手順どおりにする/その場で考えて決める |
| 扱うもの | 数字や書類/物や道具/人の気持ちや事情 |
たとえば、疲れなかった作業が3つとも「ひとりで」「決まった手順どおり」「数字や書類」なら、それが多い仕事が候補になります。合わない作業を避けるだけより、探す向きがはっきりします。
B:知識や技術が足りなかった人は、足りない所を学ぶ
手順1 足りない知識を1つ決める。あれもこれも足りないと感じていても、最初に学ぶのは1つです。問い②で手順を書けなかった作業が、何の知識に当たるのかを言葉にします。「表計算の関数」「お金の出入りを記録する決まり」「契約書に出てくる言葉」のように、分野の名前で書きます。
手順2 学べる形を選ぶ。足りないのが分野の土台なら、その分野の入門にあたる資格を1つ選び、試験の範囲を「学ぶ順番の表」として使います。資格を使う良さは、学ぶ範囲に終わりがあることと、どこまで分かったかを試験で確かめられることです。ひとりで本を読むだけだと、どこまでやれば足りるのかが見えず、途中で止まりがちです。
手順3 学んだことを、仕事で1回使う。1つの章を終えたら、その内容が出てくる作業を、次の出番で自分からやってみます。学んだことが仕事の場面と結びつくと、聞き直す回数は減りやすくなります。
詰まる所と次の手。「何が足りないのか、自分で分からない」で止まる人は、聞き直しの多い作業から選びます。1週間、人に聞き直した作業をメモしてください。作業の名前と回数だけで足ります。回数が一番多かった作業の分野が、最初に学ぶ1つです。
学んだからといって、評価や合格が約束されるわけではありません。ただ、Bに当てはまった人は、「向いていない」と決める前に、「まだ知らない」所を埋める段階にいます。知ったあとでもう一度3本の物差しで点をつけると、見え方が変わることがあります。
C:友人が愚痴だけを聞いて言った人は、続ける
手順1 物差しの点と理由を残す。書きこんだ表を、消さずに手元に置きます。3本とも1点以上あったこと、その理由を自分で書いたことが、友人の一言に代わる物差しになります。
手順2 続けたい理由を一文にする。物差し3で言えた理由を、次の型で書きます。
( )のときに( )と感じるから、この仕事を続ける。
- 文例1:月末に数字が一度で合ったときに、気持ちがいいと感じるから、この仕事を続ける。
- 文例2:説明した相手が「分かった」と言ったときに、やってよかったと感じるから、この仕事を続ける。
- 文例3:作ったものが店に並んでいるのを見たときに、うれしいと感じるから、この仕事を続ける。
手順3 今の職場で、物差し1を上げる動きを1つする。物差し1が1点だった人は、次に任されたい仕事を上司に伝えます。「来月の( )の準備を、最初から担当させてもらえませんか。手順は( )さんに教わります」。任される仕事が1つ増えれば、愚痴の中身も変わっていきます。
詰まる所と次の手。一文を書いても、友人の一言がまだ引っかかる人がいます。そのときは、友人に返す一文を用意します。言い返すための文ではなく、話していなかった側を渡すための文です。
- 文例1:「この前の『向いてないんじゃない?』、あれから考えてみた。愚痴ばかり話してたけど、( )は好きで、続けたいと思ってる」
- 文例2:「心配してくれてありがとう。うまくいってる話をしてなかったね。最近は( )を任されてるよ」
- 文例3:「向いてないかもと思う日もある。でも( )があるから、もう少し続けてみる。また愚痴を聞いて」
実際に送らなくてもかまいません。書くだけで、あの一言が「愚痴を聞いた人の感想」だったことが、自分の中ではっきりします。
続ける・学ぶ・替えるのどれを選ぶか
| 原因 | 選ぶ道 | 選ぶ理由 |
|---|---|---|
| A:中身が合わない | 転職 | やり方を知っていても合わない作業は、学んでも量を減らしても残るため |
| B:知識や技術が足りない | 資格 | 知らないことが原因なら、仕事を替えても同じ所で止まりやすいため |
| C:愚痴だけを聞いて言われた | 現状維持 | 3本とも点があり、道を変える理由が見当たらないため |
気をつけたいのは、Bの人がAの道を選んでしまうことです。「向いていない」と言われたあとは、仕事を替えれば楽になるように思えます。けれど、足りないのが知識なら、替えた先でも聞き直しは続きます。反対に、Aの人がBの道を選ぶと、学ぶ時間のぶんだけ、合わない作業と付き合う期間が延びます。問い②の答えを先に出したのは、この取り違えを防ぐためです。
今日、紙に書く一行
仕事を替えると決めた人
今日は、今週いちばん疲れた作業を1つ、動詞で終わる形で書きます。明日からの数日で、同じ形の作業をあと2つ足してください。3つそろったら、job tagで、その作業が載っていない職業を2つ探してメモします。募集は、その職業の名前で検索して、自分で見ていけます。今の仕事は続けたまま進めます。
足りない所を学ぶと決めた人
今日は、最近人に聞き直した作業を1つ書きます。その作業が何の分野に当たるのかを、横に書き足してください。分野の名前が決まったら、その分野の入門にあたる資格を1つ調べ、試験の範囲の目次を見ます。目次の中に、聞き直した内容が入っていれば、それが学ぶ1つです。試験の範囲に沿った本を1冊選べば、自分で始められます。
学ぶと決めることと、どの講座に申し込むかを決めることは、別の決め事です。下の広告は、スマートフォンやパソコンで学ぶ形の、有料の資格講座です。扱っている資格は講座ごとに決まっています。
- 向く人:聞き直した作業の分野が決まり、入門にあたる資格の試験の範囲に、その内容が入っていると確かめた人。
- 向かない人:問い②が「やっても合わない」だった人(原因Aの手順へ)。分野の名前がまだ決まっていない人(1週間、聞き直した作業をメモします)。
- 申込み後に起きること:申込みの流れ、支払いの時期と方法、受講できる期限、解約や返金の決まりは、講座ごとに違います。申し込む前に、案内ページで確かめてください。
- 使わない場合:試験の範囲に沿った本を1冊選べば、自分で始められます。
今の仕事を続けると決めた人
今日は、続けたい理由を1つ書きます。型に入れなくてもかまいません。一言で足ります。明日、それを型の一文に直し、点を書きこんだ表と一緒に残してください。次に友人と会うときは、愚痴の前に、その理由のほうを先に話してみてください。
友人の一言は、測るきっかけだった
「向いてないんじゃない?」は、答えではありませんでした。友人は、聞いた範囲で思ったことを言い、こちらはそれを物差しにしてしまいました。3本の物差しで点をつけた今は、続けるにしても、学ぶにしても、替えるにしても、自分でつけた点が理由になります。次に同じ言葉を聞いたとき、「どの物差しの話だろう」と考えられれば、前ほど長くは残りにくくなります。