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職場での居場所

「上げるから」で残った設計職。明細は同じ。二度目は紙を手に上司へ

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約束と給与の記録と退職届の二枚を持って上司に向き合う設計職

「来期は上げるから」で残った設計職六年目へ。明細の数字が同じだった今、一度目の会話を書き起こし、退職日を書いた退職届と約束の記録の二枚を作って、自分で伝える・退職代行・反映の月まで残るの3つから選ぶ記事です。

設計の仕事について六年目。半年前、上司に「辞めます」と言った。上司は「来期は上げるから。な?」と言い、「…分かりました」と残った。来期が来て、明細を開いた。基本給の欄の数字は、前と同じだった。上司からは、何の話もない。

この記事を読むと、一度目の会話をそのまま書き起こし、二度目は「退職日を書いた退職届」と「約束の記録」の二枚を持って、上司の前に立てるようになります。そのうえで、自分で伝えるか、退職代行に頼むか、反映の月を期限にして残るかを、自分の原因から選べます。

半年前の「分かりました」が、今の詰まり

今、止まっているのは「もう一度辞めると言うべきか」ではありません。もう一度言えば、また「今度こそ上げるから」が返ってくるかもしれない。そのときに返すものを持っていないから、言えずにいる。

一度目に足りなかったのは、紙です。退職日を書いた紙がなかったから、「来期」という日付のない言葉に乗ることができた。約束を書いた紙がなかったから、来期が来ても「言った」「言っていない」を並べるものがない。

だから二度目の準備は、口で言う練習ではなく、二枚の紙を作ることです。この記事の真ん中は、一度目の会話(前)と、二度目に持っていく紙(後)を、同じ紙の左右に並べる作業です。

前:一度目の会話を、そのまま書き起こす

紙を一枚用意して、左半分に半年前の会話を書きます。きれいに直さず、思い出せる言葉のまま、3行で足ります。

誰が 言った言葉 印
1行目 自分 「辞めます」
2行目 上司 「来期は上げるから。な?」
3行目 自分 「…分かりました」

書けたら、自分が引き下がった行に印をつけます。この場面なら3行目の「分かりました」です。印の横に、引き下がった理由を一言で書きます。この記事では、次の2つに分けて考えます。

  • 「上げる」と言われて、それなら、と思った。額も、いつからかも、聞かなかった。
  • 上司の顔を見たら、声が出なくなった。言葉の中身は関係なかった。

この一言が、あとで原因を分けるときの材料になります。どちらに近いかを、ここで正直に書いておいてください。2つのどちらにも当てはまらないなら、自分の言葉のまま書いておけば足ります。

後:二度目に持っていく二枚の紙

右半分には、二度目に持っていく紙の中身を書きます。紙は二枚です。

一枚目:退職日を書いた退職届

一度目と二度目の、いちばん大きな違いがこれです。退職日が書いてあると、「来期」という日付のない言葉で返されても、こちらの日付は紙の上に残ります。

退職日の決め方は、契約の形で変わります。期間の定めのない雇用(正社員など)なら、申し入れた日から2週間がたつと雇用は終わります(民法627条1項)。就業規則に「退職は1か月前までに申し出る」のような決まりがあり、それが常識的な長さなら、まず就業規則に沿って申し出る方がもめにくい、と労働局は説明しています。就業規則の期間があまりに長いと無効とされることもあり、その境目は一件ごとに判断されます。この記事では、就業規則の期間と2週間のうち長い方を、今日から数えた先の日を退職日にします。

退職届は、次の形で足ります。所属の欄には、設計の部署名を書きます。

「退職届 このたび、一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。 ○年○月○日 所属(部署名) 氏名」

口で言っても、退職の申し出としては有効です。それでも、行き違いを防ぐために書面にする方がよい、と労働局と東京都の資料は書いています。一度目の会話に紙がなかったことを思えば、この一枚が要る理由は分かるはずです。

二枚目:約束の記録

二枚目は、半年前の約束と、その後の明細を横に並べた紙です。次の欄を埋めます。

欄 書くこと
約束の日 ○年○月○日(半年前の会話の日)
場所 上司の部屋、会議室、など
言った人 上司の名前と役職
言った言葉 「来期は上げるから」
自分の返事 「分かりました」
書面の約束 なし/あり(ある場合はその紙)
来期の明細 ○月分 基本給○円(前期の同じ月 基本給○円)

この紙は、会社に出すためのものではありません。二度目の会話で、約束の日や言葉を上司が覚えていないと言われたときに、自分が日付と数字で答えるための紙です。明細の数字は、手元の明細を見て、前期と来期の同じ月の基本給を写します。約束が手当のことだったなら、手当の欄を同じように前と後で並べます。

二度目に言う一文

二枚を持って、上司の前で言う一文は、これです。

「前回の約束は明細に出ていません。○月○日で退職します」

そして、退職届を渡します。理由を長く話さなくて構いません。一文のあとに退職届を出す、この順番だけ守ります。

「今度こそ上げる」が出たら、返す一文はこれです。

「額と時期を書面でいただけるなら考えます。なければ退職日は変えません」

口約束の扱いを、自分で決めておく

この記事では、半年前の口約束に効力があるかどうかを判断しません。決まりの上では、働く条件は会社と本人の合意で変えられ(労働契約法8条)、合意に書面を渡すことまでは求められていません。同時に、契約の中身はできる限り書面で確かめるものとされています(労働契約法4条2項)。つまり、口頭の合意も契約になり得ますが、書面がないと、あとから「いくらを、いつから」という中身を確かめにくい。これは法律の文言ではなく、この記事での整理です。

だから、こう決めておきます。書面がないなら、約束はなかったものとして動く。「今度こそ」に書面がついてこないなら、退職日は変えない。約束された額を払ってほしいなら、それは退職の話とは別に、総合労働相談コーナーか法テラスに相談してから、自分で求めます。この記事は「約束の額を請求できる」とは書きません。できるかどうかは、相談先で確かめることです。

辞めると言う前に、知っておく決まり

二度目を言う前に、二つだけ頭に入れておきます。どちらも2026年10月時点の決まりです。法律や制度は、この先変わることがあります。

一つ目は、退職日の決まりです。先に書いたとおり、期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間で雇用は終わります。会社の承諾は要りません。「辞めるのは認めない」と言われても、退職届が会社に届いていれば、退職の意思表示は本人の一方的な意思表示で有効になる、と労働局は説明しています。

二つ目は、給料です。働いた分の賃金は、全額を払わなければなりません(労働基準法24条1項)。退職の場合、本人が請求すれば7日以内に払う決まりもあります(同23条1項)。「辞めるなら今月分は払わない」は決まりに反する、と労働局は説明しています。あらかじめ「辞めたら罰金」のように額を決めておくことも禁じられています(同16条)。もし言われたら、その言葉もメモして、労働基準監督署に相談します。

印の横の一言から、3つの問い

左半分の印の横の一言と、賃金規程を見たかどうかで、A・B・Cに分けます。紙の左右から辞め方を決めるための、この記事なりの分け方で、研究で決まったものではありません。

問い① 一度目に残ったのは、約束を信じたからか、上司の前で何も言えなかったからか。
左半分の印の横に書いた一言が、答えです。

問い② 昇給の決まり(評価の時期、等級、反映される月)を、就業規則や賃金規程で確かめたか。
確かめていないなら、「来期」が実際に何月の明細を指すのかを、まだ知らないことになります。

問い③ 上司の部屋で二度目を言う自分が、思い浮かぶか。
二枚の紙を持って一文を言う自分が浮かぶか、浮かぶのは引き下がる自分だけか。

原因 当てはまる答え 道
A ①約束を信じた ②確かめた、または約束の形が反映の月と関係ない ③浮かぶ 自分で伝える
B ①何も言えなかった ③浮かぶのは引き下がる自分 退職代行を使う
C ②確かめていない。約束が「次の評価で反映」なら、反映の月がまだ来ていない 今は残る(期限と条件つき)

見る順番は、問い②が先です。賃金規程をまだ見ていないならCに置きます。見たうえで明細が同じなら、問い①と③の答えで、AかBのどちらかに決まります。

原因A:一度目は信じた。今回は紙を持って話せる

一度目に引き下がったのは、上司の圧ではなく、「上げる」を信じたからです。今回は、信じる前に紙を見る。紙があれば、「上げる」の一言に日付と額で返せます。

手順は4つです。

  1. 一度目の会話を3行で書き起こす(左半分)。
  2. 二枚の紙を作る(退職届、約束の記録)。
  3. 退職日を決めて、退職届に書く。就業規則の申し出期間を先に見る。
  4. 上司の前で一文を言い、退職届を渡す。

詰まる所は、二つあります。

一つは、「今度こそ上げる」が出たときです。返す一文は決めてあります。「額と時期を書面でいただけるなら考えます。なければ退職日は変えません」。書面が出てこなければ、退職日どおりに進めます。書面が出てきたら、その額と反映の月を見て、残るかどうかを改めて決めます。ここで決めるのは自分です。

もう一つは、約束の額をやはり払ってほしい、と思うときです。これは退職とは別の話として分けます。総合労働相談コーナーは無料で予約が要らず、労働の問題全般を受け付けています。法テラスは法律の相談窓口で、収入と資産の基準を満たせば弁護士の法律相談を費用なしで受けられ、同じ問題で3回までです。どちらかに「半年前に口頭でこう言われ、明細はこうだった」と二枚目の紙を見せて相談し、そのうえで自分で会社に求めるかどうかを決めます。

退職届を受け取らない、と言われたときは、郵便局から送って記録を残す方法があります。内容証明で「どんな文面を出したか」が、配達証明で「いつ届いたか」が証明されます(郵便法48条・47条)。上司が読んだかどうかや、書いた中身が正しいかまでは証明しません。送れば話が片づく道具ではなく、二枚目の紙と同じく、日付を残すための手段です。

最初の一手は、一度目の会話を3行で書き起こすことです。今日、紙の左半分だけで足ります。

代行に頼めるのは「伝えること」まで。約束の額は頼めない

Bの道は、上司の部屋に入らずに済む代わりに、頼める中身がはっきり限られています。先にそれを書いておきます。

約束の額のことは、退職代行には頼めません。弁護士でない退職代行が会社に伝えられるのは、本人が決めた「辞めること」と「辞める日」までです。半年前に約束された昇給の額を払ってもらう話し合いも、退職日や有給の条件を会社と話し合うことも、法律の問題を扱うことになります。弁護士でない事業者が報酬を得てそれをすると、弁護士法72条の問題になります。この点は、弁護士会と労働委員会がそれぞれ注意を出しています。業者が話し合いに踏み込んだ結果、会社が業者との連絡を断り、本人が改めて自分で会社に連絡することになった例もある、と弁護士会は書いています。

約束の額を求めたい人は、代行ではなく、Aで書いた相談先に相談してから自分で動く道になります。

自分で伝える場合と変わるのは、上司の部屋に入らずに済むことだけです。作る紙は同じ二枚で、退職日を決めるのも自分です。辞めたあとの書類、保険、電話への対応も、自分の手に残ります。

使わない場合は、二枚の紙を持って、自分で言います。これが基本の道です。代行の費用の相場は、この記事には書きません。自分で見た額を書き入れてください。(    円)。自分で伝える道には、この費用はかかりません。その額と、「上司の部屋に入らずに済む」ことを並べて、自分で決めます。

原因B:上司の前では声が出ない、と自分で分かっている

一度目に引き下がったのは、約束の中身ではなく、上司の圧の前で何も言えなかったからです。同じ部屋に入れば、二度目も同じになる。それを自分で分かっているなら、部屋に入らずに伝える道です。

頼む前に、次の4つを決めます。決めずに頼むと、代行は伝えられません。

決めること 書く欄
退職日 ○年○月○日(就業規則の期間か2週間のうち長い方を今日から先に数える)
有給 残り○日を、○月○日から使う/使わない
約束の額 求めない、と決める(求めるなら代行ではなく相談先)
私物 机の中、ロッカーの中。取りに行く/送ってもらう

代行が会社に届けるのは、退職届に書いたのと同じ「辞めること」と「辞める日」です。約束の額の話は頼みません。

辞めたあとに手元に残る仕事は、次の表のとおりです。期限のあるものから並べています。

やること 期限 どこで
年金を国民年金に切り替える(20歳以上60歳未満で、次の勤め先にすぐ入らない人) 退職日の翌日から14日以内 住んでいる市区町村の窓口
健康保険を国民健康保険にする 退職後14日以内 住んでいる市区町村の窓口
健康保険を任意継続にする 退職日の翌日から20日以内に申し出 今の健康保険の窓口
家族の扶養に入る 家族の勤め先に確かめる 家族の勤め先
源泉徴収票を受け取る 国税庁の案内では、中途退職は「退職後1月」が交付の期限 会社から。出ないときは税務署に届け出る手続きがある
離職票を受け取る 会社が手続きをしないとき 本人がハローワークに申し出れば手続きが進む

健康保険は、国民健康保険・任意継続・家族の扶養のうち1つを選びます。

もう一つ、上司からの電話をどうするかを決めておきます。代行から「本人への連絡は控えてほしい」と伝えてもらっても、会社がそれに縛られる決まりはありません。上司から電話が来たら、二枚の紙を手元に置いて出るか、出ないかを先に決めます。

詰まる所は、会社から「話し合いたい」と連絡が来るときです。代行は話し合いができません。出ると決めたなら、二枚の紙を手元に置いて、「前回の約束は明細に出ていません。退職日は変えません」とだけ短く答えます。出ないと決めたなら、退職届を内容証明と配達証明で送っておくと、「聞いていない」と言われたときに出した日付が残ります。

最初の一手は、二枚目の紙(約束の記録)を書くことです。退職日はそのあとで足ります。

原因C:昇給の決まりを、まだ確かめていない

明細は同じでした。でも「来期」が、評価の反映される月を指していて、その月がまだ来ていないなら、約束が破られたとはまだ言えません。この場合は、期限と条件をつけて残ります。

進める順番は、次のとおりです。

  1. 賃金規程で、昇給の反映される月を確かめる。就業規則や賃金規程は、見やすい場所に置くか、書面で渡すか、パソコンで見られるようにして、働く人に知らせる決まりになっています(労働基準法106条1項)。見当たらなければ、人事や総務に「賃金規程を見たい」と言って足ります。
  2. 上司に、約束の額と反映の月を書面で聞く。言う一文はこれです。「半年前の『来期は上げる』の額と、反映される月を、書面でいただけますか」。
  3. 反映の月を期限にする。その月の明細が出る日を、紙に書く。
  4. その月の明細に出ていなければ、二枚の紙を持って退職届を出す。

詰まる所は、上司が書面を出さないときです。上司が書面を出さないなら、口約束だけでは期限は動かさない、と決めておきます。反映の月の明細が前と同じなら、その日が二度目の日です。二枚目の紙に、その月の数字を書き足して、持っていきます。

残るあいだに、気持ちで期限をずらさないために、期限を書いた紙は退職届の下に重ねておきます。

最初の一手は、賃金規程の昇給の条を探すことです。今日、見られる場所を聞くところまでで足ります。

二度目、机の前で

Aの人は、退職届と約束の記録の二枚を手に、上司の机の前に立ちます。言う一文は決まっています。

Cの人は、反映の月の明細を見た日に、同じ二枚を手に、同じ机の前に立ちます。二枚目には、その月の数字が足されています。

Bの人は、机の前には立ちません。でも、代行が会社に伝えるその時間、手元には同じ二枚があります。電話が来たときに見るのも、この二枚です。

半年前と違うのは、紙があることです。「来期は上げるから。な?」に、日付と数字で答えられる自分が、机の前に立っています。