職場に、どうしても合わない人がいます。無理な要求をされる、強い口調で言われる、話が通じない。相手を変えることは、ほとんどの場合できません。変えられるのは、自分がその相手にどこまで対応するかです。この記事では、先に「話し方では解決しない場合」を確かめたうえで、事実の確認・境界・代わりの案・記録の4つの方法と、残るか離れるかを決める基準をまとめます。
ただし、話し方の工夫で対応してよい場合と、そうでない場合があります。先にそれを確かめます。
この記事で渡すもの
- 話し方では解決しない場合の見分け方と、相談先
- 相手の言動を3つに分ける見分け方と、合わせて使う4つの方法・文例
- 自分の対応の範囲を決める方法
- 残るか離れるかを決める基準と、今日の一手

先に確認すること|話し方では解決しない場合
次のような場合は、この記事の方法で自分1人で対応しようとしないでください。
- 人格を否定する発言、大声での叱責、無視などがくり返されている
- 性的な言動や、性別・属性を理由にした扱いを受けている
- 脅すような言動がある。断ると不利益を与えると言われる
- 相談したことへの仕返しが心配される
- 身の安全に不安がある
これらは、言い方を工夫して収める問題ではありません。日時、場所、言われたこと、その場にいた人を記録し、上司、人事、社内の相談窓口に相談します。社内で相談しにくい場合は、各地の総合労働相談コーナーが使えます。職場のハラスメントについての情報や相談窓口は、厚生労働省の「あかるい職場応援団」にまとめられています。
眠れない、出勤前に体調が悪くなるといった状態が続いている場合は、医療機関や、「こころの耳」に載っている相談窓口に相談してください。
目的は、勝つことではなく、損害を小さくすること
合わない相手とのやり取りは、勝ち負けの形になりやすいものです。しかし、言い負かしても状況はあまり良くならず、あとの関係が悪くなることがあります。目的を次の3つに置きます。
- 自分の時間と労力を、必要以上に使わないこと
- 仕事として必要な結果を確保すること
- 今後も一緒に仕事ができる程度の関係を保つこと
この3つが守れていれば、相手が変わらなくてもかまいません。以下の4つの方法は、どれも同時に使う必要はありません。使いやすいものを1つ選び、影響の小さい場面から試します。
相手の言動は、3つのうちどれか
どの方法を使うかは、相手の言動がどれに当たるかで変わります。次の分け方は、CareerPivotが整理したものです。研究や制度で決まった分類ではありません。
- 依頼があいまいで、何をいつまでにすればよいか分からない場合。方法1(事実を確認する)から使います。
- 量や期限に無理がある場合。方法2(境界を伝える)と方法3(代わりの案を出す)を使います。
- 人への攻撃になっている場合。人格を否定する、大声で責める、無視するなど、先頭の章に当たる言動です。話し方では対応せず、記録を持って相談に進みます。
方法4(記録を残す)は、3つのどの場合でも並べて使えます。ハラスメントに当たるかどうかは、ここでは判断しません。判断が必要なときは、相談窓口に聞いてください。
方法1|事実を確認する
無理のある依頼や、あいまいな指示を受けたときは、反論する前に、事実を並べて確認します。
| 確認すること | 言い方の例 |
|---|---|
| 相手が求めていること | 「確認させてください。明日の午前までに、この資料の完成版が必要ということでしょうか」 |
| 自分の状況 | 「いま、○○と△△の2件を進めていて、今日使えるのは3時間です」 |
| 基準になるもの | 「手順ではこうなっていますが、今回は変更してよいということでしょうか」 |
事実を並べると、人と人のやり取りではなく、「状況をどうするか」の話になります。遠回しな言い方で求められた場合は、「つまり、○○をしてほしいということでしょうか」と、はっきりした形に言い直してもらいます。あいまいなまま引き受けると、あとで解釈が変わることがあります。
方法2|境界を伝える
できないことは、できないとはっきり伝えます。あいまいに答えると、相手は都合のよいほうに受け取り、要求が大きくなることがあります。
| 順番 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 理解を示す | 依頼の重要さは分かっていると伝える | 「この件が急ぎであることは理解しています」 |
| できないことを伝える | 短く、はっきりと | 「明日の午前までに完成させることはできません」 |
| できることを伝える | 次の方法3につなげる | 「今日中に骨組みまでは作れます」 |
強い口調で言われたときも、同じ調子で返さないようにします。相手が怒っているときは、すぐに正しい説明をしても聞いてもらえないことが多いものです。まず「お急ぎなのですね」「その点を心配されているのですね」と相手の言い分を受け止め、少し落ち着いてから、具体的な話に移ります。受け止めることは、同意することではありません。
その場で答えを出さなくてもかまいません。「確認して、1時間後にお返事します」と時間を取ることも、境界の1つです。
方法3|代わりの案を出す
断るだけで終わらせず、目的を達成する別の方法を出します。断っているのではなく、実現の方法を提案している形になります。
- 期限を変える:「今日は着手まで進め、明日の午後に仕上げる形はいかがでしょうか」
- 範囲を変える:「全体ではなく、主要な部分だけなら明日の午前に間に合います」
- 分担を変える:「この部分は自分が担当し、残りは○○さんにお願いできないでしょうか」
- 優先順位を相談する:「この件を優先する場合、△△を後に回してよいでしょうか」
相手の指摘のうち、もっともな部分は認めます。「その点は、おっしゃるとおりです。進め方については、別の方法を相談させてください」。全部を否定しないことで、やり取りがこじれにくくなります。
方法4|記録を残す
やり取りのあと、決まったことを短い文面で残します。「先ほどの件、○○を明日の午後までに対応し、△△は来週に回すということで進めます」。認識のずれを防ぎ、あとで話が変わったときの確認にも使えます。
無理な要求や強い言動がくり返される場合は、日時と内容を自分用にも記録しておきます。相談するときに、そのまま材料になります。
あわせて、落ち着いているうちに、自分の対応の範囲を決めておきます。
| 決めておくこと | 内容 |
|---|---|
| ここまでは対応する | 仕事として引き受ける範囲 |
| ここからは対応しない | 引き受けない範囲。例:勤務時間外の急な依頼、担当外の作業の丸ごとの引き受け |
| 範囲を超えられたときにすること | 上司に相談する、記録する、その場を離れる |
| 相談できる人 | 状況を外から見てくれる人。社外の人でもよい |
残るか、離れるかを決める基準
相手を変えることは目的ではありません。自分の負担が減っているかどうかで判断します。合わない相手は、どの職場にもいる可能性があります。ただ、その頻度や深刻さは、職場によって大きく違います。
- 現状維持が合う場合。4つの方法で線を引いて、やり取りのあとに引きずる時間が短くなっているなど、負担が減っているときです。同じ方法を続けます。
- 転職が合う場合。方法を使い、上司にも状況を相談したのに、負担が減らず続いているときです。相手は変えられないので、相手のいない職場を探す道になります。
- 資格は、この悩みの手段になりません。学んでも、相手の言動は変わらないためです。
先頭の章に当たる状況になったときは、現状維持か転職かを選ぶ前に、記録を持って相談してください。
相談しても改善されず、負担が続く場合は、職場を変えることも選択肢になります。この状況を、誰に相談すればよいか整理したいなら、仕事の相談相手は1人に絞らなくていいで、相談相手を4つの役割で見て、欠けている1つを見つけられます。
合わない相手が上司で、上司の機嫌しだいで仕事が止まるなら、あと何年いるかを決めるで、止まった仕事を3つの箱に分けて数えてください。
選んだ先の、今日の一手
選んだ道ごとに、今日できる大きさの一手を挙げます。どれも紙に書けば足ります。
- 現状維持を選んだ人。自分の対応の範囲を、「ここまでは対応する」「ここからは対応しない」の2行で書きます。
- 転職を選んだ人。上司や相談窓口に相談した日と結果を1行で書き、移る先に求める条件を1つ書きます。移ると決めたものの、動く条件がまだ言葉になっていない人は、自分に決め手がないとき、作る基準で、動く条件と残る条件を一文ずつ書いてください。
よくある質問
怒りを感じること自体が、よくないのでしょうか
怒りを感じることは、自然な反応です。大切なのは、その場で相手にぶつけるかわりに、事実の確認や記録に使うことです。
どの方法から試せばよいですか
影響の小さい場面で、事実を確認する方法から試してください。うまくいかなくても、失うものが小さい方法です。
相談できる人が、社内にいません
社外の相談窓口が使えます。職場のトラブルについては総合労働相談コーナー、心身の負担についてはこころの耳に載っている窓口があります。
相談先・この記事の前提(2026年10月11日確認)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- 厚生労働省「あかるい職場応援団」
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
- 4つの方法と文例は、CareerPivotが整理した説明用のものです。ハラスメントに当たるかどうかの判断は、個別の状況によって異なります。