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友人とのつきあい

三度止められた経理。「どうせ今回も」と笑う友人の前で送る四度目

約13分で読めます

友人に見守られて四度目の退職届を郵便局から送る経理社員

3回「決算が終わるまで」と引き止められた経理担当へ。過去の3回を表に並べて止まった場所を仕分け、四度目は退職届・代行への依頼・条件を書面で求める依頼のどれかを、友人の目の前で「送る」形にする記事です。

この記事を読むと、過去の3回を1枚の表に並べて、自分が「どこで止まったのか」を仕分けできます。止まった場所に合わせて、四度目は自分で退職届を送るか、退職代行に頼むか、条件を確かめる期限を決めて残るか、を選べます。そして「送る」という動作を、友人の目の前で行う形にします。

経理の担当で、期間の定めのない雇用で働いている人の話です。これまでに3回、上司に「辞めたい」と伝えました。3回とも「決算が終わるまで」「君がいないと締められない」と言われて、残りました。友人はそのたびに話を聞いて、応援してくれました。でも三度目のあと、友人は「辞める詐欺」と笑いました。四度目を言おうとするたびに、その友人の顔が浮かんで、言えずにいます。

四度目が言えないのは、三回の止まった場所を分けていないから

「辞める詐欺」は、3回とも本気で応援してくれた友人の言葉です。この記事は、その言葉で読者を責めません。扱うのは、3回がそれぞれどこで止まったか、という場所だけです。

3回の引き止めには、それぞれ「止まった場所」があります。口で言っただけだったのか。辞める日を言わなかったのか。上司の前で言葉が止まり、その場で撤回したのか。条件を言われて、確かめないまま残ったのか。この4つは、見た目は同じ「残った」でも、中身が違います。

止まった場所を分けていないと、四度目も「また止まるだろう」としか思えません。どこで止まったかが分かれば、四度目はその場所を通らない形にできます。それが、この記事でやることです。

「決算まで」に、法律の根拠はあるか

期間の定めのない雇用では、退職を申し入れた日から2週間がたつと、雇用は終わります(民法627条1項)。退職は働く人からの一方的な意思表示で効力が生じ、会社の承認は要らない、と労働局は説明しています。「新しい人が見つかるまで待て」と言われても、2週間で退職の効力が生じる、というのも労働局の説明です。「決算が終わるまで辞められない」という決まりは、民法や労働基準法の条文を確認した範囲にはありません。

ただし、就業規則に「退職は1か月前までに申し出る」のような決まりがあることがあります。労働局の説明では、その長さが1か月前のように常識的な範囲なら、まず就業規則に沿って申し出るのがもめにくく、反対に極端に長い期間は無効とされることがある、とされています。この記事では「2週間は法律の最低線、就業規則の期間が常識的な長さならそれに合わせる」という考え方で進めます。

もう1つ。引き継ぎをする義務を定めた条文は、確認した範囲にはありませんが、労働局は「引き継ぎなど必要な業務を果たしていない場合は問題が起きることもある」と注意しています。「決算まで」という引き止めには、引き継ぎ資料で応えます。あとの見出しで、経理の引き継ぎ資料の目次を書きます。

この見出しの決まりは、2026年10月時点で確かめたものです。法律や制度は変わることがあるので、申し出る前に就業規則の「退職」の条も開いておきます。

過去の3回を、1枚の表に並べる

この記事の真ん中は、この表です。紙でもスマートフォンのメモでもかまいません。縦に1回目・2回目・3回目、横に5つの欄を作って、埋めてください。

言った形(口頭/書面) 辞める日を言ったか 言われた言葉 撤回した場所(上司の前/その夜/翌週) 残る条件を確かめたか
1回目
2回目
3回目

欄の埋め方を1つずつ書きます。

「言った形」は、口で言っただけなら「口頭」、退職届やメールのように文字で残る形なら「書面」です。3回とも口頭だった、という人もいます。それでかまいません。事実を書くだけです。

「辞める日を言ったか」は、「○月○日で辞めます」と日付を口にしたかどうかです。「辞めたいと思っています」「そろそろ考えています」は、日付がないので「言っていない」です。

「言われた言葉」は、上司の言葉をそのまま書きます。「決算が終わるまで」「君がいないと締められない」。言い換えなくてよいです。

「撤回した場所」は、「辞めるのをやめる」と自分の中で決めた場所です。上司の前で撤回したなら「上司の前」。その場では黙って帰り、夜に「やっぱり無理だ」と思ったなら「その夜」。数日たって、何となく言い直さないまま過ぎたなら「翌週」です。

「残る条件を確かめたか」は、「担当を替える」「給料を見直す」のような約束があったとき、それがいつ・どう実現するかを紙やメールで確かめたかどうかです。約束がなかった回は「約束なし」と書きます。

3行とも埋まったら、縦に見てください。同じ欄に同じ言葉が3つ並んでいれば、その欄が止まった場所です。並んでいなければ、次の3つの問いで分けます。

表を縦に読む、3つの問い

表の列ごとに、3つの問いに答えます。止まった場所で分けるのは、この記事だけの整理です。3回を採点するものではありません。

問い①:3回とも、日付を書いた書面を出しましたか。「言った形」が3回とも口頭で、「辞める日」も3回とも言っていないなら、止まった場所は「形」です。

問い②:上司の前で言葉が止まり、その場で撤回したのは何回ですか。3回ともなら、止まった場所は「上司と顔を合わせること」そのものです。四度目も上司の前に立てば、同じことが起きます。

問い③:3回の引き止めで約束された条件(担当替え、給料)は、書面で出ていますか。約束があって、書面がなくて、確かめないまま残ったなら、止まった場所は「条件」です。

3つの答えを表の横に書き足すと、次のどれに近いかが見えてきます。

  • 原因A:3回とも口頭で、日付を言わなかった。伝える相手は決まっていて、上司と話すこと自体はできる。止まったのは「形」。
  • 原因B:3回とも上司の前で言葉が止まり、その場で撤回した。四度目も顔を合わせれば同じになる。
  • 原因C:3回の引き止めで条件を約束されたが、書面で出ていない。条件が本当なら残ってもよいと思っている。

原因が1つ決まれば、道も1つです。Aは自分で送る、Bは代行に頼む、Cは条件を書面で出してもらう依頼を送る。3つに共通するのは「送る」という動作です。四度目は、口で言うのではなく、送ります。

「決算まで」には、引き継ぎ資料で応える

どの原因でも、上司の「決算が終わるまで」「君がいないと締められない」に返すのは、引き継ぎ資料です。経理の引き継ぎ資料は、目次を先に決めれば書けます。

  • 締めの手順:月次と年次の締めで、何を、どの順番で、どの画面や帳票で行うか
  • 支払いの一覧:毎月の支払先、締め日と支払日、振込の承認を誰が行うか
  • 使っている台帳の場所:会計の台帳、固定資産の台帳、取引先の一覧が、どのフォルダ・どの棚にあるか
  • 決算に向けて残っている作業:今の時点で未処理のもの、締め切りが近いもの

これを1行ずつ、自分の言葉で書いていきます。「決算まで」は、人が残ることでなく、資料で引き継ぎます。「この日で辞めます。締めの手順は資料にします」と言えるのは、この目次があるからです。

原因A:日付を書いた退職届を、郵便局から送る

Aの人は、上司と話すことはできます。足りなかったのは、日付と、形です。四度目は、口で言うのをやめて、日付を書いた退職届を送ります。

手順は5つです。

  1. 表を埋める(上で済んでいます)。
  2. 辞める日を決める。申し入れから2週間が法律の最低線で、就業規則に申し出期間があればそれに合わせます。
  3. 退職届を書く。「退職届 私は、○年○月○日をもって退職いたします。○年○月○日 (所属) (氏名)」。前の日付が辞める日、後ろの日付が出す日です。
  4. 友人の前で、郵便局から内容証明と配達証明で送る。
  5. 引き継ぎ資料を作る。

4の「郵便局から送る」を説明します。内容証明は、「どんな内容の文書を出したか」を郵便局が証明する仕組みです(郵便法48条)。配達証明をつければ、配達した事実と日付が残ります(郵便法47条)。どちらも書留で送ります。内容証明は文書1通と同じ内容の控え2通が要り、扱っている郵便局が限られます。配達証明は、出すときにも、出したあとにも申し込めます。細かい出し方は、郵便局の窓口で確かめてください。

この2つで残るのは「出した事実」「文書の内容」「配達した事実と日付」です。相手が読んだことや、内容が正しいことまでは証明しません。「送れば解決」ではなく、「出した・届いたを、自分の記憶ではなく記録に残す」ための手段です。退職の意思表示は、相手に届いた時から効力が生じます(民法97条1項)。口で言っただけの3回と、四度目の違いはここです。

郵便局に行かず、上司に手渡すのでもかまいません。その場合は、渡す前に退職届の控えを写真に撮っておきます。渡した日付が分かるようにしておくためです。

四度目も「決算が終わるまで」と言われるかもしれません。そのときに返す一文は、これです。

「この日で辞めます。締めの手順は資料にします。」

日付は動かさず、新しい言葉を足しません。退職届は、会社の承認がなくても届けば効力があります。言葉を足して話し合いが始まると、1回目から3回目と同じ場所に戻りやすくなります。

代行に頼めるのは「送る」の一部だけ

Bの道を選ぶ前に、四度目の「送るもの」のうち、代行が運べるのはどれかを見ておきます。

運べるのは、退職の意思だけです。弁護士でない退職代行にできるのは、本人が決めた「辞めます」を会社に伝えるところまでです。残業代や退職金、退職日の条件を会社と話し合うことは、弁護士でない事業者が報酬を受けて行うと弁護士法72条の問題になるため、できません。この点は、弁護士会や労働委員会も注意を呼びかけています。3回の引き止めで約束された「担当替え」「給料の見直し」を確かめることも、代行の仕事ではありません。それを書面で求めるのは原因Cの道で、本人が送ります。

では、上司の前で3回撤回した人にとって、代行に頼むと何が変わるのか。変わるのは、最初に「辞めます」を伝える役を、自分が行うか人に頼むか、という点です。言葉が止まって「もう少し頑張ります」と言ってしまう場面に、四度目は立たなくなります。

頼んでも、送るものは減りません。退職届、引き継ぎ資料は本人が送ります。離職票と源泉徴収票を受け取り、健康保険と年金を切り替えるのも本人です。

代行の費用は事業者ごとに違うので、調べた額を自分で入れておきます。

見た額:(     )円

退職届を自分で郵便局から送る道なら、この額はかかりません。かかるのは郵便の料金です。代行を使わない人の代わりの方法は、上のAで書いた、内容証明と配達証明で送る形です。上司の前に立たずに済む点は、こちらも同じです。

原因B:撤回する場に立たず、依頼を送る

Bの人は、3回とも上司の前で言葉が止まり、その場で撤回しました。四度目も上司の前に立てば、同じことが起きます。それなら、「伝える」という作業だけを人に頼み、上司の前に立つ場面を四度目から消します。

依頼を送る前に、次の表の右側を埋めます。

決めること 書き込む欄
辞める日 ○月○日
引き継ぎ資料を自分で書くこと 目次の4つを書く/書かない
貸与品(鍵・カード・パソコンなど)の返し方 郵送/会社に置いてくる
友人に「依頼を送る日」を伝えること ○月○日に送る、と伝える

4行目が、この記事の形です。依頼を送る日を友人に伝え、その日に友人の前で送ります。

決めたら、頼みます。そのあとに本人が送るのは、退職届と引き継ぎ資料です。受け取るのは、離職票と源泉徴収票。切り替えるのは、健康保険と年金。そして、上司から直接連絡が来たときに、決めておいた形で返します。

詰まりやすいのは、上司から直接電話が来て、声を聞いたとたんにまた撤回しそうになる場面です。代行は「本人への連絡は控えてほしい」と会社に伝えますが、それは依頼であって、会社を縛る決まりではありません。電話は来るかもしれない、と先に思っておきます。そのうえで、「電話には出ない。返事はメールでする」と先に決め、友人にもそう言っておきます。言っておくのは、自分で決めたことを、自分以外の人が知っている状態にするためです。

返事をメールでする場合の文は、これで足ります。

「退職の意思は、○月○日にお伝えしたとおりです。退職日は○月○日です。引き継ぎは資料にまとめて、お送りします。」

原因C:約束の条件を書面にしてもらい、次の締めを期限に残る

Cの人は、3回の引き止めで「担当を替える」「給料を見直す」と約束されて、それが本当なら残ってもよい、と思っています。問題は、約束を確かめないまま残ったことです。四度目は、辞めるのではなく、約束を書面にしてもらう依頼を送ります。

手順は4つです。

  1. 約束された条件を、表の「言われた言葉」の欄から書き出す。「担当を○○に替える」「給料を○円にする」のように、できるだけ具体的に。
  2. 書面で出してもらう依頼を、上司にメールで送る。日付が残る形にするためです。
  3. 次の決算の締めを期限にする。「○月の締めまでに書面が出ること」と決めます。
  4. 期限までに書面が出て、守られていれば残る。出なければ、その日に日付を書いた退職届を送る。

2の依頼の文は、これです。

「前回お話しいただいた、担当と給料の件について、内容と時期を書面でいただけますか。○月の締めまでにいただけると助かります。」

詰まりやすいのは、「口約束で十分だろう」と言われる場面です。そのときに返す一文は、これです。

「書面で出なければ、この日で辞めます。」

期限の日付を、ここで口にします。このとき、退職届も先に書いておきます。期限の日に書面が出ていなければ、その日に、Aと同じ形で郵便局から送ります。期限を決めずに残るのは、Cではなく、4回目の「残った」です。

友人の前で「送る」理由

表の「撤回した場所」が「その夜」や「翌週」だった人は、上司の前では言えています。崩れるのは、あとで一人になった時間です。そういう人は、送った事実を友人に見せることで、撤回の余地を自分で消します。これは編集側の整理で、決まりではありません。

送るものは、原因で変わります。Aは退職届。Bは代行への依頼。Cは条件を書面で出してもらう依頼。どれも「送信」を押すか、郵便局の窓口で控えを受け取るかの、数秒の動作です。その数秒を、友人の目の前でやります。

友人に先に言う文は、これで足ります。

「○日に送る。見ていてほしい。」

友人が何と返すかは、ここでは書きません。笑われてもかまいません。この記事で友人に頼むのは、応援でも、慰めでもなく、「送ったのを見ていること」だけです。

四度目の前に、今日やる1行

どの原因でも、今日やるのは1行で足ります。

Aの人は、表の1行目、1回目の欄を埋めます。5つの欄のうち、「言った形」と「辞める日を言ったか」だけでもかまいません。

Bの人は、依頼を送る日を1つ決めて、友人に伝えます。「○日に送る」。日付だけで足ります。

Cの人は、約束された条件を1行書きます。「担当を替える、と言われた」。これが、書面で出してもらう依頼の1行目になります。

四度目

四度目。友人の目の前で「送信」を押しています。郵便局から送った人は、窓口で控えを受け取っています。

Aの人が送ったのは、日付を書いた退職届です。Bの人が送ったのは、代行への依頼です。Cの人が送ったのは、約束の条件を書面で出してもらう依頼です。どれも「送った」という事実が残り、1回目から3回目になかった「記録」が、四度目にはあります。

友人は、笑っていてもかまいません。「どうせ今回も」と言っていてもかまいません。送った事実を見ているのは、友人です。それで足ります。

3回の表は、もう埋まっています。四度目の行は、表にはありません。四度目は、送った控えが、その代わりです。