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友人とのつきあい

友人の紹介で入った事務。「辞めたら悪い」を本人に言ってみた帰り道

約13分で読めます

紹介してくれた友人に会社の外で自分の退職について率直に尋ねる

友人の紹介で入った会社を辞めたいのに、退職届の一行目が書けない。友人本人に聞く一問と答えの仕分けで、「友人に先に、上司はそのあと」の順番を決め、自分で伝える・退職代行・期限つきで残るから選べます。

友人の紹介で入った事務の仕事、二年目。辞めたいと決めた。けれど退職届を書こうとすると、紹介してくれた友人の顔が浮かんで、一行目が書けない。その友人は同じ会社の別の部署にいて、「最近どう?」と聞かれるたびに「ぼちぼち」と返している。

この記事を読むと、友人本人に聞く一問を持ち、返ってきた答えを3つに仕分けて、「友人に先に、上司はそのあと」という順番で自分の辞め方を決められます。友人の答えによって、退職届を自分で出す、退職代行に伝えてもらう、友人の都合のつく日まで期限つきで残る、のどれが自分の道かも見えてきます。

一行目が書けないのは、順番を決めていないから

退職届の一行目が書けない。「友人に先に言うのか、会社に先に言うのか」の順番を決めていないので、どちらにも言えずにいるだけです。

友人に先に言えば、友人が会社に伝えてしまうかもしれない。会社に先に言えば、友人があとから人づてに知って傷つくかもしれない。どちらを先にしても悪い結果になる気がして、ペンが止まる。この止まり方は、順番を決めれば動かせます。

この記事では、友人本人に聞く一問を決め、答えを3つに仕分けて、辞め方を決めます。「辞めたら悪い」という気持ちは、分けてみると中身が3つあり、そのうち友人に聞けば分かる部分があります。そこから始めます。

一問の前に、辞める決まりを一度だけ

正社員のように期間の定めのない雇い方なら、辞めたいという申し入れはいつでもでき、申し入れた日から2週間がたつと雇用は終わります(民法627条1項)。口で伝えても辞める意思は伝わりますが、日付の食い違いを残さないために、退職日を書いた退職届を紙で出すほうがよい、と労働局は案内しています。就業規則に「1か月前までに申し出る」のような決まりがあり、その長さが常識の範囲なら、それに合わせておくほうがもめにくい、というのも労働局の案内です。

ここまでの決まりは2026年10月時点の内容です。法律や制度は変わることがあります。

この記事の読者は正社員です。契約に期間の定めがある人は、辞め方の決まりが別になるので、契約書の「契約期間」の欄を先に見てください。

「辞めたら悪い」の中身を3つに分ける

「紹介してくれたのに辞めたら悪い」という一文を、そのままにしておくと動けません。中身を3つに分けると、動ける部分が見えてきます。次の表の右の欄を、自分の言葉で埋めてみてください。

「悪い」の中身 具体的には 誰に聞けば分かるか
友人の立場 友人の会社での評価に響くのか。紹介した責任を問われるのか 友人本人
自分の気持ち 入れてもらった恩。「ぼちぼち」と返し続けてきた後ろめたさ 自分で決める
会社の制度 社員の紹介で入った人が辞めた時の決まりが会社にあるのか 友人本人(会社の決まりは会社ごとに違う)

3つのうち、自分の気持ちは友人に聞いても解けません。これは自分で引き受ける部分です。けれど、友人の立場と会社の制度は、友人本人に聞けば分かります。友人の立場のうち、会社の決まりで変わる部分は、友人に聞けば分かります。

つまり、「辞めたら悪い」の3つのうち2つは、友人に一問を聞けば中身が分かります。聞かないままだと、友人の立場を自分で決めつけたまま止まり続けます。

友人に聞く一問と、答えの仕分け

聞く言葉は、これ一つ

「辞めようと思っている。紹介してくれたのに、あなたの立場は困る?」

前半で自分の決心を先に言い、後半で友人の立場を聞きます。「どう思う?」だと、友人の感想を聞くことになります。「あなたの立場は困る?」だと、聞いているのは友人の会社での立場です。聞きたいのは後者なので、言葉を変えないでください。

この一問は、会社ではなく、会社の外で聞きます。職場の中では、友人が会社の話をしにくいためです。

返ってきた答えを、3つの箱に入れる

返ってきた答えは、この記事では次の3つに仕分けます。

答え 仕分け 次にすること
①「困らない。気にしないで」 友人の立場は解けた 上司に伝える順番へ進む
②「正直、少し言いづらくなる」 困る中身がある 困る中身を1つ聞く(評価の時期か、紹介の責任か、辞める時期か)。時期で解けるなら、その時期を期限にする
③友人には言えたが、上司に言う場面を思い浮かべると、友人の名前を出されて責められると分かっていて、言えない 友人ではなく、上司との向き合い方が詰まり 辞め方を変える

②の時は、「困る」の中身を1つだけ聞きます。「評価の時期? 紹介した責任? それとも辞める時期?」と3つ並べて、友人に選んでもらいます。評価の時期や辞める時期なら、その時期を過ぎれば困らなくなるので、期限が決められます。紹介の責任なら、それは会社の決まりの話なので、「会社に紹介の決まりはある?」と重ねて聞きます。

一問を聞く前に、3つの問い

一行目が書けない原因を、ここでは3つに分けます。3つに分けるのは、友人への一問から辞め方を決めるための整理で、だれかが決めた基準ではありません。一問を聞く前でも、次の3つを自分に聞くと、どこで止まりそうかが見えてきます。

  1. 友人本人に、上の一問を聞けるか。
  2. 聞いたあと、上司に言う自分が思い浮かぶか。それとも、上司が友人の名前を出して引き止めると分かっていて、その場面で引き下がる自分が見えるか。
  3. 友人の答えが「困る」だった時、困る中身は時期で解けるものか。

1が「聞ける」で、2が「思い浮かぶ」なら、原因Aです。友人には言える。ただ、友人に先に聞いてから上司に言う、という順番を決めていなかっただけです。

1が「聞ける」で、2が「上司の前では引き下がる」なら、原因Bです。友人には言えるけれど、上司に言うと友人の名前を持ち出されて責められると分かっていて、その場面に立つと引き下がってしまう。詰まっているのは友人ではなく、上司と向き合う場面です。

1が「聞ける」で、答えが「困る」、3が「時期で解ける」なら、原因Cです。友人の困る時期が過ぎれば解けるので、その時期を期限にして、今は残ります。

1が「聞けない」なら、まず一問を聞く日を決めるところからです。聞かないまま原因を決めることはできません。

伝える順番は、どの道でも同じ

原因が決まる前に、順番だけ先に決めておきます。順番は一本の線です。

友人に一問を聞く → 上司に退職届を出す → その日のうちに友人に「言った」と知らせる

この線は、自分で伝える場合も、退職代行に頼む場合も、期限まで残る場合も同じです。友人が最初で、友人が最後です。上司に言う前に友人が知っていて、上司に言ったあとも友人が最初に知る。この形にすると、友人が人づてに知る前に、自分から伝えられます。

原因A:友人には言える。順番を決めていなかっただけ

友人→上司→友人の4歩

1歩目は、友人に会う日を決めて、一問を聞くことです。答えが①なら、次へ進みます。

2歩目で、退職日を決めて退職届を書きます。日付は、出す日から2週間以上先にし、就業規則に何日前までという決まりがあればそちらを守ります。書くのは、退職すること、退職日、出す日、自分の名前。理由は「一身上の都合」とだけ書けば十分で、紹介のことは書きません。一行目は「退職届」、続けて「このたび、一身上の都合により」と書き、退職日を入れます。

3歩目、上司に退職届を渡します。渡す時に言うのは、「退職します。退職日は○月○日です。退職届をお持ちしました」の一文です。

4歩目、その日のうちに、友人に「上司に言った」と知らせます。友人が人づてに聞く前に、自分から伝えます。

「○○さんの紹介なのに」と言われたら

上司が「○○さんの紹介なのに」と言う。ここで引き下がらないために、返す一文を先に持っておきます。

「紹介は入口の話で、退職は自分の判断です。退職日は変えません」

紹介は、入った時の話です。辞めるかどうかは、今の自分の判断です。この2つを分けて言うと、上司の言葉に乗らずにすみます。それでも退職日を動かそうとする話が続くなら、総合労働相談コーナー(無料・予約不要)に相談できます。

代行は会社に伝える。友人には自分で話す

原因Bの道に進む人は、手順の前にここを読んでください。代行に任せられることと、任せられないことの話です。

弁護士でない代行に任せられるのは、自分で決めた「辞めること」と「退職日」を、会社に届けてもらうところまでです。退職日をずらす相談や、有給・残業代の扱いを会社とやりとりすることは、弁護士でない人がお金を受け取って行うと弁護士法72条にふれるおそれがある、と弁護士会や労働委員会が注意しています。退職日と有給の扱いは、頼む前に自分の中で決めておきます。

そして、この場面でいちばん大事な線があります。友人への説明は、代行の仕事ではありません。「友人に話を聞かないでほしい」と代行から会社に伝えてもらうことはできても、それは会社へのお願いにとどまります。会社が同僚に本人のことを聞くことを止める公的な決まりは、見つかっていません。代行を使っても、友人が職場で「知ってたの?」と聞かれることはあり得ます。だから、Bの道では、友人と先に話しておくことが手順に入ります。

自分で伝える場合との違いは、上司の前で友人の名前を出されずにすむことです。辞める意思は代行が届けるので、「○○さんの紹介なのに」と言われる場面に、自分が立たなくてすみます。その代わりに、お金がかかります。相場はこの記事には書きません。頼む前に自分で調べた額を、ここに書いておきます(    円)。

退職の連絡が届いたあとも、書類と保険の手続き、会社から連絡が来た時の受け方は、自分の側に残ります。中身はBの手順の4歩目に書きます。

代行を使わないなら、Aの道です。退職届を紙で出し、上司に返す一文を持って自分で言う。お金はかからず、まずはこの道を考えます。

原因B:上司に言うと友人の名前を出されると分かっていて、引き下がる

友人と先に決めてから、代行へ

1歩目、友人に「代行を使うかもしれない」と話す日を決めます。代行を使うことと、退職日を、友人に先に伝えます。友人が会社から何か聞かれた時に返す一言を、二人で決めておきます。たとえば「辞めることは聞いていたけど、手続きのことは本人に任せていた」のような一言です。会社が友人に聞くのを止める決まりはないので、この一言を、友人が困ったときに使えるように渡しておきます。

2歩目、頼む前に、自分の中で3つを決めます。退職日、残っている有給を退職日までに使うかどうか、会社に置いている私物をどう受け取るか。有給は、退職日を過ぎると会社が日をずらす余地がなくなるため、退職までに残りを使いたいという申し出には応じることになる、と労働局は案内しています。とはいえ全部使えると決まっているわけではないので、残りの日数を自分で確かめてから決めます。

3歩目、代行に頼みます。伝えてもらう中身は、辞めることと、2歩目で決めた退職日の2つです。

4歩目、退職の連絡が届いたあとの手続きを、自分で進めます。

  • 書類:源泉徴収票は、退職後1月以内に会社が渡す決まりです。離職票が届かないときは、ハローワークに申し出れば本人の請求で手続きが進みます。
  • 健康保険:今の保険を続ける任意継続(退職日の翌日から20日以内に申し出)、国民健康保険(14日以内に住んでいる市区町村の窓口へ)、家族の扶養に入る、の3つから選びます。
  • 年金:次の勤め先にすぐ入らないなら、退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で国民年金への切り替えをします。
  • 電話:会社から電話が来たら出るか、出るなら何を言うかを、頼む前に決めておきます。

5歩目、会社に伝わったその日のうちに、友人に「伝わった」と知らせます。

友人が「知ってたの?」と聞かれたら

友人が職場で「知ってたの?」と聞かれる。二人で決めた一言を返してもらいます。それでも友人が困った日があったら、その日のうちに友人に「今日、何か言われた?」と聞きます。友人が一人で抱えない形にしておくことが、代行を使う時の友人への礼儀です。

原因C:友人の答えが「困る」で、中身が時期だった

友人の時期を、自分の期限にする

まず、友人に困る中身を1つ聞きます。「評価の時期」や「紹介の決まりの条件が切れる時期」のように、日付で言える答えなら、この道です。

次に、その時期を期限にします。期限の翌月を退職日にして、退職届を今、出します。期限が来てから書くのではなく、今出すのがこの道の要です。今出しておけば、期限が近づいた時に「やっぱり言えない」に戻りにくくなります。退職届に書く理由は、Aと同じく「一身上の都合」だけです。

そのうえで、友人に退職日を伝えます。「あなたの時期が過ぎた翌月に辞める。退職届は出した」と言います。あとは期限まで働きます。

友人の時期が延びたら

友人の評価の時期が後ろにずれたり、決まりの条件が変わったりする。ここで退職日も一緒に動かすと、終わりがなくなります。「延びても退職日は動かさない」と、友人と先に決めておきます。退職届を今出しておくのは、このためでもあります。

友人の答えで、3つの道に分かれる

原因 道 選ぶ基準
A:友人には言える。順番を決めていなかっただけ 自分で伝える 友人の答えが①で、上司に言う自分が思い浮かぶ
B:上司に言うと友人の名前を出されて責められると分かっていて、引き下がる 退職代行を使う 友人には言えたが、上司の前に立つと引き下がる自分が見える
C:友人の答えが「困る」で、中身が時期 今は残る(期限と条件つき) 困る中身が日付で言えて、その日を期限にできる

Cを選ぶ時の条件は、期限が日付で言えることと、退職届を今出すことの2つです。「落ち着いたら」「様子を見て」は期限ではありません。

お金がかからないのは、自分で退職届を出すAの道です。代行は、上司の前に立つ場面そのものを避けたい人のための道で、友人との話まで片づけてくれるものではありません。

今日決めるのは、友人に会う日

原因Aの人は、友人に会う日を決めてください。会社の外で会える日を一つ選び、手帳に書く。それが今日の一手です。

原因Bの人も、まず友人に「代行を使うかもしれない」と話す日を決めてください。先に友人と話す日を決めることで、順番が守られます。頼むのは、その日を決めてからで間に合います。

原因Cの人は、友人に困る中身を1つ聞いてください。「評価の時期? 紹介した責任? 辞める時期?」の3つを並べて、1つ選んでもらう。それが今日の一手です。

一問を言ってみた帰り道

友人に「辞めようと思っている。紹介してくれたのに、あなたの立場は困る?」と言ってみた帰り道。友人は「気にしないで」と言った。

自分で伝えた人も、代行に頼んだ人も、期限まで残った人も、帰り道は同じです。最初に友人に一問を聞いて、答えを持って帰る。その帰り道、「気にしないで」の一言を思い出しながら、退職届の一行目を頭の中で決めています。「退職届」と書き、「このたび、一身上の都合により」と続け、退職日を入れる。一行目は、もう決まっています。