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たとえば、こういう場面です。友人から仕事の相談を受けて、「それなら転職した方がいいよ」と言った。友人と別れて一人になった帰り道、同じような不満を持ちながら何もしていないのは自分のほうだ、と気づいた。20代でも30代でも起きる場面です。
この記事を読むと、友人に言った言葉を自分宛てに言い直し、その続きに出てくる「でも」の中身から、自分は動くのか、動かなくていいのかを決められます。使うのは紙1枚とペンだけです。
人に言えて自分に言えないのは、言葉の続きを聞いていないから
友人に「転職した方がいいよ」と言う時、あなたが知っているのは友人が話してくれたことだけです。友人の貯金の額も、家の事情も、仕事の細かい所も知りません。知らないから、言葉は短く、はっきりしたものになります。
同じ言葉を自分に向けると、言い終わる前に「でも」が出てきます。自分の事情は全部知っているからです。そして多くの場合、その「でも」の続きを最後まで聞かないまま、「自分もがんばろう」で終わらせています。何をがんばるのかが決まっていないので、次の日になっても何も変わりません。
言えたのに動いていないことを、性格の話として片づけなくて大丈夫です。動いていない理由は、「でも」の続きにそのまま入っています。この記事では、友人との会話を、相手を自分に替えてやり直します。やり直しは3回の書き込みで終わります。
やり直し1 友人に言った言葉を、3つ書き出す
紙を縦に半分に折り、左側に、友人に言った言葉を3つ書きます。一字一句まで正確でなくてかまいません。言った時の調子のまま、短く書きます。
書き方の例です。
「我慢しても変わらないよ」
「今ならまだ選べるよ」
「相談だけでもしてみたら」
3つ思い出せない時は、友人の話のどこでうなずいたかを思い出します。「それはおかしいね」「それは大変だね」と返した所も、言った言葉に入れてかまいません。2つしか出なければ、2つのまま次へ進みます。
ここで言葉をきれいに直さないでください。「転職という選択肢もあると思う」のように整えると、次の書き込みで「でも」が出にくくなります。言ったままの強さで書きます。
やり直し2 主語を「自分は」に替えて書き直す
紙の右側に、左の3つを、主語だけ替えて書き写します。
「自分は、我慢しても今の不満は変わらない」
「自分は、今ならまだ選べる」
「自分は、相談だけでもしてみたらいい」
書いている途中で、文を弱めたくなることがあります。「変わらない」を「変わらないかもしれない」に、「選べる」を「選べる人もいる」に直したくなります。直さずに、友人に言った時と同じ形で書き切ります。弱めたくなった文があれば、その文の横に印をつけておきます。印のついた文が、あとで原因を決める時の手がかりになります。
やり直し3 「でも、」と続けて、出てきた言葉をそのまま書く
右側に書いた文それぞれの下に「でも、」と書き、続きに出てきた言葉をそのまま書きます。考えてから書くのではなく、最初に出てきた言葉を書きます。理由として立派かどうかは気にしません。
書き方の例です(説明のための例です)。
自分は、我慢しても今の不満は変わらない。でも、今の仕事が一区切りつくまでは手が空かない。
自分は、今ならまだ選べる。でも、ほかの会社で通じるものが自分にはない。
自分は、相談だけでもしてみたらいい。でも、相談するほど困っているわけではない。
「でも」が出てこない文もあります。その文は、自分に向けても成り立っている文です。空いた所に「なし」と書いておきます。1つの文に「でも」が2つ出てきたら、2つとも書きます。
ここまでで、紙の右側に「でも」の続きが2つから4つほど並びます。次に、この中身を分けます。
「でも」の中身は、3つに分かれる
「でも」の続きに出てくる言葉は、大きく3つに分けられます。この分け方は研究や診断にもとづくものではなく、この記事での整理です。自分の状態を見やすくするために使ってください。
| 「でも」の続きに出た言葉 | 原因 | 進む道 |
|---|---|---|
| 「忙しい」「面倒」「そのうち」 | A:友人と同じ不満が自分にもあり、先送りしていただけ | 転職 |
| 「自分には強みがない」「友人とは違う」 | B:ほかの会社で通じる力に自信がなく、「自分には言えるものがない」と思っている | 資格 |
| 「自分はそこまで困っていない」 | C:今の会社でそこまで困っていない。友人の状況と自分の状況は違う | 現状維持 |
自分がどれかは、次の3つの問いで見分けます。
- 「でも」の続きは、「忙しい」「面倒」「そのうち」のような、手間や時期の話でしたか。
- 「でも」の続きは、「自分には強みがない」「友人とは違う」のような、自分の力の話でしたか。
- 「でも」の続きは、「自分はそこまで困っていない」という、今の状況の話でしたか。
3つの文で答えが分かれた時は、やり直し2で印をつけた文の「でも」を使います。印がなければ、友人に一番強い調子で言った言葉の「でも」を使います。強く言えた言葉は、自分にも当てはまると感じている場合があるからです(この記事での考え方です)。
人には転職を勧められるのに自分は動けない理由が、「いつか」のまま日付が入っていないことなら、「いつか動く」の期限は、いつですかで、動かないことのコストを数えて期限を決められます。
原因Aだった人:先送りを終わらせて、転職へ進む
「忙しい」「面倒」「そのうち」が出た人は、不満そのものは友人と同じです。違いは、友人は口に出して相談し、あなたは後に回していたという点だけです。進む道は転職です。
手順
- 不満を1つに絞る。友人の話にうなずいた所のうち、自分の職場にも当てはまるものを全部書きます。その中で「これさえ変わるなら、ほかは今のままでいい」と思えるものに丸をつけます。丸が1つになるまで絞ります。
- それが変わる会社の条件を書く。絞った不満を、条件の文に書き替えます。たとえば「仕事の進め方を上の人しか決められない」なら「担当者が自分で進め方を決められる仕事」、「帰る時刻が毎日読めない」なら「帰る時刻を入社の前に教えてくれる会社」です。条件は1行にします。
- 探す。条件の1行を横に置いて、仕事を探します。見るのは、その1行に合うかどうかだけです。ほかの項目で迷い始めたら、1行に戻ります。
使うもの
やり直しを書いた紙、条件の1行、自分の経歴を書くためのメモ(紙でもスマホでもかまいません)。
詰まる所と次の手
時間がない時。一日10分で進めます。順番は、条件を書く、経歴を書く、探す、の3つです。この順番を入れ替えません。条件がないまま探し始めると、見るたびに迷って10分では終わらず、「やっぱり忙しい」に戻ってしまうからです。
- 条件を書く日:不満を1つに絞り、条件の1行を書く。10分で絞り切れなければ、候補に丸をつけた所で終わり、次の日に続きをやる。
- 経歴を書く日:1日目は、いつからいつまで、どの部署にいたか。2日目は、担当した仕事を3つ。3日目は、その仕事を何人で、どのくらいの期間でやったか。1日に書くのは1項目だけ。
- 探す日:条件の1行に合う仕事を1つ見つけたら、その日は終わり。
不満が1つに絞れない時。2つ残ったら、友人に一番強く言った言葉に近いほうを残します。「我慢しても変わらないよ」と強く言ったのなら、我慢している中身に近いほうです。
絞っても決め手にならない時は、動く条件と残る条件を一文ずつ作る方法に進んでください。
原因Bだった人:自信がない点を1つ決めて、学ぶ
「自分には強みがない」「友人とは違う」が出た人は、不満があるかどうかの前に、ほかの会社で通じる力に自信がありません。そのまま探し始めても、経歴を書く所で手が止まります。進む道は資格です。足りないと感じている所を、学んで埋めます。
手順
- 自信がない点を1つ決める。「強みがない」のままでは広すぎて、何を学べばいいのかが決まりません。「何について聞かれたら答えられないか」を1行で書きます。たとえば「仕事の結果を数字で説明できない」「今の会社の中でしか通じないやり方しか知らない」「表計算ソフトを自己流でしか使えない」です。
- それを埋める知識を選ぶ。1行の「できない」を、「何を学べば言えるようになるか」に書き替えます。「仕事の結果を数字で説明できない」なら、お金の流れを読む知識(簿記など)。「表計算ソフトを自己流でしか使えない」なら、表計算の基本から関数まで。知識の名前を1つだけ書きます。
- 学ぶ。講座か本を1つ選んで始めます。試験のある知識なら、受ける回を先に決めると、いつまでにどこまで学ぶかが決まります。
使うもの
自信がない点の1行、厚生労働省の職業情報サイト(job tag)、学ぶための講座か本を1つ。
詰まる所と次の手
何が足りないか分からない時。行きたい仕事で求められることを3つ調べます。厚生労働省の職業情報サイト(job tag)では、職業の名前で検索すると、その職業のページに「就業するには?」「しごと能力プロフィール」という項目があります(2026年10月時点。サイトの作りは今後変わることがあります)。そこに書かれていることから、求められることを3つ書き写します。3つのうち、今の仕事で一度もやっていないものが、足りない点です。
行きたい仕事が思いうかばない時は、今の自分の仕事を検索し、同じページの「類似する職業」から近い仕事を1つ選んで、同じように3つ書き写します。
「友人とは違う」が消えない時。比べる相手を、友人から「行きたい仕事が求めること」に替えます。友人と自分の差は学ぶ中身を教えてくれませんが、求められること3つと自分の差は、学ぶ中身をそのまま教えてくれます。
原因Cだった人:残る理由を一文にして、現状維持を選ぶ
「自分はそこまで困っていない」が出た人は、友人の状況と自分の状況が違います。友人に転職をすすめたことと、自分が残ることは、食い違っていません。友人の話を聞いて友人に合うことを言い、自分の状況を見て自分に合うほうを選ぶ。どちらも同じ見方です。進む道は現状維持です。
手順
- 自分が残る理由を一文にする。「自分は今の会社に残る。理由は( )だから」の形で書きます。かっこの中には、「困っていないから」ではなく、今あるものを書きます。たとえば「任されている仕事を最後までやりたいから」「今の働く時間が、生活に合っているから」です。
- 今の会社で変えたいことが1つあれば、上司に頼む。頼むことは1つだけにし、何を、いつから、を入れます。変えたいことがなければ、手順1だけで終わりです。
上司に頼む時の文の例です。
「相談が1つあります。来月から、〇〇の担当を自分に任せてもらえないでしょうか。今は△△さんの手伝いという形ですが、最初から最後まで自分で進めてみたいです」
使うもの
残る理由の一文と、上司に頼むことを書いたメモ。
詰まる所と次の手
口だけの人だと感じる時。友人に、自分の選んだことを伝える文を用意します。伝えるかどうかは自由ですが、文にしておくと、すすめた言葉と自分の選択を分けて話せます。
「この前は転職をすすめたけど、あのあと自分のことも考えてみた。自分は今の会社に残る。理由は、任されている仕事を最後までやりたいから。あなたにすすめた気持ちは、今も変わっていないよ」
残る理由が書けない時。かっこの中に「仕方がないから」「ほかに行く所がないから」しか出てこない場合は、原因Cではありません。「ほかに行く所がない」は力の話なので原因B、「仕方がない」の中身が手間や時期の話なら原因Aとして読み直します。
「でも」の種類で決める。転職か、資格か、現状維持か
原因と進む道は、1つずつ対応しています。迷った時は、次の基準で決めます。
| 道 | 合う原因 | 選ぶ基準 |
|---|---|---|
| 転職 | A | 不満を1つに絞れて、それが変わる会社の条件を1行で書ける |
| 資格 | B | 「でも」の続きが自分の力の話で、自信がない点を1行で書ける |
| 現状維持 | C | 残る理由を一文で書けて、その文に「仕方なく」が入らない |
「でも」が2種類出た人は、次のように決めます。
- 手間の話(A)と力の話(B)の両方が出た:資格を選びます。言えるものがないと感じたまま探し始めると、経歴を書く日に手が止まり、「そのうち」に戻りやすいからです。
- 手間の話(A)と「困っていない」(C)の両方が出た:残る理由の一文を書いてみます。今あるものを理由にして書けたら現状維持、書けなければ転職です。
- 力の話(B)と「困っていない」(C)の両方が出た:行きたい仕事が1つでも思いうかぶなら資格、思いうかばないなら現状維持です。
言い直した紙に、今日足す1行
転職を選んだ人
友人に言った言葉を1つ、自分宛てに書きます。手帳かスマホのメモの一番上に、「自分は、我慢しても今の不満は変わらない」のように、主語を替えた文を1つ書き写してください。その下に、絞った不満を1つ書けたら、今日はそこまでです。次の日の10分は、条件の1行から始めます。仕事を自分で探す場合も、人に相談する場合も、最初に使うのはこの条件の1行です。
探し始める前に、今の仕事と行きたい仕事がどれだけ重なっているかを数えたい人は、友人が異業種に転職できた。自分にもできるかを一枚で確かめるで、紙一枚の上で線の本数を数えられます。
資格を選んだ人
自信がない点を1行で書きます。「( )について聞かれたら、答えられない」の形です。書けたら、その下に、埋めるための知識の名前を1つ書きます。名前が出てこなければ、行きたい仕事で求められることを3つ調べる所から始めます。講座を使う場合も、本で進める場合も、この1行が学ぶ範囲を決めます。
学ぶと決めることと、どの講座に申し込むかを決めることは、別の決め事です。下の広告は、スマートフォンやパソコンで学ぶ形の、有料の資格講座です。扱っている資格は講座ごとに決まっています。
- 向く人:自信がない点を1行で書き、それを埋める知識の名前を1つ書けた人。
- 向かない人:知識の名前がまだ出てこない人(行きたい仕事で求められることを3つ調べる所が先です)。「でも」の続きが手間や時期の話だった人(原因Aの条件の1行が先です)。
- 申込み後に起きること:申込みの流れ、支払いの時期と方法、受講できる期限、解約や返金の決まりは、講座ごとに違います。申し込む前に、案内ページで確かめてください。
- 使わない場合:本で進める場合も、この1行が学ぶ範囲を決めます。試験のある知識なら、受ける回を先に決めれば同じように始められます。
現状維持を選んだ人
残る理由を1行で書きます。「自分は今の会社に残る。理由は( )だから」。書けたら、紙の左側、友人に言った言葉の横に並べて置きます。友人には友人に合う言葉を言い、自分には自分の理由がある。その2つが1枚の紙に並びます。
次に友人から仕事の相談を受けた時、あなたは前と同じように「転職した方がいいよ」と言うかもしれません。その時には、同じ言葉を自分に向けた答えを、もう持っています。
この記事で確かめた公的な情報
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」:職業ごとのページの項目(「就業するには?」「しごと能力プロフィール」「類似する職業」)。2026年10月11日に確認。