この記事を読むと、会社への伝え方と友人への伝え方を別のものとして分け、友人に渡す手紙を書いて、辞める日を決められます。手紙を渡す日は最終日の昼休みです。そこへ着くまでに決めることを、順番に置いていきます。
今日も一緒にお弁当を食べた
電話受付の契約社員として働いている人の話です。契約は半年や1年ごとの更新で、もう辞めると決めています。上司である管理者には、辞めることを「同僚には言わないで」と言われています。隣の席には、入社が同じ時期で、毎日一緒に昼を食べる友人がいます。その友人に「来週からいない」と言えないまま、今日も一緒にお弁当を食べました。
黙って辞めれば、友人は翌週、空いた席を見て知ることになります。それが分かっているから、辞める日の話も、管理者との話も、どちらも進んでいません。
止まっている形を言葉にすると、こうなります。会社に伝えることと、友人に伝えることを、同じ一つの難しさとして抱えている。会社に言えないから友人にも言えない、友人に言えないから辞める日が決まらない、辞める日が決まらないから会社に言えない。輪になって回っています。
この輪は、二つに切ると動き出します。会社に伝えるのは「辞める意思と日付」で、相手は管理者です。友人に伝えるのは「辞める日と、黙っていた理由と、一緒の昼休みがよかったこと」で、相手は隣の席の人です。中身も相手も違うので、別々に決められます。
なお、ここで話す働き方は、半年・1年ごとに更新する、期間の定めのある契約です。期間の定めのない雇用の人は、申し入れから2週間という別の決まり(民法627条1項)が土台になるので、進め方の一部が変わります。
手紙の「前」と「後」
この記事の真ん中にあるのは、友人に渡す手紙です。手紙には「前」と「後」があります。
「前」は、言えないまま頭の中で繰り返していた文です。たとえば、こんな文です。
「黙っててごめん」
「言えなかった」
「ほんとは先月から決めてた」
「席が空いてから知るなんて、いやだよね」
「前」の文は、謝る言葉か、言いわけに近い言葉ばかりです。辞める日がまだ決まっていないからです。日付がないと、伝える中身がなく、謝ることしか残りません。
「後」は、渡す手紙の形です。四つの部分でできています。
| 番号 | 書くこと | 書き込む欄 |
|---|---|---|
| ① | 辞める日 | 月 日(最終日) |
| ② | 黙っていた理由 | 会社に「言わないで」と言われていた期間: 月 日〜 月 日/自分が言い出せなかった: |
| ③ | 友人との昼休みが、仕事の中で一番よかったこと | |
| ④ | 辞めたあとの連絡先 |
①が決まれば、「前」の文はいらなくなります。「黙っててごめん」の代わりに「◯月◯日で辞めます」と書けるからです。②には、黙っていた理由を事実のまま書きます。会社に言われていたなら、その期間を日付で書く。自分が言い出せなかったなら、そう書く。どちらも友人を責める言葉にはなりません。③は、手紙の中でいちばん長くなってよい部分です。思い出せる昼休みを一つ選んで、その日のことを書きます。④は、辞めたあとも連絡が取れる先を一つ書きます。
手紙を渡す日は、最終日の昼休みです。渡す前に辞める日が決まっていることが条件なので、手紙より先に、会社への伝え方を決めます。
契約書から、手紙の①の候補を写す
①の日付は、契約書の中にあります。契約書(雇用契約書や労働条件通知書)を出して、次の三つを書き写してください。
| 確かめること | 書き込む欄 |
|---|---|
| いまの契約の満了日 | 月 日 |
| 更新の時期(いつごろ、誰から更新の話が来るか) | 月ごろ/担当: |
| 契約期間は、いま途中か、満了が近いか | 途中/満了が近い |
ここから先に書く決まりは、2026年10月時点で確かめたものです。変わることがあるので、動く前に契約書と人事の説明もあわせて見てください。
期間の定めのある契約は、その期間は働く約束が原則です。途中で辞められるのは「やむを得ない事由」があるときとされています(民法628条)。何が「やむを得ない事由」に当たるかは個別に判断されるもので、この記事では決められません。一方で、契約期間が1年を超える契約の場合は、契約の初日から1年がたてば、会社に申し出ることでいつでも辞められる決まりがあります(労働基準法137条)。
満了日を①にするなら、途中で辞める話にはなりません。更新には本人の同意が要るとされていて、同意しなければ期間満了で終わるのが原則です。ただ、更新を断る時期について、法律で決まった期限は確認できていません。契約書に更新の手続きが書いてあればそれに沿い、書いていなければ人事や管理者に「更新しない場合は、いつまでに言えばよいですか」と聞いてください。
有給の残りも、ここで写しておきます。週の所定労働日数が4日以下で、週の労働時間が30時間未満の人は、週の日数に応じた日数の有給があります(労働基準法39条3項)。たとえば週4日なら、雇い入れから6か月で7日、1年6か月で8日、週3日なら6か月で5日、1年6か月で6日という表になっています。週5日以上、または週30時間以上なら、通常の労働者と同じ日数です。残りの日数は、給与明細や勤怠の画面、人事への確認で分かります。退職の前でも有給は請求できると労働局は説明していますが、残りを全部その日に当てられるかは会社との調整が入るので、ここでは「残りを写す」までにします。
①が空いたままなのは、なぜか
表が埋まったら、次の三つを自分に聞いてみてください。
- 管理者に、自分で「更新しない」または「辞めたい」と言えるか。それとも、管理者と顔を合わせて言うことが、できないか。
- 契約の満了日はいつか。いまは契約の途中か、それとも満了が近いか。
- 友人に黙っているのは、会社に言われたからか。それとも、自分で言い出せないからか。
三つの答えを並べると、①が空いている理由が見えてきます。ここではそれを、A・B・Cの三つに分けて呼びます。手紙を書くためにこの記事で作った分け方で、診断ではありません。
- A:管理者には言える。友人に黙っているのは、「同僚に話してよい日」を管理者に確かめていないから。
- B:管理者に顔を合わせて辞めると言うことができない。言えば席を替えられる、シフトを減らされると分かっていて、言葉が出ない。
- C:契約の満了日が近い。更新しないと伝えて、満了まで残る形が合う。
当てはまりそうなものが二つあるときは、①に入れたい日付で一つに絞ります。「管理者には言えるけれど、満了も近い」なら、満了日を①にしたい人はC、満了より前の日を①にしたい人はAです。「言えないし、満了も遠い」人はBです。
A:管理者に「話してよい日」を聞いてから、手紙を渡す
Aの人が止まっていたのは、「同僚には言わないで」をいつまで守るのか、期限を聞いていなかったからです。言わないでと言われた期間に終わりがないと、手紙を渡す日も決まりません。
順番は五つです。
まず、契約書で満了日を見ます。上の表に写した満了日を、そのまま①の候補にします。満了より前に辞めたい場合は、途中の退職に「やむを得ない事由」が要ることを頭に置き、管理者と話す前に、辞めたい日を一つ決めておきます。
次に、管理者に伝え、「同僚に話してよい日」を聞きます。文例はこうです。「次の更新はしません。最終日は◯月◯日でお願いしたいです。隣の席の人には自分から話したいのですが、いつから話してよいですか」。この一文には、辞める意思、日付、友人に話す希望の三つが入っています。管理者から日付が返ってくれば、その日が手紙を渡す日の候補になります。
三つ目に、管理者との話で最終日が決まったら、手紙の①に書きます。
四つ目に、手紙を書きます。②には、言わないでと言われた期間を日付で書きます。「◯月◯日から最終日まで、会社から同僚には話さないように言われていました」。③と④は、自分の言葉で書きます。
最後に、最終日の昼休み、いつもどおりお弁当を食べ終わってから渡します。
詰まるのは、管理者が「最終日まで誰にも言わないで」と言う場合です。会社のこの指示にどこまで従う決まりがあるかは、この記事では分かりません。ただ、手紙を最終日の昼休みに渡す形なら、最終日までは誰にも言っていないことになります。言わないでと言われた期間は、手紙の②にそのまま書きます。黙っていた理由が会社に言われていたことだと、友人は手紙で読めます。
代行が届けるのは会社への一言で、手紙は届けない
Bの道には、退職代行が出てきます。手紙の話から先に言うと、代行は隣の席の友人には何も伝えません。友人に渡す手紙は、どの道でも読者が書き、読者が渡します。代行が届けるのは、会社への「◯月◯日で辞めます」という一言だけです。
この一言より先のこと、たとえば契約の途中で辞める場合の「やむを得ない事由」の扱い、満了までのシフト、有給の残りの当て方を会社と話し合うことは、弁護士でない代行にはできません。こうした話し合いは法律に関わる事務にあたり、弁護士でない人が報酬を得て行うと弁護士法72条の問題になるとされていて、弁護士会や労働委員会も注意を呼びかけています。契約社員の読者は、話し合いが要る話を抱えていることもあるので、ここは頼む前に分けておきます。
自分で伝える道と比べると、変わるのは管理者と顔を合わせるかどうかだけです。会社に届く中身は「◯月◯日で辞めます」で同じです。そして、自分で伝える道には費用がかかりません。こちらが基本の道です。
代行を使わずに顔を合わせない方法も、二つあります。一つは退職届を書面で出すこと。口頭でも退職の意思表示は有効とされていますが、行き違いを防ぐために書面が望ましいと労働局は説明しています。手渡しが難しければ、郵便局から送る形もあります。もう一つは満了で終えること。更新に同意しなければ、期間満了で終わるのが原則です。
代行の費用は、この記事には書きません。自分で調べた額を、ここに一度だけ書き込んでください。自分で見た額:( )円。その額を払っても、管理者と顔を合わせずに終えたいかどうかを、手紙の①と一緒に考えます。
B:会社への一言は任せ、手紙は自分の手で
Bの人は、管理者と顔を合わせて辞めると言うことができません。言えば席を替えられる、シフトを減らされると分かっているので、言葉が出ない。この人にとって、代行は会社への一言を代わりに言ってもらう道です。手紙のほうは、変わらず自分で書きます。
頼む前に決めることは四つです。
| 決めること | 書き込む欄 |
|---|---|
| 最終日(手紙の①と同じ日) | 月 日 |
| 契約は途中か、満了か | 途中/満了 |
| 退職届の文面 | 「退職届。(最終日の日付)をもって退職いたします。(今日の日付)、(名前)」 |
| 友人に手紙を渡す日 | 月 日 |
退職届の文面は公的な様式ではなく、この記事での例です。契約が途中なら、「やむを得ない事由」が要ることと、その判断は個別であることを知ったうえで最終日を決めます。満了が近いなら、満了日を最終日にすれば、途中で辞める話にはなりません。退職届の文面は短くてかまいません。代行は、この退職届の中身を会社に伝えます。
頼んだあとにも、自分の手でやることが残ります。いちばん上に来るのは手紙です。代行は友人には何も伝えないので、手紙の①〜④を書き、渡す日を決めるのは読者です。代行が会社に伝えた日から、①の日付は動かさないようにします。
そのほかは、辞める人のだれにでも出てくる手続きです。会社から受け取る書類(離職票、源泉徴収票、請求すれば退職証明書)は、離職票なら会社が出さなくてもハローワークに申し出れば手続きが進み、源泉徴収票は退職後1月が交付の期限で、出なければ税務署に届け出ができます。次の勤め先にすぐ入らない場合、健康保険は任意継続(退職日の翌日から20日以内に申し出。退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること)、国民健康保険(14日以内に市区町村へ)、家族の被扶養者のどれかにし、国民年金への切り替えは14日以内に市区町村の窓口です。期限が短いので、最終日の前にどれにするか決めておきます。
管理者から直接連絡が来ることもあります。代行が「本人への連絡は控えてほしい」と伝えても、それはお願いで、会社を縛るものではないからです。来たときに返す一文を、手紙の横に書いておきます。「更新しないと伝えたとおりです。最終日は◯月◯日です」。
詰まるのは、代行が伝えた日から、もう席に着けない場合です。最終日の昼休みが作れないなら、手紙は郵送するか、友人の連絡先に自分で送ります。郵便で送るなら、郵便局の窓口から出せます。最後の昼休みが作れないときは、「最後に会える日」を自分で作ります。辞めたあとに、昼休みの時間に近くで会う約束を一つ入れて、手紙はその日に渡します。会えなかったとしても、手紙の④に連絡先があるので、そこから先は友人が決められます。
C:満了まで残って、手紙を書き上げる
Cの人は、契約の満了日が近い人です。途中で辞める理由を作らなくても、更新に同意しなければ期間満了で終わるのが原則です。残る期間には期限(満了日)があり、条件(更新しないと伝えてあること)があります。
順番は四つです。
一つ目、更新の時期に「更新しない」と管理者に伝えます。文例は「次の契約は更新しません。満了日の◯月◯日まで働いて、終わりにします」。更新を断る時期の決まりは法律では確認できていないので、契約書の更新の手続きを見て、書いていなければ人事に「いつまでに言えばよいか」を聞いてから伝えます。伝えた日は、手帳に書いておきます。
二つ目、満了日を最終日にします。手紙の①は満了日です。
三つ目、残る間に手紙を書きます。満了までの日々は、手紙の③を書く時間になります。毎日のお弁当の中から、書きたい一日を少しずつ選んでいけます。
四つ目、満了日の昼休みに、お弁当のあとで渡します。
詰まるのは、満了の直前に「もう一期だけ」と言われる場合です。このときは、伝えた日付で返します。「◯月◯日に、更新しないと伝えてあります。満了日で終わりにします」。更新には本人の同意が要るとされていて、同意しなければ期間満了で終わるのが原則です。それでも何度も言われる場合は、総合労働相談コーナー(無料・予約不要)に、伝えた日付を持って相談できます。
満了・途中・言えない。どれが手紙の①を決めるか
三つの道は、手紙の①に何が入るかで分かれます。
満了日が近く、その日を①にしてよいなら、Cです。途中で辞める話を避けられるので、三つの中でいちばん手間が少ない道です。満了まで待てない事情がある人には合いません。
満了日より前の日を①にしたくて、管理者に自分で言えるなら、Aです。止まっていたのは「話してよい日」を聞いていなかっただけなので、一つ聞けば①を決めやすくなります。費用はかかりません。
①に入れたい日はあるのに、管理者の前で言葉が出ないなら、Bです。ただし、契約の途中で辞める条件を会社と話し合う必要がある人には、Bは合いません。代行にはその話し合いができないからです。Bを選ぶ前に、上の「代行が届けるのは会社への一言」の段を、もう一度読んでから決めます。
どの道を選んでも、手紙は読者が書きます。ここだけは、道によって変わりません。
今日、契約書の日付を一つ写す
Aの人は、今日、契約書を出して満了日を写します。満了日が見えると、それより前に辞めたいのか、満了日でよいのかが決まり、管理者に言う日が近づきます。
Bの人は、今日、手紙の①に辞める日を書きます。まだ決まっていなければ、候補の日付でかまいません。代行に頼むのは、①が決まってからです。
Cの人は、今日、契約書で更新の時期を探して、上の表に写します。更新の話がいつ来るかが分かれば、「更新しない」と伝える日が決まります。
どれも、紙に日付を一つ書くだけの大きさです。
最終日の昼休み
最終日の昼休み。読者は、いつものお弁当を、いつもの席で、隣の友人と食べます。食べ終わってから、手紙を渡します。
「来週からいないんだ」を声で言えなくても、手紙の①が辞める日を言い、②が黙っていた理由を言い、③が一緒の昼休みがよかったことを言い、④が辞めたあとの連絡先を言います。読者が言えなかった四つを、手紙が代わりに言います。
Aの人は、管理者に「話してよい日」を聞いたうえで、ここに着きます。Bの人は、会社への一言を代わりに伝えてもらい、自分で書いた手紙を持って、ここに着きます。Cの人は、満了まで残って手紙を書き上げ、満了日の昼休みにここに着きます。
どの道を選んでも、辞める日を決めて手紙を書いたから、ここに着きます。空いた席で知らせるのではなく、お弁当のあとに、手紙で知らせる。それが、この記事で決めてほしかったことです。