大事な場面の前に不安を話すと、「大丈夫だよ」と励まされることが多いものです。それで気持ちが軽くなることもあれば、かえって落ち着かなくなることもあります。これは性格の強さや弱さの違いではなく、不安への対処のしかたの違いとして研究されてきました。そして、どちらの対処を取りやすいかは、人によっても、場面によっても変わります。
この記事では、本番前に自分に合う準備の方法を選ぶための手がかりを示します。人を2種類に分けるための記事ではありません。
この記事で渡すもの
- 不安への対処のしかたについて、研究で分かっていること
- 自分の傾向を振り返る3つの問い
- 場面に合わせた準備の選び方

励ましが効く場面と、効かない場面がある
励まされて楽になるときは、よい結果を思い浮かべることで不安が下がり、落ち着いて本番に入れます。
励まされても楽にならないときは、起こりうる失敗が頭に残っていて、それに備えるまでは落ち着きません。「大丈夫」と言われると、まだ備えていないのに話が終わってしまうように感じます。
どちらの反応も、おかしなことではありません。
研究で分かっていること、分かっていないこと
心理学者のノレムとキャンターは1986年の論文で、起こりうる悪い結果をあらかじめ具体的に考え、それに備えることで不安に対処するやり方を「防衛的悲観主義」と呼びました。
この記事は、この研究を人を分類する根拠としては使いません。論文の対象は米国の大学生で、実験室での課題が使われています。職場のあらゆる場面に当てはまるとは限りません。
また、これは人を2つの型に固定するものではありません。同じ人でも、発表の前には失敗を想定して備え、人と会う前には楽観的に構える、ということがあります。
自分の傾向を振り返る3つの問い
眠れない、食欲がないといった状態が続いているときは、どちらの方法も準備として働きにくくなります。その場合は問いに答える前に、休養を優先し、必要なら医療機関や相談窓口を使ってください。
次の3つは、自分の傾向を振り返るための問いです。心理検査や診断の尺度ではありません。場面を1つ決めて(例えば、次の発表)、その場面について答えます。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 本番の前に、うまくいく様子を想像すると | 落ち着く / かえって落ち着かない |
| 準備が終わったあと | もう見返したくない / もう一度確かめたくなる |
| 「大丈夫だよ」と言われると | ほっとする / 根拠が気になる |
左の答えが多い場面では、よい結果を思い浮かべる方法が合っている可能性があります。右の答えが多い場面では、失敗を想定して備える方法が合っている可能性があります。答えが混ざる場合や、場面によって変わる場合もよくあります。
場面ごとに、準備の方法を選ぶ
| 傾向 | 合いやすい準備 | 避けたほうがよいこと |
|---|---|---|
| よい結果を思い浮かべると落ち着く | 準備を早めに終え、直前は休みます。うまくいった経験を思い出します | 直前に、失敗の可能性を細かく話し合うこと |
| 失敗を想定しないと落ち着かない | 起こりうる失敗を書き出し、対処を決めておきます。時間を区切って行います | 無理に楽観的に考えようとすること、備えを省くこと |
失敗を書き出して備える方法が合う人は、不安を書き出して、準備するものを3〜5個に絞る手順をそのまま使ってください。
自分が人を励ます側になったときにも使えます。相手が不安を話してきたら、「大丈夫」と言う前に「何がいちばん気がかりですか」と聞いてみてください。相手が備えたいと思っている場合、その一言で話が具体的になります。
今日やること。次に控えている本番を1つ選び、3つの問いに答えてください。
よくある質問
自分の傾向は変えたほうがいいですか
無理に変える必要はありません。いまの方法でうまくいっているなら、それを続けてください。うまくいかない場面でだけ、別の方法を試せば足ります。
チームの中に、違う傾向の人がいます
懸念を出し合う時間と、直前の時間を分けると進めやすくなります。前日までに懸念を出して対処を決め、当日は確認だけにする、という分け方です。
出典・この記事の前提
- Julie K. Norem, Nancy Cantor (1986) “Defensive pessimism: Harnessing anxiety as motivation” Journal of Personality and Social Psychology 51(6), 1208–1217. 対象は米国の大学生で、実験室での課題を用いた研究です。
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」(2026年10月11日確認)
- 3つの問いと準備の対応表は、CareerPivotが整理したセルフチェック用のものです。正式な心理尺度ではありません。