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友人とのつきあい

内定祝いの友人に辞めたと言えない新卒。半年後、その友人と飲んだ店

約12分で読めます

内定祝いにもらったペンを前に友人と再び本当の仕事の話をする

入社半年で辞めたいのに、内定を祝ってくれた友人に言えない。会社に伝える手順と友人に送る一文を別の線に分け、自分で伝える・代行に頼む・1年目まで残るから選び、事実だけの一文を送れるようにします。

入社して半年。仕事の中身は、内定のときに聞いた説明とちがっていて、辞めたいと思いはじめている。内定が出た夜に、店で祝ってくれた友人がいる。その友人には「辞めたい」とも「辞めた」とも言えていない。机の引き出しには、その夜にもらったペンが入ったままになっている。

この記事を読むと、友人に送る一文と、会社に伝える手順を、別々に持てるようになります。会社の側は「自分で伝える」「退職代行に頼む」「1年目の終わりまで残る」の3つから選び、友人には事実だけの一文を先に送れます。

友人に言えないのは、会社に言えていないから

「次が決まってから友人に言おう」「もう少し落ち着いてから会おう」と考えているうちに、半年がたっています。この記事では、この順番を逆に考えます。

友人に言えない理由を、会社にまだ何も言えていないことに置きます。会社に伝えていない状態で友人に話すと、「辞めたい」としか言えず、話が途中で止まります。だから話したくなくなる。会社に日付を伝えるか、代行に頼むか、期限を決めるかのどれかをしたあとなら、友人には「決めた」という事実を送れます。

つまり、手をつける順番は、会社が先、友人があとです。この記事では、その2つを1本の線にまとめず、別の線として並べます。

ペンで1行書いて、原因を見分ける

会社に言えない理由は人によってちがいます。この記事では、次の3つの問いで、原因をA・B・Cに分けます。この分け方は、この記事での整理で、だれかが決めた基準ではありません。

問い①:辞めたい理由を、友人にではなく自分に向けて、1行で書けるか

ペンを引き出しから出して、紙に1行だけ書いてみてください。「配属された仕事が、内定のときに聞いた説明とちがう」など、友人に見せる前提ではなく、自分のための1行です。書けるなら、辞めたい理由は会社の側にあると分かります。書けないなら、まだ理由が固まっていないので、問い③へ進みます。

問い②:上司に、辞めると自分の口で言いに行けるか

行けないとしたら、その理由はどちらでしょうか。
ひとつは、上司の前に立つと友人の顔が浮かび、「祝ってもらったのに」と言葉が止まる場合。この場合は、会社と友人の順番を入れかえるところから始めます。
もうひとつは、上司と顔を合わせること自体ができない場合。朝、会社の前で足が止まる日がある。上司からの電話に出られない。この場合は、伝える手段を変える必要があります。

問い③:辞めたい理由は、1年目の間に変わる見込みがあるものか

配属替えの時期が決まっている。研修が終わると仕事の中身が変わる。担当が替わる予定がある。こうした見込みが具体的な日付つきであるなら、いま辞めるかどうかを決めるのではなく、その日を期限にする道があります。

問いの答えで分ける

問いの答え 原因 道
①書ける、②行ける(止まるのは友人の顔が浮かぶから) A 自分で伝える
②上司と顔を合わせること自体ができない B 退職代行を使う
③1年目の間に変わる見込みが、日付つきである C 1年目の終わりまで残る(期限と条件つき)

原因1つに、道は1つです。A・B・Cのどれでも、友人への一文はあなたが送ります。

友人に送る一文:前と後

会社の手順に入る前に、友人に送る一文を先に書いておきます。送るのはまだです。書くだけです。

いまの「前」の文

半年の間に、こんな文を送っていないでしょうか。

「ちょっと忙しくて、なかなか時間とれなくて」
「また落ち着いたら、ゆっくり会おう」
「仕事はまあまあ。慣れてきたよ」

どれも、辞める話を避けるための文です。友人は、これだけでは何も分かりません。会う約束は先のばしになり、ペンは引き出しの中のままです。

送る「後」の文

「後」の文には、事実と、次の約束だけを書きます。理由の説明は長くしません。

「半年で辞めることにした。祝ってくれたペンで退職届を書いた。落ち着いたら、同じ店で話したい」

「会社に、辞める日を伝えた。あのペンで書いた。また同じ店で飲もう」

「今月いっぱいで辞める。次は働きながら探す。同じ店、空いてる日ある?」

書くのは3つだけです。辞めるという事実。ペンのこと(書きたければ)。同じ店という次の約束。

「ごめん」を入れない

「後」の文に「ごめん」は入れません。これは、この記事での整理です。

友人が祝ってくれたのは、あなたが入社することに対してです。「ごめん」を入れると、文が長くなり、理由を説明したくなり、送れなくなります。「ごめん」を抜いた文は短く、短い文は送れます。

送る日は、会社の線で決まる

「後」の文を送る日は、次のどれかです。

  • Aの人:会社に辞める日を伝えた日
  • Bの人:代行に頼んだ日
  • Cの人:期限を決めた日(この場合は「後」の文ではなく、「迷っている」と事実を送る文になります。Cの項で書きます)

送る日が会社の線で決まる、というのがこの記事の中心です。友人の線だけを見ていると、送る日はいつまでも来ません。

原因A:辞めたい理由は会社の側で、伝える相手も決まっている

Aの人は、辞めたい理由を自分の1行で書けていて、上司に言いに行くこともできます。止まっていたのは、友人に「次」と一緒に言おうとしていたからです。道は、自分で伝える、です。

手順

  1. 辞める日を決めます。期間の定めのない雇用では、退職を申し入れた日から2週間がたつと雇用は終わります(民法627条1項)。これが法律上の最低線です。就業規則に「1か月前までに申し出る」などの決まりがあり、それが常識的な長さなら、それに合わせて申し出るほうがもめにくくなります。労働局も、まず就業規則に沿って申し出ることをすすめています。
  2. 退職届に、辞める日を書いて、上司に渡します。退職の意思は口で伝えても有効ですが、あとで「聞いていない」と言われるのを防ぐため、書面で渡すほうがよい、というのが労働局の説明です。
  3. 引き継ぎ資料を作ります。担当の仕事の手順、ファイルの場所、取引先や社内の連絡先、進行中の件の状態。できる範囲で紙にします。
  4. 退職届を渡した日に、友人へ「後」の一文を送ります。

詰まる所と次の手

上司に「半年で辞めるのはもったいない」と言われることがあります。ここで理由を説明しはじめると、話が長くなります。返すのは、理由ではなく日付です。

「○月○日で退職します。退職届をお渡しします」

「次は決まっているのか」と聞かれたら、答えは1つです。

「働きながら探します」

内定のときに聞いた説明と仕事の中身がちがう点が、法律のうえでどう扱われるかは、個別の判断になります。この記事では、あなたの場合に当たるとは書きません。気になる場合は、総合労働相談コーナー(無料・予約不要。2026年10月時点の案内)で確かめてください。

代行が届けるのは「辞める」の一言。友人に届けるのは、あなた

Bの道に入る前に、退職代行がどこまでやるのかを、ペンと友人の話に戻して書きます。

代行が引き受けるのは、あなたが決めた「辞める」を会社に届けることだけです。友人に届けるのは、あなたです。

弁護士でない代行には、それ以上のことができません。残業代、退職金、退職日の相談、残っている有給休暇の扱いを、あなたの代わりに会社と話し合うことは、弁護士でない人が報酬を受けてやると弁護士法72条の問題になります。弁護士会や労働委員会も、この点に注意を呼びかけています。「辞める」と伝えてもらったあとに、条件の話が残っているなら、それは自分で進めるか、公的な相談先(総合労働相談コーナーなど)に持ち込むことになります。

上司の前に立たなくてすむ。代行が変えるのは、その1点です。退職届を送るのも、離職票や源泉徴収票を受け取るのも、健康保険と年金を切り替えるのも、ペンで「後」の一文を書いて送るのも、自分でやります。

費用は、見たサービスごとにちがいます。この記事では額を書きません。

自分で見た額:(    )円

この額と引きかえに手に入るのは「上司の前に立たない」ことだけ、と分かったうえで決めます。退職届を書面で渡すか、郵便局から会社あてに送る道なら、費用は郵便の料金だけです。郵便局には、送った文書の内容と、届いた事実を証明する扱いもあります。退職の意思は会社に届いたときに効力が生じ、会社の承認は要りません。

原因B:上司と顔を合わせると、言えない

Bの人は、辞めたい理由はあっても、上司の前に立つと言葉が出ません。朝、会社の前で足が止まる日があり、電話にも出られない。伝える手段を変える道、つまり退職代行を使う道です。

頼む前に決めること

代行は、あなたが決めたことを伝えるだけです。次の3つを先に決めます。

  1. 辞める日。2週間が最低線で、就業規則の決まりが常識的な長さならそれに合わせます。
  2. 貸与品の返し方。社員証、鍵、パソコン、制服など。郵便局から送るか、だれかに預けるか。
  3. 友人に送る「後」の一文。先に書いておきます。

頼んだあとに、自分の手でやること

代行が会社に「辞める」と伝えたあとは、次の順番で動きます。

まず、退職届を自分で会社に送ります。代行の案内に従って、書面を郵便局から送ります。

次に、書類を受け取ります。離職票は、会社が手続きをしない場合、ハローワークに申し出れば本人の請求で手続きが進みます。源泉徴収票は、途中で退職した場合、交付の期限が退職後1月です。退職証明書は、請求すれば会社は遅れずに出すことになっています(労働基準法22条1項)。ただし、請求しないと出ない書類です。次の仕事先で求められたときのために、使うかどうかを先に決めておきます。

そして、健康保険と年金を切り替えます。任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は14日以内、家族の被扶養者に入る場合は家族の勤務先で手続き。国民年金は退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口へ。制度の日数は2026年10月時点のもので、変わることがあります。

最後に、会社から直接くる連絡への返し方を決めておきます。代行が「本人への連絡は控えてほしい」と伝えることはあっても、会社がそれに従う決まりは確認できていません。電話が来る前提で、出るか、出ないで書面で返すか、を決めておきます。

詰まる所と次の手

「代行を使った」と、友人に言いにくい。ペンをもらった相手だからこそ、ここで手が止まります。

次の手は、一文に手段を書かないことです。「辞めた」と「同じ店で」だけを書きます。

「会社を辞めた。あのペンで退職届を書いた。同じ店で話したい」

どうやって辞めたかは、聞かれたら話せばよく、聞かれなければ話さなくてよいことです。代行に頼んだ日に、この一文を送ります。

原因C:辞めたい理由は、1年目の間に変わる見込みがある

Cの人は、辞めたい理由が、配属替えや研修の終わりなど、日付のある出来事で変わる見込みがあります。道は、1年目の終わりまで残る、です。ただし、ただ残るのではなく、期限と条件をつけて残ります。

手順

  1. 変わる見込みの日を確かめます。配属替えの時期、研修の終わりの日。先輩に聞くか、年間の予定表を見ます。
  2. その日を期限にします。手帳に書きます。
  3. 期限までに確かめることを1つ決めます。「配属替えで、担当の仕事の中身が変わるか」「研修が終わったら、内定のときに聞いた仕事になるか」など、問い①で書いた1行に対応することを1つ。
  4. 期限の日に、残るか辞めるかを決めます。辞めるなら、その日からAの手順に入ります。
  5. 友人には、いま「迷っている」と事実を送ります。

「いま、辞めるかどうか迷ってる。○月に配属が変わるから、そこで決める。決めたら同じ店で話したい」

詰まる所と次の手

期限の日が来ても、会社が配属を決めない。「まだ分からない」と言われる。ここで期限を延ばすと、また半年が過ぎます。

次の手は、期限を延ばさず、その日に自分から配属を聞く一文です。

「○月に配属替えと聞いていました。自分の配属は、いつ決まりますか」

答えが日付で返ってこなければ、「変わる見込みがある」という前提がくずれたということです。その日に、原因をAに置きかえて考え直します。

どの道が合うか。ペンを持って決める

3つの道を、ペンで書いた1行と、問い②③の答えで選びます。

Aが合うのは、理由を1行で書けて、上司に言いに行ける人です。費用はかかりません。上司と顔を合わせること自体ができない人には合いません。

Bが合うのは、上司と顔を合わせることができず、伝える手段を変えれば動ける人です。条件やお金の話し合いまで頼みたい人には合いません。弁護士でない代行にはできないからです。

Cが合うのは、辞めたい理由が、日付のある出来事で変わる見込みがある人です。変わる見込みの日付がどこにもない人は、Cを選べません。

自分で伝える道が、費用のかからない基本です。Bは、上司の前に立てない人のために、伝える手段だけを替える道です。

今日、引き出しから出すもの

3つの道、どれにも、今日できる一手があります。

Aの人:引き出しからペンを出し、辞めたい理由を1行だけ書きます。友人に見せる文ではなく、自分のための1行です。それが、退職届を書く前の最初の1行になります。

Bの人:友人に送る「後」の一文を書きます。送りません。書くだけです。「辞めた」「同じ店で」の2つが入っていれば足ります。代行に頼む日に、これを送ります。

Cの人:配属替えの時期を、先輩に聞きます。「配属替えって、だいたい何月ですか」。答えの日付を手帳に書けば、それが期限です。

半年後、同じ店で

半年後。読者は、内定祝いをしてもらった同じ店で、その友人と向かい合って飲んでいます。

Aの人は、退職届を渡した日に送った一文の続きを話しています。あの日、上司に日付だけを言ったこと。働きながら次を探していること。

Bの人は、「どうやって辞めたの」と聞かれて、初めて代行に頼んだことを話しています。送った一文には書かなかったことです。聞かれたから、話しています。

Cの人は、期限の日に決めた結果を話しています。配属が変わって残ることにしたのか、変わらなくて辞める日を伝えたのか。どちらでも、期限の日に自分で決めたことです。

どの道でも、「同じ店で」と書いた約束の一文を送ったのは、読者自身です。ペンは、もう引き出しの中にはありません。