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職場での居場所

退職届を二度つき返された小売の新人。三度目は、郵便局の窓口から

約13分で読めます

店長に二度返された退職届を本社宛てに郵便局の窓口から自分で送る小売の新人

退職届を「預かれない」と二度戻された小売1年目の人へ。受け取ってもらえないことと辞められないことは別です。前と後の文面を並べ、本社へ郵送するか、代行に任せるか、日付を直すかを原因から決めます。

小売店で働いて1年目のあなたは、退職届を封筒に入れて店長に渡しました。返ってきた言葉は「今は預かれない」。二週間あけてもう一度渡すと、今度は「人が入るまでは受け取れない」。封筒は今も、かばんの中にあります。店長が受け取ってくれない限り辞められない、と思っているなら、最初にこの一文を置いておきます。

退職届を受け取ってもらえないことと、辞められないことは、別の話です。

この記事を読むと、一度目・二度目に出した退職届に何が足りなかったかが分かり、三度目をどう出すか(本社へ郵送するか、代行に最初の一言を任せるか、日付を直してから出すか)を、自分の原因から決められます。

この記事は、契約に期間を決めずに雇われている人(いわゆる正社員)の出来事として書いています。契約期間を定めて働いている人(契約社員、期間を決めたアルバイトなど)は、辞めるときの決まりが別なので、この記事の手順をそのまま当てはめないでください。期間を決めていないアルバイトは、この記事と同じ決まりです。法律と制度の説明は2026年10月時点のもので、あとで変わることがあります。

一度目と二度目の退職届に、足りなかったもの

まず、かばんの中の封筒を開けて、文面を見てください。つき返された退職届を「前」、三度目に出す退職届を「後」として、左右に並べます。

見る所 前(つき返された文面) 後(三度目の文面)
退職日 書いていない、または「相談のうえ」とだけ 年月日で書く
宛名 店長の名前だけ、または宛名なし 会社名と代表者(または人事の責任者)
出した日 書いていない 年月日で書く
控え 1通だけ作り、渡したら手元に何も残らない 同じものを2通作り、1通を自分で持つ

「前」に退職日の日付がなければ、会社は「いつ辞めたいのか分からない」と受け取ることができますし、あなた自身も「いつから数えて二週間なのか」を示せません。宛名が店長個人になっていれば、店長が「自分では決められない」と言う余地が生まれます。そして控えがなければ、出したこと自体をあとから示すものが、あなたの手元にひとつも残りません。

「前」の文面に、退職日の日付があるかどうか。これが、この記事の最初の確認です。

「後」の文面

三度目に出す文面は、次の形で書きます。飾りの言葉はいりません。

退職届

一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。

○年○月○日(出した日)

(部署名)(あなたの名前)

(会社名) 代表取締役 ○○様(または、人事部長○○様)

これを同じ内容で2通作り、1通を会社へ、1通を自分の手元に残します。手書きでも、印刷して名前だけ手書きでもかまいません。

退職日の日付は、出す日から二週間以上あとに置きます。期間の定めのない雇用では、退職を申し入れた日から二週間がたつと雇用は終わる、と民法627条1項に書かれています。これが法律上の最低の線です。ただし、就業規則に「退職は1か月前までに申し出る」のような決まりがあり、その長さがふつうの範囲なら、それに合わせた日付にするほうが、もめごとが少なくすみます。労働局も、就業規則の期間が常識的な長さなら、まずそれに沿って申し出ることを勧めています。

「後」の文面の下に、知っておくこと

退職の申し入れは、労働者が一方的にできるもので、会社の承認はいりません。これは労働局が、退職届を上司に破り捨てられたという相談に対して、はっきり説明していることです。口頭で伝えても申し入れとしては有効ですが、あとで「聞いていない」と言われるおそれがあるので、書面で出すほうが望ましい、というのが労働局の説明です。

そして、意思表示はその通知が相手に届いた時から効力が生じます(民法97条1項)。「受け取ってもらえたか」ではなく「会社に届いたか」が分かれ目です。相手が正当な理由なく届くことを妨げたときは、ふつうなら届いたはずの時に届いたものとみなす決まりもあります(同条2項)。ただし、届いたかどうかは事実の問題で、あとで争いになったときに示せるものが要ります。そのための手段が、次の郵便局の窓口です。

郵便局の窓口から出す方法

郵便局には、内容証明と配達証明という取り扱いがあります。内容証明は「どんな内容の文書を出したか」を郵便局が証明するもの(郵便法48条1項)、配達証明は「相手に配達した事実」を証明するもの(同47条)で、どちらも書留で出します(同44条3項)。この二つを一緒に使うと、いつ、どんな内容の退職届を、会社に届けたかが、郵便局の証明として残ります。

気をつける点を三つ書きます。

  • 証明されるのは「文書の内容」と「配達した事実」です。相手が読んだことや、内容が正しいことを証明するものではありません。内容証明を送れば辞める話が終わる、というものではなく、届いた日付と内容を残す手段です。
  • 内容証明は、送る文書1通と、同じ内容の写し2通(郵便局では「謄本」と呼びます)を用意します。取り扱う郵便局が限られているので、近くの郵便局で扱っているかを先に確かめてください。配達証明は、出すときにも、出したあとにも申し込めます。
  • 料金や細かい書き方の決まりは、この記事には書きません。郵便局の窓口で確かめてください。

送り先は、店ではなく本社です。宛名は会社の代表者か、人事の責任者にします。本社の住所は、雇用契約書か給与明細に書かれていれば、そこから写します。

三つの問い。三度目を誰に出すか

同じ「二度つき返された」でも、三度目の出し方は人によって違います。はい・いいえで答えてください。三つの分け方は、法律や研究の分類ではなく、この記事が出し方を決めるために置いた整理です。

  • 問い① 受け取らないのは店長だけで、本社の人事に送る道がありますか。
  • 問い② 店長の顔を見ると声が出ず、店に行くこと自体が重くなっていますか。
  • 問い③ つき返された理由は、「日付が規程と合わない」「宛名が違う」のような、書類の形の話でしたか。

①が「はい」で②が「いいえ」なら原因A。②が「はい」なら原因B。③が「はい」なら原因C。②と③が両方「はい」の人は、まずCで日付を直してから、出す場面をBに任せる、という順番になります。

原因A:受け取らないのは店長一人。本社に送る道がある

道:自分で、本社に送る

店長は店のすべてを決めているように見えますが、あなたを雇っているのは会社です。退職の申し入れは会社に届けばよいので、店長を通さず、本社の人事へ郵送します。

手順はこうです。「後」の文面を2通作る。本社の人事(または代表者)宛てに、郵便局の窓口から内容証明と配達証明で送る。手元の控えと、郵便局の証明の書類を一緒に保管する。送ったあと、店長には「退職届は本社に送りました」とだけ伝える。理由の説明や、辞めることの是非を話す必要はありません。

店長に伝える一言の文例です。

「退職届は、○月○日に本社の人事宛てに郵送しました。退職日は○月○日です。それまでのシフトは入ります。」

本社に「店長を通して」と言われたら

本社から「退職の話は店長を通してください」と返ってくることがあります。そのときも、退職の申し入れは会社に届いた時から効力が生じるので、届いた日付の証明を手元に置いたまま、退職日までのシフトに入り続けてください。「店長を通さないと受理しない」と言われて動けなくなったら、総合労働相談コーナーに相談します。厚生労働省が各都道府県労働局や労働基準監督署の中などに置いている窓口で、無料で、予約はいりません。相談のときは、送った退職届の控えと、郵便局の証明を持っていきます。

なお、「人が入るまで待て」と言われた場合について、労働局は、新しい人が見つかるまで待てと言われても民法627条により申し入れから二週間で退職の効力が生じる、と説明しています。後任が来るまで働く義務を定めた法律はありません。ただし、残った期間にできる範囲で引き継ぎの一覧を残しておくことは、もめごとを小さくするうえで役に立ちます。

代行は「伝える」まで。封筒は自分で出す

原因Bの手順に入る前に、退職代行というものが何をしてくれて、何をしてくれないかを書いておきます。

弁護士ではない代行の事業者にできるのは、あなたが決めた退職の意思を会社に伝えることまでです。退職日を変えてもらう、最後の給料の計算を確かめる、残っている有給をどうするか、といった条件を会社と話し合うことは、法律事務にあたり、弁護士でない者が報酬を受けて行うと弁護士法72条の問題になります。弁護士会や労働委員会が、この点について注意を呼びかけています。

自分で伝える場合との違いは、最初の一言を誰が言うか、という一点です。退職届の書面は、どの道を選んでも自分で出します。かばんの中の封筒を、代行が代わりに郵便局へ持っていくわけではありません。代行が会社に伝えたあとも、退職届の郵送、制服や鍵の返却、書類の受け取り、健康保険と年金の切り替えは、あなた自身がやります。

もう一つ、会社が代行との連絡を受け付けず、本人に直接連絡してくることがあります。弁護士会は、その場合は本人が改めて自分で会社に連絡する必要が生じる、と説明しています。代行が「本人への連絡は控えてほしい」と会社に伝えることはありますが、それは依頼であって、会社を縛るものではありません。

費用はこの記事には書きません。自分で見た額を、ここに置いてください。

代行の費用:___円

代行を使わない場合の代わりは、原因Aと同じく、本社の人事宛てに郵便局の窓口から送る方法です。自分で送る道は費用がかからず、これが基本の形です。

原因B:店長の顔を見ると声が出ない。店に行くこと自体が重い

道:最初の一言を代行に任せ、書面は自分で出す

三度目を渡す場面を自分で作れないなら、「伝える」という最初の一言だけを代行に任せます。代行の役目は、ここまでです。

頼む前に、自分で三つを決めます。退職日(出す日から二週間以上あと、就業規則の期間があればそれに合わせる)。会社からの連絡をどう受けるか(電話に出るか、書面でのやりとりを求めるか)。制服と鍵をどう返すか(郵送か、店に行かずに済む方法があるか)。三つとも空いたままでは、代行は会社に何を伝えればよいか分かりません。

代行が会社に退職の意思を伝えたあと、あなたの手に残る作業は五つです。

  • 制服と鍵を、決めた方法で返す。店に行かずに済ませるなら、郵送の方法と送り先を先に確かめておきます。
  • 「後」の文面の退職届を、本社宛てに郵便局の窓口から送る(内容証明と配達証明をつける)。
  • 離職票と源泉徴収票を受け取る。離職票の手続きを会社がしてくれないときは、ハローワークに申し出る道があり、本人の請求で手続きが進みます。源泉徴収票は、国税庁の案内では、中途退職の場合は「退職後1月」が交付の期限で、出ないときは税務署に届け出ることができます。
  • 健康保険と年金を切り替える。国民健康保険は市区町村の窓口で退職後14日以内、任意継続を選ぶなら退職日の翌日から20日以内、国民年金は退職日の翌日から14日以内に届け出ます。どれを選ぶかは人によって違うので、窓口で確かめてください。
  • 店長から直接連絡が来たときの返し方を、先に決めておく。

店長から電話が来たときの文例です。

「辞める意思は変わりません。退職届は本社宛てに郵送しました。退職日は○月○日です。必要な書類は郵送でお願いします。」

会社が代行との連絡を受け付けなかったら

会社が代行との連絡を受け付けず、あなたに直接連絡が来ることがあります。そのときは、本人が改めて連絡する必要が生じることがある、と先に知っておいてください。そのために、退職届の郵送を代行に頼むのと同じ日に済ませておきます。退職届が会社に届いた日付が証明で残っていれば、電話で何を言われても、申し入れた日を示すものはあなたの手元にあります。

原因C:つき返された理由が、書類の形だった

道:今は残る。期限は「就業規則の申出期間に合わせた退職日」

「退職日が規程と合っていない」「宛名が店長になっている」と言われてつき返されたなら、店長は辞めること自体を止めているのではなく、書類の形を見ている可能性があります。この場合、残る期限を「就業規則の申出期間に合わせた退職日」に置き、その日付で「後」の文面を作り直します。

手順はこうです。就業規則の退職の項目を確かめる。退職に関する事項は、就業規則に書くことが決まりになっています(労働基準法89条3号)。申出期間(たとえば「1か月前まで」)を読み、それに合わせた退職日を決める。宛名を会社にし、出した日を書き、2通作る。直した日付で、AかBの方法で出す。残る間に、自分の担当の引き継ぎの一覧を作っておく。

就業規則は、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付、パソコンなどでの閲覧のどれかで、労働者に知らせることが会社に義務づけられています(労働基準法106条1項)。店に置いていないなら、人事に見せてもらうことを頼めます。

就業規則を見せてもらえなかったら

そのときは、人事に「就業規則の退職の項目を確認したい」と書面で頼みます。文例です。

「就業規則の退職に関する項目を確認したいので、閲覧の方法を教えてください。○月○日までにご返事をいただけると助かります。」

それでも見られなければ、二週間以上先の日付を退職日にして出します。二週間は法律上の最低の線です。あとで就業規則の期間が分かり、それがふつうの長さなら、その期間に合わせて退職日を置き直してもかまいません。

三度目の出し方を選ぶ

三つの道のどれを選ぶかは、「誰が受け取らないか」と「自分が出す場面を作れるか」で決まります。

原因 三度目の出し方 今日できる最初の一手
A:受け取らないのは店長一人。本社に送る道がある 自分で、本社に内容証明と配達証明で送る 「前」の退職届に、退職日の日付があるかを見る
B:店長の顔を見ると声が出ない。出す場面を作れない 最初の一言を代行に任せ、書面は自分で郵送する 退職届を送る宛先(本社の住所)を、雇用契約書か給与明細で確かめる
C:つき返された理由が書類の形だった 今は残り、就業規則の期間に合わせた日付で出し直す 就業規則の退職の項目を、誰に頼めば見られるかを調べる

Aは費用がかからず、これが基本です。Bは「伝える場面を作れない」人のための道で、費用がかかり、伝えたあとの手続きは自分でやります。Cは「辞めること自体は止められていない」人の道で、期限がきたらAかBに進みます。どの道でも、退職届の書面は自分の手で出します。

ひとつだけ添えておきます。店に行くことを考えると手がふるえる、夜に眠れない、といった状態が続いているなら、三度目の出し方を決める前に、厚生労働省の事業「こころの耳」の電話・SNS・メール相談や、医療機関に相談することを先に考えてください。これは2026年10月時点の案内です。

三度目は、郵便局の窓口から

三度目の退職届を、あなたは郵便局の窓口で出しています。

Aの人は、本社の人事宛てに、内容証明と配達証明をつけて。Bの人は、代行が会社に伝えたあとの書面として、同じ窓口から。Cの人は、就業規則の期間に合わせて日付を直した「後」の文面を、同じように。

窓口で受け取る証明の書類と、手元に残した1通が、「出した」ことの形です。店長が封筒を受け取ったかどうかは、もうこの話の分かれ目ではありません。かばんの中の封筒は、今日、開けるところから始めてください。