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職場での居場所

入社二週間で「違う」と分かった新人。一か月目を待たずに書く日付

約12分で読めます

空席のある研修室で、入社前の説明と実際の違いを確かめる新人

説明会と研修が違う。その「違う」を、書面と違う/人と空気が違う/まだ確かめていない、の三つに分け、紙を左右に分けた表で確かめます。辞める日か、確かめる日か。一か月目を待たず、自分で日付を書くための記事です。

この記事を読むと、「違う」の中身を一枚の表で確かめて、自分の原因がどれかを決め、辞める日を書くか、残る期限を書くかを、明日のうちに決められます。日付を書くのは一か月目ではなく、表を書き終えた日です。

この記事は、期間の定めのない雇用(正社員など)で入社した人に向けて書いています。契約社員や派遣など、期間の定めがある雇用の人は、辞めるときの決まりが別(民法628条)なので、この記事の日付の決め方はそのまま当てはまりません。

説明会で聞いた会社と、研修で見ている会社

入社して二週間。説明会で聞いた会社と、研修で毎日見ている会社が、同じ会社だと思えなくなっている人の話です。

説明会で前に立っていた社員は、研修では別人のように話します。同期の一人は、先週から来ていません。配属はまだ決まっておらず、研修の部屋から見える会社が、今のところ会社のすべてです。

帰り道で「一か月は様子を見てから」と自分に言い聞かせます。けれど、その一か月を待つ理由を、自分でも言えません。一か月たてば何が分かるのか、何が分かれば決められるのかが決まっていないので、一か月たっても、同じ帰り道で同じことを言っている気がします。

ここで止まっているのは、「違う」の中身を分けていないからです。

「違う」には三つの中身があります。書面で示された条件と違うのか、人と空気が違うのか、まだ言葉にできない自分の予想と違うのか。この三つは、辞め方も、残り方も、書く日付も違います。分けないまま「違う」とだけ思っていると、辞める日も残る期限も書けません。

紙を左右に分けて、同じ行に書く

まず、紙を一枚用意して、真ん中に縦の線を引きます。左に「説明会・求人票・入社時の書面で聞いたこと」、右に「研修で見たこと」を書きます。同じ項目を同じ行に書いて、左右を並べて比べます。

行の項目は、次の七つです。

項目 左:聞いたこと(説明会・求人票・入社時の書面) 右:研修で見たこと 違いの種類
働く時間
休みの日数
給料と手当
仕事の中身
働く場所(変更の範囲も)
教える人がいるか
同期が残っているか

左の欄は、記憶ではなく、手元にあるもので埋めます。入社時にもらった労働条件の書面、求人票の控え、説明会でもらった資料です。働く時間、休み、給料、仕事の中身は、会社が労働契約を結ぶときに明示しなければならない事項で(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条)、書面で示されることになっています。2024年4月からは「就業場所・業務の変更の範囲」も明示する事項に入ったので、入社がそれより後の人は、働く場所の行に「変更の範囲」として書かれている内容も左に写します。

右の欄は、この二週間で実際に見たこと、言われたことを、日付つきで書きます。誰が、いつ、何を言ったかまで書きます。「研修担当が、(日付)に、(言われた言葉)と言った」の形です。

左右が違う行には、いちばん右の欄に、次の三つのどれかを書きます。

  • 「書面と違う」:入社時の書面に書いてある内容と、研修で見た実際が違う。
  • 「書面にはないが、聞いた話と違う」:書面には書いていないが、説明会や面接で聞いた話と違う。教える人がいるか、同期が残っているか、といった人と空気の行は、ここに入れます。
  • 「違うと感じるが、まだ確かめていない」:研修の中では見えていないので、違うかどうかを確かめていない。

書面が手元にない人は、ここで止まります。表を埋める前に、人事に「入社時の労働条件の書面を、もう一度出してほしい」と頼むところからです。研修担当ではなく、人事に頼みます。

表の下に書いておく二つのこと

一つ目。試用期間だから辞められない、という決まりはありません。逆に、試用期間だからすぐ辞められる、という決まりもありません。辞める側の決まりは、試用期間かどうかではなく、雇用に期間の定めがあるかどうかで決まります。

二つ目。期間の定めのない雇用では、辞めると申し入れた日から2週間がたつと、雇用は終わります(民法627条1項)。会社の承諾がなくても、です。ただし、就業規則に「1か月前までに申し出る」のような期間が書かれていて、それが常識的な長さなら、それに合わせて申し出るほうがトラブルが少ないと、労働局は説明しています。極端に長い期間は無効とされることもあると労働局は書いていますが、どこからが極端かは個別の判断です。「就業規則は無視してよい」とは読まないでください。就業規則は、会社が見やすい場所に置くか、書面や社内の画面で見られるようにすることになっているので(労働基準法106条1項)、見つからなければ人事に「就業規則の退職の項を見たい」と頼みます。

この二つが、日付の決め方の土台です。退職日は、申し出から2週間以上あとの日。就業規則に申出の期間があれば、その期間に合わせた日。ここに書いた決まりは2026年10月時点のもので、法律や制度は変わることがあります。

表の右端で、原因を決める

表が埋まったら、いちばん右の欄を上から下まで見て、次の三つの問いに答えます。この三つの分け方は、この記事での整理です。診断ではありません。

問い① 「書面と違う」と書いた行が、一つでもあるか。

問い② 違うのは「教える人」「同期」など、人と空気の行だけか。そして、研修担当と顔を合わせると、「辞めたい」という言葉が出なくなるか。

問い③ 「違うと感じるが、まだ確かめていない」の行が、いちばん多いか。

問い①が「ある」なら、原因A。問い②が「そうだ」なら、原因B。問い③が「多い」なら、原因C。二つ以上に当てはまる人は、問い①を先に見ます。「書面と違う」が一つでもあるかどうかで、辞め方が大きく変わるからです。

原因A:書面で示された条件(時間・休み・給料・仕事の中身)が、研修で見た実際と違う。

原因B:違うのは人と空気。研修担当の前では「辞めたい」が声にならず、伝える場面を自分で作れない。

原因C:「まだ確かめていない」の行がいちばん多い。配属後の仕事を見ていない。

原因A:書面の違いを並べて、自分で出す

原因Aの人の道は、自分で伝える道です。

書面で示された労働条件が事実と違うときは、労働者はすぐに労働契約を解除できる、という決まりがあります(労働基準法15条2項)。ただし、自分の表の違いがこれに当てはまるかどうかは、個別の判断です。「条件が違うからすぐ辞められる」と自分で決めず、先に確かめます。

手順は三つです。

一つ目。表の「書面と違う」の行だけを抜き出して、一覧にします。左に書面の文、右に研修で見た実際、その横に日付です。

二つ目。その一覧を、総合労働相談コーナーに持っていきます。厚生労働省が各都道府県労働局や労働基準監督署の中などに置いている窓口で、費用はかからず、予約もいりません(2026年10月時点)。そこで「どの条件が違うと言えるか」「すぐに解除できる場合に当たるか」を確かめます。相談コーナーは案内と助言の窓口で、会社に何かをさせる所ではありません。けれど、自分の表のどの行が決まりの上で「違う」と言えるのかを、辞める前に知ることができます。

三つ目。退職日を書いた退職届を、人事に出します。就業規則に申出の期間があり、それが常識的な長さなら、それに合わせた退職日にします。退職の申し出は口頭でも有効で、会社の承認はいりませんが、行き違いを防ぐため、書面で出すほうがよいと労働局は説明しています。

詰まる所は、「まだ研修中だから、条件は分からないでしょ」と返される所です。研修担当からも、人事からも、この言葉は出ます。そのときは、言い返さず、紙を渡します。書面に書かれた項目と、研修で言われた中身を、日付つきで並べた一覧です。口に出すなら、こう言います。「書面では、働く時間は(書面の文)となっています。研修では(日付)に、研修担当から(言われた言葉)と聞きました。この二つが違うので、確かめたいです」。感じたことではなく、書いてあることと言われたことだけを並べて渡します。同じ紙を、相談コーナーにも持っていきます。

頼めるのは、最初の一言まで

原因Bの人は、ここを読んでから次へ進んでください。研修中の人が代行に頼めることは、思っているより少ないからです。

頼めること 頼めないこと
本人が決めた退職の意思を、会社に伝えること 「書面と違うので、こうしてほしい」と会社に求めること
残っている給料や有給の扱いを決めること
退職日を会社と話し合って決めること

右の欄は、弁護士でない人が報酬を受けて行うと弁護士法72条の問題になると、弁護士会や労働委員会が注意を呼びかけている範囲です。原因Aの人がやること(書面の違いを確かめて、伝えること)は、右の欄に入ります。つまり、代行では済みません。

自分で伝える道との違いは、「研修担当や人事に、最初の一言を誰が言うか」です。それ以外は変わりません。退職届を郵送するのも、会社から届く書類を受け取るのも、健康保険と年金を切り替えるのも、頼んだあとで自分がやります。

代行の料金:(    円)←自分で見た額を書く。人事に書面で出す道なら、この欄は0円です。

代わりの方法は、研修担当を通さず、人事に書面で出すことです。退職の意思は口頭でも有効ですが、書面で出せば、出した事実が残ります。受け取ってもらえないときは、内容証明郵便で出す方法もあると労働局は説明しています。届いた日付も残すなら、郵便局で配達証明を一緒に付けます。内容証明は文書の内容を、配達証明は配達した事実を証明するもので、相手が読んだことまでは証明しません。

原因B:研修担当に言わずに、辞める

原因Bの人の道は、退職代行を使う道です。研修担当の顔を見ると言葉が出ず、人事の窓口も分からず、伝える場面を自分で作れない。この「伝えること自体ができない」が原因のときだけ、この道を選びます。

頼む前に、表の下に三つ書いておきます。

一つ目、退職日。申し出から2週間以上あと。就業規則に申出の期間があれば、それに合わせた日。退職日を会社と調整するのは代行の仕事ではないので、日付は自分で決めて渡します。

二つ目、連絡の窓口。会社からの連絡は代行を通してほしい、と伝えてもらいます。ただし、会社がそれを守るとは限りません。会社が本人に直接連絡することを止める決まりは、確認できていません。

三つ目、残っている会社の物の返し方。研修で使った社員証、資料、借りている物を、郵送で返すか、人事あてに持っていくかを決めておきます。

代行の仕事は、伝えた所で終わります。そこから先は、自分の手続きです。

自分でやること いつ・どこで
退職届の書面を郵送する 代行が伝えたあと、すぐ。「伝わった」と「届いた」は別
離職票と源泉徴収票を受け取る 届かないときは、離職票はハローワーク、源泉徴収票は税務署へ
健康保険と年金を切り替える 国民健康保険と国民年金は原則として退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口、任意継続は20日以内に健康保険の窓口(2026年10月時点)
会社から直接連絡が来たときの返し方を決める 頼む前に、一文を決めておく

詰まる所は、会社が代行との連絡を受け付けず、本人に連絡が来る所です。弁護士会は、会社が「弁護士でない人が交渉するのは問題ではないか」として業者との連絡を断り、本人が改めて自分で連絡する必要が生じる例があると書いています。代行は伝えるまでが役割だと先に知っておき、来たときは一文で返します。「退職の意思は変わりません。書類は郵送してください」。これだけです。理由を聞かれても、この一文をくり返します。

原因C:確かめる日を、先に書く

原因Cの人の道は、今は残る道です。ただし、期限と条件をつけて残ります。

「まだ確かめていない」の行がいちばん多い人は、違うかどうかをまだ知りません。知らないまま辞めるのも、知らないまま一か月を待つのも、同じ「決めていない」です。だから、確かめる日を決めます。

期限は、配属の日に置きます。配属が未定なら、入社一か月目の日です。その日までに「確かめること」を一つだけ決めます。たとえば、配属先の働く時間。配属先の休みの取り方。教える人が配属先にいるか。一つだけです。二つ以上にすると、期限の日に「まだ全部は見ていない」が言えてしまいます。

確かめた日に、三つのどれかを決めます。「書面と違う」と分かったら原因Aの道へ。伝える場面を作れないと分かったら原因Bの道へ。違わなかったら、辞めない。

詰まる所は、期限が来ても「もう少し」と延びる所です。これを防ぐ方法は一つで、期限の日付を、表の上に先に書いておくことです。表を書いた日に、いちばん上に「確かめる日:(日付)」と書きます。「もう少し」と思ったとき、表を見れば、自分で書いた日付がそこにあります。

表の上に書く、三つの一手

三つの道とも、今日のうちにできることを一つだけ置きます。表を書いた日に、そのまま続けられる大きさです。

原因Aの人は、入社時の書面を出して、働く時間の欄に印をつけます。相談コーナーに行くのも、退職届を書くのも、その先です。今日は、印一つ。

原因Bの人は、研修担当以外に、人事の窓口が誰かを、社内の案内で調べます。退職届を郵送する先、書類を受け取る先が、その人になります。代行に頼むのは、その先です。

原因Cの人は、「まだ確かめていない」の行から、一つだけ選んで丸をつけます。

一か月目を待たずに、表の上に日付を書く

この記事の終わりは、表の上に日付を書く所です。

原因Aの人は、退職届に書く退職日。表の下に書いた決め方(2週間と就業規則)のとおりです。

原因Bの人は、代行に伝える退職日。決め方はAと同じです。

原因Cの人は、確かめる日。配属の日か、入社一か月目の日。

三つとも、自分で書く日付です。誰かに決めてもらう日付ではありません。一か月目を待つ理由を言えなかった人も、表を書き終えれば、日付を決める材料が手元にそろいます。「一か月は様子を見てから」の代わりに、「この日に決める」と日付で言えるかどうか。それだけが、この二週間との違いです。